試乗記

MAZDA SPIRIT RACINGが手がけた2.0リッターエンジン搭載ロードスター初乗り! 究極の1台「12R」の乗り味とは?

マツダの限定市販モデルである「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R」(左)と「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」(左)に試乗する機会を得た

MAZDA SPIRIT RACINGが手がけた限定市販ロードスター

 当初の開発責任者氏の強いこだわりで、ND型ロードスターのソフトトップの国内向けは1.5リッターエンジンのみの設定となっていた。「軽量なボディでエンジンの性能を使いきって楽しんでもらえるようあえてそうした」という旨を話されていた記憶がある。

 とはいえ、ソフトトップのロードスターにも2.0リッターエンジンを積んだバージョンがあったら(一部海外仕様には設定あり)、それはそれで楽しいだろうなという思いも一方にはずっとあった。それがついにこういう形で実現するはこびとなった。

 マツダのモータースポーツ活動におけるサブブランドである「MAZDA SPIRIT RACING」初の市販車として送り出された2台は、いずれも限定車で、取材時点(3月14日)において、限定2200台の「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(以下、MSR)」は、まだ購入可能で価格は526万5700円だ。

 一方、車両価格が710万500円で限定200台の「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R(以下、12R)」はすでに完売となっているが、どんなクルマなのか気になっている読者は大勢いることだろう。今回はそんな2台を乗り比べる機会に恵まれた。

 両車はスーパー耐久シリーズ(以下、S耐)に関わったエンジニアが開発を担当し、培った技術を惜しみなく投入したものだ。パワートレーンや車体の進化を反映し、「速さ」だけでなく「質感」にもこだわったモデルで、街中でもサーキットでのスポーツ走行でも楽しく走れることを目指して開発されている。

ワインディングなら12RよりMSRが楽しいかも

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERには、「フロントアンダースカート」「リアスポイラー」「サイドアンダースカート」「リアアンダースカート」「フロアマット」「ホイールナットセット」などが特別付属品として備わり、価格は526万5700円
ボディサイズは3915×1735×1245mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2310mm、車両重量は1070kg
フロント・サイド・リアのエアロパーツのカラーはブリリアントブラックで、エアロパーツで前後リフトバランスの最適化が図られている
レイズと共同開発の専用17インチ×7.0J鍛造アルミホイール(ブラック塗装)を標準装備。タイヤはブリヂストン POTENZA S001でサイズは205/45R17
MSRのマフラーは2.0リッターエンジンを搭載するRFと同様の2本出し

 S耐参戦で得た知見と技術から、より力強い走りを実現すべく、「SKYACITV-G 2.0」は、MSRではスペックは不変だが手が加えられていて、レブリミット回転直前まで出力を絞らずに走行できるように制御を変更しているほか、エンジン応答性と質感を高い次元でバランスしたスロットル制御を採用していたり、ヒール&トゥ操作時の回転上昇をアシストする制御を新たに採用している。

最高出力135kW(184PS)/7000rpm、最大トルク205Nm/4700rpmを発生する直列4気筒2.0リッター自然吸気エンジンを搭載。燃費はWLTCモードで15.2km/L

 ドライブすると全体的に活き活きとした印象になっていて、ワインディングをより楽しく走れて、意のままに操れる感覚が高まっている。それ以前にワンディングに向かう高速道路で、1.5リッターエンジンではどうにも泣きどころだった力不足を感じずにすむのもありがたかった。

内装はMSRも12Rもアルカンターラをふんだんに採用している
左のディスプレイと8.8センターインチディスプレイにはイグニッションONで「MAZDA SPIRIT RACING」が投影されるギミックが設定されている
12Rのタコメーターには最高出力200PSを発生する7200rpmに「▲」表示が追加されているのもオーナーの所有欲を満たすポイント
12Rとの大きな違いはシート。MSRはレカロ製のセミバケットシートを標準装備
ヘッドレストには「MAZDA SPIRIT RACING」のロゴがエンボス加工であしらわれている
助手席前にも「MAZDA SPIRIT RACING」の文字が入り特別感を演出
「MAZDA SPIRIT RACING」文字入りフロアマットは特別付属品

 ビルシュタインを装着した足まわりは、コーナリングでのロールもよく抑えられていて、より高速コーナーを楽しめる味付け。持ち前の人馬一体の感覚は損なわれていない。エアロパーツが効いてか、車速を高めたときに路面に押しつけられる感覚も増している。それでいてロードスターらしい軽快感は損なわれておらず、より正確にイメージしたラインをトレースしていける。ワインディングなら12RよりもMSRのほうが楽しめるかもしれない。

 減速時もブレーキングに集中できるようにブレーキ、アクセル、クラッチの各センサーを用い、ブレーキの踏力やアクセル操作量、エンジン回転数に応じてアシスト量を適切にコントロールするなんていうことまでやっているそうだ。

コーナリング時のロールもよく抑えられていて、より高速コーナーを楽しめる味付けだ
車速を高めたときに路面に押しつけられる感覚も増していた

 黒を基調に赤のアクセントを随所に配したコクピットは、赤いシートベルトやパイピングの与えられたセミバケットシートの適度なホールド感も心地よく、目と手が触れる多くの部分にふんだんにアルカンターラが配されているのもうれしい。

高速道路でも力不足を感じることなくパワー感に余裕があった

12Rはエンジン、足まわり、乗り味まで別次元

 一方「12R」は、サーキット走行を存分に楽しむための技術や装備を搭載したメーカーコンプリートモデルとなるが、まずエンジンが別物だ。高回転域での伸びやかな加速にフォーカスしたというSKTACTIV- G 2.0は、最高出力が16PSアップとなる200PSまで引き上げられている。自然吸気エンジンの16PSアップというのはけっして小さくない上がり幅だ。

試乗したMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12Rは、「スポーツアライメントキット」「スポーツマフラー」「スポーツタイヤ」「ブレーキセット」「LSD&専用オイル」「6点式ベルト(競技用部品)」「デカール」など専用アクセサリーを多数装着していて総額は866万5822円
ボディサイズは3915×1735×1245mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2310mm、車両重量は1050kg
フロント・サイド・リアのエアロパーツのカラーはRSグレーとなる。MSR同様にエアロパーツで前後リフトバランスの最適化を図っている
レイズと共同開発の17インチ×7.0J鍛造アルミホイール(切削ライン×ブラック塗装)は12Rは外周にブランドネームも切削文字で刻まれている。タイヤは専用アクセサリーの横浜ゴム「アドバン・ネオバAD09」でサイズは205/45R17
サイドミラーにも特別付属品となる赤い刺し色の「ミラーデカール」が貼られる
専用アクセサリーの「スポーツマフラー」は気持ちのいいサウンドを響かせている
リアバンパーには限定200台のみの「12R」バッヂがあしらわれている

 内容としては、吸気ポート形状の変更と、匠エンジニアが手作業で吸気ポート内側を研磨し空気抵抗吸入空気量を増加させ、出力とレスポンスの向上を図ったほか、フレッシュエアダクトの大型化やカム形状の変更、フジツボとの共同開発による4-2-1から4-1排気化したというエキゾーストマニホールドを採用している。

 さらに、ダイレクトなトルク伝達と高負荷使用での耐久性を重視し、デュアルマスからシングルマスフライホイールに変更したほか、S耐参戦マシンと同じ低抵抗のピストンとピストンリングを採用するなどしている。

エンジンは直列4気筒2.0リッター自然吸気エンジンで、最高出力は147kW(200PS)/7200rpm、最大トルクは215Nm/4700rpmを発生。燃費はWLTCモードで15.0km/L
フロントサスペンションの付け根とバルクヘッドをつなぐタワーバーはMSRより太いタイプを採用している
エンジンヘッドカバーはブラックの結晶塗装で、シリアルナンバープレートもあしらわれる

 そのエンジンフィールは、まさにどこから踏んでもついてくる感じで、いかにも抵抗がなく、よく回る感覚があり、それが7500rpmまでつづく。トップエンドにかけての回り方の勢いもぜんぜん違う。非常に気持ちいいエンジンだ。体感的には16PSよりももっと大きな差を感じる。装着されていたフジツボ製の排気系パーツも効いて、いい音を聴かせてくれるのもうれしい。

シートは専用レカロ製フルバケットシートを標準装備
ヘッドレストには「MAZDA SPIRIT RACING」のロゴが刺繍であしらわれている
専用アクセサリーのサベルトとのダブルネームの競技用シートベルトは4点式と6点式を選べる(写真は6点式)

 足まわりは「12R」もビルシュタイン製を装着するほか、熟練工による高精度なサスペンションアームの締め付けとホイールアライメント調整を実施している。試乗車は特別付属品の「12R KIT」と専用アクセサリーや、横浜ゴムのスポーツタイヤ「アドバン・ネオバAD09」を装着していたこともあって、グリップ感が段違い。かなりコーナリング限界が高い印象を受けた。S耐のレーシングカーも、おそらくこんな感じの乗り味なのだろう。

乗り心地はMSRよりもやや硬いが不快ではなく常用レベル
スポーツマフラーの奏でる重低音サウンドがとても気持ちよく、ついついアクセルペダルを踏み込みたくなる

 ブレーキも試乗車の12Rは専用アクセサリーの「ブレーキセット(スリットロータ&スポーツパッド)」を装着していることにより、MSRよりもキャパシティが高く、踏力で減速度をコントロールしやすかった。コクピットには、フルバケットシートが装着されるのがMSRとの大きな違い。かなり高いGがかかってもしっかり身体を支えてくる。

MSRよりもコーナリングの限界レベルが高いが、フルバケットシートが身体を確実に支えてくれるので気持ちよく曲がって、立ち上がっていける

 12Rはワインディングよりもサーキットのほうが似合いそうだ。かといって一般道を走っても乗り心地がそれほど損なわれておらず、専用アライメントによるワンダリングも気にならず、ちょっとスパルタンなぐらいで、ごく普通に乗れて不快さはない。

 MAZDA SPIRIT RACINGがS耐で鍛えた技術を活かして送り出した2台のスペシャルモデルは、どちらも素晴らしい仕上がりで走りを存分に楽しませてくれた。12Rはすでに完売しているが、2026年3月時点でMSRもほぼ完売とのことだ。

MAZDA SPIRIT RACINGの手がけた2台のロードスターは、少しだけアクセル全開で加速してみたり、狙ったラインでコーナリングが決まると思わず笑みがこぼれてしまう乗り味だった
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一