ソニー、タンブラーサイズのスピーカー「RDP-NWV500“サウンドマグ”」体験会
家でもクルマでも、手軽に驚きのサウンド

2010年4月28日
東京 ソニー有明PIT



 ソニーは4月28日、報道関係者向けに「ドックスピーカー RDP-NWV500」の体験会を開催した。

家でもクルマでも手軽にウォークマンを楽しめるスピーカー
 4月24日に発売されたRDP-NWV500は、クルマのカップホルダーに置いて使えるように作られたハンディなスピーカーシステムだ。コーヒーをテイクアウトするためのタンブラーのような形状をしているので、「サウンドマグ(SOUND MUG)」という愛称が付いている。価格はオープンプライスだが、店頭予想価格は2万円前後。

 85×85×216mm(幅×奥行き×高さ)という大きさもタンブラー程度だが、この中にツイーター、ウーファー、16Wのデジタルアンプが収まっていて、さらに車載時に重低音を出すため、巧妙な形状に作られたバスレフポートまで内蔵している。

片手で持てるタンブラーサイズパッケージもタンブラーを意識したか、スターバックスに並んでいてもおかしくない雰囲気

 熱くなる車内に置くことを考慮して、RDP-NWV500にはバッテリーが搭載されておらず、電源は車載時はシガーソケットから、ホームステーション使用時はステーションに接続したACアダプタからとる。

 RDP-NWV500はクルマの中だけで使うものではない。付属するホームステーションに載せれば、家の中ではウォークマンのドックスピーカーとして使える。RDP-NWV500がタンブラーサイズであるおかげで、いろいろなモノが乗ったテーブルや本棚の前など、狭いスペースでも置ける。

ホームステーションに置いたところ。ウォークマン用ドックのスペーサーが2種類付く

 最近のカーオーディオはAUX端子やUSBポートを備えるものが多いが、それらのないクルマでウォークマンなどの携帯音楽プレーヤーを楽しもうと思うと、音質的に不利なFMトランスミッターを使うか、配線作業をして接続端子を着ける、ヘッドユニットを変える、ということになる。こうした面倒を廃し、いつも使っているウォークマンの音楽を、クルマでも家でも、よい音で手軽に楽しめるスピーカー、というのがRDP-NWV500のコンセプトだ。

 底面と側面にウォークマン専用端子「WM-PORT」があり、ウォークマンの音楽を再生できるほか、外部入力端子も1つ備える。側面のWM-PORTは車載時、底面のそれはホームステーションに載せるときに使う。

 2つのWM-PORTを活かした面白い機能がRDP-NWV5000にはある。側面のWM-PORTにウォークマンがつながれていればDSPが車載用に設定され、低音域が強調されるようになる。底面のWM-PORTが使われているときは家庭向けに低音を下げ、高音を上げるのだ。

 もう1つ、「インテリジェントボリューム」という気の利いた機能もある。ウォークマンでボリュームを調整すると、RDP-NWV500のアンプのゲインを変えることができる。この操作はRDP-NWV500上面のダイヤルや、付属するリモコンでもできるのだが、RDP-NWV500からウォークマンを外すと、ウォークマンはRDP-NWV500につながれる前のボリューム値を記憶していて、そちらに復帰する。クルマや家で設定した音量のまま、ウォークマン単体でヘッドホンを使うと、音が大きすぎることがあるが、インテリジェントボリュームのおかげで、そんなこともなくなるわけだ。家でもクルマでも、もちろんウォークマン単体でも使い勝手をよくする工夫がこらされているのだ。

上部に電源スイッチと、WM-PORTと外部入力の切り替えスイッチがある。外周のリングがボリューム調節側面。WM-PORTと電源端子、外部入力がある。電源端子の下の穴はバスレフポートの出口
使われているWM-PORTによってDSPの設定を変えるインテリジェントボリュームにより、ウォークマンのボリューム設定は記憶されている

指向性のないスピーカー
 タンブラーサイズを実現するため、RDP-NWV500のスピーカーのレイアウトは独特のものになっている。タンブラーの一番上にツイーターを下向きに、その下にウーファーを上向きに置いているのだ。ツイーターとウーファーの間にはディフューザーパネルが置かれ、ここから水平方向に360度全周に音を出すのだ。

 つまりこのスピーカーには指向性がない。狭い車内では音が乱反射する、という前提のもと、「クルマの中では指向性の強い音はかえってイライラする」(ソニーの遠藤純也シニアPEプロダクトコーディネーター)というのがRDP-NWV500の設計思想なのだ。

RDP-NWV500のスピーカーの配置長いバスレフポートも備える

 RDP-NWV500を「カップホルダーに置くスピーカー」にすると決まったとき、開発者は国産・外車取り混ぜて計379台のカップホルダーの位置を調査し、前席左右の間、センターコンソールボックスの位置が最も多いと結論した。

 したがってRDP-NWV500を設置する場所はセンターコンソールボックスのカップホルダーが想定されているのだが、ここでなければいけないというわけではない。

 360度に音が出るので、置く場所によって音が変わる。クルマのウインドーやドア、インストゥルメントパネルなどの近くに置けば、それらが反射板になって低音がよく聴こえるし、左右のシートの間に置けば音の抜けがよくなったように感じる。体験会ではガレージ内に置かれたマツダ・デミオの中で聴いたのだが、左右のシートの間にRDP-NWV500を置き、後席で聴くときが一番音がよい、という意見が多かったようだ。センターコンソールに置くにしても、コンソールの材質や作りでも音が変わる。車種や乗車人数に応じて最適な設置場所を見つけるのも、RDP-NWV500の楽しみの1つかもしれない。

 いずれにしろ、ドアなどに取り付けられた純正スピーカーよりも、耳に近いところで音が鳴るので、非常に音が聴こえやすいのが魅力だ。

有明PITに置かれたマツダ・デミオで試聴したセンターコンソールのカップホルダーに設置メーターバイザー上にあるソニーのPND「NAV-U」の音声をRDP-NWV500から出すこともできる。NAV-Uの音楽再生と案内音声をよりクリアに聞くことができるのだ

カテゴリーの壁を乗り越えて
 この製品、ソニーでウォークマンを手がけるパーソナルオーディオ部門と、カーオーディオ部門の合作だ。手軽さと音質を秤にかける前者と、所謂「低音命」な音作り集団である後者の溝を埋めるには時間がかかり、通常なら2~3カ月で企画立案のブレーンストーミングを済ませて設計に移るのに対し、この製品では半年ものブレーンストーミングを要したそうだ。その間を取り持った遠藤コーディネーターの苦労は想像にあまりあるが、この製品は「パーソナルオーディオとカーオーディオが分社化されていないソニーならではのコラボレーション」なのだと誇る。プロジェクト名も「コラボ」だそうだ。

RDP-NWV500はパーソナルオーディオとカーオーディオのコラボレーション作品379のクルマのカップホルダーの位置を調べた
有明PITにさりげなく置いてあった1983年式シトロエンGSAパラス。実は遠藤コーディネーターの愛車。ハイドロニューマチックシステムのオイル漏れは1度もなく、トラブルのない優等生とのこと。車内にはもちろんRDP-NWV500が

(編集部:田中真一郎)
2010年 4月 29日