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2015年F1世界選手権の暫定カレンダー発表。日本GPは9月27日決勝、韓国GP復活

最終戦のダブルポイントは廃止、バーチャルセーフティーカー導入などルール改正

2014年12月3日発表

 FIA(Federation Internationale de l'Automobile、国際自動車連盟)は12月3日(現地時間)、2015年のF1世界選手権のカレンダーと、最終戦のダブルポイント廃止などを含むルール変更を発表した。従来のカレンダーでは20レースで行われる予定になっていた2015年のF1は、5月3日に韓国GPが追加され、全21戦として開催されることが明らかにされた。鈴鹿サーキットで行われる日本GPは、9月27日(日)に決勝レースを迎えるスケジュールで開催される。

 また、FIAは来年のF1に向けていくつかのルール改正を行うことも明らかにした。今年は、最終戦だけにダブルポイント(通常の倍のチャンピオンシップポイントが与えられるルールのこと)が与えられるルールになっていたが、ファンにも不評だったこと、また結局のところランキングの結果にほとんど影響を与えなかったことなどの事情もあり、たった1年で廃止されることになった。

 このほか、日本GPで発生したジュール・ビアンキ選手の事故を受けて導入が計画されていたバーチャルセーフティーカー(実際のセーフティカーはでないが、ECUのレベルで各車の速度を落とす仮想的なセーフティカーのこと)の導入なども行われるほか、パワーユニット交換時のペナルティ、5秒ペナルティに加えて10秒ペナルティ、さらにはセーフティカー導入時の周回遅れ車両のラップ回復ルールなどに関しての修正が行われる。

韓国GPが追加された全21戦の予定となる2015年のF1、鈴鹿は9月27日決勝へ

 今年のF1世界選手権は、全19戦で行われたが、来年に関しては全21戦と、2レース増えることになる。今年のカレンダーに比べて増えているのは、5月3日の韓国GPと、11月1日のメキシコGPとなる(いずれも日付は決勝レース、以下同)。韓国GPは、2010年~2013年の4年間に渡ってヨンガンの韓国インターナショナルサーキットで行われていたが、プロモーターの財政難などが理由で今年のカレンダーから脱落したという経緯があった。しかし、今回の発表では、どのサーキットで行われるのかは明らかにされておらず、やや唐突な印象がある。韓国インターナショナルサーキットでの開催がなくなった経緯がプロモーターの財政問題だったことを考えると、そこで復活というのも難しいと考えるのが一般的で、どのサーキットで行われるのか(あるいはどこかの市街地コースで行うのかなど)や本当に開催できるのか(バーレーンの2週間後で、スペインGPの1週間前という厳しいスケジュール)も含めて注目が集まる。

 もう1つのメキシコは、セルジオ・ペレス選手(フォースインディア)やエステバン・グティエレス選手(今シーズンはザウバー、来シーズン以降は未定)といったメキシコ人ドライバーを支援している、メキシコの大富豪で通信会社テレメックスのオーナーであるカルロス・スリム氏肝いりのイベントとして知られており、こちらの方は、かつてのメキシコGPの会場であるエルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われる予定だ。メキシコ経済の発展が著しいことや、スリム氏らのバックアップにより開催に向けての不安は少ないと考えられている。

 日本のファンにとって注目の日本GPは9月27日に行われる。通常、日本GPは10月の第1週ないしは第2週の日曜日に開催されるのが一般的だが、来年は1~2週間早まったスケジュールで開催されることになる。ただ、同日にはスポーツランド菅生で全日本選手権スーパーフォーミュラの第6戦が予定されており、日本国内で2つのビッグレースが行われることになる。通常F1GP開催期間中には日本のビッグレースは行われないので、このスケジュールは異例とも言える。従って、今後はスーパーフォーミュラ側がスケジュールを動かすかどうかなども含めて注目が集まるだろう。

決勝レース開催日開催国
3月15日オーストラリア
3月29日マレーシア
4月12日中国
4月19日バーレーン
5月3日韓国
5月10日スペイン
5月24日モナコ
6月7日カナダ
6月21日オーストリア
7月5日イギリス
7月19日ドイツ
7月26日ハンガリー
8月23日ベルギー
9月6日イタリア
9月20日シンガポール
9月27日日本
10月11日ロシア
10月25日アメリカ
11月1日メキシコ
11月15日ブラジル
11月29日アブダビ

ダブルポイントシステムの廃止、バーチャルセーフティカーの導入などの新ルール

 FIAは2015年カレンダーと同時に、2015年のレギュレーション変更に関しても明らかにした。以下の点などが発表された。

・ダブルポイントは廃止
・セーフティーカー先導リスタートは従来通りローリングスタート
・バーチャルセーフティカーの導入
・赤旗中断時の作業などの新手順
・パワーユニット交換時のペナルティ
・5秒ペナルティに加えて10秒ペナルティの導入
・周回遅れのセーフティカー時のラップ回復の新手順
・スーパーライセンスの発給は2016年より18歳以上に
・最低重量を702kgとするなどの変更を含む新技術レギュレーションの導入

 まず、今年の最終戦(アブダビGP)で初めて導入された最終戦だけダブルポイント(通常のレースに比べて倍のポイントが与えられる仕組み)となるルールは、1年限りで撤回されることになった。もともとダブルポイントは、最終戦までチャンピオン争いが継続するようにという目的で導入されたルールだったが、結局のところそれがなくても最終戦までチャンピオン争いが継続したこと、さらにはそれ以下の順位に関しても最終的な順位にほとんど影響を与えなかったこともあり、必要ないのではないかという声が高まっていた。F1は興行というエンターテインメントの側面と、スポーツの側面という両面を併せ持つのは事実だが、多くのファンはスポーツと捉えているだけにこれは歓迎していいだろう。

 また、2015年から導入される計画だった赤旗中断後はセーフティカー先導によるローリングスタートではなく、スターティンググリッドからリスタートという計画が破棄された。これはそのようにすることで、ファンが何度もスタートを見ることができるとの配慮から導入されたが、安全性などに関してはドライバーから懸念がでていた。なお、周回遅れの車はセーフティカー導入時にラップを回復することができるルールに変更はないが、従来は周回遅れの車が隊列の最後につくまで待ってからレースを再開していたが、2015年からはそれを待つ必要がなくなる。周回遅れの車をセーフティカーの前に出せばすぐにレースを再開できる。

 このほか、レースに影響を与えそうな変更としては5秒ペナルティ(ピットストップ時に5秒停止するか、レース後に5秒加算から選ぶことができる)に加えて、10秒ペナルティが導入されたことだ。同じようにピットストップ時か、レース後に加算、どちらでも好きな方を選ぶことができる。ペナルティという意味では、パワーユニット変更のルールに関しても変更される。現在のルールでは、パワーユニット全体で規定数以上を導入したときにはピットレーンスタートになるペナルティがあったが、これがなくなり、各ユニット(エンジンか、ERSなど)単位で規定数以上を導入した場合にそれぞれペナルティが導入される。

 なお、来年からではないが、2016年からはスーパーライセンスの発給要件が18歳以上、2年以上のジュニアフォーミュラ経験者とされることもあわせて明らかにされている。これは、来年からトロロッソのドライバーとしてF1デビューするマックス・フェルスタッペンが、来年の開幕戦時点でも17歳で、4輪レースの経験がわずかしかないことなどが問題視されたためだと考えられる。16年開幕戦時点にはフェルスタッペンも18歳になっているので、16年から導入されたのはその既成事実は追認しつつ、今後は認めないというFIAの意志が認められる発表と言えるだろう。確かに、17歳と言えば通常であれば高校に通っている歳であり、F1引退後のドライバーの人生などを考えると、しっかりとして高等教育を受けることも重要だと考えられるので、納得できる決定と言えるだろう。

 最後に、2015年からは今年のアメリカGPなどでテストされたバーチャル・セーフティカーが導入される。バーチャル・セーフティカーは、実際のセーフティカーではなく、ECUの制御により全車の速度が強制的に一定以下に下げられることになる。日本GPで重傷を負ったジュール・ビアンキ選手の重大事故が黄旗振動(ドライバーには安全速度への減速が要求されている)という中で起きたことから、ドライバー自身の判断に任せるのではなく、システムとして速度を強制的に下げさせる仕組みだ。もちろんドライバーは自身の安全のために最大限の注意を払っているのはもちろんだが、それでもレース中となれば他車よりも少しでも速く走りたいと思うのは無理もないこと(実際安全速度が何km/hなのかという規定はない)。従って、それを防ぐ方法としてバーチャル・セーフティカーの仕組みは有効と考えることができるので、この変更はF1にかかわる関係者(ドライバーやマーシャルなど)の安全性を担保するという意味で歓迎していいだろう。

 なお、日本GPで重傷を負ったビアンキ選手は、入院していた三重県の病院から母国のフランスに帰国し、現在も治療が続いていることが家族より発表されている。ビアンキ選手の回復を心よりお祈りしたい。

(笠原一輝)