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充電インフラの整備に向けて国内自動車メーカー4社が共同プロジェクトを発足

4社で力を合わせて“ニワトリと卵の関係”を断ち切る

クリーンなPHV・PHEV・EVといった電動車両を普及させ、自動車による環境負荷を減らすことを目的に4メーカーが協力
2013年7月29日発表

 トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業の自動車メーカー4社は7月29日、電動車両(PHV・PHEV・EV)の充電器設置活動を共同で推進し、利便性の高い充電ネットワークサービスの構築を共同で実現していくことに合意したと発表した。

「自動車業界は日ごろから競争が激しいと言われますが、次世代車両のインフラ整備のために力を合わせていこうと考え、各社がバラバラにではなく、お客様の利便性向上を促進していきたいと考えています」と語る日産自動車の川口常務

 東京都港区にある日本自動車会館で行われた共同記者会見には、各社の担当役員が出席。4社を代表して、日産自動車 渉外担当 常務執行役員 川口 均氏からスピーチが行われた。このなかで川口常務は「この週末もゲリラ豪雨が発生して驚かされていますが、地球温暖化や気候変動、エネルギー問題など、私たちには非常に厳しい環境問題が起きています。これに対応するためにはCO2の削減、低炭素化の実現が急務です。世界のCO2排出量で17~18%は自動車と言われています。さらなる気温上昇を抑制し、低炭素化を進めるために自動車メーカーの役割は大変大きなものがあります。そのためにぜひ必要なのが車両の電動化です。電動車両普及には充電インフラの整備が重要な前提条件になるのです」と語り、4社が協力することになった理由を説明した。

「充電器がないからEVやプラグインハイブリッドは買えないとためらう“ニワトリと卵の関係”を一挙に断ち切りたい」とコメントする日産自動車ゼロエミッション事業本部の牧野英治部長

 共同プロジェクトの概要は日産自動車ゼロエミッション事業本部の牧野英治部長から解説された。日本における電動向けの充電器は、4社の調査によると急速充電器が1700基、普通充電器3000基強が設置されているが、まだ需要に対して十分とは言えない状況。さらには複数行われている充電サービス同士の連携も不十分で、ユーザーにとって安心して利用できる状態が確保されず、電動車両の購入のハードルとなっている。

 この解消に向け、政府は緊急経済対策のなかで1005億円の充電器設置補助金を用意。この大きな支援を背景に参加自動車メーカー4社は充電器の設置に取り組んでおり、これまで各社は個々に設置者の開拓を進めてき。しかし、充電インフラは公共性が高く、2014年2月末に設定された政府の補助金支援期間内に設置をスピーディに推進する必要があるとの共通認識を確認したことで、共同プロジェクトを始めることに合意した。

 具体的には、「国内における充電器設置促進活動の推進」「充電器の設置費用と維持費用の一部を一時負担して充電器設置活動を推進」「お客様が快適なPHV・PHEV・EVライフをすごせる充電インフラネットワークサービスの構築」「官庁や地方自治体との連携」という4点を目標に活動を実施。充電器設置の促進活動では、普通充電器を大型商業施設などに8000基、急速充電器を高速道路のSA・PA、コンビニ、ガソリンスタンドなどに4000基を目標に設置するとしている。また、充電インフラネットワークサービスの構築では、現在は充電サービス会社単位で発行している利用登録のカードを、電車のSuica、PASMOなどのような相互利用可能なサービスにスイッチし、充電スポットの満空情報の共有化なども検討しているという。ただし、現在の段階では今後の共同プロジェクト推進についてまず合意した段階で、具体的な施策などについてはこれ以降の協議のなかで決定していくとのこと。

充電インフラは「目的地充電」「経路充電」「基礎充電」の3種類に分けられ、今回の共同プロジェクトでは「目的地充電」「経路充電」について設置促進を進めていくという
充電スポットの具体例。外出先での充電となる「目的地充電」「経路充電」では、普通充電と急速充電の両方が必要となる
「プラグインハイブリッド車」「電気自動車」はそれぞれに利用目的が異なり、需要が高い充電方法にも差がある
充電器の設置件数を大幅に増やし、さらに同じカードでどこでも充電可能にするといった大きな事業を4社の協力で実現に向かって進めていく
これまでは各社でそれぞれのディーラーなどに充電スポットを設置してきたが、これからは大型ショッピングセンターなどに呼びかけ、設置費用や維持費などの一部を一時負担して設置していく
利用登録したカードの相互利用、充電スポットの満空情報の共有化などを実現し、ユーザーの利便性を加速させる
環境問題の対策として、走行する車両からのCO2削減、さらにスマートコミュニティ構築など社会インフラに対する貢献を目標としている

各メーカー出席者が語る共同プロジェクトに対する意気込み

 記者会見の後半には質疑応答が行われ、このなかで各社の出席者から共同プロジェクトに対する意気込みが語られたのでご紹介する。

トヨタ自動車 国内販売事業本部 常務役員 佐藤康彦氏

トヨタ自動車 佐藤康彦氏

 トヨタは昨年1月にプリウスPHVを発売しています。ハイブリッドカーはトヨタの販売で中核となっていますが、次世代環境車としてはPHVをなんとか本命にしたいと思っており、“環境といえばトヨタ”というポジションを獲得したい。しかしながら、発売以降、お客様や販売店から改善点を指摘され、その1つに「もっといろいろな場所で充電できることがユーザーにとっていいことだ」という声をたくさんいただいています。これを個社といても考えていましたが、政府や経済産業省の施策で一気に促進させようと補助金が出ることになりましたので、この機会に4社で共同プロジェクトを発足できて嬉しく思っています。

日産自動車 渉外担当 常務執行役員 川口 均氏

日産自動車 川口 均氏

 私どもが電気自動車のリーフを発売したのは2010年末でした。これと同時に世界各地でさまざまな国や都市などと電気自動車による低炭素化に向けた連携協定も進めており、現時点でおそらく150以上の協定を結んでいますが、個社として実現できるレベルには限界があります。クルマの販売では競争ですが、電動車両の普及に向けた時間短縮という面も含めて4社が一致団結し、新しい時代の公共のインフラである充電ネットワーク作りをみんなで進めていこうと考えております。

本田技研工業 日本営業本部長 専務執行役員 峯川 尚氏

本田技研工業 峯川 尚氏

 ホンダはCO2削減を企業の重要なテーマとして位置づけ、「Blue Skies for Our Children」というグローバルの標語を設定して取り組んでいます。CO2削減という観点では電動化技術が重要な役割になるという考えは各社様と同じです。また、同じ観点から進めている「スマートホーム」「スマートコミュニティ」といった活動でも、電動化技術を持ったクルマが重要なポジションになることは疑いもないことです。今回、このような4社協力による充電インフラ設置に向けた取り組みが決まり、我々としても鋭意取り組んで電動車両の普及だけでなく、最終的にはスマートコミュニティ実現の加速化にも貢献できればと考えています。

三菱自動車工業 執行役員 国内営業本部長 蓮尾隆一氏

三菱自動車工業 蓮尾隆一氏

 私どもは2009年に電気自動車のi-MiEVを発売してから、販売店の店頭だけでなく、道の駅や日本各地の自治体、ショッピングモールなどの充電インフラ設置に協力し、お願いなどを続けてきました。ただ、やはり1社でできることには限界があって思うように進まないと感じていましたが、新しい補助金によって破格のサポートを受けられるようになり、この機にみなさんと一緒に充電インフラの拡充を進めていけると嬉しく思っています。個人的にもi-MiEVに乗っているので、どこでも行けるようになることが非常に楽しみです。

(編集部:佐久間 秀)