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2015年シーズンの「SUBARU BRZ R&D SPORT」SUPER GTリポート
第2戦富士までのスタイリングから見た新型マシンの詳細
(2015/5/7 14:45)
4月4日~5日、例年通り岡山国際サーキットで開幕し、すでに2戦を行ったSUPER GT 2015年シリーズ。参戦4年目にしてマシンを新調し、タイヤもダンロップに変更、そしてドライバーには新たに山内英輝選手を迎え、井口卓人選手との新コンビで望む「SUBARU BRZ R&D SPORT」SUPER GTリポートを今年もお届けしよう。
SUPER GT 第1戦「OKAYAMA GT300km RACE」
4月4日~5日、開幕戦は岡山国際サーキット(岡山県美作市)で行われた。基本的なチーム体制は変わらないものの、新しいタイヤと新しいドライバーを迎えた初戦だ。3週間前に同サーキットで行われた合同テストの時点では、まだドライコンディションの中でのベストなタイヤすら見つかっていない状態であった。
そんな中で迎えた第1戦は予選ドライ、決勝ウエットというまだデータが不足している状態では非常に難しい戦いであったであろう。結果、予選は19位。決勝当日は天候が不安定で、スタート時点で雨は止んでいたが路面はウエットコンディションであり、天候も不安定でレース中の路面コンディションがどうなるか予断を許さない状況であった。チームはスリックタイヤでのスタートを選択。予選順位をキープしても意味がないレースでのジャンプアップを狙った選択だ。結果は無情にもレース中に雨が降り出し万事休す。今シーズンの開幕戦を17位で終えた。
ただし、路面状況が刻々と変化するウエットコンディションにおけるスリックタイヤのデータが得られたことは、今後起こりうるレース中の雨に対する判断材料を得られたと辰己英治総監督は後に語った。確かに昨年までのBRZはレース中の路面変化に弱く、天候に翻弄されたシーンが度々見られたので、早々にウェット路面で戦えたことはシーズンを戦っていく上で朗報だったのではないだろうか。
SUPER GT 第2戦「FUJI GT500km RACE」
開幕戦の1カ月後、ゴールデンウィークの真っ只中となる5月2日~3日に富士スピードウェイ(静岡県小山町)で行われた第2戦は500kmの長丁場。
この戦いでBRZは予選10位、決勝8位でレースを終え、シーズン初のドライバーズポイントを獲得した。そして今シーズンの戦いを考える上で非常に重要なのは、BRZにマッチした新しいタイヤを投入し、長丁場をノートラブルで走り切ったことだ。
昨シーズン、ダンロップタイヤでGT300クラスを戦ったのはGAINERの2台のメルセデス・ベンツSLS AMG GT3(以下 SLS)のみ。車両重量は1310kg。そして今シーズンは同じGAINERからダンロップタイヤを履くNISSAN GT-R NISMO GT3(以下 GT-R)がデビューし、車両重量は公開されていないものの、他チームのGT-Rが1290~1310kgであることを考えれば大体SLSと近い重量であろう。
それに対し、BRZは約150kgも軽い1150kg。この軽量ボディーとの組み合わせでGT300クラスを戦うダンロップが、早くも第2戦でBRZにマッチしたタイヤを開発し、投入できたことは朗報だ。つまり、この第2戦から今シーズンのスタートと言っても過言ではないのだ。もちろんシリーズチャンピオンを狙う上で一歩出遅れた感は拭えないが、メーカーが開発を担うFIA-GT3車両とは違う成り立ちを持つJAF-GT車両において、新調したマシンと新しいタイヤの組み合わせでこのスタートは悲観する程のことではなく、むしろ次戦からのBRZの戦いに期待が膨らむ富士での健闘ぶりだったとも言えるだろう。
写真で見る「新調されたSUBARU BRZ R&D SPORT」
昨年までのデータを基に、さまざまな進化を遂げた新車のBRZの各部を写真で見てみよう。
今年のマシンは昨年のものを今一度計測し、車体剛性の足りなかった部分を見直し、ホイールベースも25mm延長されている。加えて床下からトップまでの高さ(ボディーの厚み)を9mm縮め、前面投影面積を減少させた。また、昨年まで前後同サイズだったタイヤだが、今シーズンはフロントのみ30mm直径を小さくし、その分ノーズのカウルを低く抑え、さらにリアフェンダーの形状も大きく変更している。それらボディー形状に関わる部分は富士重工業での風洞実験を経て設計されているそうだ。また、外観からは分からないがサスペンションも全面的に見直されている。そうしたさまざまな改良により今年のマシンはタイヤに優しく、ジオメトリーを変更するとそのまま結果が出るような素直さを備えた非常に素性のよいマシンに仕上がっているとのことだ。
ちなみに、JAF-GT車両の地上最低高は昨年より3mm上げられ、コーナリングマシンのBRZにとっては少々辛いレギュレーションではあるが、それを差し引いても昨年までのマシンより大幅にポテンシャルが引き上げられたことは間違いないと辰己英治総監督は言う。なお、今年の2月末に完成したこのマシンは3月に富士スピードウェイでシェイクダウンを済ませ、わずか10日後には岡山の合同テストと、突貫スケジュールをこなしながら今日に至っている。まだまだデータ不足の部分も多いはずだが、その素性のよいボディーゆえのこれからの進化に大いに期待したいものだ。
今年と2014年の第1戦(岡山)のマシンを見比べると、前後フェンダー、特にタイヤ後方のデザインに大きな違いが見られるが、2014年の最終戦(もてぎ)ではすでに今年新調したマシンと極めて近いデザインが採用されていることが分かる。