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ロールス・ロイス、「レイス・ブラック・バッジ」を日本初公開

2016年末までに日本市場に導入予定。価格は「既存モデルから500万円前後アップ」

2016年5月25日 開催

会場となった東京都品川区の寺田倉庫。会場の正面入口には、3月に日本初公開した4シーターソフトトップモデル「ドーン」を展示

 ロールス・ロイス・モーター・カーズは5月25日、2016年3月のジュネーブモーターショーで発表したニューモデル「レイス・ブラック・バッジ」を東京都内で日本初公開した。

ロールス・ロイス レイス・ブラック・バッジ
「ロールス・ロイスの全世界でのユーザー平均年齢は、これまで50歳代だったところが40歳代に下がっており、日本も同様の傾向になっている」と解説するロールス・ロイス・モーター・カーズ アジア太平洋 北部地域 広報マネージャー ローズマリー・ミッチェル氏

 近年のロールス・ロイスは、全世界におけるユーザーの平均年齢がこれまで50歳代だったところが40歳代に下がっている。日本でも2009年に導入されたゴースト、2013年のレイス、そして2016年のドーンと新しいモデルが登場するたび、同様に若い世代のユーザーがロールス・ロイスを選ぶようになってきているとのことだ。

 そこでロールス・ロイス・モーター・カーズは、自信みなぎる若い型破りな世代や、妥協せず、言い訳をしない生き方とライフスタイルを持った世代に向けて新しいレイス・ブラック・バッジを造り上げたという。発表会で使われた日本向けの表現は「夜、1人で湾岸線や首都高速を走りに行きたいと思う人」、さらに「サーキットまで走りに行くときに、リラックスできる足グルマが欲しいと思っている人をイメージしている」となっていた。

 車両についての細かい解説は、今回の公開のために来日したロールス・ロイス・モーター・カーズ アジア太平洋 プロダクトアンドオペレーションズマネージャーのスヴェン・グルンヴァルト氏に加え、ロールス・ロイス・モーター・カーズ アジア太平洋地域 セールス ジェネラル・マネージャーのマイケル・シュナイダー氏の2人から行なわれた。

 会場に張られていたベールが降ろされると、奥に控えていたレイス・ブラック・バッジがゆっくりと前進。所定の位置で停車したあと、車内からグルンヴァルト氏とシュナイダー氏が特徴的な後方ヒンジのドアを開けて会場に姿を現わすという演出がなされた。

会場内の白いベールが降りてレイス・ブラック・バッジが登場。かなり暗めに設定された会場の雰囲気と、光量の多い青いライトによってクルマのイメージを表現していた
アジア太平洋地域 セールス ジェネラル・マネージャーのマイケル・シュナイダー氏
アジア太平洋 プロダクトアンドオペレーションズマネージャーのスヴェン・グルンヴァルト氏

 このレイス・ブラック・バッジの特徴は、ダークで大胆な仕上がりを求めるために全体をブラックトーンでまとめているところで、とくに注目すべきはブラッククロームのフロントグリル。そして車両前後に装着される「ダブルRバッヂ」は従来品から配色を反転。ブラックを背景にシルバーで描かれるデザインとなっている。さらにフロントノーズに装着する「フライング・レディ(スピリット・オブ・エクスタシー)」も、形状や素材は従来と同様だが、“オーナーになる人の影の面を表現する”という意味から高光沢のブラック仕上げになっていることなどが挙げられる。これらに加えて、トランクリッドやフロントロアグリルのアクセント、マフラーエンドなどにもダーク調のクロームを採用している。

特徴的な“パルテノングリル”もブラッククローム仕上げ。ダクト類もイメージを統一するためダーク系になっている
「フライング・レディ」は高光沢のブラック仕様。ポーズなどに変更はない
通常のダブルRバッヂと配色を反転してダークなイメージに仕上げている

 走りのイメージを強調しているレイス・ブラック・バッジだけに、搭載する6.6リッター V型12気筒エンジンは最高出力こそ465kW(632PS)と不変ながら、最大トルクは既存モデルのレイスから+70Nmとなる870Nmに強化している。この力強さについては「信号待ちからの発進加速も楽しみになるもの」と紹介された。また、トランスミッションはZF製の8速ATが組み合わされている。

 サスペンションは既存モデルと同様にエアサスペンションとなっていて、その乗り味はロールス・ロイス車の乗り味を語るときに使われる「魔法のじゅうたん」的なものだが、レイス・ブラック・バッジでは俊敏さを狙ったセッティングも追加された仕様になっているという。

 そんな乗り味のよさにも貢献するのが、レイス・ブラック・バッジが装着する21インチホイール。これはロールス・ロイスが4年の歳月を費やして開発したアルミニウム+カーボンファイバーホイールだ。構造は22層のカーボンファイバーレイヤーが3軸方向に重ねられていて、リムの外側エッジではそれを折り返すことでレイヤーを44層として強度をさらに高めているというもの。また、ハブ部は航空機グレードのアルミニウム合金を鍛造成型した立体構造で、これを宇宙機器用の高強度チタンファスナーを使って結合している。

エンジンは6.6リッターV型12気筒。最高出力465kW(632PS)、最大トルク870Nmを発生する
トランスミッションはZF製の8速ATを搭載。会場内にオブジェのように展示されていた
サスペンションもメンバーごと展示。“魔法のじゅうたん”と表現される乗り心地のエアサスだが、レイス・ブラック・バッジの性質に合わせて俊敏さも与えられている
ロールス・ロイスが4年を掛けて開発したアルミニウム+カーボンファイバーホイール。22層構造で、とくに強度がほしいエッジ部分は構造材を折り返すことで44層とする

 こうしたカーボンファイバーとアルミニウムの一貫したテーマは、エクステリアだけでなくインテリアにも流れている。ロールス・ロイスのエンジニアとデザイナーは、アルミニウムを折り込んだカーボンファイバーをダッシュボード、センターコンソール、ドアトリムなどに取り入れた。このパーツ構成がレイス・ブラック・バッジのインテリアの特徴だが、これらの部分以外はユーザーの好みで自由に設定できるということだ。

 なお、レイス・ブラック・バッジの正式な価格はまだ公表されていないが、ミッチェル氏によれば「既存のレイスから500万円前後アップしたものを想定している」とのこと。

黒と青を組み合わせた内装色。ここはオーナーになれば自由に設定できる
ダッシュボードやセンターコンソールはカーボンファイバーにアルミニウム材を織り込んで構成。独特の質感となっていた
インナールーフには「ファントム」などにも採用されている「スターライト・ヘッドライナー」を装備
リア側にヒンジがあり、フロント側から開くコーチドアはリアシートにもアクセスしやすい。リアシートもスペースは広いので快適に座れる。リッド付きのコンソールを開けるとドリンクホルダーや灰皿があり、アームレストは内部が小物入れになっている
トランクは奥行きがあってたっぷりとした容量がある。トランク開口部の下側にあるプロテクターもクロームメッキ仕上げというのが洒落ている
トランクリッドのダブルRバッヂも反転ブラック仕様。ガーニッシュもダークな仕上げ

 今回の初公開は、レイス・ブラック・バッジをロールス・ロイス・モーター・カーズのユーザーに紹介する最新ブランド展示会「Illuminate Your Senses」で実施された。このイベントは完全招待制となっており、事前に招待された人しか入場できないもの。そこで、レイス・ブラック・バッジの紹介と合わせてイベントの模様もお伝えしよう。このイベントはロールス・ロイスの車両に使われている素材、モチーフ、価値感を五感で味わってもらうことを目的としており、その目玉になるのが英国本社に所属する内装職人による匠の技と作品を間近で見られることだ。

 今回公開されていた作業内容は、インパネ類に組み込む寄せ木細工を作る工程とその作例。また、ロールス・ロイス独特のインパネやボディへのイラスト、ピンストライプ施工である。

レイス・ブラック・バッジの紹介内でも触れているが、ロールス・ロイスではユーザーの好みによって内装などをオーダー製作できるのだが、例えばインパネのデザインについてだと、用意された何種類かのインパネ色から選ぶというのではなく、素材、模様などを最初からオーダーできるのだ。イラストやピンストライプに関しても同様で、サンプルがあるのではなく、オリジナルで1つずつ描いていく。

 ちなみに、ボディにピンストライプやワンポイントのイラストを入れるケースもあるが、その施工は車両の製造工程で一番最後に行なわれる。そして万が一にもその施工に失敗した場合には、失敗したものを消してやり直したりせず、そのクルマ自体を廃棄して新たに作り直すという。そのこだわりは少し庶民の理解の範囲を超えるものだが、こういったこだわりがあるからこそロールス・ロイスは特別な存在として認知されるのだろう。

 このほかについては写真で紹介するが、ニューモデルのレイス・ブラック・バッジと「Illuminate Your Senses」という展示会は、会場内に置かれている展示物すべてが刺激的であった。クルマの作り込みのよさに興味を持つ人にはとても楽しめる内容だと思うだけに、同様の展示会を一般にも公開してほしいと感じた。

製作デモでは寄せ木細工を素材から切り出すシーンを見ることができた。作業台にあるのはコンパス、スケール、デザインナイフといった一般的な道具だけで、それらを使い分けながら芸術的な寄せ木細工が仕上げられていった。ロールス・ロイス側の説明では素材をベニヤと表現していたが、日本で一般的に言われるベニヤ材とは異なっている。詳しく聞いてみると、どうやら木材を薄くスライスしたもののようだった
オーダー製作した寄せ木細工を盛り込んだパネルの例。中央の作品はパネル作りに使っているレーザーカットの技術を使ったオブジェ。レーザーの照射温度を変えて模様を描いている。ベースになっている図柄は今回の展示会のパンフレット写真
外装パーツにイラストを描いている様子。手の動きにまったくブレがなく筆を押す力も一定で、さすが匠の技というのもの。彼女が所属する部署では外装ピンストライプなども担当する。描かれた作品自体も素晴らしいが、作業シーンも必見と言える内容だった
内装をオーナーの好みに製作できることを紹介する実例も紹介されていた。ドアトリムの写真で光っているのはダイヤモンド
そのほかの作例。内装に使用するレザーの品質のよさはロールス・ロイスの特徴でもあるという。使用する革は、蚊が生息できない高地に木のフェンスで囲った専用牧場で放牧された雄牛の最高級Aグレードの素材のみを厳選。色、表面のシワ、パイピング、ステッチ、刺繍など、どんなオーダーにも対応してくれる
「スターライトヘッドライナー」もパーツ単独で展示。星(ライト)の配置を変更することも可能とのこと
色を表現するコーナー。カラフルな石のようなオブジェは、よく見るとすべて色が異なる。これはどんな色でも作れるということを表現している。内装色に関しても用意された色から選ぶのではなく、どんな色でも調色して対応する体制を敷いている。実際の例では、「オーナーの夫人が使用している口紅と同じ色」というオーダーもあったそうだ
カップ内のオブジェを手に取ってセンターに置くと、このコーナーの照明がオブジェと同じ色に変わるというデモ
手前の丸で指定された位置に立ち、手を広げたりすると動きに連動してモニターのフライング・レディの映像が動く
寄せ木細工で作りあげるシンメトリーな模様を使ったイメージスクリーン。スクリーンを手で押すと模様が変化する
具体的な商談ができるスペースも設置。カラフルな傘は、ロールス・ロイス車を購入したときにプレゼントされるという付属品。運転席ドアにこの傘を収納するスペースがある

(深田昌之)