ルノー・ジャポン、8月までの販売台数が昨年実績を上回る好調
絞り込み戦略が奏功、メガーヌ、ゴルディーニ、ウインドなども導入

大極COO。クルマは1日に発表されたルーテシア ルノー・スポール エディションリミテ ヴァンタン



 ルノー・ジャポンは9月3日、都内で会見を開き、2010年1~8月の販売台数が、2009年通年の台数を上回ったと、同社の大極司COOが発表した。

 2010年1~8月の登録台数は1791台。2009年1~12月は1755台で、前年比160%以上となった。

 2009年は金融危機の影響で需要が大きく落ち込んだが、2009年9月に発表した新型カングーと、同10月に発表したルーテシア ルノー・スポールが牽引し、台数増に結びついた。カングーとルーテシア ルノー・スポールは同社登録台数の7割を占めると言う。

 大極COOは「この2台はたまたまヒットしたとは考えていない」と、成功の要因を同社の「FTS(フレンチタッチ、トレンディ、スポーツ)戦略」にあるとした。これは同社のラインアップ構成から販売、広告などのコミュニケーションまでをFTSの3要素に絞り込み、ニッチな客層を捉える戦略だが、これが功を奏して空前のエコカーブームの中でも「特長のあるクルマを求めるニーズを捕らえることができた」というのが同社の分析だ。

 その例として挙げられたのは、この6月に90台限定で販売されたカングーの特別仕様車「クルール」だ。限定数の半分がMTであるにも関わらず、「オランジュ プロヴァンス」「ベール パリ」「ブルー フランス」のフランスらしい色遣いが支持され、2週間で完売したと言う。

 また5月に静岡県裾野市で開催したカングーユーザーのミーティング「カングージャンボリー」は、大雨にも関わらず240台600名が参加し、「熱い心を持った、根強いお客さんがいることが分かった」と言う。

 ルノー・スポールモデルの日本での販売台数は、世界的に見ると仏、英に次ぐという数。「エコだけでなく、スポーツドライビングやモータースポーツを楽しむところにもお客様はまだまだいる」と、こちらもニッチなマーケットを取り込んだ形だ。

 このようなニッチ市場でのトップを目指す戦略は、「減税で左右されるお客様よりも、指名買いのお客様にフォーカスしてきた」ことでもあり、エコカー減税などの不利の影響は避けられたと言う。

大雨にも関わらず、カングージャンボリーには240台が集結したカングー クルール

 同社はこのFTS戦略を継続し、強化していく構え。ルノー・スポールについては、モータースポーツや歴史などの教育を受けたセールスマンとサービスマンを、「ルノー・スポール スペシャリストディーラー」に配置。同社の全66販売店のうち、14店舗がスペシャリストディーラーとなっている。

 ラインアップでは、年末から来年にかけて、ルーテシアより1クラス上の「メガーヌ」を導入する。先代メガーヌはセンセーショナルなスタイリングが受けてヒットしたが、その勢いが続かなかった、いわば一発屋に終わったことを反省し、カングー、ルーテシアに続く3本目の柱として、息の長いモデルに仕立てたいと言う。

 さらに時期は未定ながら、コンパクトなオープンモデル「ウインド」や、ルーテシア、トゥインゴの2つめのスポーティーブランド「ゴルディーニ」の導入も決まっており、「トレンディな製品はすべて導入する」と言う。

 「2009年は悪すぎたので、2008年を比較の対象としたい」ということで、同社の今年の目標は2008年の実績である2252台を上回ること。8月までの実績が1800台近いことを考えると控えめな数字だ。

 その理由はエコカー補助金の終了。ニッチトップ戦略を採っているので「影響は軽微」と読むものの、「国産車の販売は3割減るという予測もある。全体需要が心理的にダウンすることもあるだろう。コンサバティブに考えざるを得ない」。

ゴルディーニ・ルノー・スポール(左)やウィンドの導入が予定されている

(編集部:田中真一郎)
2010年 9月 3日