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トヨタ、「2014年度モータースポーツ活動発表会」を開催

モータースポーツ活動を「トヨタモーターセールス&マーケティング」に集約

トヨタの2014年度モータースポーツ活動の体制が発表された
2014年1月30日開催

 トヨタ自動車は1月30日、東京都港区にあるアミューズメント施設「メガウェブ」で記者会見を開催し、2014年のモータースポーツ活動について発表した。

 今期のトヨタのモータースポーツ活動は、2013年に引き続きグローバルでは世界耐久選手権(WEC)およびNASCAR、ニュルブルクリンク24時間レースなどに参戦を継続するほか、日本国内でもSUPER GT、スーパーフォーミュラに参戦するなど、基本的には昨シーズン同様の参戦内容になる。

 ただ、これまでトヨタのモータースポーツに関連する企画、マーケティング、開発などを一手に引き受けてきた「モータースポーツ部」は機能が分割され、新しく設置される「モータースポーツユニット開発部」が技術開発や参戦支援を担当。企画/マーケティングなどの役割はグローバルにトヨタのマーケティング業務を担当している「トヨタモーターセールス&マーケティング(通称:TMSM)」に移管されることになる。

トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏

 トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏は「TMSMへとモータースポーツの企画、マーケティングを集中することで、モータースポーツファンの皆様だけでなく、広く一般の自動車ユーザーの皆様にもモータースポーツや自動車を操ることの楽しさなどをアピールしていきたい」と述べ、トヨタのモータースポーツ活動を単に他社との競争やファンへのアピールということだけでなく、広く一般の自動車ユーザーにもアピールできるものにしていきたいという意向を明らかにした。

トヨタのモータースポーツ活動はTMSMに権限を集中させていくと豊田社長

 発表会の冒頭に登場した豊田社長は、過去に行ってきたトヨタのモータースポーツ活動の歴史を振り返るところから説明を始めた。「トヨタのモータースポーツ活動は、1957年に行われたオーストラリア1周ラリーに参戦したことから始まった。次いで1963年の第1回日本グランプリにユーザーチームをサポートするという体制で参戦して、“お客様、ファン、そして世界中に皆様に笑顔をお届けし、もっとよいクルマを提供する”というトヨタのモータースポーツの考え方は、このころからなにも変わっていない」と述べ、今年もこれまでと同じような基本理念を維持してモータースポーツに参戦するとした。

 その上で、トヨタのモータースポーツ活動が「レクサスレーシング」「トヨタレーシング」「ガズーレーシング」という3つのブランドで行われていることについて触れ、「現在はそれぞれのブランドがさまざまなカテゴリーに参戦しているという状況がある。これらを統括し、それぞれの立ち位置を明確にする必要があると考えた。そこで、これらのモータースポーツ活動すべてをTMSMの傘下としていきたい。TMSMへとモータースポーツの企画、マーケティングを集中させることで、モータースポーツファンの皆様だけでなく、広く一般の自動車ユーザーの皆様にも、モータースポーツや自動車を操ることの楽しさなどをアピールしていきたい」と豊田社長は述べ、モータースポーツの企画やマーケティングなどをTMSMの傘下に再編。従来のモータースポーツ部は「モータースポーツユニット開発部」に改称され、技術開発や参戦支援、さらに生産車への技術のフィードバックなどに集中することを明らかにした。

トヨタが初めてモータースポーツに参戦した1957年の「オーストラリア1周ラリー」
日本国内における最初の活動となった1963年の「第1回日本グランプリ」
過去の多彩なモータースポーツ活動。市販車やスポーツプロトタイプカー、WRC、インディ、F1、NASCARなどに参戦してきた

 さらに豊田社長は「私は昨年まで、ドライバー“モリゾウ”としてニュルブルクリンク24時間レースに弊社のエンジニアたちと参戦してきた。ニュル24時間は世界一過酷と言ってよいレースで、そうした活動のなかで得られた経験がよりよいクルマ作りに生きている。もっとよいクルマを作ることに終わりやゴールはないのだ」と述べ、モータースポーツに参戦することがトヨタのクルマ作りによい影響を与えており、今回の組織再編でもそうしたモータースポーツの経験を開発に生かしたり、グローバルなマーケティング活動に活用していきたいと説明した。

 最後に豊田社長は「こうした変更によりトヨタのモータースポーツ活動は“リボーン”するのだ」と述べ、トヨタのモータースポーツ活動を生まれ変わらせていくことを表明してスピーチを締めくくった。

現在、トヨタのモータースポーツ活動は3つのブランドで行われている
3ブランドの活動がTMSMに集約されることになった
モータースポーツ活動のテーマは「もっといいクルマづくり」「クルマファンづくり」の2つ
新設となるモータースポーツユニット開発部がTMSMの参戦活動を支援する

SUPER GT、スーパーフォーミュラともに一部で大きな変更が行われたドライバー人事

トヨタ自動車 代表取締役副社長 加藤光久氏

 豊田社長によるスピーチのあと、トヨタ自動車 代表取締役副社長 加藤光久氏から2014年のモータースポーツ参戦体制が発表され、次いで参戦ドライバーの紹介が行われた。基本的には2013年同様といった体制だが、いくつかのチームでは大きな動きもある。

世界耐久選手権(WEC)

マシンチームカーナンバードライバー
TS040 HybridTMG7アレクサンダー・ブルツ
ニコラス・ラピエール
中嶋一貴
8アンソニー・デビットソン
ステファン・サラザン
セバスチャン・ブエミ

NASCAR

マシンチームカーナンバードライバー
トヨタ カムリジョー・ギブス・レーシング11デニー・ハムリン
18カイル・ブッシュ
20マット・ケンゼス
マイケル・ウォルトリップ・レーシング15クリント・ボウヤー
55ブライアン・ヴィッカーズ

ダカールラリー

マシンチームカーナンバードライバー
ランドクルーザー200トヨタ車体345三橋淳
アラン・ゲネック
344ニコラ・ジボン
三浦昂

ニュルブルクリンク24時間レース

マシンチームカーナンバードライバー
LEXUS LFAGAZOO Racingn/a木下隆之
石浦宏明
大嶋和也
LEXUS LFA CodeXn/a飯田章
脇坂寿一
井口卓人
トヨタ 86n/a影山正彦
佐藤久実
蒲生尚弥

 WECに関しては2013年同様の体制となっており、7号車に日本人ドライバーの中嶋一貴選手が搭乗するのも同様だ。大きな違いは、2013年まではシーズン序盤は2台体制で参戦し、ル・マン24時間レースのあとは1台に集約していたのに対し、2014年シーズンは1年を通じて2台で参戦するということが明らかにされた。6月にはル・マン24時間レースが行われる予定になっており、悲願のル・マン初優勝に向けて開発が続けられることになる。今年のWECはアウディに加えて、ドイツの強豪ポルシェが参戦することを明らかにしており、アウディ、ポルシェ、そしてトヨタという3つのマニファクチャラーがル・マンと世界チャンピオンという2大タイトルを巡って激しく争うシーズンになる。

WECで7号車に乗り込むアレクサンダー・ブルツ選手(写真左。以後選手名は左側から紹介)、ニコラス・ラピエール選手、中嶋一貴選手
WECで8号車に乗り込むアンソニー・デビットソン選手、ステファン・サラザン選手、セバスチャン・ブエミ選手
2014年のダカールラリーで市販車部門1位に輝いた三橋淳選手、アラン・ゲネック選手
ニュルブルクリンク24時間レースでLEXUS LFAをドライブする木下隆之選手、石浦宏明選手、大嶋和也選手
ニュルブルクリンク24時間レースでLEXUS LFA CodeXをドライブする飯田章選手、脇坂寿一選手、井口卓人選手
ニュルブルクリンク24時間レースでトヨタ 86をドライブする影山正彦選手、佐藤久実選手、蒲生尚弥選手

SUPER GT GT500クラス

マシンチームカーナンバードライバー
LEXUS RC Fレクサス チーム ゼント セルモ1立川祐路
平手晃平
レクサス チーム ルマン エネオス6大嶋和也
国本雄資
レクサス チーム ペトロナス トムス36中嶋一貴
ジェームス・ロシター
レクサス チーム キーパー トムス37伊藤大輔
アンドレア・カルダレッリ
レクサス チーム サード39石浦宏明
オリバー・ジャービス
レクサス チーム ウェッズスポーツ バンドウ19未定
未定

SUPER GT GT300クラス

マシンチームカーナンバードライバー
未定apr31新田守男
嵯峨宏紀

 SUPER GTに関してはほとんどのチーム(チャンピオンチームのセルモ、ルマン、トムスの2台)で2013年同様の体制になっているが、サードに関しては2013年までトヨタの“SUPER GTの顔”とも言える役割を担っていた脇坂寿一選手のチーム離脱が、2013年末に同選手のオフィシャルブログ内で発表され、その後の展開に注目が集まっていた。そのサードでは、脇坂選手に替わってオリバー・ジャービス選手が石浦宏明選手のチームメイトになると発表されている。ジャービス選手はイギリス出身のドライバーで、2007年にトムスチームから全日本F3選手権に参戦してシリーズ3位を獲得。その後はドイツのDTMに参戦していたが、久々に日本のモータースポーツシーンへと復帰する。

 サードを離脱することが明らかになっていた脇坂選手だが、今回発表されたSUPER GTのリストには名前が載っていなかった。事前の情報では、脇坂選手は今回ドライバーが発表されていない19号車レクサス チーム ウェッズスポーツ バンドウのドライバーに選ばれるのではという話もあったが、結局、今回は19号車のドライバーは未定のままとなっていた。これが脇坂選手が2014年のSUPER GTに参戦しないことを意味するのか、それともただ正式決定が遅れているだけなのか定かではないが、人気の高い脇坂選手がSUPER GTを走らないとすれば、がっかりするファンも少なくないと考えられるだけに、19号車のドライバー人事は今後も要注目と言える。

SUPER GT GT500でレクサス チーム ゼント セルモに乗る立川祐路選手、平手晃平選手
SUPER GT GT500でレクサス チーム ルマン エネオスに乗る大嶋和也選手、国本雄資選手
SUPER GT GT500でレクサス チーム ペトロナス トムスに乗る中嶋一貴選手、ジェームス・ロシター選手
SUPER GT GT500でレクサス チーム キーパー トムスに乗る伊藤大輔選手、アンドレア・カルダレッリ選手
SUPER GT GT500でレクサス チーム サードに乗る石浦宏明選手、オリバー・ジャービス選手
19号車レクサス チーム ウェッズスポーツ バンドウのドライバーは未発表。今後の展開に注目したい

スーパーフォーミュラ

マシンチームカーナンバードライバー
FN14/トヨタRI4Aコンドーレーシング3ジェームス・ロシター
チーム ルマン7平川亮
8ロイク・デュバル
KCMG18中山雄一
チーム インパル19ジョアオ・パオロ・オリベイラ
20ナレイン・カーティケヤン
ペトロナス チーム トムス36アンドレ・ロッテラー
37中嶋一貴
P.Mu/セルモ・インギング38石浦宏明
39国本雄資
とちぎ ル・ボーセ モータースポーツ62嵯峨宏紀

全日本F3選手権

マシンチームカーナンバードライバー
n/aペトロナス チーム トムス1勝田貴元
36山下健太

 スーパーフォーミュラに関しても、チーム ルマン、トムス、ル・ボーセの3チームは昨年同様の体制だが、ほかは大きく変動している。コンドーレーシングはこれまでニッサン系ドライバーの安田裕信選手を起用していたが、2014年はトヨタ系とも言えるジェームス・ロシター選手に替わっている。また、チーム インパルは、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手は継続したものの、もう1人の松田次生選手は、元F1ドライバーのナレイン・カーティケヤン選手へと変更されている。松田選手は2007年、2008年と2年連続でスーパーフォーミュラの前身であるフォーミュラ・ニッポンのチャンピオンになった選手で、2014年の参戦がないとすればやや残念だ。また、セルモ・インギングのドライバも、2013年までの平手晃平選手から石浦宏明選手に変更されている。

スーパーフォーミュラでチーム ルマンから参戦する平川亮選手
スーパーフォーミュラでKCMGより参戦する中山雄一選手
スーパーフォーミュラでチーム インパルより参戦するジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手、ナレイン・カーティケヤン選手
スーパーフォーミュラでトムスより参戦する中嶋一貴選手
スーパーフォーミュラでセルモ・インギングより参戦する石浦宏明選手、国本雄資選手
スーパーフォーミュラでル・ボーセより参戦する嵯峨宏紀選手
トヨタの若手育成プログラム「TDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)」の一環として全日本F3に参戦する勝田貴元選手、山下健太選手

(笠原一輝)