飯田裕子のCar Life Diary
東京モーターショー2015雑感
(2015/11/3 00:00)
2年に1度のクルマの祭典「東京モーターショー」が東京ビッグサイトで始まった。今回は世界11カ国から合計160社が参加。国内のメーカーは乗用、商用、2輪の全14社15ブランドが、海外メーカーからは16社26ブランドが出展している。一般公開は10月30日~11月8日。
自工会(日本自動車工業会)からの情報によれば、そのうち世界初公開となるモデルが76台(乗用車42台、商用車6台、2輪車18台、カロッツェリア5台、車体5台)、日本初公開モデルが68台(乗用車49台、商用車1台、2輪車15台、車体3台)出展されているようだ。
8年ぶりにFCA(フィアット クライスラー オートモービルズ)グループがアルファ ロメオ、フィアット、ジープ、アバルトを展示しているほか、シトロエンがDSブランドを独立させて日本で初展示を行っている。DSブランドはPSA(プジョー・シトロエン)グループの中でももっともユニークで斬新かつプレミアム性を高めたブランドだ。そしてメルセデスはマイバッハブランドを復活させてブースに展示している。
そんな中で、私が駆け足でまわったプレスデーで「これは」と印象に残ったモデルなどをご紹介したい。注目モデルのさまざまな情報はCar Watchでもリサーチ可能かと思うので、ここはあくまで主観100%で雑感のような、もしかしたら見逃してしまうかもしれない小ネタ(が多い)を、お伝えしたいと思う。
●東京モーターショー2015レポートリンク集
http://car.watch.impress.co.jp/backno/event_repo/index_c270s3595.html
会場で目に留まったモデルたち
モーターショー会場はいつでも混雑していることと思うけれど、それでも目の前で見られたら、まるで美術館で1点の作品を見るように眺めることができると思ったのが「Mazda RX-VISION」。1台のモデルをひときわ暗い空間のなかに絶妙なラインティングによって美しく浮かび上がらせた展示と、そのコンセプトカーの存在感は圧倒的だった。ノッペリと艶めかしく流れるボディーラインは女性の私から見ても美しいと思え、プレスカンファレンスで“大人のスポーツカー”と言うだけの説得力があった。
加えてプレスカンファレンスでは、「マツダのスポーツカーのビジョンを象徴するコンセプトカー。マツダは規模は小さいながら走る歓びや安全、環境など、クルマの本質を求めていけば存在意義もあるのではないか」と説明。さらにロータリーエンジン復活についても、50年前に誕生したこのエンジンをもう1度搭載するため“SKYACTIV-R”と名付け、ロータリーの動力に環境性能を高めるためにSKYACTIVでブレークスルーしていくという。まだ技術段階ながら開発継続中とのこと。本当にこのカタチでその動力で登場したらすごいなと、素直に思えた1台だった。
日産自動車の自動運転コンセプトカー「ニッサン IDS コンセプト」は、おそらく将来の自動運転車をカタチにしたモデルという点では興味のある1台ではないかと思う。実際にデモ走行も行うそうだ(タイムスケジュールが決まっているようで、私は先に進まなくてはいけなくて見ることはできなかったけれど)。
自動運転が実現する時代にこのデザインが合っているかどうかはさておき、現段階ではエクステリアやインテリアのデザイン性や品のよさは日産らしいと思う。運転席前のパネルは「パイロットドライブ(オート)」モード時にはドライバーとのコミュニケーションを取れる画像が映り、助手席前も大きなスクリーンにさまざまな情報が映し出される。そして「マニュアルドライブ」モードに切り替わると、スクリーンと入れ替わりでステアリングが出現し、助手席前のスクリーンも格納される。この部分は実は、パイロットモード時にその裏側に対向車や外を歩く人に見えるようにメッセージが出るボードになっているのだ。日産はAI(人工知能)をこのコンセプトカーに採用しているそうだが、過去のコンセプトカー「ピボ」シリーズからの進化を受け、内外の人やクルマとのコミュニケーションを図る手段として採用している。
自動運転のコンセプトカーと言えばもう1台。メルセデス・ベンツの「F 015 Luxury in Motion」と、今回の東京モーターショーのために東京で撮影を行ったという“本国でも力が入っていた”「Mercedes-Benz Vision Tokyo:Connected Lounge」も必見の2台ではないか。
シルバーのボディー前後に細かく配置されたLEDランプの色や発光のパターンで認識、意思表示を文字などでも行う。室内側面はスクリーンになっており、外の風景を映し出すことや、コミュニケーションツールとしてさまざまなアプリやプログラムを表示・利用することができるという。実際に動きながらの試乗は叶わなかったが、その室内の未来感は現段階では色々な意味で眩しく感じられた。
メルセデスといえば、今回ニューモデルを発表した「スマート」と同じパワートレーンを使うルノーの新型「トゥインゴ」も、ちょっと走りを期待したくなる。
実車では5速MTのみを採用する「アルト ワークス」の復活。「アルト ターボ RS」の試乗会に参加した時点ではまだ計画はなかったということで、“やる”と決めたときのスズキのスピード感をうかがい知れるモデルにもなった。
シトロエン「C4 カクタス」のユニークさにも目が留まる。4160×1730×1480mm(全長×全幅×全高)。デザイン性やパッケージングはもちろん、トヨタ「シエンタ」とほぼ同サイズながら1tを切るという車重に、1.2リッターターボ+6速ATを組み合わせた走りもちょっと楽しみ。ただ、このパワートレーンを搭載するモデルの生産が追い付かず、日本導入は2017年になりそうとのこと。今回、恋心を抱いた方々のためにそれが覚めないうちにもう少し導入が早まればいいのにな、とイエローのカクタスに呟いて帰ってきてみた(苦笑)。
西館4Fには、トミカコーナーなどの展示とともに主催者による併設イベント「SMART MOBILITY CITY 2015」が行われている。ここではさまざまなモデルの展示や試乗、それにクルマの蓄電池を家庭用電源として使う「V2H(Vehicle to Home)」の考え方や、自動運転にも繋がるITSの取り組みなどを楽しく見ることができるだろう。話が前後するが、前述の「ニッサン IDS コンセプト」の運転席まわりのモックアップやその動作、動作環境を見るならこちらのほうがよい。ステージ上のコンセプトカーではなかなか見ることのできないそれらのデモンストレーションを行っているので、“穴場”と言えるかもしれない。ちなみにトミカコーナーはパラダイス。今回も限定モデルの販売を行う準備は整っているようでした。
同フロアではエフエム東京の特設ブースの脇にいた、本田技研工業「フィット」をベースにしたしゃべるクルマ「Honda Smile Mission」で活躍しているという「プチェコ」というクルマにロック・オン状態。これで車検も通るという分厚いオレンジの口びると大きな目が話に合わせて動くという、もしかしたら単純な動作と言われそうなソレがかわいい~。マニアックな筆者はこの子を連れて移動したい(=運転してみたい)とすら思うほど。少なくともあと2回は会場に行く予定で、また会いに行きたいクルマNo.1はプチェコだな、と。
キャラクターと言えば、東京モーターショーオリジナルのお土産を販売するお店で発見した「ふちこさん」。限定モデルらしく、お胸のところに“Tokyo Motorshow 2015”のロゴ入りだ。実は、店内でお土産を物色していたガタイのいい外人男性数人たち(どこかのブランドの施工を世界中のショーでやっている方々らしい)に思い切って「ナニカァ、オキニイリハァ、アリマシタカァ(実際は英語)」と聞いたところ、彼らに“ふちこさん”の存在を教えてもらった次第。感謝。
トヨタ車体はご存知だろうか。トヨタ「アルファード」をベースにクルーザー風に仕立てた「エルキュール コンセプト」がすごかった。基本デザインはそのままに、レザーやウッドでムードを変えたという運転席周辺をふくめ、室内はまるで小型の高級クルーザーのよう。あの大きなミニバンの屋根もテールゲートも、オートで全開にできちゃうのも爽快感たっぷり。実用化の線はないようだけれど、こういうきちんと造られたコンセプトカーには夢があるなぁと思ったのだった。
それから三菱ふそうも面白いです。屋根を取り外したゴージャスな大型バスで「エアロクイーン」のバーチャル安全体験ができる。ブースの奥の「スーパーグレートV スパイダー」は、働くクルマの展示では一番インパクトあるのではないかと思うけれど、いかがだろう。と、色々な展示を挙げていけばきりがない。
ところで、東京モーターショーと言えば自動車旅行推進機構主催のシンポジウム「カーたびシンポジウム」が開催されます! 11月7日14時半に開場し、15時から始まります。私はここでコーディネーター兼パネリストを務めます。今回のテーマは「カーたびの未来 ~未来のクルマは旅をどう変えるか~」。入場無料です。詳細はWebサイト(http://www.cartabi.jp/topics/index.php?itemid=72)を確認ください。