レビュー

【タイヤレビュー】静かで燃費性能がよくウェットグリップ性能最高の「ヨコハマタイヤ ブルーアース・エース」

この夏、ウェットグリップにこだわったタイヤ選び

ウェット性能に優れるヨコハマタイヤ「ブルーアース・エース」。フルタイム4WD車に装着すれば、雨の日でも高い安心感を得られる

 ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)の低燃費タイヤ「BluEarth(ブルーアース)」シリーズ。このブルーアースシリーズには、コンパクトカー用の「ブルーアース AE-01F」、ミニバン・RV用の「ブルーアース RV-02」、セダン用など全46サイズという豊富なラインアップの「ブルーアース・エース」があり、そのほか低燃費性能・ウェットグリップ性能をともに極めた「BluEarth-1(ブルーアース ワン) EF20」が用意されている。

 ブルーアースシリーズの特徴はなんといっても転がり抵抗の低さによる燃費のよさだ。たとえばミニバン・RV用のブルーアース RV-02は、転がり抵抗性能はAでウェットグリップ性能は最高のa。幅広いサイズラインアップを展開するブルーアース・エースも、同様に多くのサイズ(45サイズ)がA/a。コンパクトカー用のブルーアース AE-01Fは転がり抵抗性能を重視した結果、転がり抵抗性能は最高のAAAながら、ウェットグリップ性能はcとなっている。

非対称パターンを採用するブルーアース・エース。シンプルなパターンデザインで静音性も高かった。左がイン側、右がアウト側になる
ブルーアース・エースは、当初転がり抵抗性能:A、ウェットグリップ性能:bとして発売され、その後、コンパウンド変更などによりウェットグリップ性能が最高指標のaに引き上げられた。言わば、ウェットチューニングが行われたタイヤになる

 この製品ラインアップから見えてくるのは、セダンやRV用のタイヤでは転がり抵抗性能を改善しつつ、ウェットグリップをとくに引き上げていこうという姿勢。ランニングコストを意識するコンパクトカーユーザーへは、AE-01Fで最高の転がり抵抗性能も用意しましたということだろう。とくにプリウスの標準サイズとなっている195/65 R15は、AAA/aのEF20、A/aのエース、AAA/cのAE-01Fをラインアップ。ベストセラー車ユーザーには、どれを選べばよいのか大変悩ましいことになっている。

タイヤの取り付けは、埼玉県のタイヤガーデン浦和東で行った。ブルーアース・エースの評判はとてもよいとのこと

静かでスムーズなブルーアース・エース

 今回試乗記をお届けするのは、転がり抵抗性能:A、ウェットグリップ性能:aのブルーアース・エース。このタイヤを選んだのは、クローズドコースの試乗会で使用したことがあるものの、一般道で使用したことがなかったのと、梅雨どきの性能を見てみたかったため。装着車は「レガシィ アウトバック 2.5XT EyeSight」で、タイヤサイズは215/55 R17。このレガシィは2世代前のモデルとなるが、運動性能の高さで定評のあるBP型レガシィの中でも、265PSの2.5リッターターボを搭載したパワフルなモデルになる。

夜、雨の首都高。積極的には走りたくないシチュエーションだが、天気はコントロールできないため、このような状況になるときはある。そのような場合でも、ウェットグリップのよいタイヤは余裕を持った運転が可能

 ブルーアース・エースを装着したレガシィで走り出して気が付くのは、とても静かなタイヤであること。タイヤパターンを見て分かるとおり、4本のストレートグルーブをメインに構成しており、しっかり転がるような印象を受ける。

 最近の低燃費タイヤすべてに共通することなのだが、タイヤパターンから受ける印象は「スポーツタイヤか?」と思うのものばかり。剛性の高そうなブロックが刻まれ、非対称パターンとなっている。

 あくまで一般論だが、低燃費性能を高めたゴムは、エネルギーロスを極力押さえ込み、通常のタイヤのゴムより柔らかい仕様となっている。通常のタイヤのゴムより柔らかいため、タイヤの構造やパターンで剛性を上げる必要があり、スポーツタイヤのようなパターンになってくる。低燃費タイヤ=硬いタイヤと捉えられがちだが、実は低燃費タイヤは柔らかいタイヤで、パターンデザインや構造で剛性を出している。先日掲載した、振動数によって振る舞いを変えるゴム特性もそうだが、本当に最先端のタイヤテクノロジーが詰まっている製品になる。

 では、ブルーアース・エースはどうなのかと言えば、先ほど書いたように静かさが強く印象に残る、スムーズで静かなタイヤだ。ブロックの硬さを感じる前に、次の接地面に転がっていくようなタイヤで、転がりもとてもよい。また、ステアリングを操作した際のコーナリングフォースの立ち上がりもよく、走る、曲がる、止まる、をなめらかにこなしてくれる。

ブルーアース・エースのよさは、ドライにもある。静かでスムーズ、そしてステアリングの手応えもヨコハマっぽいスポーツ感覚のあるもの。運転していて楽しいタイヤだ

雨の東京、「ウェットグリップ性能:a」の安心感は高い

 ブルーアース・エースは、ウェットグリップ性能がaのタイヤ。そのため、雨の日を待って何度か走行を行った。タウンスピードでの走行に不安を感じることは当然ながらまったくない。高速道路の走行においても、その印象は同様だ。

 首都高速道路は路面の表面変化が激しい道路で、トンネルを抜けるといきなり水が浮いている個所があるなど、排水性のよいところとわるいところが混在している。とくに夜は路面変化が読みづらく、緊張して走る場面も多い。

 そのような場合もブルーアース・エースを装着したレガシィは、しっかりとしたグリップ感を得ながら走行していく。そもそもこのレガシィは、最初から不等トルク配分を行っているクルマで、雨の走行性能も高い。そのため、ウェットグリップ性能aのブルーアース・エースを装着したレガシィは、むやみに緊張を強いられることのない、安心感の高い走行を実現してくれる。

 最近は、雨がいきなりドカーンと降ってくる“ゲリラ雷雨”という現象が頻繁に起きている。天気予報サービスを行っているウェザーニューズによると、「2015年夏の『ゲリラ雷雨傾向』」は昨年の4倍。ゲリラ雷雨のピークは8月で、関東甲信では昨年の3倍になる見込みとなっている。低燃費タイヤの性能軸はこれまで低燃費性能が注目されてきたが、その性能競争の恩恵によりウェットグリップも向上してきた。これからは、お盆休みやシルバーウィークなど長距離を走る機会も多いはず。タイヤの点検をしっかりしていただくとともに、夏タイヤについては、ドライグリップや静かさ、低燃費性能はもちろん、可視化されたウェットグリップ性能にこだわったタイヤ選びをしてみるのもありだろう。

編集部:谷川 潔

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Photo:安田 剛

Photo:高橋 学