試乗記
テインの車高調整式サスペンション「4×4ダンパーグラベル2」、中国の悪路で8モデルイッキ乗り
2025年12月3日 07:10
「4×4 DAMPER GRAVEL 2」のメリットとは?
ショックアブソーバーメーカーのテインは、モータースポーツやリプレイス製品に特化した特異なメーカーだ。本社を神奈川県戸塚に置き、開発と生産を行なっているが、近年では急速に自動車産業が発達している中国に開発と生産拠点を構え、少量多品種にも応えられる小まわりの効く生産工場の特性を生かし、多くの車種にテイン製品を展開している。
前回の訪問ではテスラを始めジーリーなど、中国で生産される乗用車向けの乗り心地とハンドリングのバランスが取れた質の高いショックアブソーバーを試乗し、その対応力の高さと市場戦略におどろかされた。当時は中国からアメリカにも輸出していたが、いわゆるトランプ関税の発動以降は日本からの輸出に切り替えるなど素早い対応でマーケットの期待に応えている。
今回の試乗は4×4向けに開発した車高調整式サスペンション「4×4 DAMPER GRAVEL(ダンパーグラベル)2」になる。4×4は中国でも人気が高まっており、特に中国北部に位置する銀川(インチョワン)からモンゴルにかけては未舗装路が多く、実際4×4でなければ行けない場所での需要が高まっているという。使われ方も過酷なものだがモータースポーツで培ったテインの技術がいかんなく発揮される場所でもある。
テインの藤本吉郎専務はTGR(TOYOTA GAZOO RACING)の前身、TTE(TEAM TOYOTA EUROPE)からセリカでサファリなどのWRCに参加してた日本人ラリードライバーのパイオニア。走りへの理解が深く試乗会場も自らコース設営をしたと聞く。
その試乗会場は使われなくなった水田跡を利用して、凹凸の大きな4×4でなければ走れない全長800mほどのオフロードコースだ。コースは水が出やすい場所でときどき大きな岩が顔を出す。走るにつれて湧き出た水と4WDにかき回され、轍も深くなるというよくできた難コース。車種を問わず激しく上下に揺さぶられ、轍でのハンドル取られも当たり前の悪路である。
「4×4 DAMPER GRAVEL 2」は使用目的から車高を5~6cmアップし、それに合わせてロアアームも延長させキャスター変化を補正している。減衰力は16段の伸び圧同時調整式でショックアブソーバ―のストロークを稼げる別タンク式を採用する。別タンク式のメリットはオイル量を増やせるため耐久性が上がり、乗り心地もガス圧が低く抑えられ突き上げが減らせるなどメリットが大きい。
デメリットは部品点数が増えるので高価になることだが、オーバーホールできることで長期にわたって使え、その上テインではコスト管理をすることで価格を抑えている。さらに別タンクのオイル流路でのトラブルを防ぐため、ショックアブソーバーに直付けタイプとしている(スペースの関係で別タンクが入らない場合は除く)。
試乗車は「フォード ブロンコ」「トヨタ LC300」「トヨタ LC250」「スズキ ジムニーノマド」「ジープ ラングラー」「BJ212」「TANK400」「TANK300」の8車種で、いずれも「4×4 DAMPER GRAVEL 2」が組み込まれている。耳慣れない中国モデルもあるがそれも興味津々だ。
総じてテインらしい走りのおもしろさを追求した設定
まずフォード ブロンコから試乗する。ブロンコは日本でも一時はポピュラーだった懐かしいネームだ。走破性が高く、足はよく伸び、操舵応答性はよい。また突起乗り越しではリアからの突き上げが強めに出る。こちらは減衰力を調整することでもっと抑えることができそうだ。ショックアブソーバーのチューニング設定は的を得ており、オリジナルの味を活かしつつオフロードでの性能を引き出したような味付けだ。
BAW(北京汽車製造)BJ212は人民解放軍のために開発されたのがオリジナル。シンプルで頑丈な4輪駆動の軍用車が元祖だ。民生用も販売され2024年にフルモデルチェンジされひとまわり大きくなった。無骨なデザインだがそれも人気だ。こちらは悪路でESC(横滑り防止装置)が早期介入するなどリファインする必要もあるが、シンプルな構造だけにハンドリングも明快。ダイレクトな運転感覚は好ましく、「4×4 DAMPER GRAVEL 2」で車体が過度に暴れないように設定されている。フルバンプしたときも穏やかに接地するのは伸ばされたストロークによる。ハンドリングは大味だが方向性は定めやすく、減衰力調整で扱いやすくなりそうだ。
長城汽車 TANK400は、2.0リッターターボと9速ATのPHEV。モーター出力も大きいために極悪路でのレスポンスのよさがこのクルマの美点だ。大型のクロスカントリー車で重量もかなりありそうだが悪路走破性ではよい面が出て、サスペンションチューニングの妙で上下ピッチングが少なく快適だ。ストロークの長いサスペンションのおかげで大きな凹凸路もショックが少ない。ハンドル応答性は路面を問わず素直なのが好ましい。
さらに砂漠モードはホイールスピンさせて走破性を上げるモードになり、今回のヌルヌルした滑りやすい路面でもその効果が楽しめた。フラットな路面では少しリアのピッチングがあったが、調整式の減衰力を強めるとピッタリ収まりそうだ。なかなか興味深いクルマとサスペンションの組み合わせだった。
長城汽車のTANK300は、ひとまわり小さいサイズでアジアへの輸出も始まったクロカントリー車。ちょっと前のランクルプラドのポジションになるが車体として大味で、ADAS系の甘さや前後駆動力配分の設定などもう少しといった感触だった。しかし内装やインフォテイメントなどは中国車らしい先進性で魅力的だ。
「4×4 DAMPER GRAVEL 2」については素直な動きでTANK300の機動力をカバーしていると言ったところ。標準車はどんな特徴を持つのか知りたいところだが、リアの突き上げは抑制されており悪路走破性も妥当だと感じた。ハンドル応答性遅れがあり、ブッシュなどの動きも加味するとショックアブソーバーではカバーしきれないものの、まずは走りの質感が上がったと感じられた。
おなじのジープ ラングラー。タフでオフロードでの走破性には定評がある。特に険しい山をジワジワと上る粘り腰を得意技としているので、サスペンションはよく動くことが求められる。やや高速の試乗コースではフロントの減衰力をもう少し上げてもよさそうな感じだったが、ラングラー本来の味付けの延長になっており、悪路での乗り心地が向上していた。「4×4 DAMPER GRAVEL 2」の守備範囲の広さが楽しめる。
LC300、言うまでもなくトヨタ ランドクルーザー。オフロードの王者だけにパワフルで走りやすくABS系なども丁寧に作られている。「4×4 DAMPER GRAVEL 2」の装着でリアの駆動力が強くなったように感じ、オフロードを高速で走っても運転しやすかった。また応答性が自然で旋回時の安定性も高いのはオリジナルのよさを受け継いでいる。ただ速度が上がった時の凹凸路ではフロント側の突き上げが強くなる。次はハイドロストッパーも視野に入ってくるかもしれないが、走破性と価格とのバランスを考えると程よい仕上がりだ。
LC300よりひとまわり小さいLC250。中国ではプラドとネーミングされており、中国生産のオリジナルモデルとなる。一気汽車から販売される。中国でもクロスカントリー車の人気はジワジワと上がっている背景もあり、サスペンションも使用環境に応じてチューニングされている。試乗コースでは上下のピッチングが残るために少し上げたいところだが、走り方に応じて減衰力調整ができるのもマニアックな楽しみ方の1つだ。オンロードでのチューニングは乗り心地も含めてちょうどよさそうだった。4×4車はタフさが命。テインのショックアブソーバーはラリーでも鍛えられているので安心感も高い。
最後にはなんと4ドアのジムニーノマドが待っていた。急遽日本から持ってきたという。1.5リッターの自然吸気だが、ジムニーは軽いことでどんな道でも高い走破性を持つ。さすがにフラットで起伏の大きな試乗コースではショートホイールベースが凹凸に合ってしまい跳ね上げられる。しかしその後の収束はピタリと納まる。Lクラスのようなフラットな姿勢は難しいが、ジムニーらしい存在感のある4WDだ。欲を言えばリアのバンプストロークがもうちょっとあればよいと思ったがこのままでも十分に楽しめる。特に乗り心地では突き上げが小さくなり日常でも実用性は高そうだ。
以上8モデルの紹介と簡単なインプレを書き留めたが、総じて「4×4 DAMPER GRAVEL 2」はテインらしい走りのおもしろさを追求した設定になっていた。基本的なストローク長やアライメントなどはメーカーならでの仕様を確保し、その上でソフトな乗り心地を確保しつつ、使用条件やドライバーの好みに応じて減衰力を調整できる幅が強みだ。クロスカントリー車はアフターマーケットで伸長できる余地が大きな市場であり、市街地から山岳地帯、砂漠までカバーできる「4×4 DAMPER GRAVEL 2」のニーズは広がりそうだ。














