ブリヂストン、3Dヘルムホルツ型消音パターン採用フラッグシップタイヤ「REGNO GR-XT」【説明会編】 「すべての技術と情熱を結集した製品」 |
ブリヂストンのフラッグシップタイヤ「REGNO GR-XT(レグノ ジーアール・エックスティー)」。2011年2月1日より、185/70 R14 88H~245/50 R18 100Wの30サイズが順次発売される。REGNOブランドのタイヤはいずれも静粛性と乗り心地、そしてハンドリング性能を高次元で追求したものとなるが、GR-XTはその中でもトップに位置する乗用車向けの「GR-9000」の後継製品として登場する。
このGR-XTでは、GR-9000に比べ転がり抵抗を20%低減。REGNOシリーズ初のラベリング制度対応低燃費タイヤとなったほか、新たな消音タイヤパターンを採用することで、さらなる静粛性を実現している。
GR-XTの説明会&試乗会が同社のテストコースである「ブリヂストンプルービンググランド」(栃木県那須塩原市)で開催されたので、前編では説明会の模様を【説明会編】として、後編ではモータージャーナリストの岡本幸一郎氏による試乗記を【試乗編】としてお届けする。
消費財タイヤマーケティング部 部長 真鍋利明氏 |
■30年の歴史を誇るREGNOシリーズ
REGNO GR-XTの概要については、同社 消費財タイヤマーケティング部 部長 真鍋利明氏より説明が行われた。真鍋氏は「GR-XTはREGNO発売30周年にあたる、2011年に発売する」と言い、「ブリヂストンのすべての技術と情熱を結集した製品」と紹介。
初代REGNOとなるGR-01は、高級ラジアルタイヤとして、ハイグリップタイヤに代表される高運動性だけでなく、静粛性や乗り心地といった快適性との両立を追求した製品として1981年に発売された。その方向性がユーザーから支持され、高級車向けタイヤとして代表的な製品となっている。
GR-XTでは、これまでGR-xxxxと数字で表してきた製品名を廃し、XTの英文表記に。この「XT」はローマ数字の「X(10)」と英文の「T(Thousand:1000」を意味し、乗算で9000の後継を意味する1万となる。また、「Three:3」と「X」で、発売から30年を意味すると言う。
初代REGNOは1981年の登場 | ブリヂストンのフラッグシップタイヤとして、静粛性や乗り心地、運動性能の高い次元での両立を図るための進化をしてきた |
GR-XTはREGNOの30周年記念モデルにあたり、同社の持つ技術が注ぎ込まれている | 2011年発売で全30サイズを用意する |
GR-XTのラベリング制度表示。転がり抵抗が小さくなったことで、低燃費タイヤとなった |
GR-9000からの進化ポイントは、静粛性と環境性能の向上。静粛性に関してはさまざまな路面での音圧低減と、心地よい音色の追求を行い、環境性能では転がり抵抗の低減を実現した。約20%の転がり抵抗低減により、低燃費タイヤのラベリング制度の転がり抵抗性能は「A」を実現。ウェットグリップ性能に関しては「b」となり、これは同社の主力エコタイヤである「ECOPIA EX10(エコピア イーエックステン)」と同じ(EX10では50サイズ中47サイズがA-b)ものになる。
同社では転がり抵抗性能「A」以上、ウェットグリップ性能「d」以上となったタイヤには「ECOPIA」ワッペンをタイヤのサイドウォールに表記していくと言い、このGR-XTもECOPIAワッペンが刻まれる。
ノイズ抑制を図ったほか、音質もコントロールされている | 静粛性の評価は、東京大学 生産技術研究所 応用音響工学研究室と共同研究を行った | 転がり抵抗を20%低減したことによりエコタイヤとなった |
GR-XTのサイドウォール。イン/アウト非対称形状を採用する | エコタイヤであることを示す、ECOPIAワッペン | イン側のサイドウォールには、振動抑制のためのひし形のパターンを刻む |
■さまざまな路面に対応する静粛性技術
転がり抵抗を低減し、エコタイヤとなったGR-XTだが、REGNOのブランドを冠する以上、開発の主眼は静粛性をより高めることに置かれている。GR-XTでは、「路面が変わっても不快にならないこと」を目指しての開発が行われた。
それを実現するために新たに「3Dノイズ抑制グルーブ」として採り入れられたのが、ヘルムホルツ型消音器をタイヤパターンに刻むこと。GR-9000では管の長さで共鳴をコントロールし消音を行うサイドブランチ型消音器を採り入れていたが、GR-XTでは気室と頸部の体積比で共鳴をコントロールする3Dヘルムホルツ型消音器を採用。ヘルムホルツ型の消音器であれば、よりコンパクトな形状となるため、より多くの数をタイヤパターン上に設置できる。
実際GR-9000では、4本の溝のうち、2本の溝に対して消音器パターンが刻まれていたが、GR-XTでは4本の溝それぞれに3Dヘルムホルツ型消音器が刻まれている。
路面の違いによるノイズを分析。低い周波数帯ではサスペンションを伝播して伝わるロードノイズ低減が、高い周波数帯では車体を透過する気柱管共鳴の低減が有効 | ロードノイズを低減するために、3Dノイズカットデザインや偏芯構造を採用 | 気柱管共鳴低減のために、3Dヘルムホルツ型消音器をパターンに刻んだ |
GR-9000のトレッドパターン。左がアウト側。アウト側2本の溝に対して、サイドブランチ型消音器が刻まれている | |
GR-XTのトレッドパターン。同じく左がアウト側。4本の溝それぞれに3Dヘルムホルツ型消音器が刻まれる。コンパクトなデザインとなったことで、より多数の消音器を設置できた |
これら消音器の効果により、高周波(630~830Hz)での音圧を1.4dB(A)低減できたとし、消音効果の安定性も向上。劣化が進んだアスファルト路面、舗装後のスムーズ路面、高速道路での採用が進んでいる高機能舗装路面のいずれにおいても音圧を低減している。
また、音質に関するチューニングも行われており、東京大学 生産技術研究所 応用音響工学研究室との共同研究による音の官能評価では、「静かな」「快い」「滑らかな」「やわらかい」「高級感がある」のすべての項目でGR-9000より好ましい音になったとの結果を提示した。
このGR-XTではGR-9000同様、操縦安定性を向上させる「サイドウォールの非対称形状」、直進性を向上させる「非対称パターン」、パターンノイズを低減させる「サイレントACブロック」などが採り入れられており、ドライ性能やウェット性能、運動性能をGR-9000と同等としながら、転がり抵抗の低減と、静粛性の向上を実現した。
後編では、一般道、高速道でのGR-XT装着車の試乗や、ブリヂストンプルービンググランドの内周路や特殊舗装路を使ってのGR-XTとGR-9000の比較試乗の模様をお届けする。
(編集部:谷川 潔)
2010年 12月 24日