【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ
第6回:準天頂衛星「みちびき」対応のレーダー探知機を設置してみる


 GT-Rが搭載するスピードメーターは340km/hまで刻んであるのだが、180km/h前後のスピードリミッターは設定されているし、「走行2000kmまでは慣らし運転をしてください」とオーナーズマニュアルに書いてあるので、今のところ流れに乗る程度のスピードしか出していない。

 ただ、オービス(自動速度取り締まり装置)には気を付けたいと考えている。GT-Rは単独で走っていると、予想外にスピードが出ていることがある。本連載の第4回でも触れたが、GT-Rは高速になればなるほど走行姿勢がフラットに安定していく乗り味なので、体感速度が異常に低いのだ。「自動速度取り締まり装置設置路線」の青い看板を事前に見ていればよいが、そうでないときにはオービスを見つけた瞬間にドキっとする。

 そうしたオービスの存在を事前に教えてくれるのが、「レーダー探知機」と呼ばれる製品群だ。

レーダー探知機って?
 こういった製品の是非についての議論はあるが、日本ではかねてから合法製品として量販店で販売されている製品だ。

 実際にカー用品店に行くと、レーダー探知機の商品棚は面積も広くて、沢山の製品があって迷ってしまうことだろう。お店の人気コーナーなので、店舗独自の賑やかな解説ポップもあったりして、売る側の真剣さも伝わってくる。

 多くのCar Watch読者ならば説明は不要だろうが、現在のレーダー探知機の機能を手短に整理してみることにする。

 レーダー探知機の基本機能は2つ。1つ目はレーダー波(電波)を使った取り締まりを事前にキャッチして警告してくれる機能。一般道で行われている速度超過取り締まりに対して身構えることができる。

 2つ目は固定設置型の自動速度取り締まり装置の場所に接近したら、それを事前に警告する機能。高速道路はもちろん、バイパス道路のような速度域が高くなりがちな一般道の走行時に役立つ機能だ。

 覆面パトカーを含む警察車両、救急車などの緊急車両が搭載している「本部への自車位置送信システムの電波」をキャッチして、その接近を警告するカーローケーションシステム探知機能が人気を博したことがあったが、今の製品では機能自体は搭載されているものの、ほとんど役に立たなくなっている。

 これは2005年くらいから急速に、該当機関が新型カーロケーションシステムに移行してしまったためだ。この急速な移行の背景には、レーダー探知機を悪用して警察車両のパトロールを回避しながら窃盗を行った事例が明るみに出たことと関係が深いとされている。新型カーロケーションシステムは、携帯電話網に近いネットワークシステムが使われているため、ハードウェア的にもソフトウェア的にも対応が極めて困難だとされている。

レーダー探知機機能搭載型のユピテルのPND「YPL607si」

準天頂衛星「みちびき」対応のユピテル「GWR73sd」を選択
 近年のレーダー探知機は、上記の2つの基本機能をユーザーが活用した際の「質感の向上」に力が注がれている。

 具体的に言うと、画面の大きさ、画面の美しさ、操作のしやすさといったUI部分は急激に進化してきた部分だ。解像度の高い発色の美しいディスプレイパネルを採用し、スマートフォンのようなタッチ操作にも対応するなど、こうした部分は店頭でアピールしやすいポイントなので各メーカーとも力を入れている。

 また、固定式オービスの位置と自車位置との関係性を正確に伝えるため、GPS情報のみならずジャイロ、加速度センサーを組み合わせた先進の自車位置測定システムを搭載し、精度の高いリアルタイム地図グラフィックス付きの表示を行うものも増えてきている。実際、PND的なカーナビ機能を搭載したものも製品化されているほどだ。

 筆者はどれにしようか迷っていたのだが、たまたま読んだ本誌記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120117_505116.html)で紹介された準天頂衛星「みちびき」に対応した「GWR73sd」を知り、これを選択した。「みちびき」は、日本のほぼ直上に静止している人工衛星で、みちびきからの電波は背の高い建物の多い都心部でも受信しやすく、正確な自車位置情報を維持しやすいという特徴がある。クルマで都内に行くことの多い筆者としては、なかなか魅力的な機能だ。

準天頂衛星は直上に静止しているのでその電波をキャッチしやすいという特徴がある

 「GWR73sd」に関しての詳細な紹介はレビュー記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/minigoods/20120217_511749.html)に詳しいのでそちらを参照して欲しい。本稿では、GT-Rへの取り付けと使用に特化した話題に触れてみたい。

 購入金額は2万9800円(3月中旬時点)。なかなかの売れ筋商品のようで、近所のカー用品店では売り切れだったが、ほかのカー用品店には在庫があり、そこでの購入となった。

 筆者はシガープラグから電源を取らず、ヒューズボックスからアクセサリー電源を取りたかったので、電源直結コード「OP-6U」(1575円)を合わせて購入した。

比較的安価に買えた(当時)梱包箱の中身

GT-Rのどこに取り付けるのか
 レーダー探知機で悩むのは取り付け位置だろう。

 前車のRX-7(FD3S)の時は運転席側のダッシュボード上、位置的にはAピラーの根本付近に付けていた。ここだと運転席に着座した状態だと手を伸ばしても届かず、視認性や操作性がよくなかった。それにダッシュボード上に両面テープで取り付けていたのが、どうにもスマートではないと感じていた。

 そこで、GT-Rでは「ダッシュボード以外の場所に付ける」という方針を先に設定して熟考することに。その結果、導き出したのはAピラーに近いフロント窓ガラス付近の天井。

 運転者に近い位置の割には視界の邪魔にならないし、何より着座状態で手が届く。GWR73sdはタッチパネル操作対応なので、指で触れての操作もやりやすいはず。ただ、GWR73sdにはプラスチック製のダッシュボード設置のための台座スタンドしか付属されておらず、筆者が思い描いたような、特殊設置ケースに対応するためのステーのようなものはオプションとしても設定されていない。

 そこでユピテルのお客さま相談室に電話して、天井側に設置したい旨を告げると、そうした設置ケースでの動作はサポートしていないという、つれないお返事。動作には問題ないだろうと、ろくな根拠もないまま決意を固める。

 しかし法規上の問題はどうか。

 「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2010.3.29】〈第三節〉第195条(窓ガラス)」(http://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokukokuji/saikoku_195_00.pdf)によれば、確かに窓ガラスへの直接接着はNGだが、内装への設置はOKのようだ。

 実際、他社製品だがコムテック製のレーダー探知機は天吊り設置用のステーが用意されているし、ユピテル製のものもアンテナユニットとディスプレイユニットが別体型になった2ピースタイプ、今季モデルで言えば「GWT77sd」は天吊り設置のためのステーが付属し、その設置例までが紹介されている。

 ただ、GWR73sdにはこうしたステーは付属していない。オンラインで公開されているGWT77sdの取り扱い説明書で後部形状を見ると、GWT77sdとGWR73sdはほぼ同じはめ込み穴になっているのでステーは流用できそうだ。そこで「GWT77sdのステーを売ってくれないか」と、これまたお客さま相談室に問い合わせたら「売ってません」というつれないお返事が。

 仕方ないので、ホームセンターに行って汎用のスチール製ステーを買ってきて自作することを決意。ただ、GWR73sdとステーの接着は両面テープに頼らざるを得ない。これはちょっと改善の余地がありそうだ。

 では、いっちょう取り付けてみますか……と、GT-Rの運転席に入ったのだが「内装の取り外し方が分からんチン」と相成ったのであった。

GWT77sdの設置例の紹介ホームセンターで買ってきた汎用ステー。これを折り曲げて一端をGT-Rの天井内装に突っ込み、もう一端にGWR73sdを付けることにする

DIYステーで天吊り設置をやってみた
 日産ディーラーでの1000km走行後の無料点検の際に、サービスマンに事情を話したところ、Aピラーの内装とヒューズボックスの内装の外し方を教えてくれた。

運転席横の内装も外すAピラーの内装を緩める

 Aピラーの内装は、緩められるだけで完全な取り外しは不可能だとのこと(実際には出来なくないのだが、やってしまうとここを固定しているタッピングパーツが破損してしまう)。

 天井内装の外し方も聞いたのだが、これはAピラー内装を完全に取り外さないと無理とのこと。ただ、Aピラーの内装を緩めたことで天井内装も結構下がるようになり、ステーをこの隙間に差し込むことはできそう。

Aピラーの内装を完全に外すためにはこの青いタッピングを切らなければならない。ここまで緩めると天井の内装も緩むので、Aピラーの内装を完全に外す必要はないここまで外せば運転席側の天井内装はここまで緩んでくれる

 GT-Rのルーフのエクステリア側は下に張り出している形状で、平板のステーを突っ込んでも金属製が張り出たルーフにあたってしまい、奥まで入らない。

 そこで、金属ステーをコンクリートブロックの端にあてがって「えいや」と押し込んだり曲げたりして、ルーフの内装に差し込める形状を作り出した。これでステーをルーフの内装に挿入できたのだが、Aピラーの方にずらしていくと引っかかってしまう。どうも内装側に突っ込んだステーが長すぎたようだ。というわけで、内装側に突っ込むステーの先端切断。これでAピラーに近い位置でもステーが入るようになり、このままAピラーの内装をガチンとはめ戻すことで、ステーはかなり堅く固定された。

ステーをこんな感じに折り曲げた。写真下部側が内装に突っ込む方。材質はスチールだったので、折り曲げるのにかなり時間がかかった(笑)ステーを内装に差し込んだところ。横に見えるのはAピラーを通したOP-6Uケーブル

 あとはステーの角度を微妙に調整し、その後、両面テープをGWR73sdに貼ってステーに押しつければ設置は完了。かなりしっかりと固定されたようで、タッチパネル操作の際にも、常識的な力であれば指で押しても動かない。

GWR73sdの本体裏面。筆者のケースでは両面テープを使用したが、下部の切り欠きをうまく利用できればもっとしっかり固定できるのかも試しに取り付け予定の位置で衛星をキャッチできるか試してみた。問題はなさそう

ヒューズボックスへと配線
 続いて配線を行う。

 シガープラグを電源として利用するのがお手軽だし、RX-7の時もそうしていたのだが、以前友人から「アクセサリー電源をヒューズボックスから取ればかなりスマートだ」と言われてたことを思い出したので、今回はそれに挑戦してみたかったのだ。

 GT-Rのヒューズボックスは運転席側のアクセルペダルの横側にある。この中で利用するアクセサリ電源は、縦2列に並んだヒューズ配列の左列の上から7番目の、青い15Aの低背タイプのもの(写真参照)。

GT-Rの運転席の右側の内装を外してヒューズボックスを露出させたところ。やり方が分からなければ日産の販売店に聞いてみようアクセサリ電源は、縦2列に並んだヒューズ配列の左列の上から7番目の青い15Aの低背タイプのもの。これを抜いて、電源取り出しコードを挿入する

 ここに刺すのは「低背ヒューズ電源取り出しコード」。カー用品店のDIYコーナーなどに売られている。低背ヒューズ電源取り出しコードの低背ヒューズ部分はヒューズボックスに刺し、ここに繋がる2本のコードのうち、電源取り出しコードの方をGWR73sdのオプション品であるOP-6Uケーブルの電源直結コードと結線する。OP-6Uのもう片方のコードはGND用なので、クルマの金属部分にアースすればよい。筆者の場合はヒューズボックスを止めているネジに結線することにした。

カー用品店のDIYコーナーで定番のエーモン・シリーズの「低背ヒューズ電源取り出しコード」を購入ギボシ化して低背ヒューズ電源取り出しコードとOP-6Uの電源側ケーブルを接続これをヒューズボックスの先ほどヒューズを抜いた個所に挿入

 こそこそとDIYでやるならばもう少し簡単に済ませるが、記事で工程を見せるという建前があるので、カー用品店で売られているクワ型端子を買ってきて、ちゃんとネジの軸部分に差し込んで固定した。

 ちなみにヒューズボックスを固定しているこのネジ、頭にプラスの溝は切ってあるのだが、よほど大きいプラスドライバーでないと回せない。形は六角形だし、その直径は10mmなので、レンチで回してしまった方が作業は楽だ。

クワ型端子もエーモン工業製を購入アースコード用コネクタとして使われる「クワ型端子」をOP-6Uのアースコードに接続
ヒューズボックス固定フレームを止めているボルトをレンチで緩めて、ここにアースを接続する

 これで配線は完了。

 あとはOP-6Uの反対側の電源供給端子を、天吊りしたGWR73sdに差し込むだけ。OP-6Uのケーブルが内装からはみ出ているとかっこわるいので、緩めたAピラーの中を通すことにした。

 実際に電源供給端子をGWR73sdに接続して、GT-RのSTARTボタンを押してAccモードにしたところ、めでたくGWR73sdが起動。

取り付け完了。すっかり日も傾き暗くなってきてしまった

 この後は、ユピテルのWebサイトにアップされているファームウェアをダウンロード(http://www.yupiteru.co.jp/download/update.html#radar)してアップデートを行い、さらに公開されている警察の公開取り締まり情報(https://www.yupiteru-ity.com/pc/download/download20_2.asp)もダウンロードしてインストールした(いずれも無料)。

 GWR73sdは本体に標準で挿入されている付属のマイクロSDカードに、パソコンからダウンロードしたファイルをコピーして差し戻せば勝手にアップデート/インストールされるので簡単だ。

ステーとGWR73sd本体の接着に両面テープを使ったのだが、ステーの穴から両面テープ跡が見えてみっともない。そこで仕上げにマジカルカーボンで覆った

実際に首都高を走行してその機能を確認
 実際に、オービスが設置されていることが分かっている自宅周辺の高速道路を走り、動作を検証してみた。

 まず走り出して、ものの数秒でGWR73sdは自車位置を検出。ちゃんと筆者自宅周辺の地図が表示されて自車位置が表示された。最近の機種は本当に自車位置測位が速い。

 そこからしばらく走って感じたのは、GT-Rの車内の騒音レベルは一般的な車種よりも大きいため、GWR73sdのガイド音声は最大音量にしても小さいということ。ふと思ったのだが、こうしたレーダー探知機の音声って、車内スピーカーにミックスできるようにならないものだろうか。ナビの音声ガイドとかち合ったりして、ガヤガヤとうるさい車内になりそうではあるが。

DIYのわりには意外と綺麗に収まったGWR73sd写真で見ると邪魔そうな印象があるが、実際の運転時はそうでもない。実際、バックミラーよりも上の位置だし、運転時の目線はかなり下にくるため前方を見て運転している範囲では気にならない

 首都高埼玉大宮線(上り)に入ってしばらく走ると、筆者のGT-Rを待ち受けるのは美女木JCT(ジャンクション)近くに設置されているオービスだ。これに対しては、約2km離れた地点からの反応。音と音声でちゃんと警告してくれた。ちなみに反対側に設置されていたオービスへの警告は行わなかった。最新機種では当たり前の機能なのだが、あらためて感心だ。

 首都高の都心部に点在するオービスに関しても、トンネルの入口にて「トンネルを出た先に~あります」と警告を促してくれる。なかなか気が利く。

 ただ、中央環状線を3号渋谷線に向かって走行した際、まさにオービス本体を通り過ぎたときに「1km先に~」という警告が鳴り、警告が間に合わなかった。中央環状線の熊野町JCT~大橋JCT間はほぼ全域がトンネルなので、走行中はGPSからの自車位置が長らく届かない。つまり、ジャイロや加速度センサーを用いた予測自車位置に基づく警告になる。車種によって差異はあるとは思うが、長時間トンネルを走行している際には「予測自車位置は参考程度に」というくらいの気持ちでいたほうがよいかもしれない。

 メーカーが奨励していなかった天吊り設置とした筆者のGWR73sdだが、筆者のテスト範囲では「ちゃんと機能している」という実感を得ている。

正面向かってフロント窓ガラスの左端上にあるのがGWR73sd車外から見るとこんな感じに見える

 それと、GT-R内でGWR73sdをしばらく使ってみて、筆者なりの各機能や設定に関する意見も述べておきたいと思う。

 多彩な動作モードが訴求されているGWR73sdだが、通常は「ノーマル」モードで十分だと思った。やりすぎ感のある「ドライブお役立ち情報」はカットされるし、一方でオービスに関する警告はしっかり行ってくれる。

 一方、より警戒が必要なときは「スペシャル」モードがよいかもしれない。各種取り締まり無線情報を取得できるほか、地図情報を活かした急カーブ警告なども行ってくれる。

 そして、車内で会話を楽しみたい時は「ミニマム」モードがよい。オービス警告はしっかりされるが、控えめでおしとやかな動作になる。GWR73sdの音声ガイドがうるさいと感じた人は、これを常用するのもありだ。

 待ち受け画面ではさまざまな車両情報を表示できるが、MFD(マルチファンクションディスプレイ)を有するGT-Rでは、これらはほとんど不要だと思った。「地図」を選んでおけばよいだろう。

 そうはいう筆者も、購入後しばらくはせっかく「みちびき」対応のGWR73sdなので、衛星の「測位情報」を待ち受けにしていた。キャッチしている衛星の信号レベルがリアルタイム表示されるので、自車位置の信頼度を確認できて楽しくも便利だ。ただその際、オービス警告時に的確に地図表示画面に切り換える「マップ自動切替」の設定はONにしておきたい。

 そうそう、GWR73sdだけではないが、ユピテルのレーダー探知機はクルマの故障診断ポートのOBDIIから車速やその他の情報を取得して自車位置測位に役立てる「OBDIIアダプター」をオプションとして用意しているものがあるが、GT-Rは未対応だ。GT-Rがデビューしてからずっと未対応なので、対応の予定はないのかもしれない。

(トライゼット西川善司/Photo:清宮信志)
2012年 7月 2日