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トヨタ、「GR GT3コンセプト」ついに実戦投入 開発陣の「今スーパーGTで走らせる意義」とは?

2026年11月7日 実施
32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 ルーキーレーシング(トヨタ自動車)は11月7日、栃木県芳賀郡茂木町にあるモビリティリゾートもてぎにて開催された、スーパーGT第3戦「2026 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJI GT 300km RACE」に、新型マシン「32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept」で参戦した。

 これまでルーキーレーシングは、「Mercedes-AMG GT3」を使用してGT300クラスに参戦していたが、いよいよ2022年の東京オートサロンにて初公開し、カスタマーモータースポーツの最高峰となるGT3カテゴリーへの参戦と、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」のさらなる推進を実現するために開発が進められてきたGR GT3 conceptが実戦に投入された。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 前日(11月6日)には、「コンセプトモデルのため答えられない部分もある」と前置きしたうえで、ルーキーレーシングGM 山村豊氏、同チーム代表/監督 関谷利之氏、同チーフエンジニア 小野寺冬真氏、同ドライバー 石浦宏明氏、GR GT3/GR GTチーフエンジニア 土井崇司氏らによる説明会を実施。同日のフリー走行で30周をトラブルなく走り切ったマシンについて、現場での手応えとテストの狙いなどが語られた。

なぜスーパー耐久ではなく、スーパーGTなのか?

 未公認(ホモロゲーション取得前)の車両であれば、スーパー耐久のST-Qクラスという選択肢もあるなか、なぜGT300クラスの現場を選んだのか。その理由について土井氏は、「GR GT3 コンセプトはこれまでテストを重ねてきましたが、実戦の場でしっかりとテストを行なうタイミングを見据え、GTAやルーキーレーシングと相談してこの場を選びました。どこで走らせるのが一番よいのか議論を重ねた結果、やはり数多くのGT3車両が走るスーパーGTの現場こそがベターであると判断しました」と説明。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept
32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 また、来季以降の参戦計画については、「まだはっきりとしたものはありません。まずは今回の走行で課題や粗を洗い出し、きっちりとフィードバックしていくことが目的です」と言葉を留めた。

ドライバーの実走フィーリングは?

 6日のフリー走行枠で実際にモビリティリゾートもてぎを走行した石浦選手は、「単独でのテストとは違い、ライバル車両と一緒に走ることでミラーの死角や見え方が初めて体感できました。また、慌ただしいドライバー交代のなかでスライド式ペダルのロック機構の合わせ込みや、ピット前で据え切り発進する際のクラッチミートなど、決められた手順のなかで動いて初めて気づく点が数多くありました」と実戦フォーマットならではの収穫の大きさを強調した。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 マシンの操縦性については、「最新世代のGT3ルールに沿った空力パッケージを感じます。事前の予習をほとんどせずに乗り込んでも直感的に操作でき、コースインしてすぐにレーシングスピードに入れました。外気温に対して熱くなりがちなGT3の車内環境も非常に快適で、ジェントルマンドライバーが乗ることを徹底して意識してきた開発の成果が出ています」と高い完成度をアピールしていた。

 また、今回の車両変更に伴いスーパーGTのポイント付与の対象外となることについて問われた石浦選手は、「チーム初年度としてシーズン前に掲げた目標に対しては、しっかりと戦い、自分たちが設定したターゲットまで到達できたという確かな手応えがありました。そのうえで、この最終戦でコンセプトカーを走らせるという決断に対し、個人的には『タイトルを狙いたかった』という思いよりも、自分が最初から開発に関わってきたマシンを世界で初めて公式の場で走らせ、皆さまにお見せできるチャンスをいただけたことを何より光栄に思っています。レース人生のなかでも滅多に出会えない貴重な機会であり、どちらかを選べと言われれば迷わずこちらを選びます」と回答。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 続けて、「何よりも大切なのは、シリーズを戦ってきたライバルたちのチャンピオンシップに対して最大限のリスペクトを持って走ることです。そこを最優先に考え、邪魔をすることなく、同時に将来のモータースポーツ界に役立つデータを持ち帰るために全力を尽くします」と、最終戦でシリーズチャンピオンを争うライバルたちへの配慮もコメント。

目指すのは世界中の誰もが勝てる「オールラウンダー」

 チームやエンジニアの視点からも、マシンに対する期待は大きい。ルーキーレーシングの小野寺レースエンジニアは、「エンジニアのセットアップやメカニックの作業性を含め、性能をユーザーフレンドリーに引き出せるマシンにしたい」と語り、同チーム代表/監督 関谷氏も「世界中でカスタマーが手荒に扱っても壊れず、整備しやすいマシンであることが重要。使い手目線での要望をGR側に大量にリストアップしてフィードバックしています」と明かした。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 石浦選手も、「事前のシミュレーター段階から世界中のあらゆるサーキットを走り込み、特定の得意コースをつくらない“オールラウンダー”を目指して開発してきました。当時はGT300がコントロールタイヤ(ワンメイク)になるとは想定していませんでしたが、どんなタイヤメーカーのタイヤを履いても性能を引き出せるセットアップの懐の深さを持たせることを一番に考えています」と語り、セットアップの懐が広いマシンづくりを進めているとアピール。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 土井氏は最後に、「モリゾウさん(豊田章男会長)からは常々、『クルマは世に出した瞬間がスタートであり、そこからいかに鍛え、成長させていけるかが何よりも大事だ』と言われ続けています。そういった意味では、このプロジェクトはまだスタートラインにすら立っていません。100点満点で何%かと問われれば、まだまだ道半ばです。しかし、このGR GT3コンセプトの実戦開発を通じて得られた気づきや改善点は、GR GT3車両だけでなく、ナンバー付きの市販スーパースポーツとして登場する『GR GT』、そしてすべてのトヨタ車、GR車の『もっといいクルマづくり』へと直結しています。世界中のユーザーが心から楽しめる車両を届るために、できる限りの挑戦を続けていきます」と締めくくった。

32号車 ENEOS X PRIME GR GT3 concept

 なお、7日の第3戦ではSW(サクセスウエイト)42kgを積んだ状態での走行だったが、レース中のベストラップは1分48秒117と、完走を果たしたGT300クラス全23台中(出走は全28台で5台リタイヤ)9番目のタイムをマーク。GR GT3 conceptの完成度の高さを証明した。