試乗記

新型「デリカミニ」初試乗 よりタフになったボディと足まわりで走りはどう進化した?

2025年10月29日 発売
196万4600円~290万7300円
新しくなった三菱自動車の「デリカミニ」を試乗する機会を得た

 全高の高いスーパーハイト系ワゴンの中でもオフロードに強い三菱自動車らしい存在感を持った人気車種「デリカミニ」がフルモデルチェンジした。

 デザインはデリカミニを印象付ける丸形ヘッドライトはそのままに、LEDのポジションランプの上部を削ったことでさらにキリリとした目つきになったのが特徴。またアンダーガードを連想させる大型スキッドプレートでオフロード感が強調されている。

試乗車は「T Premium DELIMARU Package」の4WD(290万7300円)。ボディカラーは新色の「デニムブルーパール」
試乗車のボディサイズは3395×1475×1815mm(全長×全幅×全高)でルーフレール付車の場合、全高は1830mm。ホイールベースは2495mm、車両重量は1050kg、最低地上高160mm、最小回転半径4.9m
タイヤはダンロップの「エナセーブ」でサイズは前後とも165/60R15

 試乗したのはターボエンジンで4WDのT Premium DELIMARU Package。最初の印象は静かになったこと、走りが滑らかだったことだ。軽の進化は素晴らしい。パッケージングの巧みさから始まり、今は軽では限界と思われていた走行性能のアップにも目を見張るものがある。

 エンジン、CVTトランスミッションは従来型からのキャリーオーバーだが、CVTの変速スケジュールの変更、エンジンのマップを変えることで発進力が高くなっている。アクセル開度の小さいところからエンジン回転が上がるように変更され、力強い加速力を持っていた。従来モデルからマイルドハイブリッドが外されており、微低速からの発進力はちょっと感触が異なるが違和感のない加速力だ。

パワートレーンは直列3気筒0.66リッターでインタークーラー付きターボチャージャーを搭載するBR06型。最高出力は47kW(64PS)/5600rpm、最大トルクは100Nm/2400-4000rpmを発生。そこにCVT(自動無段変速機)が組み合わせられる

 また静粛性のよさも新型のセールスポイント。軽は高回転まで回すのが宿命だが加速中でもワンランク上がった滑らかなエンジンノイズ、ロードノイズもよく抑えられている。これはフロントウィンドウに使われた遮音ガラスと、ドアおよびリアの遮音材の効果が大きい。

 プラットフォームは従来型と共通だが、サスペンションブッシュも含めた前後の剛性向上が図られ、ナックルアームもアルミ化された。さらにショックアブソーバーには評価の高いカヤバ・プロスムースを採用することで、荒れた路面でのバネ上の動きが抑えられているのが特徴。プロスムースはフリクションに注目した技術で、徐々に採用機種が増えており軽では初採用だ。実際に乗り心地は滑らかで軽とは思えない仕上がりになっていた。

前モデルよりもAピラーが立ち上がったことでさらに視界が広くなった
試乗車の内装はベージュ。肌触りのよい合成皮革&ファブリックを使用した新素材と、ホールド感を増した新形状のシートを採用。ソファーのような上質な座り心地を実現している
前席のヘッドレストを外して背もたれを倒せば、後席のシートとつながるようにしてありフルフラット状態を作りやすくなっている

 視界についても改良がある。ルーフを前方まで伸ばしAピラーを立たせたことで斜め前方の死角が少なくなった。またダッシュボードがフラットな造形になりスッキリした視界になったことも大きい。

 インテリアもシンプルな美しさだ。Google搭載のインフォテイメントは整理され分かりやすくすぐに操作できる。また実用的な物入が各所に設けられているので軽でもそれほど狭さを感じない。

ステアリングは2本スポーク。左にエンタメ系、右にACCやADASといった機能系のボタンが配置されている
シフトまわりはスッキリしたレイアウト
7インチのカラー液晶メーターは、中央に車速、周囲にエンジン回転計を表示

 広い室内とクッションストロークを確保した前後席はゆったり座れ、ルーフセンターにはベンチレーションがある。一見エアコンのようだが実はサーキュレーション。しかし空気の循環で想像以上に効果がある。ちなみに後席は320mmのスライドが可能で、最後端にすると足下は限りなく広くなる。それでもラゲッジルームは手荷物など入るスペースが確保されている。

 もっともオフロードの血筋を感じさせるのは、ダッシュボード中央に新設されたダイヤル式で切り替える5つのドライブモードだ。パワー/エコ/ノーマル/グラベル/スノーから選べる。従来もデリカミニらしいドライブモードが設けられていたが、三菱4WDのアイデンティティを感じさせ路面に合わせたパワートレーンの駆動力特性が選択できる。

走行モードを切り替えられるダイヤル式の「ドライブモードセレクター」を採用。運転中でもサッと切り替えられる
走行モードを切り替えると、かわいいイラストのデリカミニが走りをイメージした絵で表示される

 グラベルではトラクション重視となり、スノーでは少し発進力がいなされているようだが4WDならでは素直な設定になっている。ノーマルモードでは前輪中心で引っ張るようになるが普段使いにはこれで不足はない。

普段使いはノーマルモードでこと足りる

 試乗車のタイヤは、ダンロップ・エナセーブでサイズは165/60R15(FFは155/65R14)。電動パワーステアリング(EPS)が小型化されたが操舵力は軽く感じ、取りまわしが上がった。さらにステアリング剛性の向上もあり、ステアリングレスポンスも向上した。

4WDモデルであれば泥濘地も雪道も心強いだろう
試乗会では前輪片側をローラーに乗せ、トラクションコントロール制御の繊細さも体感できた

 操舵感の向上はコーナリングも軽やかで、ハイトワゴンにあっても姿勢安定性が高くなっている。最低地高はFFより10mm高い160mm。10mmの地上高差は走破性の点では意外と大きい。

 また、なにかと便利なアラウンドヴューだが、新型の“DERIMARU”パッケージには仮想映像で床下を見える化したアンダーフロアビューも備わり、オフならずとも市街地でも使いやすい。こちらは移動物(小動物など)検知システムも備わる。

ハイトワゴンにあっても姿勢安定性が高く、コーナリングも軽やかだ
12.3インチナビゲーションディスプレイを搭載。車体の下面状況を確認できる「フロントアンダーフロアビュー」も備える

 デザインの質感、インテリアの質感、走りの質感、軽自動車の枠を超えた個性派がデリカミニ。どこでも連れて行きたくなる。

軽の走行性能アップには目を見張るものがあり、どこでも連れて行きたくなる。ちなみに今デリカミニを成約すると「デリ丸」のぬいぐるみがついてくるそうです
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛