35企業・団体が参加して「電気自動車普及協議会」を設立 3年以内に一般生活者がEVを現実的に検討・購入できる状態を目指す |
左からタジマモーターコーポレーション顧問の園部明史氏、東京大学大学院 工学系研究科特任教授の草加浩平氏、ゼロスポーツ代表取締役社長の中島徳至氏、内閣官房副長官、衆議院議員の古川元久氏、ベネッセホールディングス取締役会長の福武總一郎氏、ローソンの代表取締役社長兼CEOの新浪剛史氏、ナノオプトニクス・エナジー代表取締役社長の藤原洋氏 |
35企業・団体が参加する電気自動車(EV)の普及を目指す団体「電気自動車普及協議会」が6月29日、設立された。会長にはベネッセホールディングス取締役会長の福武總一郎氏、代表幹事にはゼロスポーツ代表取締役社長の中島徳至氏が就任した。
協議会の目的は「EVの普及促進、啓蒙活動、また電気自動車がもたらす新しい未来環境を提言、整備すること」。EV関連の研究・普及活動を行う事業者、研究機関、各種団体をネットワークでつなぐことで、情報共有を図り、現在は個々に行われている既存ガソリン車の電動化活動を支援し、同時に既存および新規自動車メーカーのEV事業への参入を促進する。
発表された活動戦略は「一般の生活者が、3年以内に電気自動車を現実的に検討・購入して街中で乗ることができる状態を目指す」とし、活動内容として「情報供給」「規格の提唱」「技術教育」「政策提言」「実証実験」「資金調達」「共同購入」の7つの作業部会を運営、それぞれの課題に対処していく。
設立に伴って発表されたスケジュールによれば、3年目となる2012年度には、協議会に500社が参加、Web登録者1500名、標準化した規格を適用する会社が100社を超え、政府への政策提言も採用され、支援ファンドの創出や共同購入・販売の実現が目標として盛り込まれている。
協議会の他の役員としては、幹事にタジマモーターコーポレーション代表取締役会長の田嶋伸博氏、ナノオプトニクス・エナジー代表取締役社長の藤原洋氏が就任する。アドバイザーは4名で、日本EVクラブ代表で自動車評論家の舘内端氏、東京大学大学院 工学系研究科特任教授の草加浩平氏、東京大学総長室アドバイザーの村沢義久氏、長崎県産業労働部政策監 EV&ITS推進担当の鈴木高宏氏。監査理事にアドライト代表 公認会計士の木村忠昭氏が就任する。
そのほか、協議会には35の企業や団体が参画、自動車関連企業、地方自治体だけでなく、コンビニエンスストアのローソンといった生活関連企業も名を連ねる。なお、現在公表されている32の参加企業・団体に大手自動車メーカーは入っていない。参加が間に合わなかったと説明され、既存自動車メーカーに対抗する協議会ではないと説明された。
アドバイザーなど会場にいた電気自動車普及協議会役員が勢揃いした | ベネッセホールディングス取締役会長の福武總一郎氏 | ゼロスポーツ代表取締役社長の中島徳至氏 |
■電気自動車の普及と低炭素社会の実現を目指す
発足の記者発表会は、東京大学の情報学環 福武ホールで開催、会長に選出されたベネッセホールディングスの福武總一郎氏は「できるだけ早く、電気自動車に関心のある、企業、個人が結集して、電気自動車の普及ならびに低炭素社会の実現に向けて、歩き出したい」と設立の狙いを語り、「新しい時代のさきがけとして、我が国が、世界に向けて華々しく良い影響を与えたい」と抱負を語った。
代表幹事となるゼロスポーツ代表取締役社長の中島徳至氏は電気自動車の産業の現状を「情報の共有・共通化ができておらず、各社が孤立した中で取り組みを進めている」と問題視、特に既存の自動車を電気自動車に改造するビジネスは、規模が小さく、補助金などの制度がなく市場から取り残されている状況と説明した。
中島氏はインターネット上の調査で改造電気自動車の購入意向は約53%と高い現実があることを挙げ「サポートや政策提言を行っていきたいと考えている」と述べた。
また、中島氏は協議会の体制についても説明、参加社による作業部会のほか、知識・技術、経験・人脈・ノウハウを元にして普及活動をサポートするアドバイザーを設置すること明らかにし、日本EVクラブ代表で自動車評論家の舘内端氏や東京大学大学院特任教授の草加浩平氏など現時点で4名のアドバイザーを発表した。
幹事となったナノオプトニクス・エナジー代表取締役社長の藤原洋氏は、ゼロスポーツ、タジマモーターコーポレーションが取り組む電気自動車関連の事業を紹介、自身が役員でもあるシムドライブは、鳥取県に電気自動車工場を設け、さらにマイクログリッドを構築、それを統合して地域のエネルギーグリッドを作り「電気自動車をコアにした地域社会を作っていきたい」と述べた。
また、協議会の参加企業代表としてローソンの代表取締役社長兼CEOの新浪剛史氏は「電気自動車がいつでも、気軽に安心して走る社会を作りたい」と話し、ローソン店舗に設置した充電ステーションで実験に参加する。ローソンでは店舗指導員の移動手段として41台の三菱自動車の「i-MiEV」を導入、新浪氏は「1200名以上の店舗指導員全員に早く電気自動車に乗ってもらいたい」と希望を述べた。
来賓として招かれた内閣官房副長官、衆議院議員の古川元久氏は「次世代自動車は政府の新長期戦略のおおきなひとつの項目」と述べ、電気自動車について「世界が直面している温暖化とか、資源の制約をブレイクスルーする大きな原動力、日本は世界にさきがけて、技術をもっている」と期待を寄せ、政府のできる限りの協力を約束した。
(正田拓也)
2010年 6月 30日