試乗記

新型RAV4、ハイブリッドモデルの「Z」と「アドベンチャー」に試乗 SDVになったトヨタの大ベストセラー車種

5代目となった新型RAV4、HEVモデルに都内で試乗した

5代目となった新型RAV4、ラインナップはHEVとPHEVで4WDシステムもE-Fourに一本化

 6代目となる新型「RAV4」をついに公道で走らせる機会がやってきた。このクルマは先代のGA-Kプラットフォームをベースに、電動化、知能化、そして多様化を図った一台。これまで3種類もあった4WDシステムはリアにモーターを備えるE-Fourに一本化。後輪左右のトルク配分を行ない、特徴的な旋回をみせるダイナミックトルクベクタリングAWDが廃止となったのも電動化の流れである。

 ちなみにFFモデル、ICE(Internal Combustion Engine、内燃機関)のみのモデルも海外の一部には残っているそうだが、日本国内では完全に姿を消している。

すべてがxEVと呼ばれる電動車両になった新型RAV4。4WDシステムもE-Fourに一本化された

 パワートレーンはPHEVとHEVの2つが準備されているが、今回試乗することになったのはいわゆる第5世代ハイブリッド(駆動用バッテリはバイポーラニッケル水素電池)の2.5Lレギュラーガソリン仕様で、WLTCモード燃費は22.5~22.9km/Lを達成(先代モデルはHEVのE-Fourで20.6km/L)。最高出力は137kW(186PS)、最大トルクは221Nmを発生。これは先代に比べて約8%の出力向上となる。

 フロントモーターは最高出力100kW(136PS)/最大トルク208Nm、リアモーターは最高出力40kW(54PS)/最大トルク121Nmとなる。ちなみにPHEVモデルはフロントモーターが異なり、最高出力151kW(206PS)/最大トルク272Nmとかなりパワフルな仕様。こちらは第6世代のPHEVを搭載し、新開発大容量リチウムイオンバッテリ(18.1kWhから22.7kWhに容量アップ)やSiC半導体をPCUに採用するなど、バッテリEVで得た知見を転用することで効率をアップ。EV航続可能距離は95kmから151km(GRは145km)へと引き上げている。

 パッケージングの全長×全幅×全高は、Zハイブリッドグレードで4600×1855×1680mm(アドベンチャー、GR SPORTは全幅1880mm、PHEVは全高1685mm)であり、室内空間についても先代モデルとほぼ同等で作られている。

 だが、フロアには高剛性+高減衰接着剤を幅広く塗布。サスペンションの取り付け点剛性はフロント+31%、リア+27%アップ。ボディのねじり剛性は9.7%アップしている。また、摺動部に微小な摩擦を持つショックアブソーバーを採用。これはKYB製のプロスムースをベースとしたもので、極低速でも減衰力を確保。段差入力などの大きな入力ではしなやかに動き上質さを生み出しているという。

 また、ブレーキシステムにも手が入れられた。これまではマスターシリンダーとアキュムレーターを採用した蓄圧タイプだったが、新型では電動シリンダーを採用したオンデマンド加圧タイプの電子制御ブレーキシステムを採用。ペダル操作に対するコントロール性、応答性が自然になったほか、トレイルモードにおけるラフロードでの脱出性能を向上。コーナーリング時にはフロントの外輪とリアの内輪に制動をかけロールを抑制。さらにステアリング連動駆動制御により、コーナー進入時にトルクを制御することでピッチをコントロール。一体感溢れる操作性を実現したという。

新型RAV4のZモデル。最高出力137kW(186PS)/最大トルク221Nmを発生するE-Fourの4WDシステムを装備
ボディサイスは大ヒットモデルとなった5代目モデルと同じ、4600×1855×1680mm(全長×全幅×全高)
Zは20インチタイヤを装備していた
Zもアドベンチャーも同じパワートレーン。エンジンは直列4気筒2.5リッターのA25A-FXSエンジンを搭載

Arene(アリーン)を初採用する新型RAV4、トヨタSDVの最初のクルマに

 知能化については新たなる電子プラットフォームをこの新型RAV4から搭載することになったところが目新しい。この開発にはウーブンシティで開発されているArene(アリーン)を初採用。これまでは機能ごとに個別開発を行なってきたが、先進運転技術、コクピット、ボディ、パワートレーンといったドメインごとに開発を統合している。将来はAreneが中心となる中央集中型のソフトウェア開発を行なうという。

 このソフトウェア開発プラットフォームのAreneは、車両から分離してソフト単位で開発、評価を行なうことが可能な「SDK」と「Tools」、大量のデータを集め解析可能な「Data」という3つがある。ユーザーメリットとしては「SDK」により、より早く、より多くの「もっといいクルマ」の機能が届けられること、「Tools」による高品質で信頼性の高い安全機能がより迅速に提供されること、「Data」によるユーザーの走行データを活用して機能改善することで、購入後もクルマが進化し、一人ひとりにあった体験が提供されることなどが挙げられるという。

アリーンを採用し、大画面化されたIVI(In Vehicle Infotainment)画面が目を引くコクピットデザイン。アイランドアーキテクチャを採用し、水平が分かりやすくなっている
ステアリングまわり。メーターパネルもメータークラスターに囲まれないオープンタイプに。IVI画面と合わせて、2スレートタイプのデザインとなった
セレクトレバーまわり。シンプルな直進タイプのモードセレクトを行なう
EVモードやドライブモードスイッチはこの位置に。USB-CもZは前席でPD45Wとなっていた
メーターパネルデザイン。シンプルだが分かりやすいデザインを採用している
1眼、2眼、3眼タイプにデザインを切り替えることができる

 やや小難しいが、平たく言ってしまえば購入後もソフトウェアでクルマの機能がアップデートされ、愛車が最新の状態に保たれることから、長く価値を享受できるということ。SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)になったこと、これが新型RAV4の魅力の一つといえるだろう。

トヨタのトップテストドライバーである「匠」の運転パターンをAI解析で採用した第4世代Toyota Safety Sense

 このAreneは新世代のToyota Safety Senseとの組み合わせが行なわれた。AreneとAIを活用し、予防安全パッケージの対応シーンを拡大し、交通事故ゼロを目指している。過去のデータを処理して多くのシーンで認識率をアップ。ドライバーの異常検知機能も拡大している。

 さらに、トヨタのテストドライバーのトップである「匠」の運転パターンもAIで解析して採用することで、アダプティブクルーズコントロールやプロアクティブドライビングアシスト作動時における加減速や車線維持の仕方は、人の感覚に合った制御を行なえるようになったという。

Zにはドライバーモニタリングが装備されており、Toyota Safety Senseのトヨタチームメイト アドバンスト ドライブの渋滞時支援機能へ移行することが可能。これまでのノア/ヴォクシーなどと同様、渋滞時ハンズオフができる

 さらにAreneはマルチメディアとも融合し、より自然で一体感ある音声認識を可能とした。応答速度はこれまでの3.6秒から1.0秒になり、テンポよく会話できるようになった。また、センターディスプレイはユーザーの好みに合わせたカスタマイズが可能となり、視認性、操作性を大幅に向上させている。

新型RAV4のHEVモデルに試乗

 さて、そんな新型RAV4をいよいよ走らせる。最初に試乗することになったのはHEVのZグレードである。ボディ同色のメッシュタイプグリルが都会にマッチしそうなところがこれまでになかったRAV4の世界観。オプションの20インチのタイヤ&ホイールを奢っていることもまたそれを後押ししている感覚だ。

 一方のインテリアは水平基調の仕上がり。これなら悪路に行っても平衡感覚をつかみやすそう。「アイランドアーキテクチャ」を採用したことで、スイッチ類も扱いやすく仕上がっていたところはありがたいし、メーターフードを廃したメーターまわりも認識しやすいところもうれしい。

 走れば取り回しやすく、車両感覚もつかみやすい。そして何より拡大路線を歩んでいるこの時代に、全幅を拡大しなかったことから、狭くて暗い地下駐車場からの脱出にも苦労するところが少なかったところが印象的だ。地上に出たところで目的地を入力し忘れたことに気づき、音声認識によってナビに目的地を入れてみたのだが、あっさりスムーズに入力できてしまった。テンポのよさはたしかにあるものだなという感覚だ。

 扱いやすいのはアクセルやブレーキについても同様だ。いずれも唐突な感覚なく、求めたとおりに動いてくれるところがマル。ブレーキはかなりシビアに反応してくれるため、操作の荒さは即座に展開されてしまうところがあるから、運転も矯正してくれそうだ。HEVの感覚はパワフルというほどではないが、必要十分なレベルのように感じる。

 フットワーク系はかなりオンロード志向な感覚。Zはダンパーの減衰力設定がアドベンチャーとは異なるらしいが、ピッチ挙動がかなり収められており、乗り味はかなり引き締まっていた。歩道の乗り上げ時にはややガツンとくるところもあったが、これはオプションの20インチのせいかもしれない。試乗時は極低温のウエットという状況でグリップも低く、足にしなやかさがないことから(試乗車はおろしたてでナラシがすんでいなかったこともありそう)、首都高速の継ぎ目などではフロントタイヤだけがスッとグリップを失うようなところもあった。ドライ路面で高速域でこそマッチする、それがZ+20インチの仕上がりなのかもしれない。

 続いて試乗したオフロードテイスト溢れるアドベンチャーは、基本的な部分はZと同様。だが、フットワーク系は18インチ仕様で、乗り換えた瞬間に「これぞRAV4」といった仕上がりがあった。悪路も睨んだようなしなやかに動くサスペンションと18インチの仕上がりは、まぎれもなくこれまでの流れを汲むもので、そこにボディの一体感、そしてブレーキの姿勢制御による少ない操舵角で駆け抜けるようなところなどが加わり、正常進化を果たしたように感じられたのだ。これなら凝った4WDシステムも必要ないのかもと思えたところもあった。

質実剛健なSUVらしく、シンプルなデザインをまとうアドベンチャー
進化しつつ、一目で見てRAV4と分かるデザイン。世界的な大ヒットとなった先代のサイズ感を踏襲している
アドベンチャーは18インチタイヤ。雨の都内では、この18インチタイヤの影響もあってか好印象の走りだった

 両グレード共通して感心したのはToyota Safety Senseが生み出す圧倒的な安心感だった。カメラは従来型の約1.4倍の高画素化を行ない、検知距離は約1.5倍、検知角度は約14%拡大。レーダーの検知距離は従来比約1.7倍にもなっている。そのおかげか、コーナー先にあった信号において停止していた車両をいち早く検知してくれた。そこでプロアクティブドライビングアシストが素早く減速を開始。違和感なく、恐怖感もなくスムーズにその場をこなしてくれた。これは間違いなく交通事故の減少にひと役買ってくれているなと思わせてくれる仕上がりだ。

 また、高速道路においてアダプティブクルーズコントロールを使っているときには、確実に車線内を維持するだけでなく、コーナーアプローチ時にも遅れなく車線の中央をなぞるように曲がっていくところが感覚にマッチしている。そうか、「匠」はこんな感じで曲がっているのね、なんてちょっと勉強にもなったり……。それを真似れば普段の運転スタイルだってアップデートできてしまうかもしれない。

小雨模様となった都内を中心に試乗。室内空間も先代同様となり、過不足のないRAV4らしい空間を作り上げている

 さらにエコモードでアダプティブクルーズコントロールを動かしているときには、「風除け効果表示」なるものもメーター内に展開。つまりコレ、スリップストリームをどれだけ支えているかを表示するもので、先行車が普通車なのかトラックなのか、そして先行車と自車の距離を計算してエコの段階を示してくれるというユニークなシステムだ。カメラの認識システムを使い、これまでにない表記を行ってくれたところはかなり面白い。これなら楽しみながらエコできそうだ。

 はじめはキャリーオーバーでスキンチェンジ、そして4WDシステムを簡素化したクルマなのかと睨んでいたが、実は中身がいろいろ違っていて確実な進化が見られた今度の新型RAV4。この仕上がりに加えて、新たなる世界をさらに見せてくれそうなGRやPHEVまで準備しているのだから恐れ入る。これまた売れそうな一台であることは間違いなさそうだ。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛