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ZF、SUPER GT第1戦岡山でレクサス、日産が採用するレーシングカーボンクラッチ説明会

DTMと共通の部品をSUPER GT500車両に供給

ZF製カーボンクラッチ
2014年4月5日開催

 ZF(ゼット・エフ)は4月5日、SUPER GT第1戦岡山を開催中の岡山国際サーキットにおいて、レクサス(トヨタ自動車)、日産自動車チームがGT500車両で採用するカーボンクラッチに関する説明会を開催した。

 SUPER GTを統括するGTAでは、DTM(ドイツツーリングカー選手権)との車両規則共通化を進めており、レクサスチーム、日産チームともDTMのすべての車両で使われているZFクラッチを採用したものだ。本田技研工業チームはエンジンレイアウトが異なるためか、現時点で同社のクラッチを採用していない。

ZF製カーボンクラッチを採用する23号車MOTUL AUTECH GT-R
24号車D'station ADVAN GT-Rも午前中の予選は好調。もちろんZF製カーボンクラッチ搭載
レクサス勢もZF製カーボンクラッチを採用。写真は午前中の練習走行でレクサス勢トップだった6号車ENEOS SUSTINA RC F

 説明会に登壇したのは、ZFのレーシング部門となるZFレース・エンジニアリングCEOのノルベルト・オーデンダール氏と、レーシングクラッチを担当するテオ・ロッテンバーガー氏。詳細な説明はテオ氏から行われた。

ZFレース・エンジニアリングCEO ノルベルト・オーデンダール氏
レーシングクラッチを担当するテオ・ロッテンバーガー氏

 レクサス、日産ともフロントエンジン、リアドライブのFR車で、トランスミッションを後輪車軸の直前に置くトランスアクスルを採用。ZFのカーボンクラッチはそのトランスミッションの前部に取り付けられている。

クラッチの搭載される個所。トランスアクスル配置のトランスミッション部となる
説明会の冒頭流されたビデオ。ZF製カーボンレーシングクラッチの構造がよく分かる

 トルクキャパシティは900Nmで、直径140mmのカーボン製の摩擦素材を採用。4組みのプレートでトルク伝達を行う多板型式のクラッチとなっており、システム全体の径は167mmとなる。

ZF製カーボンレーシングクラッチ

 このカーボン製の摩擦素材は、通常のレーシングクラッチ素材として使われているシンタードスチール(焼結合金)に比べて非常に高い温度まで耐え、DTMで採用されているスタンディングスタート時などの非常に高いエネルギー入力にも対応している。実際比較のためにザックス製(ザックスはZFの製品ブランド)のパフォーマンス向けの乾式単板クラッチも展示されていたが、ほぼ同等のトルクキャパシティ(890Nm)ながらシステム全体の径が270mmと大きく、重さも3070gから6580gと2倍以上に増加。慣性モーメント(イナーシャ)も4倍となっている。

 また、クラッチを支えるハウジングもアルミ製のものではなく、高温に耐える特殊スチールを採用。耐久性のある構造を実現している。

ザックス製パフォーマンスクラッチとの比較表
ザックス製パフォーマンスクラッチとの実物比較

 クラッチの断続は、ドライバー側からの入力を油圧で伝達し、EPR(Elastomer Pressure Plate)でトルクの伝達曲線をコントロール。EPRの弾性は異なるものに変更でき、弾性の異なるEPRにすることでトルクの伝達曲線を変更できる。路面・タイヤ・天候・温度などの要因に対してセッティング幅を持たせてある。

ZF製カーボンクラッチの特徴
ZF製カーボンクラッチの仕様
仕様詳細

 DTMで用いられているZF製のカーボンクラッチと、SUPER GTのGT500車両に採用されたカーボンクラッチは同じものだという。DTMはスタンディングスタートのため、スタート時はクラッチに厳しい状態となるが、その際も問題ない性能は確保しているという。一方、SUPER GTはレース距離が長く、給油後の再スタートがあることでクラッチ負荷がDTMより高くなるものの、DTM同様問題ない性能を確保できているとした。

ZF製カーボンクラッチの構造
EPRの動き
EPRによりコントロールできるトルク変化域
矢印の個所よりオイルが入り、クラッチの断続をコントロールする

 午前の練習走行では、このZF製のクラッチを装着した23号車 NISSAN GT-Rが松田次生選手のドライブで1分20秒023を記録。GT500のコースレコードは1分22秒404。気温の高くなった午後の予選では、さらなる好記録が期待できる。直噴ターボという新エンジンに注目の集まりがちな2014年のGT500だが、その速さの一翼をこのZF製レーシングクラッチが担っている。

(編集部:谷川 潔)