試乗記

新たにデビューした日産セレナ「オーテック スポーツ スペック」、クルマとの一体感が高い上質なチューニングカーだった

2024年12月上旬 発売

438万6800円

日産セレナの追加モデル「オーテック スポーツ スペック」を試乗する機会を得た

 上質感や爽快感を狙って開発が行なわれたという日産セレナの「AUTECH SPORTS SPEC(オーテック スポーツ スペック)」が登場した。このクルマを仕立てたのは日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)。同社はNISMO(ニスモ)ブランドとAUTECH(オーテック)ブランドの市販モデルを開発している。

 NISMOのエンブレムを掲げるクルマは、スポーツに特化した仕立てが行なわれていることが特徴的だが、AUTECHは前述した通り上質さや爽快感。今回のスポーツ スペックはドレスアップだけでなく、シャシーやパワートレーン、そしてボディや遮音対策まで行なわれているところが特徴となる。

NMCパフォーマンスチューンの歩み
オーテック スポーツ スペックの商品コンセプト

 足まわりはベースモデルから刷新。スプリングはフロント約15%アップ、リアは約20%アップしたものをセットし、ダンパーはそれに合わせた減衰力設定が行なわれている。タイヤはミシュランのパイロットスポーツ5を奢っている。

 それだけで終わらず、フロントサスペンションメンバーステー、フロントクロスバーを追加。リアに与えられたクロスバーは径や板圧をアップ。リアのサスペンションメンバー上にはYAMAHAのパフォーマンスダンパーまで投入。パワーステアリングの設定も変更している。また、静粛性アップのための対策も抜かりはない。フロントサイドガラスの板圧をアップ。ダッシュボードのロアインシュレーターもさらに奢っている。

加速フィール特性の進化
ハンドリング特性の進化
達成手段……シャシー、パワートレーン
達成手段……ボディ、遮音対策

 パワートレーンは、セッティングの変更によって乗り味を調整している。エコモードに関してはベースモデルと変わらないが、スタンダードモードはベースモデルのスポーツ寄りの設定とし、スポーツモードはベースモデルのスポーツモードよりもレスポンスに特化した仕様としているようだ。

 湘南の海をモチーフとしたエクステリアは、AUTECHならではの世界観。メタル調フィニッシュパーツは波打ち際に光る白波の勢いと美しさを、クロームドット加飾が行なわれるグリルは海面のエレガントな煌めきを表現しているそうで、専用ホイールは水中へ差し込む光の躍動感ときらめきがテーマなのだとか。

専用サスペンション(スプリング、ショックアブソーバー)を装着するほか、専用17インチダークグラファイトフィニッシュアルミホイール、タイヤはミシュランの「パイロットスポーツ5」で、サイズは215/55ZR17
内装は標準仕様と同じだが、室内とテールゲートに「AUTECH SPORTS SPEC」エンブレムがあしらわれる

 さらに夜間でもAUTECHだと認識できるブルーシグネチャーもまた特徴のひとつ。インテリアは海と空をテーマとしており、ブラック&ブルーで統一された空間は上質さを与えてくれていた。

試乗は追浜にあるテストコース「GRANDRIVE (グランドライブ)」

神奈川の追浜にある日産のテストコース「GRANDRIVE」で試乗

 走ってみるとまず感じたのは、とにかくフラットに走るということだった。アクセルのオンオフでピッチが出にくく、コーナーに入ってもロールはかなり少なく抑えられているのが印象的だ。けれども引き締められ過ぎているわけではなく、ギャップがあるところでもすぐに収束してくれる感覚に長けている。グラつきを感じないこの仕上がりはミニバンであることを忘れてしまうほどだ。

セレナ オーテック仕様のボディサイズは、4810×1725mm(全長×全幅)はすべて統一だが、全高に関しては、標準のオーテック(2WD)とe-POWERオーテック(2WD)が1870mm、オーテック(4WD)が1895mm、e-4ORCEオーテックが1885mm、今回追加されたオーテック スポーツ スペックは1865mmでもっとも低いモデルとなる。最低地上高はe-4ORCEオーテックのみ150mmで、その他はすべて135mm。また、最小回転半径はオーテック スポーツ スペックのみ5.8mで、その他は5.7mとなっている

 クルマとの一体感が高く、コーナリング中はフロントタイヤに依存しすぎる感覚もない。操舵角も少なく駆け抜けているように感じる。ステアリングはコーナリング中の座りもよさそうだ。試乗当日は横風がやや強かったのだが、それを受けたとしても直進安定性を確保できていたところはさすが。これならハイスピードクルージングも楽しめるだろう。かなり上質なチューニングカー。そこにヤンチャな感覚はない。

コーナリング中はフロントタイヤに依存しすぎる感覚もなく、少ない操舵角で駆け抜けていく

 パワートレーンは、スタンダードモードがAUTECHのキャラクターにはマッチしていると感じる。アクセルを踏み始めた瞬間の機敏さはうまく削ぎ落とし、アクセルに対してリニアに応答するようにセットされているからだ。静粛性もきちんと備えており、遮音に拘った対策も感じられ、上質さが感じられる。

 スポーツモードは元気よく仕立てられているが、これまた機敏になり過ぎている感覚はなく、伸び感を大切にしたかのような感覚だ。それを達成するためにエンジン回転を高める必要があり、そこがAUTECHにしては元気すぎるかな、という感覚がある。これはお父さんが一人で楽しむパターンがおすすめだ。

スポーツモードの走りは元気がある

 唯一気になったのは2列目に試乗した時に感じる微振動だった。シートや背もたれにビリビリと伝わってくるものは、ベースモデルからの車体のクセのようにも感じるが、それが消しきれていないところが惜しい。細部まで煮詰め上質さや爽快感を狙うAUTECHなら、車体やシートの補強などを行なうか、ベースモデルを4WD(リアまわりの車体や足を変更した追加モデルはその振動がすくなくなっていた)にするなどの対策で、それをなんとか乗り越えてほしい。

セレナ オーテック スポーツ スペックは、1人で乗っていても走りを本気で楽しめる仕上がりだった
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学