【インプレッション・リポート】
岡本幸一郎のホンダ「CR-Z」インプレッション



 2月26日に満を持しての発売となったスポーツタイプハイブリッドカーのホンダ「CR-Z」。発売よりおよそ1カ月で1万台を超える受注があったと発表され、いまだ話題に事欠かないホットなニューモデルだ。エコとしてのハイブリッドとコンパクトスポーツとしての価値観。その両方の落としどころをどこに定めたのか。さらに6速MTやCVTとの相性は。気になるCR-Zのポテンシャルをモータージャーナリストの岡本幸一郎氏が徹底レビュー。そのインプレッションをお届けする。

 

 10年ほど前なら、このクラスのクルマのニュースが、これほどまでに自動車媒体を熱くさせることはなかっただろう。しかし、いまや状況はすっかり変わった。海外から届くニュースには華やかなものも見られるが、国内のネタは我々クルマ好きにとっては寂しい限り。そんな中で、おそらく2010年、国産メーカーが発信する中ででもっともホットなニュースとなるであろう新型車がホンダから登場した。それこそがこのCR-Zだ。日本国内で現在販売されている車種のラインアップにおいて空洞となった感のあるコンパクトスポーツを、ハイブリッドカーとして成立させたものだ。1980年代の人気モデル「CR-X」のイメージと重なるネーミングやスタイリングに、「萌える」という人も少なくないだろう。

 ハイブリッドカーというのは、基本的にエコのためのものという認識。トヨタではすでにエコでかつモアパワーという使い方をしているが、ハイブリッドをスポーツカーと組み合わせるという使い方は、あまりイメージできなかった。必ず重くなるからだ。それをやってのけたというCR-Zがどういうクルマか、発売前からとても気になっていた。

試乗したのはαの6速MT、本革シート&グラスルーフ仕様と、βのCVTの2台

 パワートレインは、IMAについてはインサイトと同じで、エンジンが1.3Lではなく1.5Lのワンバルブ休止を行うi-VTECの直列4気筒SOHCとなる。トランスミッションはMTとCVTが選べ、価格はどちらも同じ。MTは欧州向けシビック用をベースに新開発した6速だ。

 エンジンスペックは、MTモデルが最高出力84kW(114PS)/6000rpm、最大トルク145Nm(14.8kgm)/4800rpmで、CVTモデルが最高出力83kW(113PS)/6000rpm、最大トルク144Nm(14.7kgm)/4800rpmと、わずかに異なる。モーターは最高出力10kW(14PS)/1500rpm、最大トルク78Nm(8.0kgm)/1000rpmで、システム最高出力は91kW(124 PS)/6000rpm、最大トルク174Nm(17.7kgm)/1500rpmとなっている。

 さらに、動力性能については、ECON、NORMAL、SPORTの3モードの切り替えが可能となっており、その違いは明確に体感することができた。NORMALモードでも、モーターの恩恵で低回転から一気に太いトルクを得られ、エンジンが小排気量の割に力強く加速する。ただ、「VTEC」というと、高回転カムに切り替わってからの痛快な吹け上がりをイメージするところだが、CR-Zに搭載される「i-VTEC」はそうではない。バルブ動作の切り替えは燃費のためのバルブ休止のみで、高回転でカムプロフィールが変わるといったギミックはない。そのため、6000回転より少し上でレブリミットに達してしまう。VTECという名前からすると、この低いレブリミットにはやや拍子抜け。高回転まで回しても伸びないので、あまりひとつのギアで引っぱったり、積極的にシフトダウンして再加速したいという印象ではない。同様に感じる人も少なくないだろう。

エンジンはインサイトと同様のIMAに、より排気量の大きい1.5Lエンジンを組み合わせるインマニレイアウトを斜めにすることで、ボンネット高を低く抑えた
エンジンはSOHCで、低回転時は1バルブを休止することで燃焼効率を向上するレブリミットは6200rpmまでとなっている

 このあたり、もしも往年の、高回転まで気持ちよく回るあの“VTECらしさ”を求めるのであれば、CR-Zはそれとは違う。逆に、低速トルクが大事であることをご存知で、これからはこの低速トルクがイイんだと割り切れるのであれば、CR-Zの乗り味は大いにアリ。そもそも我々が運転するときに感じる「パワフル」という感覚は、だいたいトルクによるものだ。CR-Zは、その意味ではパワフルだと言える。

 例えば、信号の連なる市街地では、ゼロスタートのたび、走り出しからモーターがグッとアシストすることで得られる太いトルクを体感できたし、高速道路での追い越しや再加速といった高速走行のシチュエーションでも、低速時ほどではないが、モーターのアシストする感覚を得ることができた。また、別の機会にアップダウンの続くワインディングロードでも試したが、そこそこきつい上り坂であっても、シフトダウンせずとも走りきってしまうシーンが多々あった。エンジンだけではそうはいかないはずだ。

信号からのスタート時など、モーターアシストによるトルクを実感できる高速での追い越しなどでも、モーターの恩恵は感じられる

6速MTとCVT
 MTとCVTではトルク感が違って、MTのほうがダイレクトにモーターがアシストする感覚がある。FFだから実際には引っ張っているわけだが、印象としてはトルクが上乗せされて押し出しているような感覚に近い。

 CVTのほうも、もともとホンダのCVTはダイレクト感があり好ましく思っていたが、トルコンの代わりに配されたモーターのトルクが、出足では上乗せというより下地にあるイメージで、車速が乗るまでの変速比の変わる時間が短く、加速感がリニアでとても走りやすい。

 しばしばCVTというのは、トルクが薄くても無段階に変速比を調節してカバーするのが得意だから、トルクの小さいエンジンとの相性がよいと言われる。しかしそれは、トルクの大きいエンジンとの相性がわるいという意味ではない。むろんトルクが大きすぎると耐久性の問題が出てくるのだが、ある程度トルクがあったほうが、エンジン回転ばかりが先行して、加速がついてこないというCVT特有の違和感をあまり感じさせることなく、短時間で理想的な変速比に近づけることができる。効率にも優れるし、フィーリングもよくなるのだ。だから、CVTとハイブリッドという組み合わせも、実はとても相性がよい。これは、同じエンジンとCVTを積むフィットあたりと乗り比べると顕著で、現行インサイトに乗ったときもそれを感じたのだが、インサイト比では30kgほど軽量でトルク特性に優れるCR-Zでは、さらに好印象となっていた。

 CVTは、フロアセレクター側ではマニュアルモードへの切り替えはできず、3モードドライブシステムを「SPORT」にすると、マニュアルモードになる。変速はステアリングに付いたシフトパドルで行う。「NORMAL」と「ECON」でパドル操作をすると、一時的に3秒ぐらいの間マニュアルモードとなるが、その後にクルーズ状態と判断されると、自動的にオートモードに復帰する。

 マニュアルモードでのシフトパドルを操作したときのレスポンスは、もう少し変速ショックを許してでも、シフトチェンジのタイミングが素早いほうが好ましいと感じた。とくにCR-Zのような、仮にも「スポーツ……」を標榜するクルマなのだから。

CVTのセレクトレバーではマニュアルモードに切り替えられないステアリングのシフトパドルで、シームレスにマニュアルモードへ移行するほか、SPORTSモードでもマニュアルになる

 6速MTはショートストロークだが、極端にショートすぎることもなく、操作感は軽くて扱いやすい。軽いのはけっこうだが、シフトフィールにもう少し節度感がほしい。また、クラッチミートは少々シビア。ホンダはおそらくダイレクト感や効率を重視して、クラッチのダンパースプリングの容量を抑え気味にしているようだが、それと引き換えに、半クラッチの操作に少々気を使うのは、タイプRをはじめホンダのMT車に共通して感じられる点だ。

適度にショートストロークの6速MTリバースは6速の隣に位置する前進している時は、バルブが動いてリバースは選べなくなるので、6速をリバースに入れ間違える可能性はない

 MTとCVTでは、今のところ受注比率はMTが4割、CVTが6割とのこと。筆者がどちらが好みかと聞かれれば、答えはMTだ。

 CVTでもモーターの恩恵はもちろん感じられるし、乗りやすさはとても印象的だった。しかし、もう少しシフトチェンジのレスポンスが速くないと、せっかくのCR-Zを楽しむ上では、ちょっと足を引っ張ってしまっている。そして、モーターの存在をより積極的に楽しみたいのであれば、MTのほうがダイレクト感はある。せっかくCR-Zを楽しむからには、MTを操って乗るのが醍醐味だと思う。欲を言うと、日産のシンクロレブコントロールのように、シフトダウン時に自動的にブリッピングしてくれるとありがたい。より先進性も加わって、CR-Zに似合うように思うが、そう簡単にはいかないか……。

 ちなみに、100km/h巡航時のエンジン回転数は、CVTが約1900rpm、MTが6速で約2400rpmだ。CVTの駆動や油圧などのエネルギーロスによる効率のわるさを差し引いても、おそらく高速巡航時の燃費はCVTのほうが上だろう。

アイドリングストップ
 当然の話としてアイドリングストップするのもCR-Zの特徴のひとつだ。再始動を駆動モーターで行うので、スターターモーターで始動するコンベンショナルなアイドリングストップ車とは比較にならないほど瞬時に、かつスムーズに再始動する。

信号待ちではもちろんアイドリングストップをする。再始動も極めてスムーズかつ静かだ

 アイドリングストップする条件はCVTとMTで異なり、MTのほうがロジックは少々高度だ。

 まず、アイドリングストップしない条件として共通するのは、水温やミッションオイルの油温が低温であるとき、IMAバッテリー残量が少ないとき、最初のエンジン始動後に15km/hに達しないまま停車したとき、エアコン風量が5段目以上のとき、フロントのデフロスターがONのときなど。さらにNORMALとSPORTモードでは、エアコン使用中で、設定温度と車内の温度差が大きいとき、車内の湿度が高いとき、急ブレーキをかけたときなどとなっている。これにCVTでは、急な坂道で停止したときや、セレクトレバーが「D」と「N」以外のとき……などが加わる。

 走行状態からアイドリングストップするのは、CVTではブレーキペダルを踏んだまま車速が約10km/h以下になったとき、MTでは30km/h以下になるとともに、クラッチペダルをいっぱいに踏み込んだとき。ただし、クラッチを踏んでもギアが入っていれば止まらない。

 再始動するのは、MTではクラッチペダルを踏み込んでシフトをニュートラル以外にしたとき。ただし、ニュートラルのままでも、アクセルペダルを踏んだり、ブレーキを繰りかえし踏み込んだりゆるめたりしているときは、クラッチの状況にかかわらず再始動する。また、デフロスターのスイッチを押したときや、ガラスウインドーが曇る可能性があるとき、車内の快適性が損なわれそうなときは、表示灯の点滅が早くなり、再始動を促す。また、ECONモードでは、エアコン使用中のアイドリングストップ時間が長くなる。

ハンドリング&ボディー
 CR-Zを「スポーツカー」と呼びたい理由は、フットワークにある。まず、インサイトよりもステアリングギア比がクイックに設定されている。ロックtoロックはインサイトが約3回転であるのに対し、CR-Zは2.48回転。これにあわせて電動パワーステアリングのモーターの出力をインサイトよりも30%高め、アシスト量を増やしている。ドライブモードを「SPORT」にすると、電動パワステのアシスト量も変わり、ステアリング操舵力がスポーツカーらしく少し重くなる。

 ちなみに電動パワステは、インサイトがショーワ製なのに対し、CR-Zは日本精工製だ。これにより、キビキビとした操舵感や、切り込んだときのしっかり感を手に入れており、ステアリングを操作することに楽しさを感じられる仕上がりとなっている。インサイトもCR-Zも同じく操舵力は軽いのだが、インサイトはやや軽薄、CR-Zは軽快という印象だ。

取材は横浜市内で行ったが、別の機会にワインディングでの走りも経験している岡本氏街中の交差点でもクイックなステアリングを感じることができる。特にSPORTモードにすると、ステアリングインフォメーションが増える

 ボディーは、とくにリアまわりが大幅に剛性アップされている恩恵か、走りに一体感がある。フロントだけでなくリアもしっかり路面に追従していて、攻め込んでもブレイクする気配を感じさせない。かつてのCR-Xでは、回頭性のよさと引き換えに、アクセルオフにしただけでもタックインを誘発しやすく、けっこう危なっかしい面もあった。ところが、CR-Zには、危険な香りはなく、いたって現代的に躾けられている。リアをしっかり接地させることができているからこそ、臆することなく前記のようにフロントをクイックに味付けすることができたのだと思う。

 しかも、乗り心地がまったく悪くない。これほどのキビキビ感を出しながらも、快適性を犠牲にしていないところもまたセッティングの妙だ。中高年ユーザーにも配慮した結果なのかもしれない。

 足まわりのセッティングに関しては、MTと比べるとCVTのほうがフロントの重量が約30kg重くなるとのことで、フロントのダンパーが差別化され、減衰力がやや高めにされている。それ以外は同じ。よって、荷重に対し相対的にバネレートが高くなるMTのほうが、やや硬めに感じられる。

 タイヤは、試乗車はいずれもブリヂストンのポテンザRE050A、αグレードはアルミホイール、βグレードではスチールホイール+ホイールキャップが標準となり、バネ下重量の差は5kgとのこと。乗り味の違いは、振動の収束の仕方などにわずかに感じられるが、厳密に乗り比べた場合に分かるというレベルなので、ほとんど差はないと言ってよいだろう。

αに標準装備の軽量アルミホイールβに標準装備のスチールホイール&ホイールキャップタイヤはスポーツ向けブランドであるポテンザのRE050A

インテリア&インターフェイス
 運転環境については、新感覚の素材を用いたスポーツシートが、スポーツカーらしく低めのドライビングポジションで、ホールド感もちょうどよく好印象だ。骨格は同じはずのレザーシートのほうが、なぜか少しヒップポイントが高く感じられたのだが、革の張り具合の問題もあると思うので、革がなじめば落ち着くのかもしれない。

ヒップポイントが低く、足を前に投げ出すようなスポーツカーらしい運転姿勢が取れるCR-Zシートバックのホールド性も高く、包まれ感のある標準のファブリックシートレザーシートは表皮が硬いためか若干シートポジションが高いように感じた

 エンジンスタートは、ボタンではなくノブで行う。これは、スマートキー以外に、ホンダ初というリトラクタブルキーの設定があるからだろう。最近は他車でもよく目にするが、イグニッションをONにするとメーターの針が跳ね上がる演出も楽しい。

 スーパー3Dメーターは、照明色の変化で燃費状況などを表現し、エココーチングシステムも備えるなど、デザインにも情報の見せ方も先進的なイメージ。左右対称を意図したデザインとされており、全体にブルーのLEDを多用したインパネの雰囲気にも未来感がある。1mm厚のウレタンを施しソフトフィールをもたらすインパネも、“質感が高い”とは言い過ぎだが、努力の跡は見て取れる。

1眼メーターを中心に左右シンメトリカルなデザインのメーターダッシュボードにはウレタン表皮で覆うことで手触りにもこだわっている

 ただし、全体的にちょっとゴチャゴチャした印象もあるので、もう少し整理されていたほうが好ましく思う。たとえば、メーターの右横に配された3モードドライブの切り替えスイッチ。それを押してもスイッチのランプの色が変わることはなく、メーターの中の、しかもスイッチからは離れた左側にモードの表示が出るという、初めて触る人には分かりにくいと感じる部分もある。

3モードドライブのスイッチ。運転席から見ると青く光っているが、どのモードが選ばれているかは見た目では分からないボタンの青い光は、角度を変えると見えない設計。これはガラスへの映り込みを抑える工夫だセレクトしているドライブモードはメーター左側に小さく表示されるだけ。ECONモードとNORMALモードの判別がつきにくい

 前方の見晴らしは、大きく弧を描くフロントスクリーンにより良好。Aピラーやドアミラーが作る死角も比較的小さく抑えられている。横方向の視界は、後ろにいくにしたがってウエストラインが極端に切れ上がっているので、包まれ感はあるが、開放感はあまりない。サンルーフは、基本的には前席にのみ人が乗る機会の多いクルマだからこうでないと困るわけだが、これほどAピラーが寝ていながらも、前席の頭上の視野に入る部分がちゃんと抜けているのは評価できる。

 エクストラウインドーが頼みの後方視界は、肝心なところが見えなくて困るという印象と、これだけ見えれば十分という、両方の印象を持っている。一般道では大きな問題はないだろうが、高速道路だと、50~60mほど離れたところにいる後続車がまるっきり隠れてしまう可能性もあるのだ。また、斜め後方の視界もよろしくないが、そこはドアミラーの合わせ方を工夫し、それをちゃんと見る習慣をつければ大丈夫だろう。

 ひとつ気になったのは、シートベルトが取りにくいことだ。運転席に座って左手で取ろうとすると、大きく体をよじる必要がある。アメ車にあるようなアシストガイドを付けたほうがよいのではないかと感じられた。

ガラス面をラウンドさせることで、Aピラーを後方にずらし、前方視界を広げたAピラーは運転席から見た時に細くなるような形状にしている運転者の前方まで大きく広がったガラスルーフ。運転していても開放感がある
真後ろよりも斜め後方の視界がさらに狭い。小型バイクや自転車などには特に気をつけたい180度という広角を誇るバックモニターも是非活用したいところ2ドアのため、シートベルトを取るのが遠い。ここは改善を願いたいところ

 後席は、とても成人男性が乗れたものではないが、CR-Zはそれでよい。むしろ2シーターでもよかった気もするほどで、実際、北米向けは2シーターとなっている。とはいえ、国内向けの後席は、けっして非常用ではない。なんと「ISO FIX」のタグが付いているのだ。つまり、「お子さんも乗せて出かけてください」という思いが込められているわけ。たしかに、チャイルドシートが必要なくらいの小さな子供であれば、この後席スペースでもなんとかなるだろう。

成人男性がまともに座ることは難しい後席首を傾けないと完全に頭が天井にぶつかってしまう足下のスペースも余裕はない。前席の人にも我慢してもらう必要がありそうだ

ラゲッジルーム
 ラゲッジルームの話に移る前に印象的だったのは、ハッチゲートまわりの剛性の確保にかなり力を入れているのが見て取れることだ。ここはホンダがミニバンであっても抜かりなく手がける部分だが、骨格の取り方が本気で剛性確保を意識したことがうかがえた。

 ラゲッジルームは意外と広くて、横方向はタイヤハウスに制約されているが、このリア上がりのフォルムゆえ高さは十分にある。スーツケースのように大きな荷物も飲み込んでしまうのだ。ただし、開口部の下端が地面から高い位置にあるため、重いものを積み下ろしするのは、それなりに大変ではある。後席のシートバックをワンタッチでフォールドダウンでき、そうすることでゴルフバッグも斜めに2つ積むことができる。

リア上がりのボディーデザインのため、ラゲッジにはトランク2つを重ねて積むこともできる後席シートバックを倒せばさらに積載量は増える
ゴルフバッグ2つを収納することも可能後席シートバックの操作レバーは運転席からでもリアゲートからでも手が届く

総論
 CR-Zはこうしたクルマである。コンパクトカーとミニバンしか売れなくなった日本のマーケットにおいて、ハイブリッドカーでありスポーツカーであるというCR-Zは、希望を与えてくれた気がする。やっぱりクルマは、見てもワクワク、走ってもワクワクするものであって欲しいものだ。

 その点、CR-Zは、“ピュアスポーツ”とまでは呼べないだろうが、走らせたときに、運転スキルや経験によらず、誰でも「楽しい」と感じさせるだけのドライビングプレジャーを持っている。見ても、乗っても、スポーティな感覚を味わえる。「スポーツカー」というものの定義が、一昔前とは変わってきていて、かつては、スパルタンで、ワクワクというよりドキドキさせるものがないと、スポーツカーとしては失格だったと言えよう。しかし、現代の価値観でいうと、CR-Zをスポーツカーと呼んでよいと思えるのだ。

 まずは、3月24日の時点で、月販目標の10倍にあたる1万台を受注したというニュースを聞いて、まだまだクルマ好きな人はいっぱいいる、世の中捨てたものじゃないなと、こちらまでうれしくなっている。このままCR-Zの注目度が一時的なものではなく、ちゃんと定着するようにと、切に願う次第である。

(岡本幸一郎)
2010年 4月 2日