試乗記

トムスが仕上げた高性能チューニングカーが借りられる!? キントの新サービス「MOSKIN」のスポーツカーレンタルを試す

GR86(6速MT):8時間3万円~
GRヤリス(6速MT):8時間3万5000円~
GRスープラ(8速AT):8時間4万5000円~
キントの新サービス「MOSKIN」の“スポーツカーレンタル”なら、カッコよくて速い高性能スポーツカーに乗れるのだ

 トヨタのセミワークスとしてモータースポーツシーンで活躍し、そのノウハウをもとにハイクオリティなチューニングパーツや、コンプリートカーの販売を行なっている「トムス」。そんなトムスが手がけたチューニングカーを、身近に体験できるレンタカーサービスが始まったということで、さっそくお台場にある「トムス東京ショールーム」へ訪れた。

 今回始まったこのサービスは、トヨタ車を定額で乗れるサブスクリプションサービス「KINTO」から、新たに派生した「MOSKIN(モスキン)」の4つのメニューのうちの1つだ。MOSKINとは「MOTOR SPORT by KINTO(モータースポーツ・バイ・KINTO)」の略称で、モータースポーツを気軽に楽しむために考えられたサービスである。

トムス東京ショールームは、〒135-0091 東京都港区台場2-3-2 台場フロンティアビル1Fにある。営業時間は10時~18時。休館日は夏期および年末年始。ゆりかもめ「お台場海浜公園」駅から徒歩1分、りんかい線「東京テレポート」駅から徒歩3分だ
TOM'S TOKYO SHOWROOMでは、ボディの美しいライン、高品質な内装、そして細部にまでこだわったパーツの数々など、TOM'Sコンプリートカーの仕上がりを直接確認できるほか、コンプリートエンジンやグッズなども飾られている

 ちなみにその一弾としてMOSKINでは、厳選されたKINTOアップ車輌(中古車)をベースに、トムスとの連携でチューニングカーを作成。これをサブスクで、最長2年間利用できるサービスを開始した。その第1期としてはGR86(2台)、GRヤリス(2台)、GRスープラ(1台)の計5台をラインアップしている。

 そしてこのチューンドカーを、より気軽に体験できるサービスとしてこの「スポーツカーレンタル」が同時に始まった。憧れのスポーツカーを体験して、気に入ったらサブスクにもステップできるというスマートなシステムだ。

Webサイトでは空き状況を確認できるほか予約も可能

 さらにいうとMOSKINでは、第3弾のサービスとして「サーキットレンタル」も用意している。

 これは走行前メンテナンスがなされた車両を使って、指定されたサーキットでスポーツ走行が楽しめるレンタルサービスだ。現状だと千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイ(試乗車はトヨタ86/GRヤリス)と、愛知県の幸田サーキット(試乗車はヴィッツ/トヨタ86)で体験できる。

 また2025年は各地のサーキットで、モータースポーツ体験イベントを年間6回にわたって企画。興味はあってもなかなか踏み出しにくいモータースポーツの裾野を広げるために、KINTOは精力的に活動し、そのプレイグラウンドを開拓している。

2026年3月7日にも「濃密集中ドライビングレッスン in 袖ヶ浦フォレストレースウェイ」が実施される。申し込みの受付開始は2025年12月24日を予定

 ということで今回は、トムスが仕上げたスポーツカーレンタルの3台すべてに試乗してみた。

KINTOの協力を得て3台の「スポーツカーレンタル」を体感してみた

340PSを460PSまでパワーアップした「GRスープラ」

 まず最初に走らせたのは、一番人気の「GRスープラ」だ。ベースとなるのは2020年式の「RZ」で、そのチューニングメニューはエンジンから足まわり、そして内外装に至るまでひと通りきちんと手が入れられていた。

 まず感心したのは、その乗りやすさだ。

 3.0リッターの排気量を持つ直列6気筒エンジンは、タービンをハイフロー化してオリジナルECUで制御。そのパワーは純正ストックの340PSから460PSに出力を向上させているとのことだったが、これが混み合った街中でも、実に運転しやすかった。

GRスープラ by TOM'S×KINTO。ボディカラーはホワイトメタリック
エンジンは460PSまでパワーアップ
ホイールはトムスの軽量で高剛性なTWF03
ウイングは世界に1つしかないオリジナル

 アクセルを踏めば8速ATとの連携もスムーズに、低速から太いトルクをレスポンスよく立ち上げてギヤを上げていく。そこからアクセルを緩めてもギクシャク感はなく、遠鳴りにブースト圧を解放するサウンドを“プシュッー”と響かせて気分を盛り上げてくれる。

 そのままアクセルを踏み続ければ、3500rpmを超えたあたりからパワーがさらに一段盛り上がり、直列6気筒エンジンの気持ちいい伸び感を得られたはずだが、今回はここまで。しかし常用域+アルファのエンジン回転数で走らせているだけでも、プレミアムスポーツカーならではの余裕を十分に味わうことができた。

GRスープラは8速AT。460PSを2ペダルでゆったりと堪能できる。ステアリングはトムス製に交換されている

 またこうしたエンジン特性に対して、乗り味も大人っぽく引き締められていた。

 その足まわりには、トムス・オリジナルの車高調整式サスペンション「AdvoxーSports」をインストール。減衰力やスプリングレート、そして車高はトムスの手によってオンロード用に最適化されており、確かに純正サイズの「POTENZA S007」ともマッチングは良好。短いストロークの中でも乗り心地を上手に確保しながら、同時にしっとり上質なハンドリングを与えていた。

GRスープラの気持ちいい走りを味わえた。ATなので気軽に乗れるのもうれしい

全方位で楽しいチューンド「GRヤリス」

 対してGRヤリスは、とても分かりやすいチューンドカーだ。

 ベースとなるのは、2022年式の「22式」初代GRヤリスのRZハイパフォーマンスモリゾウセレクション。そのエンジンはタービンのハイフロー化に留まらず、インタークーラーおよびラジエーターを大容量化。排気系にはトムス・バレルを組み込んで、専用のECUセッティングを施すことで、オリジナルの272PSから340PSまで最高出力を向上させた。そのパワーは実に、最新の「25式」の304PSを、40PS近くも上まわっているのだ。

GRヤリス by TOM'S×KINTO。ボディカラーはプレシャスブラックパール
TOM’Sオリジナルエアロパーツを装備
ホイールは軽量で高剛性なトムスのTWF01をチョイス
楕円形のマフラーは低速域から高速域までよどみなく吹き上がり、全域に渡ってトルクフルな走りを実現するトムス・バレル
トムス製リアルーフウィング

 だからクラッチも、ずっしりと重たい。もともとGRヤリスのクラッチは重たいから、オーナーであればわりとすんなり運転できるかもしれないが、普段MT車に乗り慣れていない場合はちょっとおどろく反力の強さだろう。

 しかしその分だけクラッチの切れやつながりは俊敏かつダイレクトであり、340PSのパワーを滑り感なく受け止めてくれる。

 こうして得られた加速力を、今度は引き締まった足まわりがガッチリと支える。サスペンションは同じくAdvoxーSportsだが、その剛性感はGRスープラよりも数段上だ。タイヤにはPOTENZAがストリート最速を謳う「RE-71RS」を装着していたが、その入力に全く負けていない。

ステアリングはトムスオリジナル
「RZハイパフォーマンスモリゾウセレクション」なので、フロントガラスには「モリゾウ」サインが刻まれている

 だから加速はもちろん、コーナリングもカートのように楽しい。そして何よりブレーキングのタッチが、とても正確で気持ちいい。

 ちなみにレンタルでの一番人気はGRスープラだけれど、乗り終えたあとにユーザーが一番興奮してその楽しさを語るのは、GRヤリスだそうだ。

全方位にわって気持ちよさと楽しさを両立した1台

ライトなチューンドカーながら“らしさ”が際立っていたGR86

 最後に試乗したGR86は、排気系にこそトムス・バレルを装着しながらも、エンジンはECUもノーマルのまま。3車の中では一番ライトなチューンドカーだったけれど、だからこそGR86らしさがよく際立っていた。

GR86 by TOM'S×KINTO。ボディカラーはアイスメタリックシルバー

 ただでさえ重心が低いそのボディは、固められた足まわりとRE-71RSのレスポンスによって、さらにステアリングゲインが引き上げられており、切れば狙い通りにラインをトレースするハンドリングが、とっても気持ちいい。乗り心地は純正サスペンションより確実に硬めで、路面の状況によっては突き上げ感も高いが、ノーマルよりも数段高いコーナリングスピードや、速度が上がるほどにフラットになる乗り味には、“吊るし”では得られない特別感がある。

ホイールはトムスのTWF04
スポーツサスペンションキットを装備
マフラーはトムス・バレル
ダウンフォースを生むトランクリッドスポイラー
トムスオリジナルのステアリングに交換済み

 そしてその先には、「サーキットでスポーツカーを走らせる楽しさ」が垣間見える仕上がりとなっていた。

 総じて今回試乗した3台はどれも個性的であり、スポーツカーが本来持つ「走る楽しさ」を、とても分かりやすく伝えてくれるクルマたちだった。

GR86の素性のよさが分かる仕上がりだ

 そして、こんなチューンドカーたちがレンタルだけでなく、サブスク(月額利用)すればサーキットまで走れてしまうというMOSKINの試みには、新しさを感じた(サーキット走行時の点検・メンテナンス・消耗品交換、保険はサブスクの対象外)。

 このなんとも言えない感じは、思い返せば自分の愛車に、初めて足まわりを組んだときの感じと似ている。そしてこのワクワク感を、少しでも多くのクルマ好きだちに味わってほしいと思った。

スポーツカーを購入してチューニングするのはハードルが高いけれど、まずは完成したチューニングカーをレンタルして体感してみてはいかがだろう
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:高橋 学