フォーミュラ・ニッポン、2012年シーズンの開催概要を発表、2013年から新名称へ
新名称はファンから公募、採用者にはCR-Zまたは86のビックな副賞も

発表会は神宮外苑で行われた。記者会見ではあるが、事前に一般のファンにも告知されていたため熱心なファンが会場に詰めかけた

2012年3月26日開催



 日本最高峰のフォーミュラカーレースである「全日本選手権フォーミュラ・ニッポン」を運営するJRP(日本レースプロモーション)は3月26日、都内で記者発表会を開催し、2012年シーズンの開催概要およびエントリー選手、チームなどを発表した。本年度のフォーミュラ・ニッポンには12チーム、17名のドライバーがエントリー。昨年悲願のチャンピオンを獲得したアンドレ・ロッテラー選手をはじめ、2010年のJ.P.オリベイラ選手、2009年のロイク・デュバル選手、2007/2008年の松田次生選手といった4名のチャンピオンも名を連ねた。

 また、JRP代表取締役社長 白井裕氏は「フォーミュラ・ニッポンの名称は今年度限り、来年以降はグローバル展開を意識した新しい名称を採用したい」と述べ、これまでも目指してきたアジア各国でのレース開催といったグローバル展開を、これからも推し進めていきたいとの意向を表明した。さらにその新名称は、ファンから公募されることも明らかにし、4月に鈴鹿サーキットで行われる第1戦と5月にツインリンクもてぎで行われる第2戦で公募し、第3戦のオートポリスにおいて新しい名称の発表を行うと述べた。白井氏は、採用されたファンには賞品として2013年シーズンのパドックパスをペアで、さらにホンダ「CR-Z」ないしはトヨタ「86(ハチロク)」のいずれかをプレゼントするという、ビッグな副賞が用意されていることも明らかにした。

2012フォーミュラ・ニッポンのスケジュール


サーキット日程
第1戦鈴鹿サーキット4月14日、15日
第2戦ツインリンクもてぎ5月12日、13日
第3戦オートポリス5月26日、27日
第4戦富士スピードウェイ7月14日、15日
第5戦ツインリンクもてぎ8月4日、5日
第6戦スポーツランドSUGO9月22日、23日
第7戦鈴鹿サーキット11月3日、4日
特別戦富士スピードウェイ11月16日~18日

4人のチャンピオン経験者を含む17名のドライバーが参戦
 例年激しい競争が展開されているフォーミュラ・ニッポンだが、今シーズンもそうした激しいレースが展開されることになりそうだ。以下は、今シーズンのフォーミュラ・ニッポンに参戦するチーム、およびドライバの一覧になる。

カーナンバードライバーチーム名エンジン
1アンドレ・ロッテラーペトロナス チーム トムストヨタ RV8K
2中嶋一貴
3安田裕信コンドーレーシングトヨタ RV8K
7大嶋和也チーム・ルマントヨタ RV8K
8ロイク・デュバルチーム・キグナス・スノコトヨタ RV8K
10金石年弘HPリアル・レーシングホンダ HR12E
16山本尚貴チーム無限ホンダ HR12E
18折目遼SGC by KCMGトヨタ RV8K
19J.P.オリベイラチーム・インパルトヨタ RV8K
20松田次生
31中嶋大祐ナカジマ・レーシングホンダ HR12E
32小暮卓史
38平手晃平プロジェクトμセルモ・インギングトヨタ RV8K
39国本雄資
40伊沢拓也ドコモ・チーム・ダンディライアン・レーシングホンダ HR12E
41塚越広大
61嵯峨宏紀トチギ ル・ボーセ モータースポーツトヨタ RV8K

 今シーズンのフォーミュラ・ニッポンには、チャンピオン経験者が4人も参戦する。昨年のチャンピオンであるアンドレ・ロッテラー選手、2010年のチャンピオンであるJ.P.オリベイラ選手に加え、昨年は参戦していなかった2009年の王者ロイク・デュバル選手、さらには2年ぶりにフォーミュラ・ニッポンへの復帰となる2007年、2008年連続チャンピオンの松田次生選手が、インパルというトップチームから復帰することになる。なお、4人ものチャンピオン経験者がフォーミュラ・ニッポンに揃うことになるのは、1996年の初開催以来、初めてのこととなる。さらに、未だ無冠ながら、2007年にはタイトル獲得寸前までいった小暮卓史選手が今年もナカジマレーシングに残留し、念願の王者獲得を目指すことになる。

 こうしたベテラン勢に、若手選手がぶつかっていく形になるのが今年の構図ということになりそうだ。若手と言っても、フォーミュラ・ニッポンの経験は2年目以上という選手が多い。完全な新人となると、安田裕信選手と折目遼選手ということになるが、2人ともSUPER GTでの実績は十分で、いずれの若手もベテラン勢に充分絡んでいくことが可能になりそうだ。

 選手を代表して挨拶を行った松田次生選手は、「ここ数年は外人勢にチャンピオンを席巻されている。やはり日本人としてはその状況を変えたいと思っていて、若手も含めて一緒に挑んでいきたい」と意気込みを語ったほか、昨年のチャンピオンチームであるペトロナスチームトムスの館信秀監督は、「今年は追われていく立場。去年はロッテラーがチャンピオンを獲ったので、今年は中嶋一貴にロッテラーを控えに回すぐらいの意気込みで頑張って欲しい、別にプレッシャーをかけるわけではないけど」と述べ、詰めかけたファンの笑いを誘っていた。

 また、JRPの会長を務めるナカジマレーシングの中嶋悟監督は、「実績十分のチャンピオン達に若手が挑むという構図になる。ぜひファンにはサーキットに足を運んで欲しい」と、詰めかけた熱心なファンに呼びかけた。

 なお、先週、チーム・ルマンの母体であるルマンの代表取締役 花輪知夫氏が亡くなり、当日の午前中に葬儀が行われたことを受け、故人を偲んでの黙祷が冒頭に行われた。ルマンは海外のレーシングカーの輸入販売などを行っているほか、チーム・ルマンにみられるようにレーシングチームの運営などを多年に渡って行っており、花輪氏の日本のモータースポーツへの貢献は、計り知れないものがある。心より哀悼の意を表明したい。

ドライバーを代表して松田次生選手がスピーチチームを代表してペトロナス チーム トムスの館信秀監督が挨拶JRPの会長でもあるナカジマレーシングの中嶋悟監督が挨拶、先週他界されたルマン 代表取締役 花輪知夫氏を偲んだ黙祷も行われた

JRP 代表取締役社長 白井裕氏

フォーミュラ・ニッポンの名称は今年度限り、来年からは公募される新名称で
 JRP 代表取締役社長 白井裕氏は、今年度のフォーミュラ・ニッポンの開催概要に関する解説を行った。白井氏によれば今年のレースは全7戦で行われ、最終戦が2レース制になっているなどの例外を除き、基本的には250kmレースに統一して行われることになると言う。昨年は給油ありのレースだったりピットストップありのレースだったりと、ラウンドごとにルールが違っていてやや分かりにくい面があったが、今年はこれをなくすために「燃料搭載量規制を行い、レース距離を250kmに伸ばすことでピットストップが必須になり、各チームの戦略が別れてきてより面白いレース展開になる」(白井氏)と、より面白いレースを観戦することができそうだ。

 また、白井氏はこれまでJRPが推進してきたフォーミュラ・ニッポンのグローバル化の進展について触れ、「現在、韓国のサーキットと2013年の開催契約に向けてかなり進んだ話をしている。来年のスケジュールは6~7月には決めないといけないので、それまでに決定したい」と述べ、韓国インジェに建設中のサーキットのこけら落としイベントとして2013年にフォーミュラ・ニッポンの開催に向けた話が進み、それがかなり大詰めの段階まで近づいているとの認識を明らかにした。なお、昨年発表されたシンガポールでの2013年のフォーミュラ・ニッポンの開催に関しては、「サーキットの建設が停止したため、話が進んでいなかった。交わした覚え書きによれば、昨年の12月にサーキットが完成しなければ開催できないという内容だったため、それを受けて2013年の開催はなくなったと考えている」と述べ、シンガポールでの開催に関しては白紙に戻ったことを説明した。

新シリーズの名称が採用されたファン(同名称多数の場合は抽選)には、このCR-Zないしは86(Gグレード)のいずれかがプレゼントされる。どちらにするかは当選者が選べるとのこと

 白井氏は「今後もフォーミュラ・ニッポンのグローバル化という展開をしていきたいと考えている。その流れの中でのアジア開催であり、フォーミュラ・ニッポンという名称も今年度限りにする」と述べ、来年以降はよりグローバルな開催を意識した名称に変更するとの方針を明らかにした。その名称は、第1戦鈴鹿で募集を開始し、第2戦ツインリンクもてぎで締め切り、第3戦のオートポリスで名称が発表される。なお、同一名称で多数の応募があり、それが採用された場合にはその中から抽選で1名が選ばれる。白井氏は「賞品として2013年シリーズの年間パドックパスをペアで出す。さらに副賞として、ホンダのCR-Zないしはトヨタの86(Gグレード)のいずれかを用意している」と述べた。応募は、官製はがきに新名称と理由を書いてJRPに送る形となるが、詳しくはフォーミュラ・ニッポンのWebサイト(http://www.f-nippon.co.jp/fn/media/12release/120326_fn_news01.pdf)を参照していただきたい。

 また、白井氏はフォーミュラ・ニッポンの現行シャシー(FN09)を2013年まで継続利用し、2014年から新型シャシーを導入する方針を明らかにした。白井氏によれば、今年の夏までに選定を行い、来シーズンの半ばには実装テストにこぎ着けたいとしている。さらに、JRPが導入を検討してきたエネルギー回生システム(システムE)に関しても、2014年シーズンからの導入にすることを検討していることを明らかにした。白井氏は、報道陣からどこのコンストラクターと話をしているのかとの質問に対し、「現行シャシーを供給しているスイフト、ローラ、ダラーラといった主要なコンストラクターだけでなく、ミゲールといった中小まで幅広く話をしている。もちろん日本自動車レース工業会とも話をしている」と回答している。

 なお、白井氏によれば、今後もワンメイクコンストラクターで、コストとも相談しながらという大枠は換えないことを明らかにし、「その中で、我々の新しい車はF1の下位に位置するという位置づけにはしたくない。アジアの中でF1とは別の輝き方をする車にしていきたい」と述べ、ファンにとっても魅力的なレーシングカーになるような形での選定を進めていくと説明した。

(笠原一輝)
2012年 3月 26日