ホンダ、「CR-Z『Hondaの想い』発表会」を開催 CR-Zは私たち自身が欲しかったクルマ |
ホンダ車で“走って楽しいクルマ”が希薄化しているのではないかと危惧する伊東孝紳社長 |
本田技研工業は2月25日、同日発売したハイブリッドスポーツカー「CR-Z」の発表会を、都内のホテルで開催した。通常、新車の発表会にタイトルをつけるケースは少ないが、今回は「CR-Z『Hondaの想い』発表会」と銘打たれて行われた。
会の冒頭で登壇した同社の伊東孝紳社長は、「ホンダらしいモデルがなくなったという厳しい意見をうかがうことがある」と言い、ホンダの持ち味である“走って楽しいクルマ”が希薄化しているのではないかと危惧。その一方で、自動車メーカーとして地球規模の環境問題に対応するため、ハイブリッドカーの普及も急がなければならないとし、そうした中でホンダが導き出した答えがCR-Z(Compact Renaissance Zero)のネーミングに込められた「従来のクーペ価値にとらわれず、新しいコンパクトカーを創造するという志のもと、原点(ゼロ)に立ち返ってチャレンジする」である。
環境問題に対応するため、ハイブリッドカーの普及に最優先で取り組む | 運転する楽しさとハイブリッド技術が融合することこそ、これからの時代に求められるクルマだと言う |
CR-Zのモックアップも展示。このモックアップデザインを重視してCR-Zは作られたと言う |
CR-Zは、所有することで毎日が楽しくワクワクするクルマを目指し、世界で喜ばれる新時代の価値観を持ったクルマであることが重要と考え、「走る楽しさ」「社会性に配慮した高い環境性能」「日常を楽しくするパッケージ」を開発コンセプトとしたものだと言う。
キーワードは「Hybrid Cafe Racer」。欧州ではカフェにクルマ好き・バイク好きが集まり、お互いの愛車について語り合ったり、自慢しあう文化があると言う。そこに集まるバイクやクルマのことが“カフェ・レーサー”と呼ばれることから採用し、そのようなクルマ好きにかっこいいと自慢してもらえるようなモデルを目指すとともに、欧州をはじめとした各地域で実施されるCAFE(企業平均燃費規制)に対応する環境性能を備える、という意味合いを持つ。
伊東社長は「私は、常々クルマは軽くあるべきで、運転することが楽しくなければならないと考えている」と述べ、かつて研究所の一員として初代CR-X、NSXの開発に携わっていたことを例に挙げ、「クルマ全体を軽量化してエンジンの性能を最大限引き出すというコンセプトで開発を行い、パワーウェイトレシオの追求がダイナミクスと燃費に貢献できると考えた。それこそがホンダの原点」とし、このホンダの“DNA”に独自のハイブリッドシステムを融合させることにより、モーターとエンジンパワーを最大限に活用したハイブリッドスポーツカーを作り上げることに成功したと語る。その仕上がりについて、昨年秋に試作車に試乗した際の感想を「かなり楽しいクルマ」と述べた。
ホンダらしいモデルがなくなったという意見については、「CR-Zはユーザーの期待値以上に仕上がったと確信している。ホンダは新しい美しさ、新しい楽しさ、新しい便利さを提供していきたいと常々考えている。そして創業から変わらない、ホンダのもの作りの想い、開発に込めた想いをCR-Zを通じて感じてもらえれば嬉しい」と語った。
開発コンセプト | キーワードの「Hybrid Cafe Racer」にはクルマ好き、バイク好きに自慢してもらえるかっこいいスポーツカーであること、そしてCAFE(企業平均燃費規制)に貢献でき環境性能を備えた商品であるという意味が込められる |
NSXのボディー開発チームに所属していた頃の伊東社長 | 軽量化と効率化、パワーウェイトレシオの追求がダイナミクスと燃費への貢献になるとの考えを示す |
CR-Zの概要を紹介した開発責任者の友部了夫氏 |
CR-Zの概要は、開発責任者の友部了夫氏より説明された。エクステリアは、低く、ワイドな骨格を連続して変化する面で包み、前後フェンダーをスムーズかつ力強く盛り上げ、躍動感溢れるワンモーションフォルムとした。これにより、走りの機能美とハイブリッドカーの先進性、クリーンなイメージを融合したと言う。全高を低く、全長を短く、全幅を広げることで、俊敏な走りと従来のハイブリッドカーにはない、斬新なスタイリングに仕上げたとした。
ボディーは軽量高剛性を実現するため、ハイテン材(高張力鋼板)を最適配置している。そして低い全高と広い視界を確保するため、エンジンの高さをギリギリまで低くするとともに、サスペンションレイアウトを新設計したと言う。また、新構造のフロントピラーと、ホンダの量産車としてもっとも曲率の高いフロントガラスの採用により、ワイドな前方視界を確保。友部氏はこれを「爽快な走りの実現に貢献している」と述べる。
「低・短・ワイド」な高密度パッケージとしたCR-Zのボディーサイズ | エクステリアは躍動感あふれるワンモーションフォルムとした | CR-Zに用いられたさまざまなシャシー設計技術 |
エンジンは直列4気筒 SOHC 16バルブ 1.5リッター i-VTECを採用し、ホンダ独自のハイブリッドシステムIMAを組み合わせたもの。また、ハイブリッドカーとして世界初となる6速MTを採用するとともに、CVT車は全車にパドルシフトを採用し、走りの楽しさを追求している。
このパワートレインの仕上がりについて、開発責任者の友部氏は「2リッタークラスの加速感、圧倒的なトルク感を実現した」と述べるとともに、10・15モード燃費をCVT車で25.0km、6速MT車で22.5km/Lと、優れた燃費性能としたことに自信を覗かせる。
燃費性能を上げるには軽量化も欠かせないポイントとなる。CR-Zは足まわりに鍛造アルミ製のロアアームを採用しており、これは通常のスチール製と比べ、1台あたり約4kgの軽量化に成功したと言う。さらに、大きく見えるデザインとしながら、肉厚を極限までシェイプした16インチアルミホイールも採用している。
エンジンは直列4気筒 SOHC 16バルブ 1.5リッター i-VTECで、6速MTとCVTを用意する。なお、2月25日の時点ですでに4500台の受注があると言う。詳細な受注内容についての報告が上がっていないとしながら、トランスミッション比率はCVT車が7、6速MT車が3の割合になるのではないかと予想した | 鍛造アルミ製のロアアームや軽量16インチアルミホイールを採用。前後重量バランスは6:4 |
今回、CR-ZにIMAを採用したことで実現できた技術として、3モードドライブシステムの紹介もあった。これはファン・トゥ・ドライブを強調する「SPORTモード」、走りと燃費を高次元でバランスする「NORMALモード」、燃費を追求した「ECONモード」の3モードを設定するもので、ドライバーの意志で自由に切り替えられる。これらはDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)、EPS(電動パワーステアリング)、モーターアシスト、CVT、エアコンなど、それぞれを統合制御することで実現している。
そのほか、インテリアでは必要な情報を素早く引き出すことができ、未来感のあるスーパー3Dメーターや、使用頻度の高いスイッチ類を集中配置したクラスターパネル、金属のように輝く高輝度メタルガーニッシュなどを採用し、「高い機能性を備えた上で先進感と上質感を追求した」と言う。
全タイプにメーカーオプションとして設定する「Honda HDDインターナビシステム」は、自動車業界として初となる通信費無料で各種情報を利用できる「リンクアップフリー」に対応するもので、車検時に正規ディーラーで更新手続きを行えば車両を所有する期間内は無料となる。
DBW、EPS、モーターアシスト、CVT、エアコンを統合制御する3モードドライブシステム | 新時代のスポーツインテリア |
Honda HDDインターナビシステム | リンクアップフリーシステムの紹介 |
友部氏は「パッケージングやデザイン、走行性能、環境性能すべてにおいて、ホンダの先進技術をつぎ込んだ。私たち自身が欲しかったクルマ」と述べるとともに、走る喜びを伝えるクルマ、そんな想いが詰まったモデルがCR-Zだとし、発表会のタイトルである“Hondaの想い”を伝えた。
CR-Zはαとβの2グレードが用意される。ダークピューター・メタリックカラーのCR-Z α |
会場に展示された一部のCR-Zおよびフロアには、Hondaの想いが数多く記載されていた。「かっこ悪くなったら、やめるからね」との言葉からCR-Zへの思いと自信がうかがえる |
16インチ軽量アルミホイール。タイヤサイズは195/55 R16 | ラゲッジスペースのサイズは990×770mm(幅×奥行き)で、容量は214L。リアシートを倒せば奥行きは1280mmまで広がり、容量は382Lまで拡大する | オートレベリング機構やオートライトコントロール機構を備えるプロジェクタータイプ ディスチャージヘッドライト |
「CR-Z」のロゴはボディー左側に | 右側には「HYBRID」 | LEDポジションランプはα、βともに標準装備する |
αのインパネ |
【お詫びと訂正】記事初出時、「NS-X」と記載した部分がありましたが、正しくは「NSX」となります。ご迷惑をおかけした皆様にお詫びを申し上げるとともに、訂正させていただきます。
(編集部:小林 隆)
2010年 2月 26日