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自工会、2輪4社による市場動向と取り組みについて報告

国内販売100万台に向けた施策も明らかに

自工会が2輪4社による合同記者会見を開催
2013年9月18日開催

 日本自動車工業会(自工会)は9月18日、ヤマハ発動機、本田技研工業、川崎重工業、スズキの2輪4社による合同記者会見を開催し、2輪車市場の最新の状況や活動などに関する報告を行った。これに先立つ8月には、経済産業省が2輪車の国内販売を100万台とする目標を打ち出したばかりということもあって、低迷が続く市場の活性化を自工会としてどのように図るのかについて、注目が集まった。

グローバル化が進む2輪、インドとアフリカが有望市場に

二輪車特別委員会 副委員長 三輪邦彦氏(ヤマハ発動機 上席執行役員)

 まず、二輪車特別委員会 副委員長の三輪邦彦氏(ヤマハ発動機 上席執行役員)が、世界全体と国内における2輪車市場の状況について報告した。2012年度の世界生産台数は、中国、ASEANの経済の減速によって大きく減少し、前年度比マイナス431万台の5913万台となった。しかし、インドでは70万台増加し、まだ規模は小さいもののアフリカでも生産が活発化しているという明るい材料もある。

 2輪車販売台数はアジア全体で見ると若干の減少。南米では2009年以降順調に伸びているが、欧州は減少傾向にある。また、北米も減少傾向にあったものの、2012年度はわずかに増加に転じた。

 一方、国内の2輪車販売台数は、駐車場不足の問題、排ガス規制強化による価格上昇などが影響し、2009年度は前年度比マイナス13万台以上という大幅な減少があった。その後2012年度までは42万台から44万台と横ばいで推移しているが、2013年1~8月は各社新製品のヒットにより125cc超250cc未満の“軽2輪”が特に好調で、2輪車全体の販売台数は前年同月比102.7%と伸びている。

2012年度の世界の2輪車生産台数は5913万台。2011年度より減少した
インドでは販売台数も増加。北米も若干持ち直した
国内は2012年度まで横ばいが続いていた
しかし2013年1~8月は増加へ。125cc超250cc未満の新製品がヒットのが主要因という

 2輪車の生産に対する取り組み方としては、コストが安く品質も安定してきている海外で生産した小排気量車を国内に、国内で生産した中・大排気量車を国内や海外の先進国にそれぞれ出荷する体制へと移行しつつある。ASEANを中心とした各国地域内では部品の相互補完体制の確立も進んでいる段階で、より効率的な生産が可能になってきているという。

 ジャパンブランドの2輪車の生産はすでに全世界で40%超になっていることにも触れ、今後はアフリカ、南米などでのシェア獲得を目指す。ただし、さらなる成長には「国際競争力の強化、先進技術による優位性の発揮、2輪車の交通安全について各国の実情に応じた対策を積極的に展開していくこと」が必要であると同氏は述べた。

国内で生産した中・大排気量は輸出、小排気量車は輸入が中心となっている
ジャパンブランドの2輪車の世界シェアはすでに40%超。今後は50%超を目指す
成長には国際競争力の強化、技術の優位性の発揮などが必要になると見る

 なお、自工会は、グローバル化が進む2輪市場において、大きく分けて4つある課題に向けて活動を行っているという。1つは「通商」に関する活動で、自由貿易を推進するべく、2輪車や部品の関税撤廃とともに、貿易の円滑化や投資の自由化などにつなげるために非関税障壁の是正を求めている。

 2つめは「技術」に関してで、国際基準と調和の取れた安全・環境規制と車両型式認証を推進しており、日本がアドバンテージのある電動2輪車など新技術についての国際基準・規格化を4社がリードするよう進めていることを挙げた。また、3つめの「知的財産権」では、権利を侵害する粗悪な2輪車本体や部品が流通することによって、不当な競争の発生やユーザーに不利益を生じさせる事態に陥らないよう対応を政府に請願していること、ユーザーに対する啓発活動も実施していることなどを紹介。最後の4つめは「交通安全」に関する取り組みで、世界各国・地域で交通安全報告書の作成、交通安全啓発ポスター・ステッカー等の作成といった活動が主となる。

グローバル化に向けて4つの課題がある
通商、技術に関する課題と活動の内容
知的財産権の保護や交通安全に対する取り組みも重要なポイントとなる

バスレーン通行ルールの統一を働きかけ

二輪車特別委員会 副委員長 中川雅文氏(川崎重工業 執行役員)

 8月に経産省が国内販売100万台の目標を打ち出したのに呼応する形で、国内の2輪車産業活性化には「利用者環境改善」「有用性を社会的に再認識してもらうための取り組み」「技術・人・環境を含めた総合的な交通安全対策」が必要であると同副委員長 中川 雅文氏(川崎重工業 執行役員)が課題提起した。

 たとえば利用環境については、2輪車駐車場の不足が以前から叫ばれているにも関わらず、なかなか増えない状況にある。自治体が独自に条例を改正して自転車駐輪場での2輪車の受け入れを進めているところもあるが、2010年から現在までに改正したのは町田市、大阪市、北九州市、千葉市、福岡市のわずか5都市のみ。自工会ではこれらの事例を「自治体の二輪車駐輪場事例集 2013」としてまとめ、各自治体向けに10月から配布を始める予定で、自転車駐輪場への2輪車受け入れの理解を広めたい考えだ。

国内の市場拡大には、利用環境の改善などが急務

 また、バスレーンの活用についても提言するべく進めている。現在は全国の都道府県でバスレーンにおける通行ルールに違いがあり、東京などでは歩道側の第1通行帯(バスレーン)を通行できるのは原付のみ、第2通行帯は自動2輪のみとしている。しかし、神奈川などでは第1通行帯は原付・自動2輪ともに通行できるものの、第2通行帯は原付・自動2輪ともに通行不可となっている。この違いによりライダーがルールを誤認しがちであるとし、全国一律で第1通行帯は原付・自動2輪通行可に、第2通行帯は自動2輪のみ通行可とするよう関係各所に働きかけていく予定。

 そのほか、8月19日の「バイクの日」に行われた、著名人らが参加した官民合同バイクイベントや、9月2日開催の「BIKE LOVE FORUM」など、社会的に再認識してもらうためのPR活動と交通安全対策に向けた取り組みを行っており、今後も続けていきたいとした。

2輪車駐車場の設置がなかなか進んでいない
バス専用通行帯の通行ルール統一を提言へ
2輪車の通行が規制されている区間の情報提供も行っていく
各種バイクイベントを通じて社会的な認識と、交通安全に対する意識を高めていく

125cc免許取得の負担軽減に関する提言も検討へ

二輪車特別委員会 委員長 柳弘之氏(ヤマハ発動機 代表取締役社長)

 2020年に国内生産100万台という目標を掲げていることについては、「これをやったら100万台になるという絶対的な施策はない」(青山氏)としつつも、同委員長の柳弘之氏(ヤマハ発動機 代表取締役社長)は、高速道路利用料金の適正化を求めていくこと、前述の2輪車駐車場の整備、バス専用通行帯の通行ルールの整理など、“利用環境の改善”という「非常にシンプルだが大事」(柳氏)な活動を4社が地道に展開していくことで、十分に実現可能な「夢物語ではない」数字であるとの認識を示した。

 また、125cc免許取得の際の負担軽減についても議論を進めているとのことで、警察庁側からもシミュレーター教習の有効性に議論の余地があるとの見解を得られたことから、シミュレーター教習を減らし、その分実車による教習に振り分けるなどして、教習時間全体を短縮することも含め提言していく考え。

「国内生産100万台は荒唐無稽な話ではない」と話す、二輪車特別委員会 副委員長 内藤雅彦氏(日本自動車工業会 常務理事)
「4社の地道に展開していくことで実現できる」と語る、二輪車特別委員会 副委員長 青山真二氏(本田技研工業 取締執行役員)
二輪車特別委員会 副委員長 望月英二氏(スズキ 取締専務役員)

 「国内販売100万台」に加え、自工会が目指す「世界シェア50%超」「運転マナーの向上」の3つの目標について、柳氏は「業界だけでなく、関連する業界団体、国、自治体が一致団結することで達成できるものと考えている」と、あらゆる方面へ協力を求める一方で、報道陣と2輪車ファンに対しては、11月22日から開催される「第43回 東京モーターショー2013」で「ニューモデルの発表を含め、お客様をワクワクさせるようなメッセージがあると思うのでご期待いただきたい」と語り、国内の2輪市場拡大に向けた動きをこれから活発化させていく決意をにじませた。

2020年に「国内販売100万台」、「世界シェア50%超」、「運転マナーの向上」の実現を目指す

(日沼諭史)