飯田裕子のCar Life Diary

ドライブに最適な「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015」

 改めて、この連載を再開させていただきます。今後はますますクルマにまつわる楽しい情報などをお伝えすることを念頭におき、日常から取材に至るまでWatchしていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 今回はこの夏ならではのドライブスポットをご紹介。9月13日まで開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015」はご存知ですか? 越後妻有トリエンナーレは3年に1度しか開催されないアートイベントで、来年の夏は楽しめない今年ならではのスポット……、と言えるのではないかと。それにドライブスポットとして紹介する理由はそのロケーションだ。

 アートが展示されているのは、新潟県の越後妻有(えちごつまあり)地域という比較的広範囲なうえ、展示されている場所もたんぼや畑、公共の施設はもちろん、廃校跡や古民家などの廃屋と点在している。2000年にスタートしたこのイベント、今年で6回目となり開催初回からは15年という年月が経つ。その間に常設展示が増え続け、今回はそれらを含めて約380点の作品を見ることができる。

 屋外はもちろん屋内に見どころのあるアートであっても、各展示場のアクセスを考えればやはりクルマがいい。巡回バスも運行しているが、昨年に常設アートを見るために3度訪れた筆者としては作品によって鑑賞ペースはさまざまと実感。やはりマイカーが便利なのだ。観光課の方に確認したところ、それぞれに仮設も含め駐車スペースの用意があるそうなので心配はなさそう。また、今年からEV(電気自動車)の急速充電スポットも5~6個所増設されているとのこと。大地の芸術祭らしく、ダイナミックで斬新な屋外展示作品が多く、屋外であればワンちゃんとブラブラ見てまわることも基本OKだそうだ。

こちらの写真は前回訪れたときのもの。写真左はまつだい「農舞台」と呼ばれる総合文化施設。こちらはギャラリーになっていてアート鑑賞のほか、地元食材を使ったレストランがあり、ショップも充実。中央は「再構築」(行武治美作)。何千枚もの丸い鏡に覆われた家は風景の映り込みとともに楽しみたい。室内も不思議な空間が創られている。写真右は「光の館」(ジェームズ・タレル作)。第1回開催時に作られた作品で、屋根がスライドすることで日没後に変化する空を眺めることができるというもの。実際に宿泊することもできる
空家をアートに作り替えた「脱皮する家」(鞍掛純一、日本大学芸術学部彫刻コース有志作)。家屋のさまざまな個所が彫刻刀で掘られ、独特の表情が与えられている作品)

 加えて、越後妻有エリアは豊かな自然も魅力。信濃トレイル(ブナの原生林トレッキング)や信濃川でのカヌーやダウンリバー、ラフティング、高原の池でSUP(スタンドアップパドルボード)やカヌーなども楽しめる。キャンプ場もあるし、アウトドアを楽しみつつアートに触れるというのも贅沢ではないかしら。

 さらにグルメ。越後妻有トリエンナーレが行われているのは魚沼産こしひかり米の産地。アート巡りをしていると、もうそこかしこに瑞々しい緑をした田んぼが広がっていて、その間を走るドライブはとても気持ちいいのだが、新米のシーズンにはまだ少し早い。開催期間はへぎそばや夏野菜といった新潟の旬の味が楽しめそう。あくまで筆者の感想だが、お水と素材がよいのか、またセンスのよいお店も多く、食のクオリティはめちゃ高い。

「うぶすなの家」(入澤美時、安藤邦廣作)は、1階は地元の食材を使った料理を提供するレストランなど、2階は展示スペースで構成される(Photo:Kazue Kawase)
稲作の情景を詠むテキストと、農作業する人々の姿を型どりした彫刻で構成される「棚田」(イリヤ&エミリア・カバコフ作。Photo:Osamu Nakamura)
絵本作家であるジミー・リャオ作の「Kiss & Goodbye」。絵本の世界を再現した作品展示などが行われている(Photo:Gentaro Ishizuka)
2014年3月に閉校した奴奈川小学校をアート作品に作り替えた「奴奈川キャンパス」(改修設計:山岸綾)。日によってイベントが開催されるほか、カフェテリアで郷土料理を楽しむこともできる(Photo:Gentaro Ishizuka)
6年前に廃校になった清津峡小学校をベースに、作品の保管庫やギャラリーとして生まれ変わった「清津倉庫美術館」(山本想太郎作。Photo:Tadasu Yamamoto)
草間彌生作「花咲ける妻有」(Photo:Osamu Nakamura)
越後妻有里山現代美術館「キナーレ」の中央の池に作られた「蓬莱山」(蔡國強作。Photo:Osamu Nakamura)
長野県北部地震で起きた土石流跡につくられた「土石流のモニュメント」(磯辺行久作)。黄色いポール約230本を使い、かつての土石流の痕跡を表現した(Photo:Gentaro Ishizuka[写真左]、新潟県地域振興局[写真右])
周辺では温泉も楽しめる。写真左は清津峡にある「湯元 清津館」の貸切風呂。右は松之山温泉「玉城屋」の部屋風呂。ほかにも効能や風情も魅力の温泉はたくさんある
グルメも楽しみの1つ。例えば十日町にある「千年の市 じろばた」のそばいなり、そしてへぎそば。何店か有名店があって、「そばや清兵衛」も個人的におススメ

 越後妻有トリエンナーレは9月13日まで開催されている。筆者も個人的にこの夏もっとも楽しみにしているイベント。クルマでアートを巡る……想像しただけでとても有意義だと思いませんか? モーターサイクルやロードバイクでツーリングしながらというのもよいが、地元の野菜やお土産をたくさん買ったり、アウトドアを楽しむためのウエアやシューズなども持っていったりする筆者としては、やはりクルマかなぁと思うのでした。

飯田裕子