試乗記
日産の新型「ルークス」試乗 快適な乗り心地と安定性で競合車の中でも存在感光る
2025年12月8日 11:00
11月30日時点で受注台数が2万2000台を突破
軽自動車は全長(3400mm)×全幅(1480mm)×全高(2000mm)が制限されておりメーカーが激しい競争を繰り広げた結果、日本市場では3台に1台を軽自動車が占める。しかもその半分が「ルークス」も参入するスーパーハイトワゴンだ。限られたサイズの中で最大の広さを求めるニーズに応えた結果である。
マーケティングも小型車メーカーらしいターゲットカスタマーを想定して行なわれているのもおもしろい。子育てが一段落したポストファミリーを仮想顧客とし、品質が高く行動範囲が広がることで新しい世界が開ける軽自動車、それがスライドドア+スーパーハイトワゴンという形となって新型ルークスが生まれた。
エクステリアはサイズ以上にワイドに見えるフロントマスクと全幅いっぱいに広げられたリアコンビネーションランプで安定感を与え、サイドラインも直線から凹型にすることでルークスらしいアクセントを与えている。またそのサイドラインから上の塗色を変えた2トーン仕様もこれまでになかった試みで新しさを感じる。ちなみにカラーは17色を展開する。
プラットフォームはキャリーオーバーだが、Aピラーを立てることでルーフを前方に出してロングキャビンになったことも特徴的だ。そのため斜め前方の死角が少なくなったことも安心感につながっている。
スッキリと整理されたインテリアではダッシュボード上面も視界に入る突起物がなく明るく感じられ、全方位での視界をよくすることでドライバーに余計なストレスを感じさせない。ついでに言えば斜め後方もウィンドウを広げて確保されている。
センターディスプレイは軽初の大型12.3インチでGoogleと連携しており、アカウントを同期すればスマホのマップがそのまま使える。また「OK,Google」でエアコン操作や、ナビに目的地を入れたりミュージックを捜したりできるのもルークスの世界を広げる。スマホ世代では簡単に利便性を享受できるだろう。
シートは日産得意のゼログラビティ思想で作られ、前後シートともホールド性とシート全体で受け止めてくれる感触が落ち着きを呼ぶ。後席もクラス最長の前後長を活かして、シートの全長も伸び、ゆったりと座れるのがポイントだ。日産は酔いにくいクルマを目指し、シートの改善もその一環で進めている。
もっとも大きいのはサスペンションの進化。フリクションを軽減したショックアブソーバーとゴムブッシュを合わせたチューニングが挙げられ、基本構成は変えていないが丁寧な設定変更ですばらしい成果を上げた。
おどろきの静粛性
装着タイヤはブリヂストン「ECOPIA EP150」(165/55R15、指定空気圧240kPa)。新型ルークスで横浜市街地に乗り出す。港近くの荒れた路高や風の強い高速道路などを走った。従来のルークスも疲れないクルマだったが、新型では荒れた路面からの突き上げはよく抑えられており、特に突起乗り下げ時のサスペンションの追従性がよく、スーと納まる。バネ上の動きはさらにフラット感が高くなった。
ハンドリングではステアリング操舵の応答性が素直になり、初期のロール量は少ない。大きな要因はスタビライザーの強化とコラムタイプEPS(電動パワーステアリング)の軽量化などが効果的だ。重心高の高いスーパーハイトワゴンではロールのコントロールが難しく乗り心地にも大きな影響を与えるが、現時点での最適解を見出した感じだ。またステアリング操作の際の手応え感を確保しつつ、操舵力が小さくなっているので市街地での取りまわしもよい。
市街地で便利なのは「インテリジェント アラウンドビューモニター」(移動物検知、3Dビュー機能付)。従来の機能に加えて狭い道から出る際にドライバーからは見えない自転車や人などをディスプレイで確認できる機能が加えられた。
高速道路ではステアリングのスワリがよく、自然と直進安定性が高い。この日は横風も強かったが、進路を大きく乱されることなくステアリングホイールに手を添えているだけで巡航できた。またそのためか、レーンキープ性能も上がったように感じ安心して任せられた。
そして一番伝えたいのは静粛性。軽はどうしてもエンジン回転が上がり、エンジンからの振動やノイズが大きくなるが、ルークスでは振動遮断とフロントから入るノイズがしっかり遮音されておりおどろいた。フロントウィンドウに遮音ガラスを使っている効果が大きいようだ。
また後席でも恩恵を受けるのはサイドドアの2重遮音材とドア下部に貼られたシール材、そしてリアに貼られた吸音材でタイヤのロードノイズやパターンノイズがよく遮断されており、気になる音が大幅に低減されている。これも疲れない大きな要因だ。
ドライバビリティでは先代からマイルドハイブリッドシステムが外された。先代の発進時はジェネレーターの若干のサポート受けて滑らかな動きだったと思うが、新型ではエンジン特性とCVTの設定変更でカバーする。感覚的にはアクセル開度を大きくすると二乗的な加速感となる。もう少し穏やかでもよいように思うが、すぐ加速したいニーズが強いと判断されたようだ。ジワリと走らせるには少しアクセルコントロールが必要だが、登坂や中間加速では力強く感じられるに違いない。
ドライブモードはSTANDARD、ECO、SPORTから選べ、SPORTは最初からギヤ比の低い設定で、減速時のエンジンブレーキも強くなる。急激な加速力の変動がなく、使用範囲は広がりそうだ。
ターボと自然吸気は共通の味付けだが、自然吸気はパワーが小さいだけにアクセル開度は大きくなるため、エンジンノイズも高め。またステアリング応答性も少しゆるく感じた。出力に合わせた感じでこれはこれでちょうどいい設定だと思う。
上質なデザイン、室内のクオリティ、使いやすいインフォテイメント、快適な乗り心地と安定性。ルークスは数多くの競合車の中でも存在感を出せそうだ。


























