【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記
第49回:いよいよ車両完成。週末の富士戦に向けて課題クリアなるか?
2019年4月15日 20:42
富士山裾野は雪が残り、東京では散り始めた桜が、ここでは満開となる富士スピードウェイ。今はレースウイーク月曜日の4月15日午前である。そこでついにわがニューマシンがシェイクダウンを終えた。納車遅れと資金難という壁が立ちはだかり、第2戦富士からの参戦になることになった今シーズンのGazoo Racing 86/BRZ Race。出遅れた感は相当なものだが、いよいよクルマが形になり、富士スピードウェイを15ラップほどしただけでも嬉しい。やっと走れる。レースに出られるという喜びを噛みしめている。
クルマが仕上がったのは一昨日のこと。愛知県津山市にあるタイヤプロショップ アリーナが揃えてくれたレース用パーツがガレージに届き、メンテナンスガレージのレボリューションではたった3日でその作業を終えていた。レース指定パーツであるTRD製の車高調、強化ブッシュ&マウント、LSDといったアイテムを組み込むのは写真をご覧いただければ分かるが、厄介な作業ばかり。
サスペンションメンバーを降ろし、アームを外し、ノーマルブッシュを抜き取ってから強化ブッシュを圧入するという一連の流れは、86を数多く造ってきたレボリューションからすれば朝飯前なのだろうが、それを目の当たりにすると本当にご苦労さまと言いたくなるほどだ。
それだけで終わらず、トランスミッションを降ろして小倉クラッチ製のクラッチ、ブレーキをばらしてエンドレス製のブレーキパッド&レボリューションのステンメッシュホースを組み込み、ブリヂストン「POTENZA RE12D」を装着した後にアライメントを調整。最後はMoty'sのオイルとTCL ADVANCEのブレーキフルードを注入し、フルバケットシートを装着して終了となる。文章にすればたった数百文字であるが、ワンメイクレースカーを製作するのはかなりのアイテムと労力が必要なのだ。ご協力いただきました皆さま、本当にありがとうございました!
改めて走り出した通称“G型”の86ワンメイクレースカーは、以前とはちょっと違う感覚で、剛性感が高いようなフィーリングがある。ダッシュボード貫通タイプのロールケージ、そしてリアまわりが剛性アップしたという噂を聞いてしまったからかもしれないが、クルマの様子が手に取るように伝わってくる。まだレースパーツを組み込む前のナラシ運転中には、気のせいかもしれないが以前よりも鉄チンホイールの剛性不足が気になった。そして今、パーツを組み込み一般道からサーキットまで走ってみた感覚もどこか違う。いずれにせよボディのシッカリ感がかなり高いのだ。
これが走りやタイムに活きるか否かは分からないが、3台乗り継いだ経験からすれば、以前とは別物であることに間違いはなさそうだ。さらに、スピードリミッターのかかり方も細かくなったような感覚もある。ストレートスピードは実質的に上!? さらにはトラブルが頻発していたABSユニットも改められたと聞くから、トラブルの心配もなさそうだ。新車のメリットが活きることを祈る。
とはいえ、まだまだ発展途上。走行距離およそ3800kmでシェイクダウンしたばかりのエンジンはまだ高回転域が眠い印象で、ナラシを完了したとは言えない状態。さらに、組み込んだばかりのスプリングやブッシュは、なじみが出ずに狙った車高よりも高い状態が続いている。クルマがレース仕様になってから300kmほど一般道を走り、少しはなじみが出てきたかと思っていたが、サーキットに持ち込んでみるとまだまだ先がありそうな気がしてくる。レボリューションの社長、青木さんからは「レース前までに100ラップくらいはしてよ!」と釘を刺されているが、30分のフリー走行で走れた周回数はたった15ラップ。まだまだ先は長い。今、富士スピードウェイ内のORIZURUというレストランでこの原稿を書いているが、これを終えたらまた再び走らねば……。
先ほどの走行は2018年に使ったユーズドタイヤを装着した状態で、2分7秒台半ばで淡々と周回を重ねていた。すべてを仕上げた状態ではどこまでいけるのか? 今週末のレース本番が楽しみになってきた。