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日産、モータースポーツの新しい取り組み「ニスモグローバルドライバーエクスチェンジプログラム」発表
ゲーマー出身のレーシングドライバーがSUPER GT鈴鹿1000kmに参戦
(2013/7/18 00:00)
日産自動車は7月17日、同社グローバル本社において記者会見を開催。子会社でモータースポーツ活動を担当しているNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)と合同で行う新しいモータースポーツに関する取り組み「ニスモグローバルドライバーエクスチェンジプログラム」を発表した。
この取り組みの一環として、同社およびソニー・コンピューターエンタテインメント(SCE)、ポリフォニー・デジタルと共同で取り組んでいるゲーマーをリアルなレーシングドライバーにするという「GTアカデミー」の出身で、ル・マン24時間レース LMP2クラス(プロトタイプスポーツカーを使うプライベーター向きのクラス)で2011年に2位、2013年も同クラス3位に入った実力の持ち主のルーカス・オルドネス選手(スペイン)が、今週末に鈴鹿サーキットで行われるSUPER GTのテストに参加し、8月17日~18日に行われる予定のSUPER GT 鈴鹿1000kmレースに参戦することが明らかにされた。
異なる地域のレースにドライバーを参加させるニスモグローバルドライバーエクスチェンジプログラム
日産およびNISMOが発表したニスモグローバルドライバーエクスチェンジプログラムは、日産/NISMOに所属して世界各国のレースに参加しているドライバーに対して、他の地域のレースシリーズに参加する機会を与えるプログラムとなる。日産は日本だけでなく、欧州や北米、オーストラリアなど世界各国のレースに参加しているが、これまではいくつかの例外を除けば日本のドライバーは日本のレースシリーズに、欧州のドライバーは欧州のレースシリーズにといった具合にそれぞれの地域を舞台としたレースに参加するのが基本だった。しかし、昨年のル・マン24時間に、日本で契約しているドライバーである本山哲選手とミハエル・クルム選手が出場するチャンスが与えられて大きな注目を集めるといった結果を生んでおり、それもこうした新しい交流プログラムを始める背景になったようだ。
そんなニスモグローバルドライバーエクスチェンジプログラムの最初の適用例となるのが、欧州の日産/NISMOの契約ドライバーであるルーカス・オルドネス選手だ。スペイン出身のオルドネス選手は、レーシングドライバーとしては異色の経歴を持っていることで知られている。というのも、彼がレーシングドライバーになる前は、グランツーリスモをプレイする1人のゲーマーだったからだ。日産、SCE、ポリフォニー・デジタルの3社は、ゲーマーをリアルなレースに参加させるプロジェクト「GTアカデミー」をここ数年行なっているが、オルドネス選手は2008年に実施された最初の選考において初代ウイナーになったことでレーシングドライバーへの道が開かれたのだ。
その後オルドネス選手は、3カ月ほどイギリスでトレーニングを受けたあと、2009年にドバイで行われたドバイ24時間レースに、元F1ドライバーのジョニー・ハーバート選手らと一緒に参加。さらに2011年に行われたル・マン24時間レースでは、LMP2クラスで2位入賞を遂げ、今年の6月に行われたル・マン24時間レースでもLMP2クラスで3位に入るなどの実績を残している。
そうした異色のキャリアを持つオルドネス選手だが、ニスモグローバルドライバーエクスチェンジプログラムの最初の適用を受けて、7月19日~20日に鈴鹿サーキットで行われるSUPER GTの公式テストに参加し、さらに8月17日~18日に鈴鹿サーキットで開催される予定のSUPER GT 第5戦 インターナショナル ポッカサッポロ1000kmレースにも参加する。チームはNDDP RACINGで、カーナンバー3 S Road NDDP GT-R(NISSAN GT-R NISMO GT3)の第3ドライバーとして、星野一樹選手、佐々木大樹選手と一緒にドライブすることになる。
なお、日産の発表によれば、これ以外にも全日本F3選手権とSUPER GT GT300に参戦中の千代勝正選手が8月31日~9月1日にマレーシア セパンサーキットで行われるセパン12時間レースに、星野一樹選手が9月21日~22日にドイツのニュルブルクリンクサーキットで行われるニュルブルクリンク1000kmレースに参戦することも明らかにされている。
「偉大な鈴鹿サーキットをリアルにGT-Rで走れるのは楽しみだ」とオルドネス選手
こうした日産/ニスモの発表を受けて、同日日産グローバル本社において、オルドネス選手の記者会見が行われた。以下にその模様をお伝えしていきたい。
冒頭のオルドネス選手のコメント:レーシングドライバーになるのは本当に夢のような話だったけど、GTアカデミーのプログラムのおかげでチャンスを得た。それまではスペインの大学で経営学を学んでいる普通の学生だったんだ。GTアカデミーの最初の回は、2万5000人を超える応募があって、その中から選ばれるのは大変だったけど、スペイン代表として選ばれた。イギリスのシルバーストーンで行われた決勝で22人の中から選ばれたときには本当に驚いたし、自分は幸運だったと思っている。それから私のレーシングドライバーとしてのキャリアが始まって、ジョニー・ハーバード選手と一緒にドバイ24時間レースでレーシングカーをドライブしたんだ。私のレーシングキャリアのハイライトは、2011年にル・マン24時間レースのLMP2クラスで2位になったことで、今年も3位に入ることができた。
日本に来るのは今回が初めてだけど、鈴鹿サーキットは偉大なサーキットだし、そこでNISSAN GT-R NISMO GT3をドライブすることをとても楽しみにしている。
──SUPER GTについてどう思いますか?
オルドネス選手:SUPER GTはヨーロッパでも非常に有名だよ。アンドレ・ロッテラーやブノア・トレルイエのようなル・マンで上位を走るようなドライバーが走っていたシリーズとしても知られているし、何よりも競争が激しいということはよく知られていて、多くのヨーロッパのドライバーがSUPER GTに注目している。また、グランツーリスモにはSUPER GTのクルマもあるし、それを使って鈴鹿サーキットを走ったことは何度もあるよ。
──グランツーリスモで鈴鹿サーキットはよく走っているんですか?
オルドネス選手:もちろんだよ! 多分グランツーリスモで最も走り込んだコースの1つといっていいんじゃないかな。鈴鹿サーキットは本当に大好きで、最初のセクターにあるS字とかは本当に難しいし、あの有名な130Rとかもエキサイティングだよね。もちろんリアルでは走ったことがないので、まずはチームメイトにアドバイスをもらいながら確実に走っていきたいね。
──ゲームで走ることは、リアルなレーシングに影響するのでしょうか?
オルドネス選手:現在のレースの世界ではシミュレータの存在は非常に身近なモノで、F1ドライバー達もよく使っているよね。僕にとってももちろん重要で、レーシングドライバーになった今でもグランツーリスモでトレーニングしているぐらいさ。例えばコースを覚えたり、ブレーキングポイントを覚えたりという点では、ゲームもリアルと一緒。ただ、リアルとゲームが違うのは、クラッシュするとゲームの方はリセットすれば元通りだけど、リアルではそうはいかないことかな(笑)。あと、コースのどこに凸凹があるかということも実際に走ってみないと分からない部分だね。それでも、コースを覚えたりという部分はレーシングドライバーにとって非常に重要なので、今後もシミュレーションの重要性は変わらないと思うよ。
──ゲーマーから実際のレーシングドライバーになった感想を教えてください。
オルドネス選手:それまでは本当に普通の学生で、経営学について勉強していたんだ。ところがGTアカデミーに選ばれてから、キャリアが大きく変わったんだ。レーシングドライバーというのは非常にタフな仕事で、競争が激しい。新しい言語を覚えないといけなかったし、体力も鍛えないといけないし、車両をセットアップするのにエンジニアとしっかりコミュニケーションできないといけない。そういう意味では、以前と違う能力を求められるようになったね。
──GTアカデミーに選ばれてすぐレースに出場したのですか?
オルドネス選手:GTアカデミーに選ばれてから、イギリスで3カ月のトレーニングを積んだんだ。勉強することは沢山あったよ、シーケンシャルシフトについて学ぶ必要があったし、スリックタイヤの使い方についても覚えなければいけなかった。その間に国際ライセンスを取って、イギリスで15もレースに出たんだ。そのあと、ドバイに行って、ジョニー・ハーバート選手などと一緒にドバイ24時間レースに出場したんだ。
──今でもグランツーリスモをプレイしていますか?
オルドネス選手:もちろん、それが僕の原点だからね。今はレースやテストで忙しいけど、シミュレータの代わりとしてプレイしているよ。
──将来の目標は?
オルドネス選手:将来のことはまだわからないけど、やっぱりル・マン24時間レースで勝ちたいよね。それから、今回チャンスをもらったSUPER GTも非常にいいシリーズなので、そういうところで走ってみたいと思っている。