日産「2010年度 先進技術説明会」リポート【第2回:ライフ・オン・ボード】 シートの快適性を格段に向上させた2つの技術を紹介 |
日産自動車は7月27日、神奈川県横須賀市内の追浜グランドライブにおいて「2010年度 先進技術説明会」を開催した。
同社は「環境」「安全」「Life on Board」「Dynamic Performance」の4つの領域ごとに独自の先進技術を開発している。この4つの領域に基づき、今回はLife on Board(ライフ・オン・ボード)についてお伝えする。
日産自動車 技術開発本部 内外装技術開発部 田村谷誠エキスパートリーダー |
ライフ・オン・ボードの説明は、日産自動車 技術開発本部 内外装技術開発部でエキスパートリーダーを務める田村谷誠氏が行った。
ライフ・オン・ボードとは、クルマに乗ってから降りるまでのシーンにおいて、「快適に過ごしたい」「楽しみたい」といった価値をユーザーに提供することを目標にした考え方。同社では2015年までに「日産=Driving Pleasure」と認知されることを目標にした「Vision2015」を掲げ、特に「運転しやすいコクピット」「快適なキャビン」「インテリアの上質な造り」にフォーカスをあててさまざまな技術を研究・開発している。
今回の説明会では、車内において“心身を健康でよりよい状態に保つ”ことを目標にした「Health&Wellbeing」コンセプトに基づいた「コンフォタブル キャプテンシート」「クイック コンフォート シートヒーター」を中心に解説が行われた。
ライフ・オン・ボードとは | ライフ・オン・ボードのビジョンとコンセプト | 「運転しやすいコクピット」「快適なキャビン」「インテリアの上質な造り」によって商品競争力は大きく向上したと言う |
新型エルグランド |
■シートの快適性を格段に向上させた2つの技術
コンフォタブル キャプテンシートは8月に発売される新型「エルグランド」に採用されるシートで、人間工学に基づき研究・開発が行われ、身体に負担の少ない「中立姿勢」の概念を用いた。中立姿勢とは無重力状態での姿勢のことを指し、身体にもっとも負担が少なく快適な姿勢なのだと言う。
その中立姿勢を地球上で実現するため、低反発スラブウレタンを採用し、体圧を分散させる効果を持つ「3層構造クッションパッド」、オットマンとクッションを一体とし、シートクッション全体で体を支持する「クッション一体型オットマン」、骨盤部や胸部をしっかり支えることで背骨の負担を低減させる「中折れ機能付きシートバック」という3つの技術が投入された。
心身を健康に保つこと、血の巡りをよくすることによって快適なキャビンを実現している | コンフォタブル キャプテンシートの快適性を支える3つの要素 | コンフォタブル キャプテンシートは中立姿勢の概念を採用した |
クイック コンフォート シートヒーターは、「すぐに暖まる」「心地よい暖かさが続く」という特徴を持つ新開発のシートヒーターで、生理特性に基づきシーンによって温める場所を最適化した。
田村谷氏によると、人間は温かさを感じるツボを持っていて、そのツボは大腿部やお尻なのだと言う。この2個所をすばやく温めることで、寒い冬にクルマに乗った際でも「暖かい」と感じるそうだ。ところが暖かさと快適さの感じ方は部位によって異なり、「いつまでも大腿部とお尻を温めていると不快に感じる」と言い、そのためシートヒーターの使用開始から5分程度経過した後に腰と大腿部を温めることで、快適感を持続させるという工夫がなされる。
この快適感について効果検証を行ったところ、「血の巡りがよいと人間は快適に感じるということが分かった」(田村谷氏)と言う。検証では一般的なシートを使った基準姿勢、オットマンを使った姿勢、オットマン+中折れ機能付きシートを使った姿勢の3パターンで心臓が血を吐き出す量(1回拍出量)を計測。「心臓が血を吐き出す量が多いということは、その分血の巡りがよいこと」だと田村谷氏は言い、計測の結果、オットマン+中折れ機能付きシートを使った姿勢での拍出量がもっとも多かったと言う。さらに、クイック コンフォート シートヒーターと従来型のシートヒーターでも拍出量を比較したところ、従来型のシートヒーターを上回る結果が出たそうだ。
背中、腰、尻、大腿をすばやく温めるクイック コンフォート シートヒーター | 暖かさと快適感の感じ方は部位によって異なるため、シーンによって温める場所を最適化 | 血の巡りをよくする効果検証 |
目に入る光の量を減らすことを目的に開発されたマイクログレイン加工技術 |
■高い質感を演出するマイクログレイン加工技術
そのほか、新型マーチのインテリアで採用される、マイクログレイン加工技術についての紹介もあった。
一般的に質感を表現する際に「ツヤ」という言葉が使われるが、実はツヤが少ないほうが人間は質感が高いと感じるのだと言う。このツヤは物体に光があたり、物体から反射した光を介して目に入った光の総量によって脳に知覚されるそうだ。そこで目に入る光の量を減らすことを目的に、マイクログレインと呼ばれる加工技術を開発した。
このマイクログレイン技術によって、インストゥルメントパネルの表面に反射した光は拡散され、高品質感を実現。実際にはプラスチックが素材に用いられているが、あたかも表皮がかったような見た目に仕上げることができたと言う。
8月に発表予定の新型エルグランドに搭載されるインテリジェントエアコンも展示されていた。2003年にK12マーチに搭載されたインテリジェントエアコンよりも10倍のイオンを発生させると言い、さらに美肌効果や肌保湿効果も有すると言う |
(編集部:小林 隆)
2010年 7月 29日