SUPER GT レガシィB4マシン解析
2010年は4WDからFRへと駆動方式を変更

R&DスポーツのレガシィB4


 2009年より突如SUPER GTに参戦したR&DスポーツのレガシィB4。しかし今シーズンは2WD化するなどマシンに大きな変更が加えられ、さらに進化を続けている。5月1日、2日に開催されたSUPER GT第3戦富士で、マシンの細部撮影に加え、監督に話をうかがうことができたので、その模様をお伝えする。

 レガシィのモータースポーツとの関わりは、レガシィが登場した翌年、1990年にWRCへ参戦したのが始まり。しかしWRCで戦うにはボディーサイズが大きすぎたため、スバルはもうひと回り小さいインプレッサを開発した。1993年終盤の1000湖ラリーからインプレッサがWRCに投入され、それに伴ってレガシィはモータースポーツの前線から退いた。

 それ以来、WRCはもちろん国内モータースポーツにおいても、ラリー、ダートトライアル、ジムカーナ、スーパー耐久、そしてSUPER GTに至るまで、スバルのモータースポーツはすべてインプレッサが担ってきた。それだけに、昨年のレガシィのSUPER GTへの参戦は、関係者の間でも非常に高い関心を集めることとなった。

 今シーズンのレガシィB4は、昨年まで使用したベース車両と同様の4WDを放棄し、2WD(FR)へと変更した。その理由について、監督は「テスト走行も限られるSUPER GTでは、デフが3つもある4WDを開発、セッティングするには、要素が多すぎて時間が足りない。2WDにすれば、これまでの経験も活かして、より確実にマシンのセッティングが煮詰められるため」だと言う。

2010年シーズンはFRの2WDで勝負に出たレガシィB4

 第3戦富士でのマシンの状態はと言うと、従来あったフロントデフと、そこへつながるプロペラシャフト、そしてセンターデフ、ドライブシャフトが取り払われた状態。今後は、今までフロントデフが鎮座していたエンジン上部のスペースを活かしてフレームを見直し、剛性の向上を図り、さらには現在エンジン後方に位置するトランスミッションをリアへと移動して、トランスアクスル方式に切り替える方針だと言う。こうすることにより、4WDならではのトラクション性能は失うが、軽量化と前後重量バランスの最適化、さらに剛性アップが期待できる。

ピットでメンテナンスするレガシィB4ボンネットもサイドにダクトが追加されているエンジンルーム。大まかなレイアウトは昨年と同様だ
写真左が2WD仕様、右が去年の写真だ。バルクヘッドから伸びるV字型の補強の下あたりにあったフロントデフがなくなっている。またストラットタワーバーのような補強が追加されているエンジンルームを上から覗く。以前はエンジンの上にフロントデフがあったため、エンジンがこれほど見えることはなかった
左フロントタイヤ前にエキゾーストパイプが出るブレーキのサイズは従来のまま。フロントのドライブシャフトはなくなっている
リア側。トランクフードにあたる部分も外したところ現状はリアアクスルにはリアデフがあるが、今後はリア側にトランスミッションを配置するトランスアクスル方式にする予定コクピット
レガシィB4を駆る山野哲也選手

 昨シーズンよりレガシィB4をドライブするレーシングドライバーの山野哲也選手は2WDになったことについて「フロントデフやドライブシャフト、プロペラシャフトがなくなったことで、(昨年のマシンと比べ)フロントが軽くなって、コーナーでの鼻先の入りがよくなったと感じる。その分低速コーナーの立ち上がりでは、4WDのほうがトラクションの面でよかったと感じる部分もある」と言う。また、今シーズン、マシンの仕様がどんどん変わっていくことに対しては「不安というよりも、マシンがどうよくなっていくのか、ワクワクする気持ちのが大きい」と述べ、現在はまだまだだが、ゆくゆくは優勝争いできるところまで持って行きたいとその豊富を語った。


【お詫びと訂正】記事初出時、レガシィB4をSUPER GT初の4WD車両としていましたが、かつてインプレッサが4WD車両としてSUPER GTに参戦していました。ご迷惑をおかけした皆様にお詫びを申し上げるとともに、訂正させていただ きます。

(鈴木賢二)
2010年 5月 6日