試乗記
ホンダ「N-BOX」ならロングドライブも楽チン! 八ケ岳で“セグウェイネイチャーライド”に挑戦してみました
2024年4月17日 08:25
- N-BOX:164万8900円~225万2800円
- N-BOXカスタム:204万9300円~236万2800円
軽自動車だと侮るなかれ! ロングドライブも余裕でこなす小さな相棒
出会いの予感にあふれ、なにか新しいチャレンジをしたくなる春。ポカポカとしたひだまりのようなカラーが春らしいホンダのN-BOXは、そんな未知の自分を探しにいく相棒としてピッタリだと感じた。
堂々とした存在感がありながら、毎日そばにいたくなるフレンドリーさと、誰かに見せたくなる上質感があるフロントマスク。サイドミラーやドアハンドル、ホイールにオフホワイトがあしらわれた今回の「N-BOX ファッションスタイル」は、どこかレトロな温もりのあるトレンドを押さえたオシャレさで気分もあがる。
大人3人+1泊の荷物3人分を余裕で飲み込む大空間は、ドア内部の構造などを見直すことにより、先代よりさらに広くなったというから驚きだ。運転席に座って後席を振り向けば、予想以上に遠くの方に座っている印象で、足を組んでもまだゆったりとしたスペースが広がっている。ホンダ独自の低床技術のおかげで、天井が高く開放的な空間。それでいて、後席が前後に19cmスライドし、荷室の奥行きがたっぷり確保できるため、旅行バッグなども積みやすい。
おかげで準備はささっと完了し、さっそく西へ向かって走り出した。まずは日頃の疲れをのんびり癒そうということで、目指すは信州・蓼科に建つ瀟洒なリゾートホテル。市街地を抜けて中央自動車道に入るルートを選んだ。
ほぼフル乗車に近い重量となったため、自然吸気エンジンモデルにはちょっと過酷な旅になるかと覚悟していたが、予想を鮮やかに裏切るスムーズな発進に続き、まだまだ余裕たっぷりとわかる上質な走りで、ストップ&ゴーを軽快にこなしていくN-BOX。これにはあらためて感心してしまった。特に1人で運転してる時とまったくフィーリングが変わらず、思った通りに操作できるステアリングフィールがとてもいい。先代にはなかったダイレクト制御が採用されており、交差点ひとつ曲がるにしても、自分の手の動きとクルマの動きが見事にリンクしてくれる安心感がある。
それに加えて、降り出した雨をものともしない、室内の静かさもポイント。濡れた路面からの“シャーッ”というノイズまで、どこか遠くの方で小さく鳴っているような感覚だ。さすがフロアカーペットにまで遮音層フィルムを追加しているだけのことはある。おかげで後席を含めて、楽しい会話が途切れることなくN-BOXは高速道路へ。
上り坂の合流加速はさすがに強めのアクセル操作を要したが、踏めば即座のレスポンスでしっかりと本線への合流を完了。そこからの伸びやかな加速フィールのおかげで、涼しい顔して流れにのることができる。車速が上がるにつれてガッシリとしたボディの剛性感が際立ち、直進安定性のよさに思わず肩の力を抜いた。
フロント、リアともにサスペンションの締結部分を適正化し、突き上げや硬さ、収束性、路面のざらつきなどの小さい入力のすべてをブラッシュアップしたというとおり、高速道路での乗り心地もひと昔前の軽自動車とはレベルがちがう。気がつけば、後席ではスヤスヤと寝息が聞こえてきた様子。約180kmの道のりはあっという間で、いつしか日が暮れた諏訪南ICを降りた。
N-BOXの魅力のうちの1つには、どのグレードでも先進安全運転支援システム「Honda SENSING」が標準装備だという点が挙げられる。「チョイ乗りしかしないから、そんなにたくさんの安全装備はいらない」という人もいるかもしれないが、市街地を走っているときや夜間に運転する際にも、自分だけでなくN-BOXがもう1つの目となり手足となって、うっかりミスや見落としをカバーしてくれる安心感があるのは大きい。
また、ICを降りてからホテルまでの街灯のない山道で、オートハイビームが素晴らしい仕事をしてくれた。まだちょこちょこと雪が残るなか、路肩の側溝や木々に紛れてしまう「止まれ」の標識などが見やすくなり、あるのとないのとでは大きな差になると実感したのだった。
白樺の向こうに、ポワンと灯りが見えてきた。ホテルのエントランスにスーッと乗りつければ、なかなかに絵になるN-BOX。チェックインしたらすぐに、お楽しみのディナーが始まる。信州の地鶏や野菜をたっぷりと使い、アートのように盛り付けたひと皿ひと皿が、身体に染みわたるような美味しさ。ドライブのあとの一杯も格別で、日頃のご褒美をもらったような贅沢な時間を過ごさせてもらった。
翌朝、天井まである大きな薪ストーブが目を惹くロビーでくつろいだり、丁寧な仕事を感じる和朝食に舌鼓を打ったりしつつ、いよいよ小さなチャレンジへと出発。およそ15年ほども前だろうか、屋内で一度試しに乗ってみたきりになっていたセグウェイで、なんとオフロードコースをツーリングできるプログラムがあるという。当時はちゃんと乗れたのかどうかも記憶があやしく、どうなるだろうとドキドキしつつ「八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズ」を目指した。
N-BOXの大きな窓は、てっぺんから粉砂糖をふりかけたような、雪化粧が美しい南アルプスの山々を映し出す。右へ左へのカーブをリズミカルに駆け抜け、長い上り坂も難なくこなして、山道でも快適なドライブだ。途中、道路のすぐ脇でもぐもぐタイムだった鹿の群れに出くわし、いい大人が大興奮。はたまた、ソフトクリームの誘惑に負けて後席でしばし休憩。お土産が並ぶショップを覗いて、うっかり買いすぎてもN-BOXならまだまだ積める。
いろいろ寄り道しながら、ようやくセグウェイに乗れる八ヶ岳アウトドア・アクティヴィティーズへたどり着いた私たち。出迎えてくれたのは、インストラクターの豊田大輔さんだ。アクセルもブレーキもなく、主に体重移動によって走行する2輪の次世代モビリティであるセグウェイ。
まずは舗装路面の広場で、基本操作と安全な乗り方のコツを練習。まったくの初心者もいたけれど、豊田さんの教え方がとても分かりやすく、あっという間にパイロンスラロームまでできるように。最初はまっすぐ立っていることすら不安定だったのに、思い通りに操れるようになってくると、早く林道へ行きたくなってくるからムシがいい(笑)。
豊田さんのOKが出て、いよいよ一列に連なって「セグウェイネイチャーライド」がスタート。落ち葉を踏み小枝を乗り越え、急なアップダウンを自分で速度を加減しながら走っていく。自分の全身がアクセルやブレーキ、ハンドルの役割を果たすという、クルマともバイクともちがう究極の一体感にだんだん病みつきになっていく。
目線が高くなるセグウェイならではの視界にも慣れて、少しすると周りの景色を眺める余裕も出てくる。冒険しているドキドキが高まり、気がつけば夢中でセグウェイを走らせていた。ラストは、ちょっと過激な加速フィールが味わえるモードにもトライ。なんだか降りるのがもったいない気持ちになったところで、ゴールとなったのだった。
そうしてセグウェイの余韻に浸り、今度はもっと長い林道にチャレンジしたいなどと話しながら、ぼちぼち帰路につく。Honda SENSINGのACCをオンにすれば、ペダルから足を離していても車間距離を空けて追従走行してくれるから、旅の最後に疲れのトドメを刺されずに済むのがありがたい。雨の日でも静かで安心感の高い走りや、高速道路や山道でも余裕のパワー、どんなシーンでも乗り心地のいい快適性。予想以上のN-BOXの実力が、心地よい充足感をくれた大満足のドライブとなったのだった。