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ホンダ、新スマートハウスで「協調型自動バレーパーク」のデモを公開
コミュニティ単位でほかの家庭と“電熱融通”する「μCEMS」構想も視野に
(2014/6/23 16:26)
本田技研工業は6月20日、積水ハウス、東芝と共同で実験・開発を進めているスマートハウスに関する取り組みで建設した新たな「実証実験ハウス」を報道陣に公開した。
この実証実験ハウスは、モビリティを含めて家庭内でのCO2排出ゼロを目指すべく、太陽光やガスエンジンによる発電、蓄電・蓄熱のシステムなどを作り、実際に暮らすことも可能な住宅で実用性を検証する社会実験。また、この公開中に一般住宅での使用を想定した「自動駐車システム」「非接触充電デモ」も披露している。
複数世帯との“電熱融通”も見据えたシステムを構築
ホンダは、2011年にさいたま市と「E-KIZUNA Project協定」を締結し、家庭でのCO2排出量ゼロを目指すためのエネルギーマネジメントシステム「ホンダ スマートホームシステム(HSHS)」を推進。“特区”として設定されたさいたま市内の敷地に、2012年の段階ですでにHSHSを採用する実証実験ハウスを2棟建設している。
そのうちの1棟では、ホンダ社員の家族が居住しながら実験を進めており、年間のCO2排出量は、ホンダが2015年までの目標としていた50%削減に限りなく近い49.7%削減に到達。同社では当初2025年までにCO2排出量をゼロにすることを目標としていたが、これを2020年までに前倒しして開発を続けている。
今回公開された新たな実証実験ハウスも既存の2棟と同じ敷地内に建設され、これまでは行っていなかった国内初とされる系統連系協議(自家用発電設備を電力会社の設備と接続するための事前協議)を経た「V2H(Vehicle to Home:EVの電力を家庭用電力として利用する仕組み)」を実現するなど、さまざまな点でより進んだ“スマートハウス化”を果たした施設となっている。
また、実証実験ハウスではあるものの「豊かさのあるリアルな暮らし」を目指しており、そのまま入居して実際に暮らせる2世帯住宅となっている。太陽光や家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニットによる発電と蓄電、ガスエンジンの排熱を利用してお湯の生成などを行い、ホンダ独自の制御用モジュール「Smart e Mix Manager(SeMM)」でそれらを制御。東芝の協力によるスマート家電や、従来型の家電製品とスマートプラグを組み合わせた形での「HEMS(Home Energy Management System)」を構築している。
さらに、入居する親世帯と子世帯で電力とお湯を融通しあうエネルギーマネージメントのシステムも開発。将来的にはこの考え方をコミュニティ単位にまで広げ、ほかの家庭との“電熱融通”を見据えた「μCEMS」という構想も視野に入れる形でシステムを作り上げている。
住宅内には、ホンダのパーソナルモビリティ「UNI-CUB」で自在に動きまわれる完全フラット床と自動扉、同じくホンダが開発する「歩行アシスト」による昇降を考慮した低段差階段、複数のHEMS監視用モニター、温度&湿度や明るさを検知するセンサーなどと連携する照明・空調・窓・ブラインド、壁面緑化によるエコな空間演出など、数多くの最新の設備・思想が盛り込まれている。
「協調型自動駐車」「非接触充電」などをデモンストレーション
1階のカーポートには、「H2V(Home 2 Vehicle)」だけでなくV2Hにも対応する特別にカスタマイズされた「フィット EV」が置かれ、住宅で生成した電力をプラグインで充電できるのはもちろん、逆にフィット EVから住宅に電力供給することも可能。非接触充電にも対応しており、カーポート内に駐車するだけで、車庫の床面に設置された給電コイルからフィット EVに充電できるようになっている。
非接触充電を確実に行うためには、給電コイルが置かれた上に正確に駐車しなければならない。そのためデモ用のフィット EVは、自動運転による駐車を可能としている。ホンダはすでに、ステアリングの自動操作で後退駐車・縦列駐車を支援する「スマートパーキングアシストシステム」を実用化し、駐車スペースを自動的に発見して自動駐車する「自立型自動駐車」の研究も進めているが、今回デモンストレーションを行ったのは、それよりもさらに進んだ「協調型自動バレーパーク」と呼ばれる技術。
この協調型自動バレーパークでは、敷地内に設置された複数の監視カメラと車両側に標準搭載されているバックカメラなどで得られた映像をもとに、地図データや外部の制御システムと連携して自動駐車を行う。デモで自動走行したフィット EVは非接触充電の装備などが通常とは異なるものの、バックカメラ自体は標準装備しているものだと説明している。
標準装備するバックカメラの画質や精度を補うため、敷地内の路面には画像解析を補助する白線も用意されていたが、より高画質なバックカメラを利用するようになれば白線がなくても自動駐車が可能になるとのこと。技術的にはカメラを増やせば後退だけでなく前進駐車も可能になり、多くの一般住宅のガレージなどにも適用できるとしている。
一方、ビルトインガレージには超小型EV「MC-β」が駐車されていたが、こちらは今のところH2Vのみ対応。V2Hは9月ごろまでに系統連系協議を行って実現したいとしている。