パイオニア、ARスカウターモード搭載の新型「サイバーナビ」発表会
新型「エアーナビ」、両面駆動HVTスピーカーも展示

新型「サイバーナビ」。1DIN+1DINの「AVIC-VH09CS」

2011年5月9日発表



 パイオニアは5月9日、カーナビ・カーAVブランドのカロッツェリアの新製品として、ARスカウターモード搭載の新型「サイバーナビ」、自車位置精度を向上させ7インチモデルを追加した新型「エアーナビ」、両面駆動HVTスピーカーなどを発表。都内において、それら新製品の発表会を開催した。それぞれの新製品の詳細については、関連記事を参照していただき、本記事では発表会の模様に絞ってお届けする。

パイオニア 常務執行役員 カーエレクトロニクス事業担当 黒崎正謙氏

 発表会の冒頭、同社常務執行役員 カーエレクトロニクス事業担当の黒崎正謙氏は、同社の売上げの中でカーエレクトロニクス関連の事業が6割を占めるメイン事業であることを紹介。カーエレクトロニクス関連の施策としてカーナビの新規ビジネスモデルを構築していくと言う。

 その例として挙げられたのは、先日製品発表が行われたNTTドコモとの協業製品カロッツェリア スマートフォンリンク ナビクレイドル「SPX-SC01」や、「ネットワークビジョンHUD(ヘッドアップディスプレイ)」、電気自動車向けサウンドシステム「Music EV」など。また、中国市場においては上海汽車とジョイントベンチャーによるカーテレマティクス事業を行っており、新興国市場ではボリュームゾーンに競争力のある商品を投入し、北米や欧州、日本などの既存市場ではネットワークとのリンクを強化した新コンセプト商品を投入していくと言う。


カーエレクトロニクス事業における施策市販カーエレクトロニクスでは、ボリュームゾーンに製品を導入するとともに、成熟市場には新コンセプト商品を投入していく国内カーナビ市場の推移。今年は地デジ買い換え需要も見込んでいる
新コンセプト商品として、新型「サイバーナビ」を投入新型「エアーナビ」やHVT駆動方式採用のスピーカーも発表

 今回発表された、新型「サイバーナビ」は、その新コンセプト商品にあたり、「成熟した市場には、新しいソリューションを提供することが大切と考える。(この製品によって)市場を活性化していく」と紹介。新型サイバーナビは、AR(拡張現実)機能を利用した「ARスカウターモード」、地図に道のない個所でも走行すると道路として認識する「ロードクリエイター」、ネットワーク連携で情報を取得する「オンライン/フリーワード検索」などが特徴となっており、とくに実写映像と組み合わせてナビゲーションを行うARスカウターモードは、カーナビとして革新的な機能となっている。

 この新型サイバーナビについての機能紹介は、ビデオ映像を交える形で、カー市販事業部 マルチメディア事業企画部 企画1課の枝久保隆之氏から行われた。


カー市販事業部 マルチメディア事業企画部 企画1課 枝久保隆之氏

リアルとバーチャルの融合「ARスカウターモード」
 新型サイバーナビは、1DIN+1DINタイプの「AVIC-VH09CS」「AVIC-VH09」、2DINタイプの「AVIC-ZH09CS」「AVIC-ZH09」の4製品があり、いずれも基本機能は同様のものになる。ARスカウターモードは、約31万画素のCMOSイメージセンサーと画像解析ユニットからなる「クルーズスカウターユニット ND-CS1」を接続することで実現し、CS型番の付く、AVIC-VH09CS、AVIC-ZH09CSには、購入時から同梱されている。


AVIC-VH09CS下部の1DINユニット内には、SDHCカードスロットやminiB-CASカードスロットを装備する。音楽CDやDVDのプレイヤー部は、上部の1DINユニットにあるAVIC-VH09CSの背面
2DINタイプのAVIC-ZH09CSフラップオープン時。DVDスロット、SDHCカードスロットなどが見えるAVIC-ZH09CSの背面
クルーズスカウターユニット ND-CS1。右はカメラ部フロントウインドー内側に取り付けたカメラ部を、車外から見たところフロントウインドーを室内側から

 このARスカウターモードは、画面の左側には実写映像を、右側には地図画面を表示し、ルート案内や車線情報、3Dランドマークを実写映像にオーバーレイで描画。先行車を認識することで、車間距離情報を中央部に表示する。

 枝久保氏によると、「車間距離機能は渋滞の発生を抑制するためのもの」と言い、適切な車間距離を取ることで、交通渋滞の発生を防ぎ、全体のエコ走行に寄与する。この車間に関しては、埼玉県警などで行っている「0102(ゼロイチゼロニ)運動」と、渋滞の研究で知られる東京大学の西成活裕教授の研究結果をもとに、車間時間「2秒」を推奨車間距離として設定しており、2秒以上の車間を取ることで無駄なブレーキ操作を抑制することができると言う。

 カメラユニットを使うため、夜間やトンネル内での認識が気になるところだが、デモ映像においては見事に先行車を認識している様子が紹介された。

トンネル内で先行車を認識する様子。中央部には車間距離が26mと表示されている実際の風景と、ARスカウターモードによる画面。ARスカウターモードの画面では、上方にルート情報や車線情報などが表示されている
高速道路走行においては車線も認識。車線をまたぐと、車線上が紫色に変わり警告を行う車線内を走っているので、車線は緑の表示
従来の3D画面との比較。バーチャルとリアルを高次元で融合すると言うランドマークなども画面内に3Dオブジェクトで描かれる赤信号から青信号への変化も検知し、先行車が発進すると前方確認をうながす表示が現れる
車間については、埼玉県警などが提唱する車間時間、東大の西成教授による実験結果にもとづいて設定車間インジケーター表示の詳細。高速道路と一般道路で推奨車間距離のゾーンが切り替わるARスカウターモードを実現するクルーズスカウターユニット
ユニットはドライブレコーダー機能も持ち、パソコンでの映像再生が可能地図にない道も、一度走行を行うと新規に道路が地図上に現れる。ルート探索にも使える新型サイバーナビで採用されたセントラルメニュー
操作の先を見通せるような工夫がされている新型サイバーナビでは、データ通信専用モジュール同梱モデルも用意される。最大3年間月額費用、通信契約が不要通信機能を利用して、駐車場満空情報、ガソリン価格情報などを取得できる

カー市販事業部 マルチメディア事業企画部 企画1課 千葉隆夫氏

7インチンモデルが追加された新型「エアーナビ」
 新型エアーナビに関しては、カー市販事業部 マルチメディア事業企画部 企画1課の千葉隆夫氏が説明。新型エアーナビは、「地図が新しい」「渋滞に強い」を前面に押し出したものとなり、7V型ワイドVGAワンセグモデルの「AVIC-T99」を追加したほか、5.8V型ワイドVGAワンセグ「AVIC-T77」、4.8V型ワイドVGAワンセグ「AVIC-T55」をラインアップ。


7V型ワイドVGAワンセグ「AVIC-T99」5.8V型ワイドVGAワンセグ「AVIC-T77」4.8V型ワイドVGAワンセグ「AVIC-T55」
3台並んでの大きさ比較。7V型ワイドが大きな画面であることが分かるAVIC-T99の側面。microSDカードスロットや電源スイッチなどが並ぶ

 フラッシュメモリーは8GBから16GBに強化され、データ量を増やしたほか、自立センサーのソフトウェアを作り直して、自車位置精度の向上を実現したと言う。測位においては、1秒間に5回測位する「5Hz」測位の導入、また、新規アルゴリズムの導入により、トンネルや地下駐車場での走行精度も向上している。

新型「エアーナビ」のコンセプト4.8V型から7V型まで3モデルをラインアップ自立センサーのソフトウェアを作り直すなどして、自車位置精度を向上
渋滞予測データをあらかじめ収録しており、同社のプローブデータであるスマートループを受信しなくとも、渋滞を予測したルート設定を行うエアーナビは地図更新を毎月行うことも特徴。製品発売月から3年間、追加費用なしで更新を行える

カー市販事業部 オーディオ事業企画部 企画2課 松田完一氏

HVT方式を両面に採用
 両面駆動HVT(Horizontal-Vertical Transforming)方式を採用したスピーカーについては、カー市販事業部 オーディオ事業企画部 企画2課の松田完一氏がその特徴を紹介。すでに同社は、従来、垂直方向に駆動していたボイスコイルを、水平方向に駆動するフラットなコイルとすることで、薄型のスタイルを実現したHVTスピーカー「TS-STH1000」を発売しているが、TS-STH1000はダブルモーター片面単一振動板を採用。新たに発表された2ウェイサテライトスピーカー「TS-STH700」、2ウェイパワードAVセンタースピーカー「TS-CH700A」は、シングルモーター両面振動板を採用。

 TS-STH1000と比べると、駆動力は小さくなるものの、小型化かつ、指向性も無指向性となり、取り付けの自由度が上がる。サテライトスピーカーのTS-STH700では、さらに取り付けの自由度を向上させるため、ボールジョイント取り付け金具を採用したほか、センタースピーカーのTS-CH700Aは、両面振動板となることでユニットの振動を抑制でき、ダッシュボード上への取り付け時に発生しがちな不要振動(ビビリ音)を防ぎやすくなった。


2ウェイサテライトスピーカー「TS-STH700」TS-STH700の取り付けイメージ。サイドに青色LEDのイルミネーションが組み込まれている2ウェイパワードAVセンタースピーカー「TS-CH700A」
HVT方式と他の方式の指向性特性比較。HVT方式の円が丸くなっているのは、無指向であることを示しているHVT方式の4種類の形態。現時点はダブルモーター片面駆動と、今回発売された、両面シングルモーター駆動が製品化されているHVTスピーカーの新製品と同時発表された、21cm×13cmパワードサブウーファー「TS-WX110A」

 発表会後、サイバーナビ装着車による15分程度の同乗走行が行われた。都内の道路をわずかの時間走行する程度の体験だったが、眼前の風景とカーナビ内のAR画面の連動は新鮮な体験で、まったく新しいカーナビの世界を見せてくれる。とくに、トラックによって隠れているコンビニエンスストアのランドマークが描画されるなどのARスカウターモード表示は、見えない風景も描き出す、カーナビの進化を体感できるものだった。

同乗試乗時の画面。ルートが分かりやすくAR表示されている先方車両を捕捉。車間距離は39mと表示されている交差点左折時の画面。正面のトラックのコンテナ部にランドマークが描かれていた

(編集部:谷川 潔)
2011年 5月 10日