飯田裕子のCar Life Diary
カー・オブ・ザ・イヤー
(2012/12/7 11:00)
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」(以後COTYと略)。1年間に販売された新型車の中からその年の一番を決める選考会ですが、皆さんはどのくらい興味をお持ちでしょうか。選考委員は60名。その選考委員も毎年選出され、選考委員は特別な思いを抱きながらその年に登場する新車を注目する……というのは私だけではないはずです。
2012-1013 COTYにノミネートされたモデルは30台。今年登場した主なモデルとなるので、今年を振り返る意味で全30台を紹介しましょう。
ブランド | モデル |
---|---|
トヨタ | プリウスPHV(プラグインハイブリッド) |
アクア、カローラ・アクシオ/フィールダー | |
ポルテ/ スペイド | |
オーリス | |
86 ※ | |
レクサス | GS |
スバル | BRZ ※ |
インプレッサ G4/SPORTS/XV、 | |
日産 | ノート ※ |
ホンダ | CR-V |
N BOX/N BOX+ ※ | |
マツダ | CX-5 ※ |
三菱 | ミラージュ |
スズキ | ワゴンR/ワゴンRスティングレー ※ |
フォルクスワーゲン | up! ※ |
CC | |
ザ・ビートル | |
メルセデス・ベンツ | Mクラス |
Bクラス | |
SLクラス | |
BMW | 3シリーズ セダン/ ツーリング ※ |
アウディ | A1スポーツバック |
Q3 | |
ポルシェ | ボクスター |
911 | |
シトロエン | DS5 ※ |
アルファロメオ | ジュリエッタ ※ |
クライスラー | ジープ コンパス |
ランドローバー | レンジローバー イヴォーク ※ |
シボレー | ソニック |
※は10ベストカーに選ばれたモデル。トヨタ86とスバルBRZは共同開発ということで2台で1エントリーになっています。
どうですか? 私だったらボクだったら……という意見はそれぞれお持ちのことと思います。私は今年日本に登場した輸入車も含め、日本でどのような効果(影響)をもたらしたかという点に注目しました。
COTYの評価は、25点の持ち点を5モデルに配点し、そのうち最も高く評価するモデル(1つのみ)に必ず10点を与えることになっています。その結果は……
モデル | 配点 |
---|---|
CX-5 | 10点 |
レンジローバー イヴォーク | 5点 |
ワゴンR/ ワゴンRスティングレー | 4点 |
up! | 3点 |
86/BRZ | 3点 |
CX-5はハイブリッドカーのようにエンジン以外の動力に頼らず、環境性能を高めるべく「スカイアクティブ・テクノロジー」を開発し、その全技術を初めて採用したモデルの第1弾。ガソリンエンジンのみならずディーゼルエンジンも新開発し、高い技術力は燃費や環境性能に優れ、価格面にも優れたモデルとして登場させたことはやはり凄い&偉い!
走りはマツダらしく頼もしく、かつ楽しいし、デザインは街中で見かけてもひと目見てCX-5とわかる個性を持ち、日本車らしい室内のパッケージングへのこだわりも十分。ただし、欲を言えばインテリアの質感だけはもう少し高いとよりよいな……。
クルマに詳しい方なら近年のディーゼルエンジンの素晴らしさを知る方も少なくないと思いますが、日本ではまだまだ嫌悪感を抱く方も多かったはずです。マツダがCX-5という新型車に堂々とディーゼルをラインナップしたことに、「えっ、ディーゼル?」と思う方も少なくなかったでしょう。
しかし乗れば分かるわけで、事実、多くの方がディーゼルエンジンを選んでいるという実績が、ディーゼルに対する「黒い、汚い、臭い」というこれまでの多くの方の認識を変えるきっかけになったと実感しています。
さらにディーゼルエンジンは、欧州や欧州車ではずっと前から当たり前の存在でしたが、CX-5には日本のみならず世界に飛び出し、日本の開発技術力の高さをアピールして欲しいという期待も込めています。
これが登場したばかりでも、その技術力や総合力を高く評価し、日本におけるディーゼルの認識を変えるきっかけになりうるという判断をもとに10点としたはずですが、今は販売実績も鑑み、日本のマーケットにきちんと認知されたことも評価に加えることができたため、文句なしで10点を配点することができました。
レンジローバー イヴォークは、個人的に今年のデザイン大賞。レンジローバーというプレミアムブランドから登場しながら、より身近な存在に近づける価格設定、そして価格が身近になっても質感が高く、さらに軽量化が図られたボディーの、あのデザインには衝撃をうけました。この点についてはマツダのCX-5を開発された主査の方も「日本車ももっとカッコイイクルマを造れ、と言われているような気がした」とコメントしていたほどです。
ワゴンR/ ワゴンRスティングレーは、正直、10点候補車でした。「真面目なクルマ造り」とよく言いますが、今回のワゴンRは心の奥の奥の奥底からそう言いたいモデルでした。環境性能を高める新技術を採用し、走りの基本性能が高く、3気筒エンジンであっても静粛性に優れ、インテリアの質感は軽の域を超え、制限のあるボディーサイズの中でさらに室内スペースも拡大しています。
5代目ともなると、すでにいい加減成熟しているはずで、目を見張るほどの新鮮さを得ることへの期待が少し薄れていたのも事実。その期待を大きく裏切る完成度と総合力の高さは、軽自動車という日本独特のクルマ文化の中で最も光っていたと思います。
up!はフォルクスワーゲンでもっともコンパクトでもっとも安いモデル。質感や装備、シングルクラッチAT「AGS」の採用については、よく言えば“割り切り”を強く感じるものの、個性的なデザインやアクティブ・エマージェンシー・ブレーキ(フォルクスワーゲン版“ぶつからないブレーキ”)の採用、そして走るとやっぱりフォルクスワーゲンらしいしっかり感や軽快感を持っている。いろんな意味でパフォーマンスのよさが印象に残るモデルでした。日本車に与える影響も少なくないはずです。
86/BRZについては、サーキット通いにも、お買い物にも、ドライブにも使える実用性を持つ“スポーツカー”を今の時代に登場させたことに、クルマ好きとしては大いに賛成します。最終選考会で改めて久しぶりに試乗しましたが、ハンドルを握るとやはり気分は上がる。今年登場したクルマの中でやはり一番運転が楽しいクルマでした。
もうひと声安く、この楽しさが得られたなら、よりよかったと思います。しかしながらメーカーサイドとしては日本でクルマの楽しさをもう1度認識させたい狙いもあり、今の日本のクルマ文化をよりエモーショナルなものに変えるべく刺激を与えてくれたことは間違いない。クルマだけを売ろうというつもりではない、今後の展開にも期待しています。
今や環境性能や安全性は各社当然のように取り組んでいますが、採用した技術の内容はそれぞれ異なるため、価格なども考慮したうえで、納得のできるモデルを選びたいと思いました。そして私も1人のクルマ好きです。もともと実用性に優れる、走って楽しいクルマが好み。それは街中でもワインディングロードでも、誰もが思い通りに走らせることのできる基本性能の高いモデルであって、単にスポーティーなクルマがいいというわけではないのです。さらにいつでも新しいモデルの登場には、新鮮な驚きや歓びにワクワクしたい。
今年のカー・オブ・ザ・イヤーの大賞はCX-5。インポート・カー・オブ・ザ・イヤーには3シリーズが選ばれました。また実行委員特別賞は86/ BRZが受賞。
自動車業界関係者の1人として、今年すべての新型車に携わった関係者の方に「お疲れ様でした」と言いたいです。そしてCX-5の開発、販売に携わった皆さま、「おめでとうございました!」。
「1年去って、また1年」。来年はどんな年になるのでしょうか。あんなクルマやこんなモデルの登場予定もあり……ぐふふ……1人のクルマ好きとしては興味深々、なのであります。