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2014 SUPER GT 第2戦 富士 GT300クラスで4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4が2連勝
2回のセーフティーカー導入とピットインが勝負の明暗を分ける
(2014/5/8 13:42)
- 2014年5月4日決勝開催
5月4日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で2014 AUTOBACS SUPER GT 第2戦「FUJI GT 500km RACE」の決勝レースが開催された。GT300クラスは、予選9位からスタートした4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝/片岡龍也)が残り7周でトップに立ち、最終ラップまで僅差のバトルを制して開幕戦に続く2連勝を飾った。
序盤から順位が大きく入れ替わるレース展開
スタートでポールポジションの3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹)はトップをキープしたが、その後方では序盤から大きく順位が入れ替わった。予選2位の61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(佐々木孝太)は1周目こそポジションをキープしたが、2周目に5位、3周目に8位とあっと言う間に後退してしまった。予選3位の55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一)も、1周目に4位、2周目に8位、3周目に11位と後退していく。
予選上位が後退したため、3周目の順位はトップが3号車 B-MAX NDDP GT-R、2位は30号車 IWASAKI apr GT-R(岩崎祐貴)、3位は7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー)、4位は31号車 OGT Panasonic PRIUS(嵯峨宏紀)、5位は86号車 クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3(細川慎弥)、6位は2号車 シンティアム・アップル・MP4-12C(加藤寛規)、7位は0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴)が続いた。
4周目のストレートエンドで88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(青木孝行)がコントロールを失い激しくクラッシュ。マシン前部を失うほど大破してセーフティーカーが導入された。88号車のドライバーは自力でマシンを降りて事なきを得たが、ストレートエンドにはクラッシュしたマシンのパーツが散乱したため、コース整備によって10周目からレースはリスタートとなった。
リスタート後はプリウスとマクラーレンが快走
リスタート後に勢いを見せたのは、31号車 OGT Panasonic PRIUSと2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cの2台。直線スピードを生かし、14周目に31号車 OGT Panasonic PRIUSは2位、2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cは4位となり、16周目には31号車 OGT Panasonic PRIUSはトップに浮上。2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cも3位までポジションアップ。17周目には2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cが2位に浮上した。
その後、GT500クラスの46号車 S Road MOLA GT-Rが激しく炎上。2回目のセーフティーカーが導入された。セーフティーカー走行中の19周目にピットレーンオープンとなり、一部のチームは早めのピット作戦を敢行した。
この時点で残り周回数は84周ほど。今回のレースは2ピット3スティントなので、1回の給油で42周を走れるマシンはピットインが可能となる。31号車 OGT Panasonic PRIUSと2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cのトップ2台はコース上にステイアウト。
3位の3号車 B-MAX NDDP GT-R、5位の7号車 Studie BMW Z4、7位の11号車 GAINER DIXCEL SLS(ビヨン・ビルドハイム)、9位の0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴)、10位の4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(片岡龍也)はそれぞれピットイン。コースに戻り隊列の後方に追い付くと、14位から18位に3号車 B-MAX NDDP GT-R(ルーカス・オルドネス)、11号車 GAINER DIXCEL SLS(平中克幸)、7号車 Studie BMW Z4(荒聖治)、0号車 MUGEN CR-Z GT(野尻智紀)、4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝)の順で並んだ。
21周目からリスタート。21周目のギャップを見ると、ステイアウトしてトップを走る31号車 OGT Panasonic PRIUSとピットインした3号車 B-MAX NDDP GT-Rは24秒差。1回のピットインでおよそ1分30秒をロスすると仮定すれば、ピットインを行ったチームはタイヤの摩耗、後方から遅いマシンを抜くことのロスを加味しても1分以上のマージンを稼いだことになる。
リスタート後もトップ2台の快走は続く。24周目には31号車 OGT Panasonic PRIUSを2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cが抜いてトップに立った。ピットイン組では7号車 Studie BMW Z4がスタート時の違反でドライブスルーペナルティの裁定を受けて後方に下がったが、3号車 B-MAX NDDP GT-R、11号車 GAINER DIXCEL SLS、4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4、0号車 MUGEN CR-Z GTは連帯走行をするようにジワジワと順位を上げていった。
SC中にピットインしたマシンが上位を独占
2位の31号車 OGT Panasonic PRIUSはほぼレース距離の1/3となる36周目にピットイン。ピット作業後の発進に手間取り10秒ほどタイムロスとなった。トップの2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cは後続とのギャップを46秒まで広げ、44周まで引っ張りピットイン。これで1回目のピットインを全車が終わらせたことになる。
45周目の順位は、トップがセーフティーカー走行中にピットインした3号車 B-MAX NDDP GT-R、2位は11号車 GAINER DIXCEL SLS、3位は4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4、4位は0号車 MUGEN CR-Z GTと続く。ステイアウトした2号車 シンティアム・アップル・MP4-12C(高橋一穂)はトップから1分3秒遅れの9位。31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男)は11位となった。結果としてはセーフティーカー中にピットインを行ったチームが上位を独占している。
上位争いは3号車 B-MAX NDDP GT-R、11号車 GAINER DIXCEL SLS、4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4、0号車 MUGEN CR-Z GTの順。この4台は実に22周目から30周以上順位を入れ替えずポジションを上げてきた。一方、上位との差を縮めたい2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cと31号車 OGT Panasonic PRIUSだが、50周目のダンロップコーナー進入で接触。10秒ほどタイムロスすることになった。
2回目のピット作業時間で明暗が分かれた
60周を過ぎると、上位陣が最後のルーティーンピットに向かった。トップの3号車 B-MAX NDDP GT-Rと4位の0号車 MUGEN CR-Z GTが60周目でピットイン。12秒遅れでピットに向かった0号車 MUGEN CR-Z GTだったがピット作業が早く、9秒も先にピットアウトすることができた。
続く61周目に11号車 GAINER DIXCEL SLSがピットイン。発進時にギヤが入らず13秒ほどタイムをロスしてしまった。さらに62周目に4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4もピットイン。4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(片岡龍也)がコースに戻るとピット作業時間が短かった0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴)がその横をすり抜け、事実上のトップに浮上した。
63周目の順位は事実上のトップに立った0号車 MUGEN CR-Z GTが7位、4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4が8位、ピット作業時間を要した11号車 GAINER DIXCEL SLS(ビヨン・ビルドハイム)と3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹)が10位、11位と続く。この時点で31号車 OGT Panasonic PRIUSと0号車 MUGEN CR-Z GTのタイム差は30秒。31号車 OGT Panasonic PRIUSと2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cにはもう1度ピットインする必要があるので、このタイム差では優勝を争うことは不可能だ。
明暗を分けた上位陣の2回目のピットを検証してみよう。静止時間は正確に計測できないのでピット進入のコントロールラインからピットアウトしてコカ・コーラ手前までのセクター1のタイムを比較したい。
●セクタータイム セクター差
0号車 1分47秒939 0秒
4号車 2分01秒573 13秒634
11号車 2分05秒539 17秒6
3号車 2分08秒176 20秒237
通常のセクター1のタイムは21~22秒なので、ピットインによりおよそ1分30秒から1分50秒を要している。このピット作業時間の差に、ピットイン前のギャップを加えても0号車 MUGEN CR-Z GTが最も早く、事実上のトップに立ったことが分かる。「たられば」の話しをすれば、11号車 GAINER DIXCEL SLSは発進で手間取った約13秒がなければ、ピットイン前には0号車 MUGEN CR-Z GTより5秒前を走っていたので、この時点でトップに立っていたはずだ。
この後、見かけ上のトップに立った31号車 OGT Panasonic PRIUSは77周目、2位となった2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cは74周目に2回目のピットイン。これにより0号車 MUGEN CR-Z GTはトップに立ち、チェッカーを目指した。
つかみかけた勝利を逃がした0号車CR-Z
残り10周となる92周の時点でトップの0号車 MUGEN CR-Z GTとのギャップは、2位の4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4が5.4秒、3位の11号車 GAINER DIXCEL SLSが5.8秒、4位の3号車 B-MAX NDDP GT-Rが11.5秒。また、6位の31号車 OGT Panasonic PRIUSは50秒、7位の2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cは1分3秒も後方だ。
2位、3位争いはテール・トゥ・ノーズとなったが、0号車 MUGEN CR-Z GTの優勝は確実と思われた。0号車 MUGEN CR-Z GTは2013年のシリーズチャンピオンだが、実はシリーズ戦では未勝利。特に昨年のこの大会では、トップを快走しながら終盤にタイヤカスを拾って緊急ピットインしたことにより優勝を逃した苦い経験がある。
0号車 MUGEN CR-Z GTの不安要素は、2位争いをする2台より最高速が伸びないこと。長いストレートを持つ富士スピードウェイなので、スリップストリームに入られないギャップを維持しなければ簡単に抜かれてしまう。そのため、5秒のマージンがあっても最後までプッシュを続けた。
ところが、2位とのタイム差は93周目に4.2秒、94周目に3.8秒、95周目に2.9秒と縮まっていく。残り7周、96周目のダンロップコーナーの進入で0号車 MUGEN CR-Z GTはブレーキングで姿勢を乱して単独スピン。その横を4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4と11号車 GAINER DIXCEL SLSがすり抜けていった。
レース終盤、25周に渡りテール・トゥ・ノーズの争いを続け、時にクロスラインで抜きつ抜かれつの争いをした4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4と11号車 GAINER DIXCEL SLSだったが、最後まで順位を入れ替えることなく4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4が逃げ切り、前戦に続き開幕2連勝を飾った。2位は11号車 GAINER DIXCEL SLS、3位はスピンからすぐに復帰した0号車 MUGEN CR-Z GT、4位はペナルティで遅れた7号車 Studie BMW Z4、5位は3号車 B-MAX NDDP GT-Rと、上位5台はセーフティーカー走行中にピットインを行ったチームが独占した。ステイアウトした31号車 OGT Panasonic PRIUSと2号車 シンティアム・アップル・MP4-12Cが6位、7位となっている。
●GT300クラスの最終順位
1位 4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝/片岡龍也)
2位 11号車 GAINER DIXCEL SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)
3位 0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴/野尻智紀)
4位 7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治)
5位 3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ルーカス・オルドネス)
6位 31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀)
7位 2号車 シンティアム・アップル・MP4-12C(高橋一穂/加藤寛規)
8位 65号車 LEON SLS(黒澤治樹/峰尾恭輔/黒澤翼)
9位 67号車 STP タイサン GAIA POWER GT-R(横溝直輝/密山祥吾)
10位 30号車 IWASAKI apr GT-R(岩崎祐貴/影山正美)
結果は4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4の2連勝となったが、また「たられば」の話しをすれば、ピットから発進するときのロスがなければ11号車 GAINER DIXCEL SLSにも勝機はあった。0号車 MUGEN CR-Z GTもスピンがなければ可能性はあった。7号車 Studie BMW Z4もペナルティがなければ優勝争いに絡んでいた。31号車 OGT Panasonic PRIUSも早々にピットインをしていれば優勝の最有力候補だったはずだ。
今シーズンもGT300クラスは僅差の争いとなりそうだ。5月31日、6月1日に開催されるシリーズ第3戦(九州・オートポリス)も目が離せない。