試乗記
ブリヂストンのリアルとデジタルを活用したタイヤ開発、その足下を支えるテストドライバーのお仕事を体験してみた
2025年11月25日 11:44
あらゆる解析が進もうともテストドライバーの走りは必須
現代のタイヤは求められる性能がとにかく多い。ドライ路面における運動性能はもちろん、ウエットやスノーといった環境の変化への対応。燃費や電費を考えれば転がり抵抗の低減が必要だし、通過騒音対策だってしなければならない。また、先送りされたが欧州の排ガス規制・ユーロ7では、排出ガスだけでなくブレーキダストやタイヤから出るマイクロプラスチック排出にも規制がかかる。それら全てに対応し、サステナブルなタイヤを作っていかなければならないわけだ。
ブリヂストンではいま、全方位で性能を高めるためにさまざまな取り組みを行なっている。ゴムはナノレベルの分析技術が進み、結果として分子レベルでのゴム配合設計やポリマー設計が可能に。これは過去の膨大な知見(紙で記録していた時代からのものも含まれる)や独自の材料合成評価システム、そしてAIを使った解析などによってでき上がってきたものらしい。
タイヤの設計思想も近年は大幅に変化した。テーマは「薄く・軽く・円く」作ること。前述した時代の要求を乗り越えるために必要になってくるものだ。ただ、単純に薄く、軽くすると接地がいびつになるといった弊害が出てくる。そこで「ULTIMAT EYE(アルティメット アイ)」という接地特性を可視化できるブリヂストンの技術が活きてきた。この解析技術によってプライ張力分布を最適化することが可能になった。
だが、タイヤ開発にも最後はやはり「人」が重要となるのだそうで、「リアルとデジタルの融合」を求めている。つまり、あらゆる解析が進もうともテストドライバーの走りが必須。今回はそんなテストドライバーのお仕事を体感させていただくことになった。
テストドライバーの走りと比べてみた
まず連れ出されたのはテストコース内のちょっとしたワインディングコースだ。ここで左側のタイヤをできるだけ白線に添わせて走り、スピードは標識どおりにピタリと合わせてほしいと言われた。これはテストドライバーにとっては基礎中の基礎で、正確なライン取りと一定速で走ることが重要なのだとか。
だが、やってみると基礎とはいえとにかく難しい。左側のタイヤがラインから外れないように走る一方で、速度をピタリと合わせなければならないのだから。コース上にはアップダウンも多く存在するため、アクセルコントロールは超シビアだった。
走行後にデータロガーで得られた筆者のデータを、ベテランテストドライバーのデータと比較してみると、当然ながら筆者のものは波形に乱れがあった。これじゃ合格のハンコはもらえませんかねぇ?(笑) まあ、初見で走ったらコースのクセも覚えきれないし、こんなもんでしょってのが正直なところだが、それじゃダメなのがテストドライバーの世界だそうで、とにかくきれいな波形が重要なのだとか。そうでなければデータとして使えないらしい。リアルとデジタルの融合は人間もまた機械になる必要があるのかもしれない。
続いて訪れたのはウエット円旋回路。わずか20~30km/hくらいで簡単に滑ってしまうようなコースだ。ここで10周ほどまわり、平均ラップを揃え、さらにはベテランドライバーの1秒落ち以内に収めなければテストドライバーとしては認められないということのようだ。
試しに走ればドリフトを維持するのは逆に簡単なのだが、ラップを速く揃えようとするとなかなか難しい。ウエット円旋回路とはいえ、石畳のような路面はμが一定しておらず、グリップしたり、それが抜けたりというシーンがチグハグだから厄介。アンダーステアやオーバーステアをできるだけ出さないようにする走りが必要だ。これまたアクセルコントロールは超シビア。ずっとやっていたら足のスネあたりのスジがおかしくなりそうである。こちらもベテランテストドライバーには完敗(笑)。速さもバラツキのなさもお見事だった。
ここまで正確なテストドライバーがいるのであれば、良いデータが集まるだろう。デジタルもいいけどリアルもね、というところがきちんと見えたところがちょっとうれしくもあった今回の体験だ。
ただ、データだけじゃなく官能評価も忘れないでほしいとも思った。数値だけじゃない走りの味も、どんどん追求してもらいたい。ベテランテストドライバーに味を見極める匠みたいな方を据え、ブリヂストンの乗り味はコレ、みたいなのが出てきたら最高だ。デジタルも良いけどリアルももっと大切にした開発を今後も期待したい。









