日産、2010年度グローバルモータースポーツの活動概要を発表
SUPER GTは3チームに縮小、新たにFIA GT1世界選手権へ参戦

日産自動車 グローバル・モータースポーツ・プログラム・ダイレクター(ニスモ社長兼務)の眞田裕一氏

2010年2月10日開催



 日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は2月10日、横浜・日産グローバル本社ギャラリーにおいて、2010年度グローバルモータースポーツの活動概要を発表した。

 日産自動車グローバル・モータースポーツ・プログラム・ダイレクター(ニスモ社長兼務)の眞田裕一氏は、活動理念を「モータースポーツ活動を通して、日産車や日産を応援してくださるファンの皆様に夢と感動を与え、楽しいモータースポーツライフを過ごしていただく」と前置きし、2010年の活動についても同様であると述べた。

SUPER GT
 2008年からR35GT-Rで参戦し、同年シリーズチャンプを獲得。だが、昨年は最後までチャンピオン争いを演じるも3位になったことに触れ、今年は「エントリーを1台減らし3台に集中して戦う」ことを発表。また、エンジンの排気量を3.4リッターとすることで戦闘力を向上し、「昨年以上の結果とお客様に楽しんで頂けるレースをするために、日産チーム一丸となってシリーズチャンピオンを目指し戦っていく」と宣言した。

FIA GT1世界選手権
 F1、WRC、WTCCに次いで行われる4番目の世界選手権、FIA GT1世界選手権への参戦を発表。参戦目的については「GT-Rで世界選手権に参戦することで、日産の技術力の高さを全世界にアピールする」と述べた。ただし、同選手権にはメーカーが直接参戦することができないため、プライベーター2チームにGT-Rを供給し技術支援を行う形となる。

そのほか
 そのほかのカテゴリーに関しては大幅に少なくなると前置きした上で、中国の国内最高峰である中国ツーリングカー選手権にティーダで参戦する東風日産への技術支援を発表。2006年、2008年に次いで3度目のチャンピオンを目指すとした。

NDDPアドバンススカラシップ対象ドライバー2名、NDDPスカラシップ対象ドライバーの計6名をサポート

 また、若手ドライバーの育成を目的とし、2006年に始まったフォーミュラチャレンジ・ジャパンへも引き続き協賛。ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム(NDDP)の日産スカラシップ対象ドライバー4名の参戦をサポートするほか、主催者が一元管理するエンジンのメンテナンス業務もニスモが担当する。また、NDDPでは日産アドバンススカラシップ対象ドライバー2名を、全日本F3選手権ナショナルクラスに参加させる。

SUPER GTチーム体制
 チーム体制については、昨年から引き続き日産系チームの総監督を担当することとなった柿本邦彦氏により説明が行われた。

 冒頭、「厳しい経済状況下の中、ファンの方に楽しんで最大限満足していただくためにどうあるべきか検討した結果、3台に絞ることになった」と概要を解説。クルマに関しては量産車の技術を活用し、2010年規則に合致した3.4リッターエンジンを新たに開発。4.5リッターエンジン搭載に伴う「特別性能調整」を受けずに済むことになった。走行テストでは「かなり素性がよく、手応えを感じている」とのこと。

 また、今年の特徴として3台の装着タイヤがすべて異なることに言及。SUPER GTでは異例の取り組みとなるがチャレンジ精神の現れ、季節や異なるサーキットでのコンディションで強みが出るのではないかと述べた。

 ドライバー体制はタイヤやチームの体制や特質を踏まえ、昨年から大きく変更した。新体制の下、最高のパフォーマンスが出せる組み合わせに。昨年までGT500クラスに参戦していたHASEMIチームは、フェアレディZでGT300クラスに参戦、チャンピオンを目指すとした。

昨年に引き続き日産系チームを率いることになった柿本邦彦氏今年はエントリーする3台がそれぞれ異なるタイヤブランドを装着する
No.エントラント監督ドライバー車両名タイヤメーカー
23NISMO鈴木豊本山哲/
ブノワ・トレルイエ
MOTUL AUTECH GT-Rミシュラン
12TEAM IMPUL星野一義松田次生/
ロニー・クインタレッリ
カルソニック IMPUL GT-Rブリヂストン
24KONDO RACING近藤真彦ジョアオ・パオロ・オリベイラ/
安田裕信
HIS ADVAN KONDO GT-Rヨコハマ
23号車、NISMOチーム監督、鈴木豊氏。「昨年は後一歩のところでチャンピオンを逃しましたが、チーム一丸となってチャンピオンを目指す」と宣言12号車、TEAM IMPUL監督、星野一義氏は「チャンピオンを取る! とスタッフ一同気合いを入れている。最高の恩返しできるようにしたい」と述べた「今年もチャンスがあれば1勝、チャンスがあればチャンピオン争いに食い込めるようにがんばりたい」と24号車、KONDO RACING監督の近藤真彦氏
本山哲選手は「昨年逃したタイトルを取り返し、シーズン終わりには明るい報告ができるようにしたい」と抱負を語ったSUPER GT出場する全チームのドライバーおよび監督NISMOチーム。左からブノワ・トレルイエ選手、鈴木豊監督、本山哲選手
TEAM IMPUL。左からロニー・クインタレッリ選手、星野一義監督、松田次生選手KONDO RACING。左からジョアオ・パオロ・オリベイラ選手、近藤真彦監督、安田裕信選手

2010年 SUPER GT GT500仕様 R35 GT-R SPEC
全長:4695mm
全幅:2000mm
ホイールベース:2720mm
トレッド(前):1685mm
トレッド(後):1675mm
車両重量:1100kg
エンジン型式:VRH34A
排気量:3396cc
最大出力:450ps以上
最大トルク:40kgm以上
クラッチ:5.5インチカーボントリプルプレート
トランスミッション型式:トランスアクスルタイプ6速シーケンシャル
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン
駆動方式:2WD(FR)
ホイール(前/後):13.0J×18
タイヤ(前/後):31/71-18

FIA GT1世界選手権チーム体制
 新たに参戦することになったFIA GT1世界選手権のチーム体制はNISMOのジェネラルマネージャーの岩本真奈樹氏により発表が行われた。

 4大陸、合計10戦と世界各地を転戦して行われる世界選手権への参戦は、同社としては1990年代前半のWRC以来の取り組みとなる。同選手権は規定によりマニファクチャラー6ブランドのみで、さらに2チーム&2台ずつ計4台のエントリーが義務づけられており、合計24台での争いとなる。また、メーカーのワークス参戦は認められておらず、プライベーターへの技術支援という形での関与となる。

 日本の力強さの象徴である相撲からネーミングされた「SUMO POWER GT」は、FIA GT1世界選手権に参戦するために設立されたイギリスのチーム。一方の「SWISS RACING TEAM」はスイスで設立されたチーム。GT1クラスでは2007年以来7勝を挙げている。

NISMO ジェネラルマネージャーの岩本真奈樹氏FIA GT1世界選手権参戦車両。エンジンは5.6リッターの大排気量NAとなる
参加するマニュファクチャラーは日産のほか、フォード、ランボルギーニ、アストンマーチン、シボレー、マセラティSUMO POWER GTのドライバーとなった日本でもお馴染みのミハエル・クルム選手。「合同テストがまだなのでどのぐらいのレベルにあるかはまだ分からないが、GT-Rはとてもよく、自信がある。日本でのレースはないが忘れないでください」と挨拶
No.エントラント監督ドライバータイヤメーカー
未定SUMO POWER GTジェームズ・ラムゼイミハエル・クルム/
ピーター・ダンブレック
ミシュラン
未定SUMO POWER GTジェームズ・ラムゼイ未定/未定ミシュラン
3SWISS RACING TEAMオトゥマー・ウェルティカール・ヴェンドリンガー/
ヘンリ・モサー
ミシュラン
4SWISS RACING TEAMオトゥマー・ウェルティマックス・ニルソン/
未定
ミシュラン

2010年 FIA GT1仕様R35 GT-R SPEC
全長:4730mm
全幅:2040mm
ホイールベース:2780mm
トレッド(前):1675mm
トレッド(後):1710mm
車両重量:1250kg(2010年規則)
エンジン型式:VK56DE
排気量:5552cc
最大出力:600hp(2010年規則)
最大トルク:650Nm以上
クラッチ:5.5インチカーボントリプルプレート
トランスミッション型式:6速トランスアクスル
ブレーキ(前/後):6ピストンキャリパー/カーボン製ディスク&パッド
サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後):マルチリンク
駆動方式:2WD(FR)
ホイール(前/後):13.0J×18
タイヤ(前/後):31/71-18

SUPER GT参戦車両
昨シーズン行われたFIA GT選手権、GT1クラスにテスト参戦したGT-R

(安田 剛)
2010年 2月 10日