インプレッション
ボルボ「V60 T4 R-DESIGN PLUS」
Text by 岡本幸一郎(2014/9/1 00:00)
買い得感の高い内容と価格
従来から大きくイメージチェンジを図り、2011年より日本に導入されている現行モデルのS60/V60。2013年度には日本で1万7951台を販売して、ボルボにおいて販売全体の約3割を占めており、V40と並んで主力モデルとなっている。そして、2013年8月に約4000個所にもおよぶ大規模なマイナーチェンジを実施したかと思えば、2014年初頭には新世代パワートレーンを搭載した新しい「T5」をラインアップに加えるなど、その商品力の向上には余念がない。
そんなS60/V60には、2014年の5月にも装備を充実させた「LuxuryEdition」という特別仕様車が設定されたばかりだが、さらに8月になって「T4 R-DESIGN PLUS」という特別仕様車が発売された。
なにかこれまでにない装備などが加わったわけではないが、この特別仕様車も非常に買い得がある内容となっている。「ヒューマン・セーフティ」や「全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」「フル・アクティブ・ハイビーム」など10種の先進安全機能が、通常は約20万円高のオプション装備となるところを標準で付く。それでいて、ベースモデルの497万8285円より約18万円も低い、479万円に価格設定されているのだ。
また、購入者には、プログラムの書き換えによって「T4エンジン」の最高出力が20SPアップとなる200PS、最大トルクが45Nmアップとなる285Nmへと向上する「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」を、通常は価格20万円あまりのところを無償でインストールできるキャンペーンも実施される。
つまり、ベースモデルに合計で40万円分あまりのプラスアルファを加えた上に、さらに約18万円も安いモデルということになる。単純に金額だけで考えても、このT4 R-DESIGN PLUSの買い得感が非常に高いことは間違いない。
走りのよさを再確認
今回の試乗では、標準仕様のT4 SE(最高出力180PS、最大トルク240Nm)と乗り比べることができたのだが、ポールスター・パフォーマンス・パッケージをインストールしたT4 R-DESIGN PLUSの走りとの違いは明白だった。全域にわたってトルクが増しているし、高回転域における回り方の勢いもだいぶ違う。パーシャルスロットルからのツキもわるくなく、強いて挙げると若干の飛び出し感は認められるものの、低回転域であまり扱いにくさを感じることもない。それでいて、JC08モード燃費の公表値も同一だ。そんな同パッケージが無料で付いてくるというのは大歓迎だ。
念のため記しておくと、従来は未設定だったパドルシフトが2014年モデルから設定されたのもありがたい。また、「Elegance」「Eco」「Performance」という3モードを選択可能な最新のデジタル液晶メーターパネルが与えられているのもよい。
足まわりについては、デビュー当初のT4 R-DESIGNよりも大幅に洗練されていることをあらためて確認した。初期型は乗り心地がかなり硬く、跳ね気味だったところ、現在ではしなやかで快適な乗り味に仕上がっている。専用のスポーツサスペンションが与えられるR-DESIGNは、実際にはベーシックモデルよりも足まわりが締め上げられているのだが、初期入力からフリクションがなく、よく動くので路面への当たりがマイルド。大きな入力があっても余分な動きを瞬時に収束させる。おかげで結果的にベーシックモデルよりもむしろ乗り心地がよく感じられたくらいだ。
ハンドリングの味付けも、初期型はいささか切れ味が鋭すぎるきらいがあったが、現在はちょうどよくなっているように思う。
この乗り心地に寄与しているのがR-DESIGN専用のレザーシートで、もちろん、T4 R-DESIGN PLUSにも標準装備されている。ボルボらしく大ぶりなサイズで、張り出したサイドサポートなどを見るにつけ、いかにもホールド性が高そうだが、用いられている皮革が柔らかく、クッション性もあるので着座感は非常に良好だ。
競合車に対するアドバンテージ
同価格帯の競合車と比べると、このクルマの価値の大きさと買い得感の高さがより鮮明になってよく分かる。メルセデス・ベンツ C180アバンギャルド(467万円)、BMW 320i スポーツ(498万円)、アウディ A4 2.0TFSI S-line(502万円)などと比べると、まずは価格面での優位性がある。
そして、ボルボ車として期待される安全装備についても、競合車ではオプションであるとか、そもそも設定自体がない機能も少なくないところ、このT4 R-DESIGN PLUSでは、作動速度域を50km/hに引き上げた「シティ・セーフティ」や、人だけでなくサイクリスト検知機能も追加した「ヒューマン・セーフティ」、ほかにも「アクティブ・ベンディングライト」「フル・アクティブ・ハイビーム」など、先進的な安全技術装備が数多く標準装備されるところは非常に魅力的であることに違いない。
念を押すと、前述のレザーシートやACCについても、上記の競合車ではオプション扱いか設定なしとなっている。これでS60/V60ともに500万円を大きく下まわっているというのは、非常にバリューが高いと思う。
ちなみにボディーカラーについては、主な設定として「クリスタルホワイトパール」「パワーブルーメタリック」「ブラックサファイヤメタリック」「アイスホワイト」の4色が公式にアナウンスされているが、すでに販社が発注しているケースではそれ以外のカラーもあるらしいので、興味のある方は早めに問い合わせてみることをおすすめする。
なお、T4 R-DESIGN PLUSの販売は、台数や期間が限定されていない。2013年秋に新世代の「T5」が出たとはいえ、25万円以上の価格差もあってか、「T4」を選ぶ層は依然として多いとのこと。ボルボとしてもひきつづき「T4」を主力モデルとして扱っていくという。
さらに念を押すと、同モデルはモデル末期によくある“バーゲン車”では断じてない。ライフサイクルが長いボルボにとって、S60/V60はまだまだモデルライフのど真ん中にある。そんなS60/V60に、こうした買い得感ある特別仕様車がラインアップされたことを歓迎したい。