【ラリージャパン2010】 接戦続きのラリージャパン、制したのはセバスチャン・オジェ 期待のペター・ソルベルグはサスペンショントラブルで2位に後退 |
9月9日~12日に北海道の道央地区を舞台に争われたWRC(世界ラリー選手権)第10戦ラリージャパンに、ついに決着が付いた。僅差でせめぎ合った上位勢のなか、最終日に見事逆転優勝したのは、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組だ。2位にはペター・ソルベルグ/クリス・パータソン組、3位にはヤリ-マティ・ラトバラ/ミイカ・アンティラ組という結果になった。シリーズランキングトップのセバスチャン・ローブはふるわず5位に終わったが、ポイント10を獲得し、ランキングトップの座は維持した。
■2日間にわたって行われたDay1
通常3日間で行われるWRCだが、ラリージャパンではDay1のプレイベント的な形で、開幕日の9日にSS1とSS2が行われた。SS1とSS2が行われたのは札幌ドームの特設コース。2台同時コースインできるレイアウトで、イン側とアウト側を入れ替え、常に2回連続して開催される。SS2終了時点でトップに付いたのはセバスチャン・オジェだった。
そして翌日のDay1。この日最初のSSとなるSS3イワンケロング1で、体調を崩し熱を出していると言うペタ-・ソルベルグがステージベストをたたき出した。2位のセバスチャン・オジェは3.2秒差に食いついたものの、3位以降とは11秒もの差を付けた。これにより前日までで8位だったペター・ソルベルグはオジェの2.5秒差の2位にジャンプアップした。
ペターの勢いは続くSS4シコツ1でもとどまることを知らず、ここでもステージベストをマーク。総合タイムでトップだったオジェが11秒もタイムを落としたため、ここでペターが総合でもトップに躍り出た。この時点で総合タイムでは2位のオジェに8.5秒、3位のダニ・ソルドとは10.4秒もの差を付けていた。
SS4では早くも大きなアクシデントがあった。日本人ドライバーとしてPWRCの最前線で活躍する新井敏弘だ。母国ラリージャパンでの活躍に期待が掛かったが、ロールオーバーしてしまい、まさかのリタイヤ。マシンは修復不可能な状態で、Day1で早くも姿を消すこととなった。
SS7シコツでベストラップをマークしたのは、ラリージャパンで2度の優勝経験を持つミッコ・ヒルボネン。これで総合タイムでオジェを抜き、ミッコ・ヒルボネンが2位に付ける、トップのペターとの差は10秒近くあいたままだ。
Day1では先頭走者となったローブ。そのせいもあってかタイムは伸びず | シコツ1でトップに躍り出たペター | ソルドはライトポッドを付けて走行 |
山奥の観戦ポイントにも関わらず多くのファンが訪れていた | ||
リエゾンで応援するのもラリーの楽しみ方の一つ。信号待ちでサインをもらっている人もいた |
その後もペターとヒルボネンの差はほとんど変わらず1位ペター・ソルベルグ、2位ミッコ・ヒルボネン、3位セバスチャン・オジェとなった。
ラリージャパンまでで圧倒的な強さを見せているセバスチャン・ローブは、大会前に「トップを取ることよりリタイヤせずにポイントを抑えることが大事」と述べていたが、マシンのセッティングが決まらずDay1を終えたタイムはペターの54.5秒差の6位。「今日一日はとても疲れた、あれ以上の走りはできなかった」と述べている。
■上位5台による接戦が続くDay2
Day2では、走行する順番が入れ替わる。前日までの総合トップであるペター・ソルベルグが先頭を走ることになった。ラリーにおいて最初に走るのは、コース上に浮いた砂利をはける「掃除役」として不利になる。しかしそれでもペターの好調は止まらず、SS11ニカラ・ショートでもステージベストをマーク。総合2位、3位に付けるヒルボネンとオジェが大きくタイムを落としたため、総合タイムでは2位と21秒以上の差を付けることとなった。さらにマシュー・ウィルソンがコースアウトしリタイヤ、翌日からのリスタートとなった。
Day2 先頭走者のペター | 2番走者のヒルボネン | 3番手オジェ |
4番手ラトバラ | 5番手ソルド | 6番手ローブ |
7番手はペターの実兄ヘニング・ソルベルグ | 8番手マシュー・ウィルソンはDay2最初のSSでコースアウトし動けなくなってリタイヤ | 9番手フェデリコ・ビラグラ |
10番手はF1から転身したキミ・ライコネン | この日予定されていたSUPER GTが中止になったため、山野哲也選手も会場を訪れていた |
続くSS12ではペターがタイムを落としてしまう。一方ジャンプアップしたのはヤリ-マティ・ラトバラで、総合でも2位に躍り出た。さらにヒルボネンをオジェが抜き、総合3位はオジェ。
やはり掃除屋はきついのか、SS13はわずか9.55kmのコースながらペターのタイムはトップの4秒落ち。さらにフライングスタートのペナルティ10秒を課せられ3位へと順位を後退させてしまう。
Day2も終盤、札幌ドームのスーパーSSのみを残したSS16キナ2。総合1位のラトバラはSS15からの駆動系のトラブルにより大きくタイムを落としてしまう。さらに2位のオジェもDay3での先頭走者を避けるため、あえてゆっくり走って時間調整。これにより1位と2位にペター、ヒルボネンが押し出される形となった。
スーパーSSではペターとヒルボネンが1本ずつベストをマークし、Day2はペター、ヒルボネン、オジェの順で並んだ。ラトバラはさらに順位を落とし5位。代わりにダニ・ソルドが4位で2日目を終えた。
■上位3台が接戦となったDay3
上位3台が5.4秒差に収まる混戦状態で迎えたDay3。先頭走者はDay2に引き続きペター・ソルベルグ。Day1、Day2と比べると距離は短いが、途中のサービスがないため、トラブルが起きればそれを引きずることになる。
Day3最初のSS、SS19ビサン1では、Day2を8位で終えたキミ・ライコネンがリタイヤしてしまう。辛くも1位の座を守ったペターであったが、続くSS20ナエカワ1でサスペンションにトラブルを抱えオジェに2.7秒差で逆転を許してしまった。3位にはペターの21.5秒差でソルドがジャンプアップし、その後ろ5.2秒差でラトバラ、そのわずか0.2秒差にヒルボネン、さらに17.2秒差でローブが続く。
Day3はサービスでのメンテナンスができないため、ペターはサスペンションのトラブルを抱えたまま走ることを余儀なくされる。タイムが伸びずオジェとの差は少しずつだが広がっていく。さらにヒルボネンがSS22ビサン2でエンジンストール、SS23ナエカワ2でブレーキにトラブルを抱え、ローブへ5位の座を明け渡すこととなった。
そしてラリージャパン最後の舞台となる札幌ドームスーパーSS。多くのファンが見守るなか、オジェとペターの一騎打ち。ペターにとっては最後の逆転のチャンスであったが、オジェが見事逃げ切って今季2勝目を上げた。
オジェとペターの最後の一騎打ち。オジェが見事に逃げ切った | ||
3位争いはラトバラ対ソルド | 5位争いはローブ対ヒルボネン |
■最終リザルト
順位 | Car No | ドライバー | コドライバー | エントラント | トータルタイム |
1 | 2 | セバスチャン・オジェ | ジュリアン・イングラシア | シトロエン・トタル・ワールドラリーチーム | 3:10:26.4 |
2 | 11 | ペター・ソルベルグ | クリス・パターソン | ペター・ソルベルグ・ワールドラリーチーム | 3:10:32.1 |
3 | 4 | ヤリ-マティ・ラトバラ | ミイカ・アンティラ | BPフォード・アブダビ・ワールドラリーチーム | 3:10:52.4 |
4 | 7 | ダニ・ソルド | ディエゴ・バレホ | シトロエン・ジュニア・チーム | 3:11:01.6 |
5 | 1 | セバスチャン・ローブ | ダニエル・エレナ | シトロエン・トタル・ワールドラリーチーム | 3:11:19.7 |
6 | 3 | ミッコ・ヒルボネン | ヤルモ・レーティネン | BPフォード・アブダビ・ワールドラリーチーム | 3:11:39.9 |
7 | 6 | ヘニング・ソルベルグ | イルカ・ミノア | ストバート・M-スポーツ・フォード・ラリーチーム | 3:13:29.5 |
8 | 9 | フェデリコ・ビラグラ | ホルヘ・ペレス・コンパンク | ミュンヒス・フォード・ワールドラリーチーム | 3:20:44.3 |
優勝はシトロエン・トタル・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組 | 2位はペター・ソルベルグ・ワールドラリーチームのペター・ソルベルグ/クリス・パターソン組 | 3位はBPフォード・アブダビ・ワールドラリーチームのヤリ-マティ・ラトバラ/ミイカ・アンティラ組 |
シャンパンファイトも行われた |
(瀬戸 学/ Photo:安田 剛・瀬戸 学)
2010年 9月 14日