試乗記

新型「デリカD:5」「デリカミニ」で雪上試乗 三菱自動車のオフロードへのこだわりを強く感じた

新型「デリカD:5」「デリカミニ」で雪上試乗

デリカD:5の集大成ともいえる大幅改良を2025年12月に実施

「デリカD:5」は発売以来、不動のポジションを保つクロカン系ミニバンだ。5代目となる現行モデルのデビューは2007年でデリカ初のフルモノコックボディとなった。しかしデリカファンの期待に応えられているのは車体に入った環状構造のリブ。これによってボディ剛性が大幅に上がり、起伏の大きなオフロードでもボディはミシリともせずタイヤはしっかりと路面をつかむ。ジャッキアップしてスライドドアがスムーズに開閉するミニバンはデリカD:5だけと言われるゆえんだ。

 19年に及ぶデリカD:5の長い歴史の中で、時代に応じた改良を続けてきた。もっとも大きなマイナーチェンジは2019年。独特の縦目ヘッドライトやフロントグリル、AdBlue(アドブルー)を使用したディーゼルエンジンと8速ATでパワートレーンも一新され、デリカD:5の存在感を明確にした。

 そしてデリカD:5の集大成ともいえるような大幅改良が2025年12月に行なわれた。機構面ではS-AWCに進化したAWDシステム。エクステリア/インテリアもデリカならではのアップデートがされ、デリカD:5ならではのユニークポイントが外観からも、そして走っても分かりやすくなった。

大幅改良した「デリカD:5」は2025年12月に登場。試乗車は「P」グレード(494万4500円)で、ボディカラーは特別色のムーンストーングレーメタリック/ブラックマイカ
ボディサイズは4800×1815×1875mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm
エクステリアではフロントグリルとフロントバンパーをシンプルで立体感のある力強いデザインにするとともに、リアは左右につながっていたテールランプから中央に「DELICA」ロゴを配置するスタイルに変更。また、ボディサイドにはワイドで安定感のある足まわりと高い走破性を想起させるホイールアーチモールを新採用し、力強さとギア感を高めた。加えて新デザインの18インチアルミホイールも採用する
ドライブモードセレクターはダイヤル式を継承し、ダイヤルの下に「ヒルディセントコントロール」のボタンを備える。センターパネルには傷つきに配慮したダークグレーを採用
8インチカラー液晶ディスプレイメーターとともに、金属調アクセントを用いたインストルメントパネルを採用。メーターはS-AWCの表示も可能。また、センターコンソール、フロアコンソールの下部にUSB Type-Cをそれぞれ2ポート追加し利便性を高めている
シートには「CHAMONIX(シャモニー)」にも使用しているスエード調素材(撥水機能付き)と合成皮革のコンビネーション生地を採用。ステッチは内装の各部と同様のカーキ色にするなど統一感を高めている

 もう一方、今回試乗したデリカミニもデリカファミリーの重要な一翼を担う。2023年の登場から独自の位置づけで人気が高く、特に悪路を意識したショックアブソーバーや大径タイヤの設定で並み居る軽ハイトワゴンの中でも独自性を打ち出した。現行モデルは2025年にフルモデルチェンジされ、進化したデリカミニらしさに一目置かれる存在となっている。

2025年10月に発売となった新型軽乗用車「デリカミニ」。写真は「T Premium DELIMARU Package」(4WD/290万7300円)。DELIMARU PackageではT/G Premiumで標準装備となる高速道路同一車線運転支援機能「マイパイロット[MI-PILOT]」や電動パーキングブレーキ/ブレーキオートホールドに加え、Google搭載インフォテイメントシステム(12.3インチHDディスプレイ)、3Dマルチアラウンドモニター移動物検知機能[MOD]、デジタルルームミラー、前後ドライブレコーダー、ビルトインETC2.0ユニットなどを標準装備する
ボディサイズは3395×1475×1785mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2495mm。ボディカラーはサンドベージュパール/ブラックマイカ
新型デリカミニのショックアブソーバーには高速道路から未舗装路まであらゆる路面状況でも上質な乗り心地を実現するカヤバ製「Prosmooth(プロスムース)」を採用。4WD車では専用チューニングに加え、フロントには高剛性のスタビライザーとベアリングを採用、リアはブッシュの配置変更などサスペンションを改良し、安定感が高く気持ちのよい走りを実現している
Tグレード系は直列3気筒DOHC 0.66リッターターボの「BR06」エンジンを搭載。最高出力47kW(64PS)/5600rpm、最大トルク100Nm(10.2kgfm)/2400-4000rpmを発生し、WLTCモード燃費は17.8km/L
インテリアではAピラーの位置と角度を見直し、室内長は従来比で+115mmを実現。さらにピラー自体を細くすることで前方視界を大きく改善しながら開放感を高めている
新型デリカミニには軽自動車として初となるエンジンレスポンスやASCなどの制御を専用チューニングするドライブモードを搭載。「POWER」「ECO」「NORMAL」「GRAVEL」「SNOW」の5モードから選択できる。また、Google搭載インフォテイメントシステムではGoogleマップが利用可能なのに加え、3Dマルチアラウンドモニター、クルマの下を確認できるフロントアンダーフロアビューといった機能も利用できる
DELIMARU Packageグレードでは「MITSUBISHI CONNECT」を標準装備。スマートフォンアプリから乗車前にエアコンのタイマー設定や、ナビゲーションへの目的地送信といったことが可能。さらにリモートドアロック/アンロック、SOSコール、セキュリティアラーム通知なども利用できる
シートは体にフィットする伸び率の高い素材を採用。後席は320mmのロングスライドを誇る

デリカD:5とデリカミニで志賀高原へ

2台をオンロードと雪上で試乗

 デリカD:5とデリカミニで向かったのは雪を求めて志賀高原だ。装着タイヤは氷上性能に優れたブリヂストンのBLIZZAK。デリカD:5は最新のWZ-1(225/55R18)を履き、雪上性能を上げた最新型だ。一方のデリカミニは氷上性能に優れたVRX3(165/60R15)を装着する。いずれも新しいデザインのホイールによく似合っている。

 デリカD:5の外観ではブラックアウトされたフロントグリルが力強く、リアエンドに誇らしく入った「DELICA」の文字にブランド力の強さがうかがえる。前後ホイールアーチモールと前後のバンパー下部はアンダーガードを連想させる造形になり、オフロード感のあるデザインに統一されている。

強靭なボディが安心感をもたらす

 インテリアはメーターが液晶になって見やすくなるとともに表示できるものも広がった。もっとも大きな違いはS-AWCへの進化とともにドライブモードの切り替えがECO、NORMAL、GRAVEL、SNOWの4モードが設定されたこと。前輪駆動から4WDまでをダイヤルで簡単に設定できる。

 デリカD:5に乗ると強靭なボディがもたらすものなのかホッとさせる安心感がある。どっしりと走るのだ。サスペンションの働きをもっと生かせればと思うところもあるが、それでもこの安定感はデリカD:5の強い武器だ。スタッドレスタイヤの進化もあって高速の直進性もブレることなく堂々とクルージングする。さらにマイチェンで遮音性が向上してキャビンが静かだ。メカノイズはもちろんロードノイズもよく抑えられている点は見逃せない。ディーゼルノックも走行中はほぼ感じることはない。

 2.2リッターの直噴ディーゼルターボは380Nmのトルクがあり、8速ATとの組み合わせで高速でのクルージングは快適そのもの。エンジン回転も低く抑えられ、しかも低速トルクがタップリしているので巡航してもいつでも加速に移れる余裕が感じられる。この組み合わせはデリカD:5ならではの強みで長距離移動も疲れ知らずだ。エンジン振動もよく抑えられている。

デリカD:5は最高出力107kW(145PS)/3500rpm、最大トルク380Nm(38.7kgfm)/2000rpmを発生する直列4気筒 2.2リッターディーゼルターボ「4N14」型を搭載。WLTCモード燃費は12.9km/L

 ECOモードを選択するとFFとなり、空調も省エネモードになる。通常はECOでも安定性も居住環境も大きく変わらない。NORMALはオールマイティで駆動力は後輪にも分配され、状況に応じてその駆動力を大きくする。可変で駆動力を配分し、左右フロントタイヤの制動力も使って安全な旋回力を確保することができる。

 折からの暖気で志賀高原の路面にはほとんど雪はなかったが、残雪を探した結果、春先特有の水を含んだ重い雪道が残っていた。各モードをトライして予想以上に明確な違いがあった。

 スタッドレスタイヤの性能もすばらしかったが、さすがにECOモードではFFになるので轍でのハンドル取られが大きく、操舵量が大幅に増えた。すぐにNORMALを選択すると後輪への駆動力が伝わったことに加えてブレーキ制御も入り格段に走りやすくなった。旋回力が高くなったことが大きい。

降雪地でおすすめなのはSNOWかNORMALモード

 一方、SNOWではアクセルの反応が鈍くなり、トラクションコントロールが早い時点で作動し、安定方向に戻す動きをする。またNORMAL同様、フロントブレーキの左右制御によって曲がりやすい。

 GRAVELでは最初から後輪の駆動力配分が大きく、泥濘でも走破できるようなトラクションコントロールの動きを制限するモードだ。もし泥濘に足をとられそうになったら迷わずGRAVELを選択するだろう。

 降雪地でおすすめなのはSNOWかNORMALモード。大抵の場面では強力なサポートになるのは間違いない。これらの作動状況は大幅改良で設けられたS-AWCモニターで確認できるようになった。

S-AWCの効果は大きい

 サスペンションはリア/マルチリンク。接地性は高いがギャップの大きいところではもう少しストロークが欲しいと感じる。しかしS-AWCの効果は大きく、接地性と駆動力のダイレクト感は文句なしにトップレベルだ。またデリカD:5のアラウンドモニターは床下を疑似的に見せる機能もあり、オフロードに限らず便利な機能だった。

 アップダウンのある乾いたワインディングロードを走って志賀高原を下った。SUVのような軽快さはないが、高い悪路走破性を持ちながらしっかり路面をつかんだ安定感は信頼に値する。またデリカD:5の美点で3列とも大きなシートとフットスペースが奢られていることだ。半面、ラゲッジルームは小さくなるのでルーフキャリアを付けているデリカD:5は多く、それがファッションにもなっている。

高い悪路走破性を持ちながらしっかり路面をつかんだ安定感は信頼に値する

深雪の走破性もわるくない新型デリカミニ

新型デリカミニにも乗った

 一方の新型デリカミニ。ちょっとにらんだ眼でかわいさ倍増だ。こちらもデリカの名前にふさわしくオフロード感を出したバンパー下のアンダーガード風のデザインが他のハイトワゴン系と一線を画している。

 インテリアではGoogle搭載のインフォテイメントが使いやすく、機能も飛躍的に多くなった。12.3インチモニターもスッキリ収まり、水平基調のインパネによって室内は開放的で、軽自動車とは思えない広がりがある。デザインのマジックだ。またAピラーの形状をドライバーからは細く見える形状にし、効果的に配置された三角窓との相乗効果で死角は少ない。

 4WDのモードセレクターはデリカD:5同様のダイヤル式になっている。選べるドライブモードはPOWER、ECO、NORMAL、GRAVEL、SNOWの5つだ。駆動力配分を変化させて多様な路面で適合できる。

 高速道路でのハイトワゴンにスタッドレスタイヤの組み合わせは、夏タイヤより安定性は落ちるものの常に後輪に駆動力が送られる4WDへの安心感は高い。MI-PILOTのサポートを受けながら快適な室内で、待ち合わせのサービスエリアを目指した。さすがに日本市場で4割のシェアを持ち、日本の国民車となった軽自動車の進化と仕上がりはすばらしい。

 デリカミニの4WDシステムはビスカスカップリングによるフルタイム4WD。前後タイヤの回転差が生じたときに後輪に必要量の駆動力を配分するオーソドックスなものだが、さらに左右でグリップ差が生じたときにはスリップしているタイヤにブレーキをかけて、滑っていないタイヤに駆動力を送るグリップコントロールを組み合わせることで強力な駆動力を確保している。

新型デリカミニも強力な駆動力を確保

 志賀高原への急勾配の山道も軽快に上る。アクセルの反応はもう少し抑えた方が乗りやすいと思うが、発進直後から元気がよいのは確か。660ccのターボエンジンはトルクがあって力強い。振動も小さく一昔前の軽から比べるとひとクラス大きなクルマに乗っているようだ。

 デリカD:5と同じコースを走ってみた。4WD専用にストロークが滑らかなショックアブソーバーと大径タイヤ(今回はスタッドレス)で深雪の走破性もわるくない。ECOでは轍にハンドルをとられそうになったがGRAVELモードで雪をひっかくように走るとアクセルの追従性が高く、左右方向の姿勢もコントロールがしやすくなった。SNOWモードはトラクションコントロールの介入が強くなり雪の中を安全に確実に走るのに役立つ。圧雪路面ではおすすめだ。

深雪の走破性もわるくない

 雪や氷に覆われた下りの急勾配は怖いものだ。そんなときの出番がヒルディセントコントロール。速度を4~35km/hの範囲で固定でき、自動でブレーキを使いながら下ることができる。ドライバーはハンドル操作に集中でき、慣れるとありがたいものだ。デリカD:5には進化型が搭載されている。またアンダーフロアビューも悪路に限らず、街中で段差を知るにも便利なモニターだ。

 2台のデリカからは三菱自動車のオフロードへのこだわりを強く感じた。そのオフロードで培った技術を使いやすい形で取り入れ、三菱車の形が確立されていく。そのブランドイメージは重要だ。そんなことを考えながら終えた今シーズン最後の雪上試乗だった。

2台のデリカから三菱自動車のオフロードへのこだわりを強く感じることができた
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛