レビュー
【タイヤレビュー】横浜ゴムの最新ハイパフォーマンスラジアル「ADVAN FLEVA(アドバン・フレバ)」
ドライグリップに加え、頼もしいウェットグリップ性能を体感
2016年8月2日 00:00
横浜ゴムのトップブランドとして知られているADVAN(アドバン)。ピュアスポーツタイヤをイメージするが、ラインアップには高級セダン用のADVAN dB(デシベル)や欧州プレミアムブランドへのOE装着率が急速に増えているADVAN Sport V105などを持っている。
今回発表されたADVAN FLEVA(フレバ) V701は、ピュアスポーツ系のADVAN NEOVA(ネオバ)の流れを汲みながら、より汎用的に広く軽快なフットワークを目指したタイヤである。実質上、併売されるS.Drive(エス・ドライブ)の後継となるが、乗り心地、ウェット性能など大幅に向上しており、サイズラインアップも豊富で適応車種は幅広い。
テストドライブは茨城県城里にあるJARI(日本自動車研究所)で行なわれた。快晴で気温はぐんぐん上昇していく中で、さまざまな興味深いテストが行なわれた。特に印象的なのはフレバとエス・ドライブのウェット路面での制動とスラロームテストである。
全長120mあるウェット路面はスプリンクラーで散水され、路面は通常のアスファルト。いわゆる氷盤を模した低μ(ミュー)路ではない。水深は一定に保たれる。
ブレーキの制動テストはV-BOXで計測を行ない、計測方法は80km/hから5km/hまでの制動距離を比較する。実際には80km/hを超えたあたりからABSを効かせた全力での制動となり、80km/hになったところから計測を開始し、5km/hとなったところまでの距離を測る。もちろんV-BOXが自動的に計測を開始するので、計測の正確性は高い。
テスト車両はフレバやエス・ドライブに相応しいトヨタ「86」で、タイヤサイズは215/45 R17だ。
目標速度に達したところで蹴っ飛ばすようにブレーキペダルを踏み込む。フレバとエス・ドライブで各3回のテストを行なったが、いずれもフレバが24.5m前後でエス・ドライブに対して1m~1.5mの差で短く止まり、体感上でもABSの効くタイミングが遅く感じられた。
ウェットでの違いが顕著だったのはウェットスラロームだ。初速度を60km/hに設定して挙動をチェックしたが、ステアリングの応答性に差があり(フレバのほうがしなやかにノーズの向きを変える)、リアがサチュレートするスラローム後半部分では、VSCの介入がエス・ドライブはワンテンポ早く起こるため、車速を上げるのは限界があり、ウェットでのグリップ力の違いが分かりやすく評価できた。
フレバはエス・ドライブ同様に排水に優位な方向性パターンと4本のストレートグルーブを採用しているが、ウェット性能で定評あるADVAN Sport V105からコンバートされたプロファイルで、トレッド面圧をコントロールすることで効率的な排水ができているようだ。さらにウェットで威力を発揮するのがコンパウンドで、タイヤの柔軟性に貢献する大量のシリカを効率よく分散してウェットグリップも上がっている。
現役のエス・ドライブとの最も大きな違いは、このウェットグリップにあるが、ドライでもフィーリングは異なる。エス・ドライブの持ち味はドシッとした安心感のあるグリップ力で、スポーツカーに限らず多くのカテゴリーのクルマに適応性があるので、スポーツライクなフィーリングが味わえる。
一方、フレバは応答性が素直でフレキシブルなハンドリングを持ち味とする。同じコーナーで速度を一定にして走った時にライントレース性で僅かに違いがあり、フレバはステアリング操舵角が微妙に小さい。正確なライントレース性が身上だ。個人的にはステアリングセンターの舵保感がもう少しあるとよいのだが、このあたりは嗜好も入るだろう。
乗り心地はエス・ドライブも意外なほど荒れた路面でのドシンとしたショックはよく吸収されているが、フレバではさらにしなやかで、腰はあるがマイルドな味になっている。
また快適性のもう1つの要素はノイズだ。摩耗するとノイズが大きくなるのは多くのタイヤに見られるが、グリップを志向するスポーツタイヤは特にその傾向が強い。今回は新車のフォルクスワーゲン「ゴルフ」(225/45 R17)を使用し、フレバ、エス・ドライブとも8000km走行した摩耗タイヤでのノイズチェックを行なった。各タイヤで一定速の60km/hと80km/hでの感覚評価だが、フレバは明らかにパターンノイズが小さく、速度を変えてもノイズの変化は殆どない。磨耗タイヤでもノイズの発生はよく抑えられていることが理解できた。
ロングドライブではタイヤノイズはジワジワと疲労に効いてくるが、フレバはこの点でもスポーツタイヤとは思えないほどの快適性を保っている。
摩耗時の静粛性維持には、タイヤパターンの横要素の溝を非貫通にすることで偏磨耗を減らしノイズの向上を抑えるのが効果的とされており、それを実証したのがこのテストだ。
これらのテストは一般路を模したJARIの外周路で行なったが、適度なワインディングロードもあってなかなか楽しい。この外周路ではゴルフのほかに、プジョー「308GTi」とトヨタ 86、さらにメルセデス「A180」が用意され、それぞれ楽しめたが、特に86とのマッチングのよさが印象的だった。
もう1つハンドリングテストに、旋回試験路に設けられたスラロームとレーンチェンジ、ウェット路面のJターンなどが組み合わされたシンプルなコースが作られており、プジョー「208GTi」とスバル「レヴォーグ」でトライすることができた。
このコースでは大きな横Gと共にウェット路面に入る設定になっているので、挙動変化がよく分かる。重量の軽いプジョー 208GTi(205/45 R17)では僅かなアクセルコントロールでコーナリングラインをそれほど乱さずに旋回でき、このウェットJターンに続くドライのスラロームでもハンドル操舵に対してしなやかに反応して気持ちがよい。
一方、重量のあるレヴォーグ(225/45 R18)では、もう少しアクセルを丁寧に扱わなければならないが、レーンチェンジのハンドルの切り返しでもタイヤ剛性がしっかりして、腰があり、レヴォーグらしい軽快感と安定性に磨きがかかる。
フレバ V701は守備範囲が広い。日常の快適な乗り心地と使いやすさはそのままに、よく粘る軽快なフットワークはスポーティさが欲しい多くのドライバーに支持されるだろう。また温帯モンスーン気候の雨が多い日本では、格段に向上したウェットグリップ性能は頼もしい。