ニュース
特定小型原付シェアリング「Lime」が首都高への誤進入防止対策「ジオフェンシング制御」開始
2025年4月14日 13:18
- 2025年4月11日 実施
世界展開するモビリティ企業Limeと特定小型原付自転車
電動の特定小型原動機付自転車のシェアリングサービスを展開するLimeは4月11日、東京都大田区にある同社オフィスにて、進入禁止エリアなどで走行を停止させる「ジオフェンシング制御」など安全対策についての説明を行なった。誤進入対策は首都高の3か所の入口で開始し、誤ってLimeの車両が侵入しようとした場合、走行出力をカットして進入できなくする仕組み。
説明会ではLime カントリー・マネージャー兼アジアパシフィック地域統括責任者 テリー・サイ氏が世界32か国280都市でサービスを展開するLimeの業態を説明。グローバルで2024年は2億回以上の乗車があり、1秒間に7回の乗車があるとした。
Limeは国内では2024年8月に東京の渋谷、新宿、池袋でサービスを開始し、その後、都内では上野、浅草、両国エリアに展開するとともに、さらに拡大中。東京以外ではJALと提携して沖縄でもサービスを開始している。
2025年3月時点でのポート数は350か所で車両台数は1300台以上。東京都内16区でサービスを行なっている。また、4月13日開幕の大阪・関西万博でもLimeの車両を提供し、関係者が無料で使える体制を整えている。
安全対策としては、ヘルメットセルフィー割引を導入していることもLimeの特徴。乗車時にアプリでヘルメット着用の姿を自撮りすれば、利用料金が通常料金から10%割引になり、ヘルメット装着を促している。
首都高へのジオフェンシング制御による誤進入対策はLimeが初
続いてジオフェンシング機能についての説明を行なった、Limeの日本政府渉外担当責任者の井上祐輔氏によれば、首都高でジオフェンシング制御によって誤進入対策を行なったのは、特定小型原付ではLimeが初という。
Limeではサービス開始から間もない2024年9月以降、公園などへの誤進入対策をジオフェンシング制御で導入している。その後、12月に首都高で他社の特定小型原付のモビリティが首都高に立ち入ったと報道があったことを受けて、警察や首都高に相談し、Limeで誤進入対策について検討を開始したという。
その後、2025年2月下旬に渋谷と池袋の入口でジオフェンシング制御を導入し、料金所で停止させられるようにした。さらに、3月末にLimeユーザーが新宿の入口から誤侵入し、料金所で止められる事例があったことから即日、新宿の入口でも制御を設定した。
Limeのジオフェンシング制御はすでに海外で実施していたもので、「走行禁止エリア」だけでなく「減速エリア」も設定できる。例えばオーストラリアのメルボルンでは、市街地のあちこちに走行禁止エリアを設定している。
制御は、走行禁止エリアに車両がさしかかると出力がストップするというもの。後続車などの安全を配慮してブレーキがかかる制御ではなく、警告音のあとで走行出力が止まり、惰性で走行しながら自然に停止するようになっている。安全上と同時に、警察からも事故防止の観点から急停止することは好ましくないという意向が示されたという。
また、減速エリアも設定でき、日本国内では速度が6km/hに制限される。これらの制御は時間帯で変化させることも技術的には可能だという。
現在、国内で走行禁止エリアを設定しているのは、代々木公園と明治神宮、新宿御苑。減速エリアは、沖縄県那覇市の複合商業施設「パレットくもじ」にも設定している。さらに、渋谷のセンター街でも制御を導入予定とのこと。
高速道路入口の多くに設置を進めたいLime
同社の井上氏によれば、首都高のすべての入口に設定をしたいが、通常走行が可能な車道とGPSの位置情報で判断がつきにくいところでは設定しにくいという。具体的には一般道の真上に料金所があったり、GPSで一般道から首都高に入ったことが判別しにくい構造の場所。通常エリア走行している車両がジオフェンシング制御を受けて、意図せず減速・停止してしまうのは安全上も問題がある。
同様の問題として、歩道走行と車道走行を区別して低速走行モードにすることも現在のGPSの精度では難しい。対策が求められるスクランブル交差点へ歩行者信号での進入も、車道との区別ができないため制限がかけられないという。
井上氏によれば、ジオフェンシング制御の機能を行政機関などで説明すると、この機能についてさまざまな期待が持たれるという。しかし「GPSの精度が大きく影響する技術」のため現状ではできないことが多い。
それでも、首都高に入ることを防ぐという前提があるので、テクノロジーの会社として、導入できそうなところは実証してみて、本当に止まれるか、ほかに影響はないかなどを確認しながら、慎重に進めていくとのことだ。
なお、設定したエリアで走行禁止や減速といったジオフェンシング制御は、一部他社でも導入していてLime独自のものではない。しかし、Limeでは世界で使っているシステムで精度や運用にノウハウがある。また、機能がもともと実装されていることから、今回の導入についても、エリアの実地検証などを除けば、導入に関するシステム改修などの負担はなかったという。
車両放置はBluetoothのビーコンで対策
今回のもう1つの説明として、Bluetoohを使ったビーコンによる車両放置対策がある。これは車両返却時に、確実に車両をポートに収め、ポート近隣への放置を避けることを狙ったもの。すでに都内50か所に導入しているが、6月までに全ポートに導入される。
Limeのシステムとして、返却時にはスマートフォンでGPSで場所を特定、返却写真を撮ることで返却完了とし時間課金が終了するが、GPSには誤差があり、特に付近に高い建物があった場合に誤差は大きくなる。そのため、ポート付近の別の置き場所に誤って置いてしまっても返却完了となってしまうことがあった。
それを、GPSに加えてBluetoothのビーコンを使って確実にポートに近づいたことを検知して返却確認とするように変更している。ビーコンの範囲は約3mに設定し、ポートのビーコン機器から半径3mにいないと返却画面が出ないため、近隣に誤って置いた状態で「返却」とならないようにする。
同社オフィス前の駐車スペースで停止を体験
実際のジオフェンシング制御で走行を停止させることは、同社オフィスの駐車スペースを使って実演が行なわれた。途中にデモ車向けの走行禁止エリアを設定し、デモ車が通過した際に警告音が鳴って出力がカットされる様子が公開された。
ちょうどコーナーのあたりを走行禁止ポイントと設定する。車両が近づいてくると、車両からいかにも出力ダウンするような音が鳴り、走行出力がカットされ惰性での走行となる。ハンドル中央に設けたディスプレイにも禁止マークが出るようになっている。
同時に行なわれたビーコンについても、返却エリアに入ると車両から音が鳴り、返却のポートに入ったことが分かるようになっている。
年末までに累計2000ポート設置、モビリティはシート付きを増やす
今回の説明会ではテリー氏から、目標として2025年末までに2000ポート以上はないと他社に遅れてしまうとの数値が示され、2000ポートの実現可能性としても、パートナーシップ次第では1社との提携で100を超えるポート設置も見込めることから「難しいことではない」の認識を示した。
また、現在は立ち乗りタイプと座れる着座式をおよそ6:4の比率で提供しているが、着座式の稼働が多く好評のため、今後は着座式を6割から7割に増やし主流としていく。車両のベースは共通で、シート部分のパーツの着脱で両タイプの変更ができるという。