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EMT、研究開発拠点「EMT R&Dセンター」公開 山本浩二CTOが「真の日本の自動車メーカーになることを目指すR&D Vision」を解説

2026年8月31日 開催
EMTAの「R&D Vision」について解説する株式会社EMT CTO 山本浩二氏

 次世代自動車ブランド「EMTA(エムタ)」から2027年に軽自動車のBEV(バッテリ電気自動車)を日本市場に投入するべく研究開発を行なっているEMTは8月31日、2026年7月に神奈川県横浜市に開設したエムタブランドの研究開発拠点「EMT R&Dセンター」を報道関係者向けに公開。同施設の概要やEMTAが目指すブランドのあり方、日本品質を実現するための「R&D Vision」などについて解説するメディアセッションを行なった。

 日本国内でのR&D業務を担当するEMT R&Dセンターは、これまで横浜市内に点在していた研究や開発の拠点を1つの環境に集約・拡大され、よりスピーディで高度な開発体制を構築。商品企画、ベンチマーク調査、設計スペック決定、国内適応実験、法規・認証、車両品質保証、市場品質改善、新モデルデザインなどの業務を行なっており、2027年に発売予定の新型軽BEVや後継モデルなどの開発も進められているという。

EMT R&DセンターはEMTにチェリー、オートバックスセブンなどと共同出資するアネスト岩田の本社敷地内に開設されている
EMT R&Dセンターの看板
EMT R&Dセンターのオフィススペース
まだプロトタイプ車両が中国から到着していないこともあり、資材置き場はがらんとしている

EMT R&Dセンター施設概要

所在地:神奈川県横浜市港北区新吉田町3176番地
総面積:556.8m 2
オフィスエリア:318.2m 2
ワークショップ:238.6m 2
収容人員:50人(最大)

EMTの最終形は「真の日本の自動車メーカー」と山本CTO

株式会社EMT CTO 山本浩二氏

 メディアセッションではEMTの会社概要についてあらためて説明されたあと、EMT R&Dセンターの事業所代表も務めるCTOの山本浩二氏が登壇。EMT R&Dセンターを開設した意義やEMTAのR&D Visionについて語られた。

 EMTAでは車両開発にあたってのKPI(重要業績評価指数)を「スペックではなく、お客さまの笑顔」と設定。自動車メーカーのエンジニアは開発に集中していくとどうしても「自分たちが造りたい究極のスペック」を追い求めてしまう傾向にあるが、たとえ世界最高水準の技術を生み出してクルマに搭載しても、乗る人がクルマを評して笑顔にならなければ技術者の自己満足で終わってしまうとの考えから、このような失敗を避けてユーザーに価値を提供するブランドプロミスとして「Daily Magic(人々の暮らしに魔法のような感動を届ける)」という概念を掲げている。EMT R&Dセンターでは、このDaily Magicを実現して人に寄り添うクルマをユーザーに提供するために必要な技術開発などを行なっている。

 5月に行なわれたブランド発表会でもすでに説明されているように、Daily Magicを実現する技術としてはクルマがスマートフォンと同じようにソフトウェアの力で進化していく「Magic SDV」を中核技術に設定。さらに人とクルマがシームレスに同期する「Magic Sync」、最高水準のBEV性能を実現する「Magic EV」、安全で快適な移動をサポートする「Magic Drive」の3つをサブ技術として位置付け、4つの“マジック技術”を組み合わせてEMTAブランドの商品力を生み出していくという。

EMTAが目指すKPI(重要業績評価指数)は「お客さまの笑顔」
4つの“マジック技術”でDaily Magicを実現していく

 EMTAから最初に発売される新型軽BEVは、発売タイミングなどさまざまな事情から中国で生産される計画だが、Magic Syncの各種設定などソフトウェア面は山本CTOをはじめとする日本の開発チームが担当、スペックなどを決定していく。車両生産は中国にある工場を借りてEMTが用意したラインで製造される。

 また、Magic DriveではE2E(エンド トゥ エンド)で自動運転を行なう「レベル2++」相当の運転支援技術を開発して搭載可能となっているが、レベル2++は現時点で日本国内の認証を受けていないため、2027年に発売する新型軽BEVには高速道路などでの使用に限定したレベル2+相当の自動運転技術を搭載して市場投入される。将来的にはマイナーチェンジ、または次期モデルに切り替わるタイミングでレベル2++を搭載するなど、今後検討するとのこと。

クルマの納車後もOTAでデジタル化されたユーザー体験が適宜アップデートするほか、走行性能や航続距離なども最新モデル同様に改善されていく「Magic SDV」
クルマとユーザー、ユーザーが使っているスマホと同期して、普段使いのスマホを持ってクルマに近付くだけでドアロックの解除と車両の起動、シートポジションやエアコンの温度設定、走行モードなどが瞬時にパーソナライズされる「Magic Sync」
ゼロから開発した新しい軽BEV専用プラットフォームを採用する「Magic EV」では、モーターやインバーターなどを一体化したeAxleとフロア下に配置される大容量バッテリにより、軽自動車規格内で高い居住性と衝突安全性を両立
自動運転「レベル2++」相当の運転支援技術に加え、高精度な自動駐車アルゴリズムを視野に入れている「Magic Drive」。日本の狭く入り組んだ路地にも対応し、運転のストレスや不安を取り除いてリラックスした移動時間を提供する

 Daily Magicを実現する4つの“マジック技術”を日本市場にマッチする本物の品質に磨き上げていくことがEMT R&Dセンターの役割となっていることに加え、EMTA初の製品となる新型軽BEVに続く第2弾以降のモデルについては、内外装のデザインや商品企画、他社モデルを対象としたベンチマークテストなどもEMT R&Dセンターで手がける計画となっており、将来的には日本市場に適合させる設計とスペックの選定、国内適合実験、日本の法規準拠、型式認定の獲得、新車の品質保証、市場品質の改善なども手がけていく予定となっている。

 このような長期ビジョンを見据えつつ、まずは2027年の発売を予定する新型軽BEVの品質造り込みに全力を傾けているとのことで、9月からは日本国内で適合実験が本格的にスタートする予定。実はこのメディアセッションで実験車両がお披露目されることになっていたが、8月に頻発した台風の影響で船便の到着が遅れ、残念ながら車両公開は先送りになってしまったという。

EMT R&Dセンターの主な業務内容
9月から日本国内での適合実験が本格的にスタートする

 2029年までに4車種の市場投入を予定するEMTAの長期ビジョンについても説明され、まずはPHASE 1として新型軽BEVを2027年に日本市場で発売し、PHASE 2では日本市場で磨き上げた商品性やEMTAブランドの魅力を備える第2弾モデルを海外市場にも展開。PHASE 3では第3弾、第4弾となるモデルをリリースしてラインアップの拡充を図り、グローバル市場での存在感を一気に高めていく。最終段階のPHASE 4ではEMTAの車両を日本で開発、生産して完全なメイド イン ジャパンを実現していく。

 こうした計画を進めていくため、EMTに出資しているグローバル企業が持つ世界トップクラスの開発スピードとコスト競争力を活用して生み出した新型軽BEVに続き、第2弾モデル以降ではEMT自身の開発領域を増やしていくという。まずは商品企画や造形デザインなどの領域をEMT主導で進め、EMT R&Dセンターの組織体制をさらに強化して外部に依存している開発委託の領域を段階的に縮小。グローバルでの水平分業を活用してサプライヤー選定もEMT主導に移行していく計画としている。

2027年に新型軽BEVを日本市場で発売したあと、計画の第4段階では日本で車両生産を行なって完全なメイド イン ジャパンを実現する
完全なメイド イン ジャパンに向けてEMTの開発領域を強化・拡大していく

 最後に山本CTOは、EMTが目指す最終形を「真の日本の自動車メーカーになること」だと述べ、プラットフォームについては水平分業先のグローバル企業で開発されるものを当面のあいだ利用していくが、日本市場への適合や日本のユーザーが受け入れやすいデザイン開発などをEMTが独自に行ない、将来的に手がけるモデルについてはアッパーボディのすべてをEMT R&Dセンターで手がけられる能力を持つようにしていき、日本人の感性を活かした細部へのこだわりと日本品質を実現する取り組みを推進してDaily Magicを世界中のユーザーに提供していきたいと意気込みを語った。

EMTは「真の日本の自動車メーカーになること」を最終形として目指す

「当たり前品質」でブランドプロミスのDaily Magicを支えていく

株式会社EMT トータルカスタマーサティスファクションダイレクター 茂木雅之氏

 山本CTOの解説に続き、EMT R&Dセンターで実務にあたっている2人の担当者から、それぞれの担当分野に関するテーマプレゼンテーションが行なわれた。

 まず、品質についてはEMT トータルカスタマーサティスファクションダイレクター 茂木雅之氏が解説を実施。EMTAは設立当初から「日本品質」の実現を目指しており、車両開発を担当するメンバーとも共有する合言葉になっているという。

 このために、まずは「日本品質とは何か?」を定義して、定義した内容に沿ってスピード感を持って実行・実現するため活動。EMTAでは日本品質を「特別な高級感や装飾ではなく、毎日の生活で自然に安心して使える品質」と位置付け、具体的には「壊れない」「使いやすい」「わかりやすい」「違和感がない」という4つの点を挙げ、これを「当たり前品質」と名付けて品質基準とした。

EMTAでは「日本品質」を「毎日の生活で自然に安心して使える品質」と定義
設定した品質基準がクリアできていない場合は改善を求め、徹底して造り込みを行なう

 この当たり前品質を製品に反映させるため、日本のユーザーが抱くであろう品質の期待値をEMTがパーツごとの基準として設定し、できあがったパーツで基準をクリアしているか確認。基準をクリアできていない場合は改善を求め、納得できるまで徹底して造り込みを行なうという。とくに最初の1台となる新型軽BEVは中国で設計・製造が進められているため、現地に作業を任せてあとから確認するのではなく、EMTのスタッフが現地に足を運んで設計段階から当たり前品質が実現できるようフィードバックを行ない、生産を担当する部品サプライヤーのところにも行って工程管理をチェックするなど、とにかく現地・現物にこだわり、現地の担当者とも協力して品質の造り込みを進めている。

 また、当たり前品質は納車して終わりではなく、ユーザーが日常的に安心して使えるよう、点検整備や部品供給といったプロセスでもそれぞれの品質を高めるべく準備が進められており、さまざまな面でこだわり続けて当たり前品質を実現することでユーザーに安心して選んでもらえるクルマを生み出し、EMTAのブランドプロミスであるDaily Magicを品質面から支えていくと説明した。

EMTのスタッフが中国まで足を運び、設計段階から当たり前品質が実現できるようフィードバックしていく
納車後も点検整備や部品供給で品質を高めていく準備が進められている
当たり前品質でEMTAのブランドプロミスであるDaily Magicを支えていく

EMTAのデザインフィロソフィは「エモーショナル&タクトフル」

株式会社EMT デザインダイレクター 野口孝士氏

 デザインに関するテーマプレゼンテーションは会場をEMT R&Dセンター内のデザインセンターに移して行なわれ、EMT デザインダイレクター 野口孝士氏からEMTAのデザインに関する取り組みについて説明された。

 EMTAでは「すべての人の日常を幸せにする」というコーポレートパーパスを実現するため、ブランドの付加価値として「ちょうどいい」「楽」「Wow」というキーワードを設定。これを体現するデザインフィロソフィとして「エモーショナル&タクトフル」を掲げている。

 心に響く、心を揺さぶるエモーショナルなデザインを目指しつつ、「配慮がある」「思いやりがある」「気が利く」といった意味を持つタクトフルを掛け合わせることで、エモーショルでありながら最後まで考え抜かれた高い完成度を備え、「動」と「静」を兼ね備えるような方向性を設定。また、エモーショナルとタクトフルの冒頭2文字でEM-TAとなる遊び心も添えられ、デザインフィロソフィを記憶してもらいやすいようにしている。

 このほか、エモーショナル&タクトフルには「未来感と愛着感の絶妙なバランス」「使いやすさを重視し先進技術をさりげなく包み込む」「ひとりひとりに寄り添うパーソナライゼーション」といった考え方が内包されている。

デザインフィロソフィは「エモーショナル&タクトフル」
エモーショナルとタクトフルの冒頭2文字でEM-TAとなる遊び心も

 また、5月に行なわれたブランド発表会などの場で第2弾~第4弾モデルを発売することを示すため、SUVやミニバンのシルエット画像がスライド資料に登場しているが、現段階では新型軽BEV以外については企画を練り上げている段階で、どのようなモデルになるかは未定とのこと。しかし、ここまでに説明されてきたデザインフィロソフィに沿って、各ボディ形状でどのような外観デザインを与えれば“EMTAらしさ”を表現できるか検討を進めていると説明された。

EMTAから2029年までに4モデルが市場投入される予定だが、新型軽BEV以外についてはボディ形状なども含めて未定
デザインフィロソフィに沿って“EMTAらしさ”を表現したデザインスケッチ
質疑応答の様子

 メディアセッションの後半で行なわれた質疑応答では販売網の整備について質問され、この点では出資5社の1社であるオートバックスセブンが協業パートナーとして販売網の構築に協力。全国に約400店舗あるオートバックスカーズ加盟店が候補となっており、実際にどの店舗で販売が可能か1店ずつまわって確認しているという。

 また、オートバックスカーズ加盟店だけではカバーしきれない空白エリアが出てしまわないよう、各自動車販売会社にも連絡を取って出店交渉を進めており、現時点で30~40社と具体的な計画を進めていると説明された。