飯田裕子のCar Life Diary

関東・甲信の大雪で思うこと

 2週にわたる大雪。2月14日に降った雪が関東/甲信地方に大きな被害や災害をもたらしたことはご存知だと思います。私も大雪が降るという予報は知っていたものの、夕方の段階ではホワイトバレンタインを過ごすカップルもいるのかな……と少々楽観的な想像を抱いてしまっていました。

 ところが時間とともに状況は刻々と悪化していく。報道よりもむしろ知人からの情報やFacebook、Twitterに投稿される内容が状況把握に役立ちました。1人の情報は1点ずつでも、その数が増えるほど広い範囲の様子が分かり、早朝には今回の大雪が想像をはるかに超える規模の大雪災害だと認識した次第です。

 クルマで移動していた方たちは渋滞にはまり、やがて道路が閉鎖され何十時間も道路上に取り残され、例えば東名高速道路は前夜にスリップして立ち往生したクルマにより、半日経ってもそれ以上経っても渋滞40km。NEXCO中日本(中日本高速道路)はスタックしたクルマに食料や水、簡易トイレを配ったものの、その時点でまだ見通しが立っていない状況でした。

 そこに知人のカメラマンが家族とともに巻き込まれ、その状況悪化は報道よりも早く個人のFacebookにより知った次第です。福島へ取材に向かった知人一行も、身動きが取れなくなったことや何台もの乗用車の立往生を助けたことを投稿。軽井沢付近のトラックの大渋滞、その後のスタック情報も数人の友人のFacebookで知りました。もちろん心温まる投稿もありましたよね。しかし身動きのとれない私は雪災害の怖さを実感し、見守ることしかできませんでした。実は私の実家も一時孤立状態に陥ってしまい、道路は通行止め。母のもとに向かうこともできなかったのです。

福島へ取材に向かった知人一行が送ってきてくれた写真。現場は想像以上に大変だったようです

国や自動車メーカーの取り組み

 東日本大震災のときの様子を思い出した方も少なくないのではないでしょうか。色々と調べお話をうかがっていくと、メディアの報道は入らず、スマホなどで得たSNSの情報が役立ち、そして心強かったようです。しかし、例えばスキーや温泉にクルマで出かけた方がこの雪で立ち往生してしまった際に、戻るべきか留まるべきか、また高速道路上を走行中であればひとまず高速を降りるべきなのか、諦めて待つと決めるか。正確な情報をリアルタイムで得て、判断することはできないのか。今回の大雪については想定外であり、かなり判断が難しかったという印象を抱きます。

 ITS先進国である日本の国や自動車メーカーによる情報提供はどのようなものだったのか。やはりメーカーの方がフットワークは軽く、それに比べたら国のインフラ整備は広くシステマチックであるけれど、今回のような状況では動きが少々鈍く感じます。

 例えば本田技研工業。普段は会員のみホンダ車やインターネットで得られるインターナビのプローブ情報を一般に公開し、Googleと連携。2月17日には「Googleクライシスレスポンス(防災サイト)」で甲信地方の豪雪災害エリアの通行可能な道路情報の提供を開始しました。これはGoogleマップ上に、インターナビ搭載車の通行履歴をもとに直近4時間の情報を1時間ごとに更新し、通行可能か否かを知ることができるというもの。

 この情報提供は東日本大震災以降(2011年3月)、今回が3度目。当初はGoogleに送るデータが重く、さらに双方が手作業でデータをまとめていたため、その日に見た情報は前日のものというタイムラグがあったのだとか。さらにデータが重く、見る側は表示に時間がかかった。そんな教訓もあって、その後の仕組みは再構築され、ホンダ側からのデータを軽くすることでよりタイムリーな情報提供が可能になったとのこと。進化している。

ホンダは甲信地方の通行可能な道路の参考情報として、2月17日に「インターナビ」による道路通行実績情報を公開。通行実績はインターナビのWebページを経由してGoogleマップで見られるとともに、インターナビ・リンク会員はインターナビシステムとスマートフォンアプリ「インターナビ ポケット」で表示できるようになっている

 トヨタ自動車は、2011年3月からG-BOOKを活用した「通れた道マップ」をスマホでも見られるようにアプリ提供を開始していましたが、2月20日からはウェザーニューズと組んで「関東・甲信豪雪減災リポートマップ」を開設。トヨタのG-BOOK搭載車から得られるプローブ情報と、全国の直近1時間の被害状況の写真やコメントの中で大雪に関するものをタグ付けしてマッピング。全国の情報が得られる中で、今回の豪雪災害に特化したエリアリポートマップを救援・支援活動の支援として開設し、こちらはアプリをダウンロードしている人なら利用可能なサービスとなっています。

トヨタのテレマティクスサービス「G-BOOK」搭載車両から収集したプローブ情報から、全国の直近1時間の通行実績(通れた道マップ)情報を地図上に反映した「関東・甲信豪雪減災リポートマップ」。ウェザーニューズと組んで開設

 どちらも情報提供のタイミングが大雪が降るまっただ中ではありませんでしたが、今回の取り組みは今後に繋がるはず……と期待したいです。

 国土交通省は、例えば2011年から大容量通信が可能なITSスポット(DSRC)を採用しました。広範囲かつ多くの路線の情報提供が可能であったり、高速道路上の渋滞や事故発生ポイント、気象変化の激しい場所にカメラを設置して静止画像を提供したりしています。また、日本道路交通情報センター(JARTIC)も、ある意味では国交省や都道府県土木部、高速道路会社の情報をまとめて提供しているので、そちらでも道路情報や多少の写真による情報把握が可能になっています。しかし、残念ながら特別な道路交通情報の提供は行われていないようです。平常時も変わらずに一定した情報を安定的に提供するのも重要です。しかし、国としてもう一歩進んだ情報提供ができるようになったらよいと思います。

 ITSスポットを活用した官民連携による情報の一本化のとりまとめ、とでも言いましょうか。各社のプローブ情報も、ときに通行止めになっているはずの道路で通行が確認されたりと、「???」な場合があるようです。そこでプローブ情報をより正確かつ確実なものにするためにも、トヨタやホンダなどのプローブ情報をダブルゲットし、ウェザーニューズの写真やコメントのマッピングはもちろん、一般のツイートなども見ることができるような災害マップがあるとよいのでは? メインとなる情報アクセスサイトが決まれば、情報提供する側も情報が欲しい側もそこに集まることができます。トヨタやホンダはデータ方式が異なるのでミックスさせるのは難しいようですが、どこを通ったのかという通行履歴を重ねることならできるのではないでしょうか、というのが素人の私の理想です。

 素人だって、情報が倍になれば「通れるのか」「通れないのか」「通っていないだけなのか(通過台数が少ないから実績が残っていないのか)」の判断の正確さが高まる、と想像するのは容易なことです。よりリアルな情報をリアルタイムに人とクルマと道路を繋ぐためには、これまで構築してきたものをより使いやすくすることが大事で、そこには民間企業同士を繋ぐ行政の柔軟な働きかけが必要なのではないでしょうか。1人の情報がたとえ1点でも広く多く情報が集まれば、状況を把握しやすくなる。それは私でさえも今回の件で分かったのですから……。

クルマにも万が一の災害に対する備えがほしい

 ところで、東日本大震災のあと、一般家庭でも今後の万が一の災害に対する備えをしているかと思います。その備えが今回役立ったご家庭もあったかもしれません。そういう意味で、今回の件ではクルマにも最低限の装備が必要だと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。お水や食料、簡易トイレに暖のとれるブランケット類、それにファーストエイドキットなどかしら。実際に大変な目に遭われた方がいらっしゃれば、他にも何が必要か、ご提案をお願いします。

 さらに大事なのはクルマの準備。燃費を気にする余り、普段から愛車のガソリンを少な目に入れている方も、特に冬場は万が一の場合を考えたら優先順位は変わるのではないでしょうか。ガス欠は暖もとれず命にかかわる可能性が高まります。しかし、降雪量が増えた場合にエンジンをかけ暖を取る際、一酸化炭素中毒にならないように換気も心がけなければいけない。そして最低でもチェーン、理想は冬タイヤの装着をお願いしたいと思います。

飯田裕子