試乗記

ホンダ「N-BOX」ならロングドライブも楽チン! 八ケ岳で“セグウェイネイチャーライド”に挑戦してみました

N-BOX:164万8900円~225万2800円

N-BOXカスタム:204万9300円~236万2800円

3代目へと進化したホンダ「N-BOX」で八ケ岳までロングドライブしてきました!

軽自動車だと侮るなかれ! ロングドライブも余裕でこなす小さな相棒

 出会いの予感にあふれ、なにか新しいチャレンジをしたくなる春。ポカポカとしたひだまりのようなカラーが春らしいホンダのN-BOXは、そんな未知の自分を探しにいく相棒としてピッタリだと感じた。

 堂々とした存在感がありながら、毎日そばにいたくなるフレンドリーさと、誰かに見せたくなる上質感があるフロントマスク。サイドミラーやドアハンドル、ホイールにオフホワイトがあしらわれた今回の「N-BOX ファッションスタイル」は、どこかレトロな温もりのあるトレンドを押さえたオシャレさで気分もあがる。

試乗車のボディカラーは春夏秋冬どの季節にもしっくりくるオータムイエロー・パールで、オフホワイトのドアミラーカバーとアウターハンドル、ボディ同色のホイールカバーを装着した「ファッションスタイル」パッケージ。ボディサイズは3395×1475×1790mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2520mm
ベース車両の価格は174万7900円で、メーカーオプション「リア右側パワースライドドア」「運転席&助手席シートヒーター」「運転席&助手席シートバックテーブル」「オートリトラミラー」「左右独立式リアセンターアームレスト」「9インチHonda CONNECTナビ」と、ディーラーオプション「ETC2.0車載器 ナビ連動タイプ」「フロアカーペットマット」「ドライブレコーダー」を装着して219万7800円(ディーラーオプション取り付け費や諸費用は含まず)

 大人3人+1泊の荷物3人分を余裕で飲み込む大空間は、ドア内部の構造などを見直すことにより、先代よりさらに広くなったというから驚きだ。運転席に座って後席を振り向けば、予想以上に遠くの方に座っている印象で、足を組んでもまだゆったりとしたスペースが広がっている。ホンダ独自の低床技術のおかげで、天井が高く開放的な空間。それでいて、後席が前後に19cmスライドし、荷室の奥行きがたっぷり確保できるため、旅行バッグなども積みやすい。

運転席と助手席は、まるでリビングでくつろいでいるかのような空間でリラックスして運転できるのはうれしいポイント
リアシートを最後端まで下げれば、大人でも足を伸ばせるラグジュアリー空間に
5:5の可倒式リアシートを倒せば、開発陣の「予期せぬ雨で、自転車で出かけた子供を迎えに行った際、容易に自転車を搭載できる積載性を大切にしてきた」という言葉通りの大容量ラゲッジスペースが現れる

 おかげで準備はささっと完了し、さっそく西へ向かって走り出した。まずは日頃の疲れをのんびり癒そうということで、目指すは信州・蓼科に建つ瀟洒なリゾートホテル。市街地を抜けて中央自動車道に入るルートを選んだ。

 ほぼフル乗車に近い重量となったため、自然吸気エンジンモデルにはちょっと過酷な旅になるかと覚悟していたが、予想を鮮やかに裏切るスムーズな発進に続き、まだまだ余裕たっぷりとわかる上質な走りで、ストップ&ゴーを軽快にこなしていくN-BOX。これにはあらためて感心してしまった。特に1人で運転してる時とまったくフィーリングが変わらず、思った通りに操作できるステアリングフィールがとてもいい。先代にはなかったダイレクト制御が採用されており、交差点ひとつ曲がるにしても、自分の手の動きとクルマの動きが見事にリンクしてくれる安心感がある。

搭載される直列3気筒0.66リッターの「i-VTECエンジン」は、最高出力43kW(58PS)/7300rpm、最大トルク65Nm/4800rpmを発生。燃焼効率を向上させるロングストローク化とVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)+VTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)の採用により、低燃費ながら高出力化を実現している

 それに加えて、降り出した雨をものともしない、室内の静かさもポイント。濡れた路面からの“シャーッ”というノイズまで、どこか遠くの方で小さく鳴っているような感覚だ。さすがフロアカーペットにまで遮音層フィルムを追加しているだけのことはある。おかげで後席を含めて、楽しい会話が途切れることなくN-BOXは高速道路へ。

水平基調のダッシュボードだから視界が広い! さらに遮音性が高いから、前後席での会話もなんなくこなせ、自然とドライブも盛り上がります

 上り坂の合流加速はさすがに強めのアクセル操作を要したが、踏めば即座のレスポンスでしっかりと本線への合流を完了。そこからの伸びやかな加速フィールのおかげで、涼しい顔して流れにのることができる。車速が上がるにつれてガッシリとしたボディの剛性感が際立ち、直進安定性のよさに思わず肩の力を抜いた。

 フロント、リアともにサスペンションの締結部分を適正化し、突き上げや硬さ、収束性、路面のざらつきなどの小さい入力のすべてをブラッシュアップしたというとおり、高速道路での乗り心地もひと昔前の軽自動車とはレベルがちがう。気がつけば、後席ではスヤスヤと寝息が聞こえてきた様子。約180kmの道のりはあっという間で、いつしか日が暮れた諏訪南ICを降りた。

標高1345.67mとJR線の中で一番高い所に位置する野辺山駅。唐松に囲まれた流線型の洋館風駅舎も特徴的!
八ヶ岳の自然を愛する人々の憩いの場になっているそうです

 N-BOXの魅力のうちの1つには、どのグレードでも先進安全運転支援システム「Honda SENSING」が標準装備だという点が挙げられる。「チョイ乗りしかしないから、そんなにたくさんの安全装備はいらない」という人もいるかもしれないが、市街地を走っているときや夜間に運転する際にも、自分だけでなくN-BOXがもう1つの目となり手足となって、うっかりミスや見落としをカバーしてくれる安心感があるのは大きい。

 また、ICを降りてからホテルまでの街灯のない山道で、オートハイビームが素晴らしい仕事をしてくれた。まだちょこちょこと雪が残るなか、路肩の側溝や木々に紛れてしまう「止まれ」の標識などが見やすくなり、あるのとないのとでは大きな差になると実感したのだった。

道路わきにまだ雪の残る八ケ岳をのんびりとドライブ
デイタイムランニングランプ付きのフルLEDヘッドライトは、便利なオートハイビーム機能も搭載している

 白樺の向こうに、ポワンと灯りが見えてきた。ホテルのエントランスにスーッと乗りつければ、なかなかに絵になるN-BOX。チェックインしたらすぐに、お楽しみのディナーが始まる。信州の地鶏や野菜をたっぷりと使い、アートのように盛り付けたひと皿ひと皿が、身体に染みわたるような美味しさ。ドライブのあとの一杯も格別で、日頃のご褒美をもらったような贅沢な時間を過ごさせてもらった。

伝統と格式に彩られた、森にたたずむヨーロピアンリゾート「蓼科東急ホテル」で日ごろの疲れを癒します
厳選された素材の旨みを生かし、美しい蓼科の大自然をそのまま料理にした食事に舌鼓を打ちました

 翌朝、天井まである大きな薪ストーブが目を惹くロビーでくつろいだり、丁寧な仕事を感じる和朝食に舌鼓を打ったりしつつ、いよいよ小さなチャレンジへと出発。およそ15年ほども前だろうか、屋内で一度試しに乗ってみたきりになっていたセグウェイで、なんとオフロードコースをツーリングできるプログラムがあるという。当時はちゃんと乗れたのかどうかも記憶があやしく、どうなるだろうとドキドキしつつ「八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズ」を目指した。

天井まである大きな薪ストーブは圧巻ですが、どこか懐かしい雰囲気も漂っています

 N-BOXの大きな窓は、てっぺんから粉砂糖をふりかけたような、雪化粧が美しい南アルプスの山々を映し出す。右へ左へのカーブをリズミカルに駆け抜け、長い上り坂も難なくこなして、山道でも快適なドライブだ。途中、道路のすぐ脇でもぐもぐタイムだった鹿の群れに出くわし、いい大人が大興奮。はたまた、ソフトクリームの誘惑に負けて後席でしばし休憩。お土産が並ぶショップを覗いて、うっかり買いすぎてもN-BOXならまだまだ積める。

山道もグングン走れるN-BOX。南アルプスの山々を背にセグウェイに乗れる八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズを目指します
セグウェイに乗る前に、ちょっと「清泉寮」に寄り道。その目的はもちろん……ソフトクリーム!
清里高原にある清泉寮のソフトクリームは、濃厚で栄養価の高い有機ジャージー牛乳がおいしさの決め手だそうですよ

 いろいろ寄り道しながら、ようやくセグウェイに乗れる八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズへたどり着いた私たち。出迎えてくれたのは、インストラクターの豊田大輔さんだ。アクセルもブレーキもなく、主に体重移動によって走行する2輪の次世代モビリティであるセグウェイ。

 まずは舗装路面の広場で、基本操作と安全な乗り方のコツを練習。まったくの初心者もいたけれど、豊田さんの教え方がとても分かりやすく、あっという間にパイロンスラロームまでできるように。最初はまっすぐ立っていることすら不安定だったのに、思い通りに操れるようになってくると、早く林道へ行きたくなってくるからムシがいい(笑)。

インストラクター豊田さんの楽しいレッスンのおかげか、あっという間にスイスイ乗れるようになっていました

 豊田さんのOKが出て、いよいよ一列に連なって「セグウェイネイチャーライド」がスタート。落ち葉を踏み小枝を乗り越え、急なアップダウンを自分で速度を加減しながら走っていく。自分の全身がアクセルやブレーキ、ハンドルの役割を果たすという、クルマともバイクともちがう究極の一体感にだんだん病みつきになっていく。

八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズのセグウェイは、インストラクターの先導で、萌木の村のガーデンコースや林間コースを周遊する2つのプログラム「セグウェイネイチャーライド」と「早朝セグウェイ」が用意されている。参加費はいずれも1人6000円

 目線が高くなるセグウェイならではの視界にも慣れて、少しすると周りの景色を眺める余裕も出てくる。冒険しているドキドキが高まり、気がつけば夢中でセグウェイを走らせていた。ラストは、ちょっと過激な加速フィールが味わえるモードにもトライ。なんだか降りるのがもったいない気持ちになったところで、ゴールとなったのだった。

【八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズ】セグウェイネイチャーライド(1分35秒)

 そうしてセグウェイの余韻に浸り、今度はもっと長い林道にチャレンジしたいなどと話しながら、ぼちぼち帰路につく。Honda SENSINGのACCをオンにすれば、ペダルから足を離していても車間距離を空けて追従走行してくれるから、旅の最後に疲れのトドメを刺されずに済むのがありがたい。雨の日でも静かで安心感の高い走りや、高速道路や山道でも余裕のパワー、どんなシーンでも乗り心地のいい快適性。予想以上のN-BOXの実力が、心地よい充足感をくれた大満足のドライブとなったのだった。

次はどんなアクティビティに挑戦してみようかな~と、あれこれ思いを馳せながら帰路につきました
分かりやすく情報を整理して表示してくれる7インチTFT液晶のマルチインフォメーション・ディスプレイ。Honda SENSINGの作動状態などを「シンプルモード」で大きく表示できるのでロングドライブでも安心感が高いです
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。

Photo:堤晋一