日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は2月23日、神奈川県横浜市にある日産自動車 グローバル本社ギャラリーで2014年のモータースポーツ活動の概要発表会を実施した。
2014年度の活動のアウトラインとしては、2013年と大きく変わることなく概ね踏襲。国内外で高い人気を誇るSUPER GTのGT500/GT300両クラスのほか、海外のレースではル・マン24時間レースやブランパン耐久シリーズ、オーストラリアV8スーパーカーズなどに参戦。国内中心のレースでは、スーパー耐久シリーズ、全日本F3選手権などに参戦する。
●SUPER GT GT500クラス
(チーム名:監督、ドライバー:車両名/タイヤメーカー)
NISMO:鈴木豊監督、松田次生/ロニー・クインタレッリ(イタリア)選手:MOTUL AUTECH GT-R/ミシュラン
TEAM IMPUL:星野一義監督、安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ブラジル)選手:カルソニックIMPUL GT-R/ブリヂストン
KONDO RACING:近藤真彦監督、佐々木大樹/ミハエル・クルム(ドイツ)選手:D'station ADVAN GT-R/ヨコハマ
MOLA:大駅俊臣監督、本山哲/柳田真孝選手:S Road MOLA GT-R/ミシュラン
左から松田次生選手、鈴木豊監督、ロニー・クインタレッリ選手 左から安田裕信選手、星野一義監督、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手 左からミハエル・クルム選手、近藤真彦監督、佐々木大樹選手 ●SUPER GT GT300クラス
(チーム名:監督、ドライバー:車両名/タイヤメーカー)
NDDP RACING with B-MAX:長谷見昌弘監督、星野一樹/ルーカス・オルドネス(スペイン)選手:B-MAX NDDP GT-R/ヨコハマ
GT300クラスには昨シーズン同様、FIA GT3仕様の「NISSAN GT-R NISMO GT3」で参戦する 左から星野一樹選手、長谷見昌弘監督、ルーカス・オルドネス選手 ●スーパー耐久シリーズ(GT3クラス)
(チーム名:監督、ドライバー:車両名)
KONDO RACING:近藤真彦監督、藤井誠暢/GAMISAN/佐々木大樹または高星明誠選手:スリーボンド日産自動車大学校 GT-R
左から近藤真彦監督、藤井誠暢選手、佐々木大樹選手、高星明誠選手 チームスタッフとして日産自動車大学校の生徒が参加する異色のチーム ●ブランパン耐久シリーズ
(チーム名:監督、ドライバー:車両名/タイヤメーカー)
GT Academy Team RJN:ボブ・ネビル監督、ミゲール・ファイスカ(ポルトガル)/フローリアン・シュトラウス(ドイツ)/スタ二スラフ・アクセノフ(ロシア)選手:NISSAN GT-R NISMO GT3/ピレリ
GT Academy Team RJN:ボブ・ネビル監督、千代勝正/ニック・マクミレン(アメリカ)選手:NISSAN GT-R NISMO GT3/ピレリ
2013年までSUPER GT GT300クラスに参戦していた千代勝正選手は、2014年シーズンから「NISSAN GT-R NISMO GT3」でブランパン耐久シリーズに出場 ●全日本F3選手権(チャンピオンクラス)
(チーム名:監督、ドライバー:車両名)
B-MAX RACING Team with NDDP:長谷見昌弘監督、佐々木大樹選手:B-MAX NDDP F312
B-MAX RACING Team with NDDP:長谷見昌弘監督、高星明誠選手:B-MAX NDDP F312
NDDPアドバンス・スカラシップ生として両選手が全日本F3選手権に参戦する ●オーストラリアV8スーパーカーズ
(ドライバー:車両名)
トッド・ケリー選手(オーストラリア):Nissan Altima
リック・ケリー選手(オーストラリア):Nissan Altima
マイケル・カルソ選手(オーストラリア):Nissan Altima
ジェームス・モファット選手(オーストラリア):Nissan Altima
1月に発売されたティアナの海外版である「アルティマ」でオーストラリアのトップレーシングカテゴリーレース「オーストラリアV8スーパーカーズ」に2013年度に引き続き参戦 このほか、LMP2クラスのエンジン供給と技術支援という形で、FIA世界耐久選手権(WEC)、ユナイテッドスポーツカー選手権、ヨーロピアンル・マンシリーズ、アジアンル・マンシリーズにも参加する。また、ル・マン24時間レースでは“革新的で新しい技術を紹介する車両”のために用意される「ガレージ56」枠に、電力駆動レーシングカー「Nissan ZEOD RC(Zero Emission On Demand Racing Car)」を投入。これは「日産が2015年のFIA世界耐久選手権 LMP1クラスへの参戦を検討するための取り組みの1つ」としており、SUPER GT GT300クラスのドライバーにも抜擢されているルーカス・オルドネス選手の起用が発表されている。
LMP2クラス用に開発した「VK45DE」V型8気筒DOHC 4.5リッターエンジンをカスタマーチームに供給することで、さまざまなプロトタイプカーレースに参加する ニュルブルクリンク・24時間レースのSP9クラスにも、2013年同様に2台体制で参戦予定。ドライバーラインアップなどは後日発表される 特異なスタイルを2012年の「デルタウイング」から受け継ぐ電力駆動レーシングカー「Nissan ZEOD RC」。ル・マンのサルト・サーキットを1周(13.6km)するモーター駆動力を備えるほか、モノブロックの直列3気筒1.5リッターターボエンジンを搭載。このエンジンはNISMOの宮谷取締役社長が“歯を食いしばらなくても笑顔で抱えられる”という40kgの重量ながら、最高出力は400PSを発生するという 「NISMO30周年を記憶に残る戦績を挙げた年にしたい」と宮谷氏
発表会の冒頭では、NISMO 取締役社長の宮谷正一氏が2014年度の参戦概要について紹介。このなかで宮谷氏は「今年はNISMOが創立30周年を迎えます。SUPER GT GT500クラスでのチャンピオン奪還をはじめとして、我々が参戦、支援するモータースポーツ活動において記憶に残るような戦績を挙げ、この30周年があとからも印象に残るような年にできるよう、全力を尽くして頑張っていきますので、これからも応援をよろしくお願いします」と集まったファンに呼びかけた。また、この紹介の中段で、2014年仕様のカラーリングが施された「2014年型MOTUL AUTECH GT-R」のアンベールが行われ、DTM(ドイツツーリングカー選手権)と車両規則を統合したニューマシンが初公開された。
アンベールを待つ2014年型MOTUL AUTECH GT-R 宮谷氏とNISMO チーフ・ビークル・エンジニアの金子晃氏の手でアンベールを実施 「グレーを主軸にこれまでのNISMOカラーを合わせ、市販モデルのGT-R NISMOとのデザインの一貫性を持たせています。また、2013年8月に発表したモデルからフロント(ロアグリル)などのデザインを一部変更していますが、これもGT-R NISMOと合わせたものです」と解説する宮谷氏 詳細な車両の解説は、NISMOチームの監督であり、車両デザインも担当している鈴木豊氏 2014年モデル(左)と2013年モデル(右)でデザイン変更可能な部分の比較 黄色のラインから下側は自由にデザインして空力性能を追求していい部分。ラインから上はベースとなる車両のデザインを反映させる部分となる 今シーズンからDTMとの車両規則統合により、モノコック部分やリアウイング、ブレーキなど多くのパーツが共通化。大型モニターに映っているパーツは、GT-Rだけでなく、トヨタの「LF-CC」、ホンダの「NSX CONSEPT-GT」でも同じものを使用する フロア下のパネル形状なども大幅な共通化が実施されており、当然、この部分では3メーカーの別の車両でも性能差が出ない。あとはスーパーフォーミュラとも仕様を合わせた「NRE(Nippon Race Engine)」と呼ばれる2.0リッター直列4気筒 直噴ターボエンジン、空力面などが勝敗を分ける部分になるという GT500の車両に加え、GT300で走行するFIA GT3仕様のB-MAX NDDP GT-R 2014年モデルもお披露目された 「必ず今年はチャンピオンを奪還する!」と柿元総監督
レース車両の公開のほか、発表会ではSUPER GTのGT500クラス/GT300クラス、スーパー耐久シリーズなどのレースに出場するドライバーと監督のラインアップ紹介も行われた。ちなみに、上のラインアップ紹介には載せられなかったが、日産系チームの総監督は従来どおり柿元邦彦氏が担当する。
発表会の終了後には、SUPER GT GT500クラスの各監督、GT500クラスの参戦ドライバー、NISSAN GT-R NISMO GT3でレース参戦する監督&ドライバーという3部構成でのトークショー、来場選手などによるサイン&握手会などが実施され、ファンサービスにも多くの時間が割かれていた。
「昨年のことはすっかり忘れました! 今年のSUPER GTは、新しいレギュレーションのもとクルマ、エンジン、タイヤの戦いになりますが、じつは最後は人間の戦いであります。ここにいる、凛々しい顔をしたサムライたちが一丸となって、必ず今年はチャンピオンを奪還します。ぜひ期待と応援をよろしくお願いします」と語る柿元総監督 SUPER GTのほか、スーパー耐久シリーズでもチームを率いる近藤監督。「スーパー耐久の日産自動車大学校とのプログラムは、もともとは“若い人たちのクルマ離れをどうにかしなくちゃならない”というところからスタートしています。メカニック担当が学校から来て、タイヤを拭いたりマシンを磨いたりというところから始まるのですが、普段の授業では得られない緊張感や感動といったものをサーキットの場で学生に体感してもらっています。SUPER GTもすばらしいレースですが、スーパー耐久のほうもぜひ見に来ていただきたいと思います」とコメント 2014年シーズンからNISMOに移籍した松田次生選手。選手を代表した挨拶では、6年間在籍したTEAM IMPULに感謝の言葉を述べつつ「今日、この場に置かれているGT-Rで今シーズンのレースに臨みますが、この車両は開発したNISMOのスタッフが限られた時間のなかですばらしいマシンを提供してくれました。ここにいる全ドライバーで毎戦トップを取れるように頑張って結果で恩返ししたいと思っていますので、みなさんぜひサーキットに応援しに足を運んでください。よろしくお願いします」と語った 2014年シーズンも、昨年同様に4チーム8人のドライバーでSUPER GT GT500クラスに挑む 登壇者全員でのフォトセッションにあたり、おもむろに前に出て「いけね、ここじゃないのか!?」とおどけてみせる星野監督。日本レース史上のレジェンドながら、日産チームのムードメーカーとしても強烈な存在感を発揮している SUPER GT GT500クラスの監督5人のよるトークセッション。入れ替わりの多かった選手についてや今シーズンに向けての意気込みなどが語られ、司会者からの「第1戦はうちが勝つぞ!という監督は挙手を」との呼びかけに、全員が手を上げて応えたほか、星野監督からエンジン開発も担当する鈴木監督に「ホントに大丈夫なんだろうな!?」と問いかけるシーンも SUPER GT GT500クラスのドライバーによるトークセッションでは、KONDO RACINGに22歳の若手である佐々木選手が新加入したことを受け、3月の誕生日で44歳になるクルム選手との“歳の差”チームなど、年齢やキャリアに関する話題が多くの時間を占めた NISSAN GT-R NISMO GT3でレース参戦する監督&ドライバートークセッションでは、長谷見監督から「若手選手たちに、僕のモットーである“1戦1戦の勝利ではなく、チャンピオンを獲ることを狙う”という部分を教えながら進めていきたい」と語られた 「まず、多くのファンがいるこの場に立てていることに感謝したい。今年1年頑張りたいと思います」とコメントするオルドネス選手 サイン&握手会の様子。チームごとに長い列ができていた