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「SUBARU BRZ R&D SPORTS」SUPER GTリポート

第7戦オートポリス~特別戦JAF GP&山野哲也選手からCarWatch読者へのメッセージ

 2013年シーズンのSUPER GT BRZ GT300の挑戦が終了した。結果はシリーズランキング4位。狙った優勝には届かなかったものの、5回ものポールポジション獲得が示すとおり圧倒的な速さを身につけ、WRCをはじめさまざまなモータースポーツのフィールドで磨かれ続けた水平対向エンジンが持つポテンシャルの高さと可能性を証明した形となった。初優勝を飾った鈴鹿戦以降のレースを振り返るとともに、今季限りでシートを後進に譲って勇退することになった山野哲也選手から読者へのメッセージをお届けしよう。

SUPER GT第6戦「FUJI GT 300km RACE」

 前戦鈴鹿での優勝により、ポイントランキング2位まで浮上してチャンピオン獲得への可能性を一気に高めて臨んだ富士での第6戦。ストレートスピードに劣るBRZ GT300が88kgものウェイトハンデを積む状態での戦いとなったが、セッティングが決まって予選では4位を獲得。しかし、決勝レースは後半で雨が降ったり止んだりする天候となり、路面変化に対するフレキシビリティに欠けるBRZ GT300にとっては最悪の展開。中盤までは5位をキープしながら走行していたものの、結果的には9位で決勝レースを終えた。

88kgものウェイトを積んでのレースは初めて
フロントのカナードとリアスポイラーの形状を見ると、空力対策はほかのコースと似たような感じのセッティングという雰囲気

Asian Le Man Series“3Hours of Fuji”

 GT300マシンのクラスが設定され、このレースでの獲得ポイントがシリーズ戦にも付加されるアジアン・ル・マンシリーズの第2戦 富士スピードウェイには上位チームがこぞって参戦。もちろん、チャンピオンを狙うBRZ GT300もポイント獲得のため挑み、3位でフィニッシュして貴重な5ポイントを得た。

ストレートをスピード向上させるため、フロントノーズのカナードを外してリアスポイラーの形状を変更した“富士専用”という外観
ダウンフォースが減っているはずのマシンで果敢に攻める佐々木孝太選手
今季2度目の表彰台はアジアン・ル・マンで達成

SUPER GT第7戦「SUPER GT IN KYUSHU300km」

 レガシィB4時代から続くSUPER GTへの挑戦で、鈴鹿以外で勝利したことがあるのはここオートポリスのみ。BRZ GT300のマシン特性を考えれば非常に相性がよいサーキットだけに、シリーズの流れを考えればこの第7戦は是が非でも優勝を狙わなければならないレースであった。予選では4位を獲得するもののセッション中にスピンを喫し、傷めたタイヤのままで決勝レースを戦うのは厳しいと判断したチームは4番グリッドを捨ててフレッシュタイヤでのピットスタートを選択した。

 決勝では最後尾からの凄まじい追い上げを披露し、マシンとコースの相性のよさをうかがわせて7位でフィニッシュした。4ポイントを獲得してチャンピオンへの可能性は残したものの、ランキング上位とのポイント差を埋めるチャンスを逃したことで上位との壁が大きく立ちはだかることになってしまったことは否めない悔しいレース結果となった。

4番グリッドを捨ててピットスタートを選んだBRZ GT300
山野選手の追い上げがチームの明るさを取り戻す
いつもながらのファイティングスピリット溢れる走りを見せる佐々木選手

SUPER GT第8戦「MOTEGI GT 350km RACE」

 山野選手の勇退が発表された後のレースとなった第8戦のツインリンクもてぎ。ストップ&ゴー主体のこのコースは、コーナーの旋回速度を最大の武器とするBRZ GT300にとって最大の難所。2012年シーズンは精彩を欠いて15位に終わったコースだ。しかしながら今年のBRZ GT300は違った。なんとGT300のコースレコードを更新してシーズン5度目となるポールポジションを獲得したのだ。決勝レースでも3位表彰台を獲得し、苦手なコースでの最終戦でマシンの進化をあらためてファンに披露。シリーズチャンピオンには手が届かなかったものの、有終の美を飾る最終戦となった。

コースレコードで5度目のポールを獲得
すっかりおなじみとなった先頭からのスタートシーン
力走する山野選手
3度目の表彰台獲得で有終の美を飾った
グランドフィナーレでファンの声援に笑顔で応える山野選手
この日の山野選手はレース終了後も忙しかった

JAG GP“FUJI SPRINT CUP 2013”

 クラス4位でシリーズを終えたBRZ GT300にとって2013年最後のレースがこのJAF GPだ。シリーズ戦とは違うスプリントレースで22周を争う個人戦だが、結果は第1レースで佐々木選手が5番手からスタートするもののオープニングラップで9位に後退。13周目にマシントラブルにより惜しくもリタイアとなった。マシンを修復して第2レースに臨んだ山野選手も、残念ながらチェッカーを受けることなくのBRZ GT300でのラストレースを終えた。

BRZ GT300最後の走りに臨む山野選手
レジェンドカップでの1コマ
佐々木選手はマシントラブルにより惜しくもリタイア
山野選手もチェッカーを受けることなくレースを終了している
JAF GPもアジアン・ル・マンと同じ仕様の外観。2014年はこの富士の攻略がチャンピオン獲得のカギになるかもしれない
山野選手がライバルとともに戦う最後のBRZ GT300
第1レース終了後、翌日に控えた山野選手のラストランに向けてマシンの整備を行うメカニック。車両だけではなく新人メカニックの成長も頼もしい
山野選手の勇退を惜しむファンは、レガシィB4のデビューイヤーモデルのスケールモデルを持参していた。こちらの車両も山野選手が育てたマシンだ

 レース終了後、佐々木選手は今シーズンを振り返り「シリーズチャンピオンを目指していたので結果には満足していません。ただ、マシン開発も含め全力で取り組んだ自負はありますので充実感もあります。もちろん後悔はしてません」とコメント。山野選手も同様の言葉を口にしつつ「結果は残念でしたが、マシンの開発に深く関わってきたドライバーとして(今日の結果は)来年につながるよいデータを残せたと思う。ただ、あんまり清々しくはないですね」と苦笑い。

 こうしてBRZ GT300は、山野・佐々木両選手のコンビで戦う2シーズン目の挑戦が終了。来季は新体制でチャンピオン獲得を目指すことになった。

山野選手よりCarWatch読者のみなさまへ

ともに戦って来たBREEZEのメンバーと

「実は、僕はレーシングドライバーを目指していた訳ではありませんでした。小学校時代から日本車の車名からグレード名をすべて言えるようなカーキチ少年で、サラリーマン生活も経験しました。今でも車庫入れからトラックの運転まで大好きで、タイヤが4個ついていればなんでもいいんです。そして、運転がうまくなりたいという欲望がどんどん出てくると、速さと安全性の両方が取れるようになります。“効率よく”という表現が適当でしょうか。それがクルマを自分のコントロール下に置けるということだと思います」「人に勝ちたいわけではありません。もちろん負けて平気なわけでもないですが(笑)。ただただクルマの性能を引き出すことを一番やりたいのです。そんな僕がレーシングドライバーになれたことで、同じクルマ好きのみなさんに少しでも夢を届けられたなら嬉しく思います」

「また、SUPER GT(GT300クラス)では違うチーム、違うクルマ、違うタイヤで3年連続チャンピオン(※2004年は改称前の全日本GT選手権)という記録を作ったことをとても嬉しく思ってます。(2004年ホンダ・NSX[M-TEC]、2005年トヨタ・MR-S[チームレクリス]、2006年マツダ・RX-7[RE雨宮] JGTC]でチャンピオン獲得)」「BRZ GT300については、タイプの違うドライバーが乗ったことでより多くの情報が得られて、どのチームよりも進化できたと思ってます。今シーズンをもってシートを後進に譲ることにしましたが、レーシングドライバーを引退するわけではありません。もちろん、全日本ジムカーナも続けます。すでに15回チャンピオンを獲得してますが、まだまだ狙います。“打倒山野”と向かってくる相手には“かかってこい!”とドーンと構えています。レーシングドライバーとしての山野哲也は、来年から自分でも想像もできないような新たなステージになるでしょう。これからもみなさん応援よろしくお願いします」

 新体制となるBRZ GT300の挑戦、そしてマシンをここまで育て上げてくれた山野哲也選手の新たなる挑戦のどちらも楽しみだ。なお、BRZ GT300の2014年シーズンの参戦体制は、例年どおり年明けの2014年1月10日から開催される「TOKYO AUTO SALON 2014 with NAPAC」(幕張メッセ)の会場で発表予定だ。

(高橋 学)