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ブリヂストン、無償提供の免震設計支援ソフト「LAP2+t」をバージョン2に進化

構造計算一貫ソフト「Super Build/SS3」と連携。化工品部門の事業発表会で発表

ブリヂストンの化工品部門 事業発表会では「免震体験車」も用意
2014年5月22日発表

化工品部門の事業概要について解説するブリヂストン 化工品事業企画・業務室 本部長の清水徹夫氏

 ブリヂストンは5月22日、同社のWebサイトで無償提供している免震部材選定配置計画設計支援システム「LAP2+t」をバージョンアップさせ、「LAP2+t.Ver.2(ラップスクエアープラスティーバージョンツー)」として6月から配信すると発表した。

 ブリヂストンでは1983年に天然ゴム系積層ゴムによる免震ゴムを商品化。2013年5月にも新製品として中低層建物向けの「X0.4R」、高層建物向けの「eRB」をリリースするなど積極的に事業展開を続けているほか、建物や家財・人命を守る免震ゴムについての周知活動を行っており、LAP2+tの無償提供や今回の新バージョン公開もその一環となっている。

 LAP2+tのVer.2は、建築設計に必要な構造計算一貫ソフトウェアとして最も普及しているという「Super Build/SS3」を提供するユニオンシステムと共同で開発。Super Build/SS3とのデータ互換性を強化しており、これまで不可能だったSuper Build/SS3からのデータ取り込みを実現している。これにより、設計者の入力ミスや作業負荷を大幅に軽減。初めて免震建物設計を手がける設計者でも容易に免震部材の配置検討ができるようになり、免震建物の普及に貢献できるとしている。

 ブリヂストンの基幹事業は自動車やバイクをはじめとするタイヤ事業になるが、近年では自転車、スポーツ用品、屋根材などを製造・販売する多角化事業も推し進めている。2013年12月末の連結売上高の3兆5680億円のうち15%を多角化事業が占め、この15%のうち約半分は、免震ゴムなど一般消費者が購入する機会があまりない「化工品」となっており、LAP2+t.Ver.2の発表はこの化工品部門の事業発表会のなかで行われた。事業発表会では免震ゴム以外にもブリヂストンが手がけるさまざまな分野の事業について解説が行われた。

ブリヂストンではタイヤ事業に加え、さまざまな製品を取り扱う多角化事業も手がけている
タイヤ以外でも、生活のさまざまなシーンにブリヂストン製品が使われていると説明
タイヤ開発のほか、多角化事業の内部でも事業シナジーを行って「ブリヂストンならではの価値」を製品に生かしている

ゴムクローラ事業

ゴムクローラー事業について解説するブリヂストン ゴムクローラ販売促進部 部長の藤原敦洋氏

 化工品部門で一番タイヤに近いイメージの製品はゴムクローラ。ショベルカーなどの建設用重機で使われている鋼鉄製の無限軌道帯(キャタピラ)をゴム製に置き換えたもので、日本では農機具のコンバインで一般的に使われているほか、騒音や振動が少なく、路面にも優しいといった理由などからミニショベルなどにも採用されている。また、ゴムクローラ自体が1968年にブリヂストンが世界で初めて製品化したもので、現在でもグローバルシェア約30%でトップメーカーとなっているという。

英語では「ラバー トラック」と呼ばれるゴムクローラ
軽量化を実現した「芯金レスタイプゴムクローラ」を1997年に発売
タイヤでは走れないような場所で使われ、路面を傷つけず乗り心地が快適でメンテナンスフリーというメリットを持つ
ゴム内部に用意された芯金にスプロケットから駆動力を伝える「芯金入りタイプ」
軽量な「芯金レスタイプ」はゴムの摩擦力によって駆動力を伝達
ゴムクローラの基本構造
鋼鉄製のキャタピラと入れ替えたり、上から追加するゴムクローラの派生商品も存在する
除染作業機向けに専用開発された特殊ゴムクローラは2013年度のグッドデザイン賞を受賞している

ベルト事業

ベルト事業について解説するブリヂストン 産業資材事業本部 ベルト販売促進部 部長の森田聡氏

 ここでのベルトとは、建設現場や鉱山、発電所などで資材や原料などを搬送するベルトコンベアで使われるコンベヤベルトのこと。解説を担当した森田氏は「自動車に対するタイヤのように、ベルトコンベアのベルトを作っている」とイメージを紹介。表面的な部分では自動車ユーザーにはあまり関係ないといった雰囲気だが、ゴムの内部に強度を高めるためスチールコードなどを備え、用途に応じてゴムに配合する素材や表面形状を変化させるといった面はタイヤに通じる部分とも感じる。

コンベヤベルトのカット見本
ゴム内部にスチールコードやナイロン製などの帆布などを入れて強度を高める
内部の補強材によって「スチールコードコンベヤベルト」と「帆布コンベヤベルト」に大別され、さらに用途に合わせてゴムの素材や表面加工、形状などが多彩に用意されている
国内外の建設現場や鉱山などが主な納入先
製品の製造や販売だけでなく、取り付けや管理、メンテナンスといったサービスも提供している

防振ゴム事業

防振ゴム事業について解説するブリヂストン 化工品直需事業本部 防振ゴム開発第1部 部長の染谷勝己氏。手に持っているのはアルティマ用エンジンマウントのカットモデル

 クルマにはタイヤ以外でもブッシュ類や緩衝材として多数のゴム製品が使われていて目にする機会も多いが、今回の発表会では軽量化やコストダウンなどに貢献する樹脂製パーツについて紹介。事例として樹脂製のエンジントルクロッドが取り上げられ、クルマのエンジンのように重く高熱を発する部分もあるものに樹脂製品が採用されるというだけでも少し驚きだが、最新の開発現場では軽量化と強度アップを両立させるため、樹脂に配合して強度を高める繊維の配向を部位ごとに変化させていたり、射出成形時の冷え方の差をなくすために冷却配管を最適化するといった試みは、タイヤ開発でのノウハウが生きていると感じるブリヂストンならではの部分だろう。

防振ゴムは1台のクルマにつき40個~50個ほど使われており、基本性能に関わる重要な部品であるとしている
「環境対応・省燃費」「システム化・モジュール化」「安全・安心」の3要素が自動車メーカーから求められている
樹脂製のトルクロッドなどは20年以上の開発で30~50%の軽量化を達成
実際に採用された場合の一例。樹脂、ゴム、金属を組み合わせて防振効果を発揮
コンピュータ解析の活用で耐久性や軽量化などを進化させている
基本的にタイヤ、防振ゴム、シートパッドの各開発部門は独立して研究を進めているが、対象領域がオーバーラップする乗り心地の分析・開発では連携し、シナジー効果を発揮するという
技術開発の将来像。ブリヂストンの総合力を製品に生かしたいとしている
防振ゴム製品の見本展示
同じ車両の鉄製トルクロッドを樹脂に置き換えると重量が半減するということを示す試作品
事故が起きたときに衝撃で壊れる順番をコントロールし、エンジンがフロア下側に落ちてダメージを吸収するといった構造は樹脂製トルクロッドの大きなアドバンテージ
北米仕様の日産 アルティマのエンジンマウント。内側に複雑な形状のゴムパーツが使用されている
ストラットのアッパーサポート
負圧式切替マウント

樹脂配管事業

樹脂配管事業について解説するブリヂストン 住設機器・設備資材販売促進部の橋本有梨氏

 屋内で水回りを配管する樹脂パイプにも製品をラインアップ。すでに25年の国内実績があるという。とくに近年では建設技能労働者の高齢化が進み、軽量で取り回しの容易な樹脂配管はニーズが高まっている。また、企業理念としている「現場現物主義」を生かした新製品の開発も自社の特徴であると解説している。

建物が完成した後は目にすることもない樹脂配管にもブリヂストンの製品が存在する
ポリブデンパイプは金属管のように腐食することなく、柔らかいのでレイアウトも簡単
2013年度のグッドデザイン賞を受賞した「らく楽パイプ」は、通常は成型してから固まる前にロール状にして保管するところを、まっすぐの状態で硬化を待ち、巻き癖がでないようにした商品
ネジ部分まで樹脂化した「ワンタッチ継手」。低コスト化や軽量化を実現している
ビルなどに使われる免震ゴムのカットモデル。内部鋼板を何層にも重ね、垂直方向の強度を保ちつつ水平方向に柔軟さを持たせている
ブリヂストンは各種高圧ホースなども手がけている
ブリヂストンの化工品部門 事業発表会では「免震体験車」も用意
一般的な起震車と同じように地震の揺れを体験したり、耐震構造と免震構造の違いを再現できる

(編集部:佐久間 秀)