試乗記
アルピーヌ「A110」シリーズイッキ乗り 販売終了がアナウンスされた至極のミッドシップを味わう
2025年11月27日 08:00
最終のA110の3モデルを一気に乗り比べ
アルピーヌ「A110」の生産終了発表を受け、長野県の車山高原においてA110として最後となる報道試乗会が開催された。用意されたのは、それぞれ個性の異なる3モデルのA110だ。
4月にラインアップの改編があったばかりで、ベーシックな「A110」はカタログモデルから限定車のみという扱いとなり、それもすでに完売していて、購入できるのは今回設定された限定車が日本で購入できる最後の素のA110ということになる。
「GTS」は、従来はグランツーリスモ的な性格の「GT」とサーキット向けのスポーティな「S」という別け方がされていたのを、それぞれのいいトコ取りをして1つのグレードにしたという成り立ちとなる。
「S」のシャシースポールが装着されていながら、コクピットには「GT」に標準のリクライニング機能付きのシートが与えられているほか、装着可能なオプションの幅がグッと広がったのもポイントで、たとえば「S」に設定されていたエアロキットやバケットシートに変更することもできたり、後述する「R 70」に付く大型で幅広のディフューザーも選択できたりする。より好みに応じてクルマを仕立てることができるようになったのも「GTS」の特徴だ。
「R 70」は内容的にはこれまでの「R」と変わらず、アルピーヌの70周年を記念して、世界770台の限定車が日本にも導入されたものだ。日本では限定車という扱いではなく、通常通りの受注受付となるが、国ごとの生産枠の上限があるので、その枠の中でとなる。
場所は、まるでスイスの高原のような風光明媚な車山高原で、そんな「A110」「A110GTS」「A110 R 70」という3モデルを一気に乗り比べることができたというのも貴重な機会だ。
そもそも「A110」の登場時には、こうしたワインディングを走って楽しめるクルマとして開発されたという経緯がある。アルピーヌにとってエンジン車として最後になるA110の原点に立ち返り、A110とはこういうクルマだということをあらためて思い出してもらえればという思いから、車山高原のようなステージを選び、あえて素のA110も用意してくれたのだという。
こんなに楽しいクルマだっけ!?
その素の「A110」にひさびさに乗って感じたのは、ちょっとしたなつかしさとともに、こんなに楽しいクルマだったっけ!? とあらためて感じたというのが率直な第一印象だ。もちろん以前もその楽しさは十分に味わったはずだが。
まさしく意のまま。すべてが手に取るように感じ取れ、走って曲がって止まれる。速さだって十分だ。しなやかに路面を捉える足まわりのおかげで、安心して攻めていける。シートもいい。
「GTS」は見た目は控えめながら乗ると素の「A110」とはだいぶ違う。以前は「S」のスポーツシャシーは公道で乗るには硬いと思っていたものだが、ときおり荒れた路面に出くわしても車山高原のようなワインディングを走ると、俊敏な回頭性が際立つハンドリングが実に心地よい。
出力向上したエンジンも、いかにも高性能なクルマを操っているというフィーリングを伝えてくる。タイヤの違いもあってトラクションも素の「A110」より高い。強力なパワーとトラクションのバランスも絶妙で、挙動が不意に乱れることもなければ、安定しすぎていてつまらないこともない。これまた、こんなに楽しいクルマだったっけ? とあらためて感じた。マイクロファイバーのダッシュボードやドアパネルの仕様もなかなか好みだ。
街乗りできるレーシングカー
続いて「R 70」に乗ると、やっぱり別世界だ。アルカンターラを駆使したコクピットは、4点式のハーネスやドアの開閉をストラップで行なったり、リアウィンドウの部分がカーボンで覆われているあたりもレーシーそのものの中に上品さも感じさせる。
ドライブフィールもスパルタンそのもの。アジャスタブルレーシングダンパーやセミスリックタイヤを備えた足まわりは、「GTS」よりもさらにスポーティで、路面の状況を走っているかをビシバシ伝えてくる。この硬さと引き換えに、この上ないダイレクト感と一体感のある操縦性を実現している。
パワフルなエンジンのパフォーマンスを、オプションのマフラーによる迫力あるエキゾーストサウンドがより盛り立ててくれる。軽さも効いてか、ブーストもより瞬時に立ち上がる。スポーツモードにすると、アクセルオフ時にパラパラという音の演出もより派手な感じがする。
ブレーキもダイレクトそのもので踏んだとおりに反応し、キャパシティにも余裕があるのでハイスピードでも安心して踏める。
足まわりは衝撃が伝わってきても不思議とそれが不快じゃない。ただのガチガチではなく、少しでも速く走れるよう路面にタイヤを押し付けるためと、荷重移動を早めて俊敏性を高めるためにこうしてあるのだろうが、硬い中にも硬いだけじゃない感覚もあるのは、カーボンホイールならではの独特の減衰が効いているのかもしれない。今回のコンディションだとその効果はあまり体感できなかったのだが、これだけ派手なエアロパーツが付いているのだから、しかるべき場所に持ち込めば、そのエアロダイナミクスの効果も相当なものに違いない。
乗り心地は硬くても動きにナーバスなところはなく、公道でも乗れる本格的ピュアスポーツ、いわば毎日街乗りできるレーシングカーだ。
3モデルを乗り比べて、それぞれ与えられたキャラクターにふさわしいドライビングの世界が最大化されていることがよく分かった。その中でも共通していたのは、“意のまま”の操縦感覚だ。まもなく生産終了となってしまうのは本当に残念でならないが、A110がスポーツカーの歴史に1つの名を刻んだ名作であることをあらためて身に染みて感じた次第である。



















