レビュー
【タイヤレビュー】トーヨータイヤ、ミドルクラスミニバン専用タイヤ「TRANPATH ML(トランパス エムエル)」
ドレスアップ効果と転がり抵抗低減を手に入れた高級指向のミニバン専用タイヤ
2016年6月22日 00:00
転がり抵抗をmpZから8%低減
ミニバン専用タイヤとしておなじみのブランドである東洋ゴム工業の「TRANPATH(トランパス)」シリーズに、新たなるブランド「トランパス ML」が加わった。このタイヤはミドルクラスのミニバンにターゲットを絞ったもので、これまでに存在していた「トランパス mpZ」よりも上級に位置するタイヤだ。近年はミドルクラスのいわゆる5ナンバーミニバンの中でも高級指向が強く、そこに対応した製品が必要だというのがトーヨーの考え。ネーミングのMLは「ミドルサイズ・ラグジュアリー」という意味が込められている。
トレッドパターンはスタイリッシュに変更され、ドレスアップにも効く見た目を実現。アウト側は高剛性リブ基調の造りにするなどして、コーナーリングパワーの向上や耐偏摩耗性能への対応を図っているところも特徴の1つである。また、内部はビードワイヤーから伸びるカーカスプライと呼ばれるタイヤの骨格を、通常のタイヤよりも高い位置(トレッド面端あたり)まで引き上げる「スーパーハイターンアップ構造」を採用。横剛性を高めながらもしなやかさを持つ造りを実現することで、乗り心地とシッカリ感を両立することに成功している。これはmpZにも採用されているものと同様の技術である。
配合されるコンパウンドはmpZとは異なり、超低燃費ポリマーを採用することで転がり抵抗を低減。さらに耐摩耗ポリマーを採用し、摩耗性能も向上させたというから興味深い。mpZでは低燃費タイヤのグレーディングにおいて、転がり抵抗性能「A」、ウエットグリップ性能「b」(一部のサイズでは「c」)を獲得しているが、MLでは転がり抵抗性能「AA」、ウエットグリップ「b」を全サイズで達成。転がり抵抗はmpZから8%もの向上をみせたというところがポイントの1つだ。
走ってみると、かなりシッカリとしたフィーリングが得られるところがトランパスらしい。ステアリングを切れば微操舵域から即座にクルマ全体が反応をはじめ、大きくステアリングを切り込む領域まで連続した反応が得られるところがポイント。タイヤが倒れ込まずに、初期から切り込み応答まで常に一定したフィーリングが得られるところが好感触だ。
また、レーンチェンジ時の車体の収束も早く、いつまでもユラユラとしていない。これなら同乗者も快適に移動することができるだろう。さらに感心したのは、今回走ったサーキットでも、ミニバンであることを忘れさせてくれるくらいの走りを展開していたことだった。まるでクルマが小さく、そして車高が低くなったかのようなフィーリングは、さすがはトランパスだと頷ける。22年間もミニバン専用タイヤを作り続けてきただけのことはある。
mpZよりもタイヤの硬度自体は下がり、しなやかさを増してコーナーリングスピードが高まったというデータもあるらしい。だからこそ安心して走ることができたのだろう。ただし、気持ちよくサーキットを走ってみても摩耗がそれほど進んでいなかったし、偏摩耗も見受けられない。これなら普通に使えばかなりの耐久性を発揮するはず。硬度が下がりしなやかさを増したが、転がり抵抗を引き上げて摩耗をこれまで同等としたところにMLの価値があるのだ。
さらには、あまりアピールをしていないようだが、mpZに比べれば静かになっているところも注目。路面から車室内に進入するパターンノイズやロードノイズは、十分納得というレベルまで下げられている。これなら2列目、3列目のシートに座っている人とも車内の会話が弾む。
このトータルバランスの高さなら、高級指向が高まるミドルクラスミニバンのユーザーも納得できるに違いない。実勢価格はmpZよりもやや高いが、見た目も転がり抵抗もアップしながら、耐摩耗性能もキープできているのだから、このMLはより多くの人々に受け入れられるミニバンタイヤになりそうだ。