ホンダ、新型高膨張比エンジン「EXlink」搭載コージェネ機器などの説明会
「Honda Home Power Generation」

Honda Home Power Generation会場に展示されたHonda Smart Home System実証実験用のコージェネレーションシステム

2011年7月13日開催



 本田技研工業は7月13日、「Honda Home Power Generation」と題した汎用事業に関する説明会を報道陣向けに開催した。ホンダは、二輪事業、四輪事業、汎用事業およびその他事業、金融サービス事業の4つの事業セグメントを展開している。Honda Home Power Generationでは、汎用事業で手がけているコージェネレーションシステム、ホンダの関連会社であるホンダソルテックで手がける太陽電池事業の現状の説明が行われた。

Honda Smart Home Systemで用いられる「スマートイーミックスマネージャー」。電力のマネジメントを行う


本田技研工業 取締役 汎用事業本部 本部長 山田琢二氏

「子供たちに青空を残したい」という思い
 冒頭挨拶に立った本田技研工業 取締役 汎用事業本部 本部長 山田琢二氏は、ホンダの汎用機器開発の歴史に触れ、「汎用機事業は、農村や漁村で過酷な労働を行っていた人たちを『技術で幸せにしたい』という創立者 本田宗一郎の思いが原点」と紹介。1953年に農機用エンジンを発売し、現在は汎用エンジン、船外機、発電用エンジン、耕運機など幅広いラインアップを持つ。

 山田氏は「エネルギーを創出する分野に積極的に取り組む。家産家消で低炭素社会を実現する」とし、新型ガスエンジンによるコージェネレーションユニット、同社独自の技術を使ったCIGS薄膜太陽電池などにより電気を消費する家庭において発電を行うことで、CO2排出量を削減。効率のよい社会の実現を目指していく。

 その実証実験として、新型ガスエンジンによるコージェネレーションユニットや、CIGS薄膜太陽電池、蓄電を行うホームバッテリーユニットを組み合わせた戸建住宅「Honda Smart Home System」を、さいたま市の「E-KIZUNA Project」の一環として来春までに開設。実証実験を行っていく。

 ホンダは2020年までにCO2排出量を2000年比で30%低減する意思表明として「BLUE SKIES FOR OUR CHILDREN」というグローバル環境スローガンを掲げている。これは、1970年代最も厳しい排出ガス規制とされた米国マスキー法のクリアにチャレンジした技術者の「子供たちに青空を残したい」という思いがそのもととなっている。Honda Smart Home Systemのパッケージとしての販売は、2015年を目処にしていると語った。

汎用事業の原点ホンダの汎用事業製品発電ユニットとなる家庭用ガスエンジンコージェネユニットと、CIGS太陽電池
さいたま市で「E-KIZUNA Project」を実施Honda Smart Home Systemの構成グローバル環境スローガン「BLUE SKIES FOR OUR CHILDREN」

本田技術研究所 汎用R&Dセンター 新型家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニット開発責任者 戸川一宏氏

エネルギー効率を改善した新型高膨張比エンジン「EXlink」
 新型ガスエンジンEXlinkによるコージェネレーションユニット「MCHP 1.0 K2」の解説は、本田技術研究所 汎用R&Dセンター 新型家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニット開発責任者 戸川一宏氏より行われた。

 戸川氏はエンジンのエネルギー損失について触れ、燃料エネルギーから取り出せるパワートレイン出力が25%であるのに対し、75%が熱に変換されていると言う。一方、家庭内エネルギー消費の約6割は熱エネルギーを利用しており、ガスエンジンコージェネから発生する熱を回収し利用することで、高効率な発電環境を実現できると言う。


左側のユニットが新型ガスエンジンコージェネレーションユニット「MCHP 1.0 K2」。右は熱を活用するノーリツ製の給湯ユニット
MCHP 1.0 K2のスケルトンモデル。中央にEXlinkエンジンが搭載されているEXlinkエンジンの左にあるのが排気熱交換器
家庭用エネルギー消費の動向。ここでのCO2排出量を抑えることができるパワートレインでは、燃料エネルギーの75%が熱となっている家庭のエネルギー消費の約6割は熱エネルギー
コージェネシステムで、電気を使う場所でエネルギーを作り、効率的に利用。熱エネルギーも利用できる開発の歴史ガスエンジンコージェネの構成

 MCHP 1.0 K2では、発電を行うガスエンジンにた新型ガスエンジン「EXlink」を搭載。このEXlinkエンジンは、通常のエンジンでは圧縮比=膨張比となるところを、独自のリンク機構を採用したことで圧縮比<膨張比を実現。通常タイプのエンジンに比べ熱効率を改善。いわゆるアトキンソンサイクルエンジンとなるが、吸気バルブの早閉じ、遅閉じによって実現するミラーサイクルではなく、機械的なリンク機構によって実現しているのがポイント。

 コンロッド下部に三角形状のトリゴナルリンクを設け、コンロッド、クランクシャフト、スイングロッドをトリゴナルリンクの頂点に接続。スイングロッドはエキセントリックシャフトにつながっており、エキセントリックシャフトがクランクシャフトの1/2で回転することで、吸気行程では110cc、膨張行程では163ccの容積を実現している。これにより、圧縮比はノッキングを回避できる12.2としながら、膨張比を17.6にすることができた。

EXlinkエンジンの上死点EXlinkエンジンの下死点。青い△は吸気時、赤い△は膨張時EXlinkエンジンのマルチリンク機構
EXlinkエンジン(左)と従来型エンジン(右)の吸気行程圧縮行程膨張行程。EXlinkエンジンでは、膨張比を圧縮比より大きくできる

 このEXlinkエンジンと、その出力を電気に変換するインバーターにより1kWの発電出力行う。その発電効率は、従来モデルの22.5%に対し、26.3%を実現。また、冷却水の取り回しを工夫することで、熱回収率は65.7%になると言う。回収された熱の定格出力は2.5kWになり、これは水温15度の水90Lを、2時間半で75度に温める出力。

 これらにより、エネルギー利用率は26.3%(1kW)の電気エネルギーと65.7%(2.5kW)の熱エネルギーをあわせた92%となる。これは、従来の火力発電とガス給湯暖房システムを組み合わせて利用する際と比べ、38%のCO2排出量削減につながると言う。

発電効率は26.3%。発電出力は1kWで、100V10A。家庭で使い切ることが可能な電力と言う排気熱やエンジンからの熱を回収。熱回収率は65.7%
エネルギー利用率は92%になる騒音の低減も図られた

 また、MCHP 1.0 K2では、ユニットの大きさも580×298×750mm(幅×奥行き×高さ、突起部除く)、重量71kgとなり、従来機と比べ容積で33%減、奥行きで-82mmを実現。設置性も向上したおり、騒音も約43dBとエアコンの室外機並みに抑えられているとする。

 このEXlinkを搭載する家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニットMCHP 1.0 K2は、家庭向け熱電併給システム「エコウィル(ECOWILL)」のコアユニットとして、大阪ガスからすでに販売されている。

 高効率を実現したEXlinkエンジンのクルマへの搭載が気になるところだが、「EXlinkエンジンは定速回転に向いている」(戸川氏)とし、動力エンジンとしての採用はないだろうと言う。ただし、発電用エンジンとして「電気自動車(EV)のレンジエクステンダー的な使い方はある」と語った。

自立運転可能なコージェネシステムへ
 このHonda Home Power Generationは、ガス事業者として大阪ガス リビング事業部 家庭用コージェネレーションシステム開発部 マネージャ 西村和久氏、日本ガス協会 業務部 マネジャー 岩永和大氏も登壇。西村氏は大阪ガスのコージェネレーションに対する取り組みを解説し、岩永氏は東日本大震災の発生を受け、ガスを使った節電の取り組みについて語った。

大阪ガスリビング事業部 家庭用コージェネレーションシステム開発部 マネージャ 西村和久氏大阪ガスの販売するエコウィル。6月からはEXlinkエンジン搭載の新型となっている日本ガス協会 業務部 マネジャー 岩永和大氏

 とくに興味深かったのが、発電システムでありながら停電が起きた際には、発電が行えなくなること。ガス会社が販売するコージェネシステムとしては、ガスエンジンを使うエコウィル、燃料電池を使うエネファームが代表的だが、いずれも商用電源から切り離されると(停電すると)自動的に停止する仕組みを持つ。これは、日本ではこれまで停電がほとんど起きず、停電時は自家発電ができないような法律の制約もあるためと言う。

 ただ、現在停電時でも発電可能とするための取り組みを行っており、商用電源から切り離された後も運転を継続する機能のオプション化、停電後再起動する機能のオプション化を検討していると言う。ホンダはすでに北米向けに停電時も運転できる自立運転可能なコージェネシステムを販売している。

東日本大震災でのエネルギー分野の課題自立運転型システムの開発分散型電源を活用した災害に強い街づくりを目指す

もう一つの発電ユニット「CIGS太陽電池」
 ホンダの発電に対するもう一つの取り組みとして、ホンダソルテックが製造するCIGS薄膜太陽電池に関する説明も行われた。CIGSは、銅(Copper)、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、セレン(Selenium)を原料とした化合物半導体を発電層に使った太陽電池で、発電層を2.4μmと薄膜化することで、使用原料を低減し、環境への負荷を抑えている。生産時のCO2排出量、生産にかかるエネルギーを取り戻すまでの時間(EPT:エネルギーペイバックタイム)のいずれも、多結晶シリコンやアモルファスシリコンタイプより優れていると言う。

 また、ホンダのCIGS太陽電池の場合、1枚で280Vの発電能力を持つため、システムを並列接続することが容易にでき、レイアウトの自由度も高いとする。モジュール変換効率12.5%の現行製品のほか、変換効率を13.0%に上げた次世代モデル(電圧190V)の開発も行っており、2011年には発売する予定だ。

ホンダソルテック 代表取締役社長 数佐明男氏ホンダの太陽電池に対する取り組みは、ソーラーカーレースへの参戦がきっかけCIGS薄膜太陽電池の現行製品
ホンダ太陽電池の技術進化左が新型のCIGS薄膜太陽電池
CIGS薄膜太陽電池のメリット
設置例現行タイプのCIGS薄膜太陽電池新型CIGS薄膜太陽電池のプロトタイプ。変換効率が向上している

 ホンダは、ガスコージェネシステム、CIGS太陽電池、ホームバッテリーユニットを組み合わせたHonda Smart Home Systemの実証実験を通じて、グローバル環境スローガン「BLUE SKIES FOR OUR CHILDREN」の実現を目指していく。

(編集部:谷川 潔)
2011年 7月 14日